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糸状菌におけるネクトリシン生合成経路の解明 - J-Stage

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化学と生物 Vol. 55, No. 3, 2017

糸状菌におけるネクトリシン生合成経路の解明

イミノ糖の微生物生産への応用

イミノ糖(アザ糖)は微生物や植物などが産生する糖 のアナログで,最も基本的なものは,ピラノース環やフ ラノース環中の酸素が窒素に置換された構造を有する.

一般に,イミノ糖はそれぞれに対応した糖の構造を模擬 することでそれらに作用するグルコシダーゼなどの酵素 を阻害するため,糖尿病治療薬へ応用されている.ま た,イミノ糖は,N型糖鎖のプロセッシングの過程で働 くグリコシダーゼを阻害して細胞表面のタンパク質に結 合しているN型糖鎖の成熟を防いだり,ライソゾームの 加水分解酵素を阻害しうるため,ウイルス感染やがん,

ライソゾーム病などの治療薬への応用が報告されてい る(1, 2)

初めて見つかった天然のイミノ糖であるノジリマイシ ンは 属から1966年に日本で発見された(3). 類似した化合物であるデオキシノジリマイシン(DNJ)

は,はじめ1968年に合成され,後に1976年にクワより 単離された(2).DNJは強い

α

-, 

β

-グルコシダーゼ阻害活 性を有する.Miglitol( -ヒドロキシエチル-DNJ)や Miglustat( -ブチル-DNJ)はDNJの誘導体であり,前 者は2型糖尿病治療薬,後者は加水分解酵素の遺伝的欠 損に起因するライソゾーム病の一種であるゴーシェ病や ニーマンピック病C型の治療薬として市販されている.

Miglitolは炭水化物のグルコースへの分解を阻害してグ ルコースの吸収を抑えることで作用する.Miglustatは スフィンゴ脂質のグルコシル化に関係しているグルコシ ルセラミド合成酵素(グルコシルトランスフェラーゼ)

を可逆的に阻害することで機能する.

CS-1036は2型糖尿病治療薬として当社にて創製された 化合物であり,イミノ糖であるジデオキシイミノアラビ ニトール骨格を有する.われわれはCS-1036原薬(医薬 品の有効成分)の工業製法を構築するにあたり,製造原 価低減のため,ジデオキシイミノアラビニトールに類似 した化合物で糸状菌が産生するネクトリシン(1,図1 照)を原薬中間体として利用することを企図した(4)

ネクトリシンは

α

-, 

β

-グルコシダーゼ,

α

-, 

β

-マンノシ ダーゼ阻害活性を示す(5) 5員環を有するイミノ糖で,藤 沢薬品工業(現アステラス製薬)により1988年に報告 された.当社(当時,三共株式会社)においても1991

年に自社の微生物ライブラリーより生産菌を見いだし,

さらなる菌株のスクリーニングによって糸状菌である  SANK 18292株をネクトリシン 高生産株として見いだした.さらに効率的に生産を行う ためには,単離した生合成遺伝子を異種発現することが 魅力的と考えられたが,ネクトリシンの生合成遺伝子や 生合成経路に関する情報は報告されていなかった.

イミノ糖の生合成に関しては実質的には6員環のDNJ について報告があるのみで,知見が乏しい.DNJにつ いては,グルコースを中間体とする生合成経路が同位体 添加実験により推定されている(6, 7)

われわれはDNJに関する先行研究を踏まえてネクト リシンの生合成中間体としてペントースを推測した.各 種ペントースを添加して を培養したとこ ろ,D-キシロースをよく資化し,また,D-リボースを添 加した場合にネクトリシンの生産量が増加した.そこ で,D-キシロースとD-リボースの各種13C同位体を添加 し,産生されたネクトリシンへの同位体の取り込みを NMRと質量分析で確認した結果,これらの基質はネク トリシンの中間体であり,その取り込みパターンはペン トースリン酸回路を経る経路で矛盾なく説明できた(8)

(図1).さらに, 培養抽出液中に4-アミ ノ-4-デオキシアラビニトール(2)が含まれていることを 精製物のX線結晶構造解析により明らかにした.この 化合物に抽出した粗酵素液を添加するとネクトリシンに 変換されたことから本化合物がネクトリシンの前駆体で あることが示された.この反応を触媒する酵素を同定す るため,この酵素を精製した.LC-MS/MSにより推定 した部分アミノ酸配列から縮重プライマーを設計し,

のゲノムライブラリーをスクリーニング することで遺伝子全長のクローニングに成功した(9).こ の酵素(NecC)はグルコース‒メタノール‒コリンオキ シダーゼと相同性が高いことから,4-アミノ-4-デオキシ アラビニトール(2)の1位のヒドロキシル基の酸化を触媒 し,得られたアルデヒド3が環化,つづいて非酵素的に脱 水され,ネクトリシンが生成すると推定された(図1).

次に,残りの生合成遺伝子を見つけるため,多くの糸 状菌の2次代謝産物の生合成遺伝子のように,ネクトリ

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シンの生合成遺伝子もクラスター化していると仮定し て,ゲノム上の 遺伝子座周辺の遺伝子の配列解析 を実施した.その結果,アミノトランスフェラーゼとコ リンキナーゼに相同性を示す配列( と )が見 つかった. 遺伝子を破壊するとネクトリシンの生 産が観察されなくなり, 破壊株に を相補する とその生産が回復したことから はネクトリシンの 生合成にかかわっていることが示された. 遺伝子 を破壊するとネクトリシンの生産は親株より顕著に減少 した.また, と を同時に導入した組換え大腸 菌によるネクトリシンの生産を認めた.よって,

はネクトリシンの生合成に関係しているが必須ではない と示唆され,NecBを代替しうる酵素の存在が考えられ た(10).以上より,各生合成酵素は図1に示す反応を触媒 していると推定している.この経路は,アミノ化,脱リ ン酸化,酸化の各反応を含んでいる点がDNJの推定生 合成経路と類似している.しかし,これら3つのネクト リシン生合成酵素は,対応するDNJの推定生合成酵素

(11)との相同性がいずれも低く,新規性が高い酵素であ ることが示された.

ネクトリシンの生合成遺伝子の情報を活用することで 異種発現によるネクトリシンの直接生産や酵素反応によ る生産の可能性が示され,実際に遺伝子組換え大腸菌で ネクトリシンを生産できた.また,本研究で得られた遺 伝子情報を利用して天然物またはデータベース上の遺伝 子を探索することで,ほかのイミノ糖の生合成機構の解 明にも役立つのではないかと期待している.

  1)  G.  Horne,  F.  X.  Wilson,  J.  Tinsley,  D.  H.  Williams  &  R. 

Storer:  , 16, 107 (2011).

  2)  R. J. Nash, A. Kato, C.-Y. Yu & G. W. Fleet: 

3, 1513 (2011).

  3)  S. Inouye, T. Tsuruoka & T. Nida:   (Tokyo),  19, 288 (1966).

  4)  Y. Ikeuchi, M. Hayashi, T. Ueda, M. Hara, Y. Shiba & R. 

Miyauchi:  , 72, 557 (2014).

  5)  E. Tsujii, M. Muroi, N. Shiragami & A. Takatsuki: 

220, 459 (1996).

  