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クラスター効果による糖鎖の相互作用 - J-Stage

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化学と生物 Vol. 54, No. 11, 2016

クラスター効果による糖鎖の相互作用

N- 結合型糖鎖 糖脂質およびグリコサミノグリカンに見る糖鎖の相互作用のしくみ

タンパク質と糖との相互作用は一般的に弱く,これに より非特異的な結合が抑制されている.では,タンパク 質が糖を認識して働く場合,どのようにして糖に結合し ているのか.生体内における糖の存在形態を観察してみ ると,そのしくみが見えてくる.糖タンパク質の -結 合型糖鎖の多くは非還元末端側が2残基以上に枝分かれ している.また細胞表面の糖脂質は脂質ラフトに集合し ており,この部分では糖鎖の密度が高い.同じく細胞表 面のプロテオグリカンに共有結合しているグリコサミノ グリカン糖鎖にはタンパク質が結合するドメインが存在 するが,このドメインが密に集まっている場合にその機 能が発揮される.以上のように,生体内でタンパク質と 相互作用する糖鎖は多くの場合,複数の糖鎖が集合した 状態で存在していると言うことができる.実はこの「糖 鎖の集合」にタンパク質との相互作用を可能にするしく みがあり,糖のクラスター効果と呼ばれている(1, 2).以 下に具体的な例を見ていきたい.

細胞外に存在するタンパク質のほとんどは糖鎖が付加 され,その特異的な機能を発揮する.糖タンパク質の糖 鎖はタンパク質の選別や,免疫,炎症,病原性認識,が ん転移などの細胞内プロセスにおける生物学的機能を担 う.タンパク質のアスパラギン残基に共有結合する -結 合型糖鎖の還元末端側の5糖(コア5糖)は共通となっ ているが,非還元末端側の構造には多様性があり2分岐 型,3分岐型といった分岐度の違いが見られる.この枝 分かれ構造がクラスター効果を発揮してタンパク質と相 互作用する例として,マクロファージのマンノース受容 体が挙げられる(図1A).マンノース受容体は糖タンパ ク質のエンドサイトーシスを媒介する働きをもつ.この マンノース受容体はシステインリッチドメインと,フィ ブロネクチンII型リピート配列,8つのカルシウムイオ ン依存性の糖鎖認識ドメイン(carbohydrate-recognition  domains; CRDs)をもつ.このうち結合したリガンドの エンドサイトーシスに関与するのはCRDである.一つの CRDに対して単糖が結合することができるが,それだけ では結合親和性は低い.エンドサイトーシスには,リガ ンドとなる糖タンパク質の糖鎖の枝分かれに対応するよ うに,CRDも最低3つのドメインが必要とされる(3, 4)

細胞膜にはスフィンゴ脂質やスフィンゴ糖脂質,コレ ステロールからなる脂質ラフトと呼ばれるマイクロドメ インが存在し,この脂質ラフトが細胞活性化シグナルの 足場としての役割をもつことが明らかになりつつあり注 目されている.細胞膜のガングリオシドGM3のほとん どは脂質ラフトに集合しているが(図1B),そのほかに もc-Src, Ras, Rho, focal adhesion kinase(FAK)といっ たシグナルを仲介する分子が集合しており,GM3がガ ングリオトリオシルセラミドやラクトシルセラミドと相 互作用することでシグナルが活性化する.このように脂 質ラフトに集合した糖脂質は情報伝達にかかわるタンパ ク質の機能を調節し,細胞認識やシグナル伝達の調節に 関与する可能性が示唆されている(5〜7)

細胞膜の表面に存在するヘパラン硫酸プロテオグリカ ンは,ヘパラン硫酸糖鎖を介してシグナル分子と相互作 用することでさまざまなシグナル伝達経路に関与する

(図1C).ヘパラン硫酸は細胞や組織に特異的な構造をも ち,それぞれが異なる成長因子との結合ドメインになる ことが知られている.線維芽細胞増殖因子(FGF)が結 合するドメインはヘパラン硫酸上にクラスター化してい るため,ヘパラン硫酸に結合したFGFに線維芽細胞増殖 因子受容体(FGFR)が結合することでFGFRの二量体 化が引き起こされシグナル伝達経路が活性化する(8, 9)

図1クラスター効果による糖鎖の結合

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790 化学と生物 Vol. 54, No. 11, 2016

ヘパラン硫酸プロテオグリカンであるシンデカン4は 細胞接着因子として知られる.シンデカン4のヘパラン 硫酸はフィブロネクチンのHepIIドメインに結合し,プ ロテインキナーゼC

α

とその下流のRhoファミリー Gタ ンパク質との結合と活性化を促進する.シンデカン4は

α

平滑筋アクチンの組織化にも寄与することで細胞接着 因子としての役割を果たす.ヘパラン硫酸を1本もつシ ンデカン4ではこれらの機能は発揮されず,複数のヘパ ラン硫酸が機能発現に必要とされる(10)

軟骨組織のほとんどは細胞外マトリックスであり軟骨 細胞は僅かにしか存在しない.軟骨の細胞外マトリック スは主にII型コラーゲンとプロテオグリカン会合体によ り構成される.プロテオグリカン会合体に含まれるヒア ルロン酸やコンドロイチン硫酸は水を多く保持すること ができ,この性質が軟骨に特有の耐圧性を与えていると される.軟骨に多く存在するコンドロイチン硫酸プロテ オグリカンは数十から100本以上の糖鎖をもつ巨大な分 子である.このコンドロイチン硫酸は単鎖ではコラーゲ ン線維に結合することができないが,複数の糖鎖がクラ スター化することでコラーゲン線維に結合することがで きる(図1D).さらにコンドロイチン硫酸クラスターは 糖鎖同士で互いに結合する.このようなコンドロイチン 硫酸のクラスター結合により細胞外マトリックスの間隙 が充填されると考えられる(11)

以上のように糖鎖のクラスター効果は糖鎖が関与する 相互作用を理解するうえで重要な視点であると言える.

特に糖脂質間やグリコサミノグリカン間の相互作用に見 られる糖鎖間の結合についての報告がこれまでに少ない のは,クラスター効果が考慮されていなかったことが原 因にあると考えられる.今後は糖鎖間の相互作用とその 機能に焦点を当てた研究が幅広く展開されていくことを 期待したい.

  1)  M.  Mammen,  S.  K.  Choi  &  G.  M.  Whitesides: 

37, 2754 (1998).

  2)  O.  Hayashida,  K.  Mizuki,  K.  Akagi,  A.  Matsuo,  T. 

Kanamori,  T.  Nakai,  S.  Sando  &  Y.  Aoyama: 

125, 594 (2003).

  3)  M.  E.  Taylor,  K.  Bezouska  &  K.  Drickamer: 

267, 1719 (1992).

  4)  W. I. Weis, K. Drickamer & W. A. Hendrickson:  ,  360, 127 (1992).

  5)  N.  Kojima  &  S.  Hakomori:  , 264,  20159  (1989).

  6)  N. Kojima, M. Shiota, Y. Sadahira, K. Handa & S. Hako- mori:  , 267, 17264 (1992).

  7)  K.  Iwabuchi,  S.  Yamamura,  A.  Prinetti,  K.  Handa  &  S. 

Hakomori:  , 273, 9130 (1998).

  8)  F. J. Moy, M. Safran, A. P. Seddon, D. Kitchen, P. Böhlen,  D.  Aviezer,  A.  Yayon  &  R.  Powers:  , 36,  4782 (1997).

  9)  A. B. Herr, D. M. Ornitz, R. Sasisekharan, G. Venkatara- man & G. Waksman:  , 272, 16382 (1997).

10)  S. Gopal, A. Bober, J. R. Whiteford, H. A. B. Multhaupt,  A. Yoneda & J. R. Couchman:  , 285, 14247  (2010).

11)  Y. Tatara, I. Kakizaki, S. Suto, H. Ishioka, M. Negishi & 

M. Endo:  , 25, 557 (2015).

(多田羅洋太,弘前大学大学院医学研究科附属高度先進 医学研究センター)

プロフィール

多田羅 洋太(Yota TATARA)

<略 歴>2001年 創 価 大 学 工 学 部 卒 業/

2006年同大学大学院工学研究科博士後期 課程修了/同年東北大学大学院農学研究科 研究員/2009年弘前大学大学院医学研究 科助教,現在に至る<研究テーマと抱負>

グリコサミノグリカンとタンパク質との結 合,新たな機能をもつグリコサミノグリカ ンの探索と疾患の治療薬への応用<趣味>

美術

Copyright © 2016 公益社団法人日本農芸化学会 DOI: 10.1271/kagakutoseibutsu.54.789

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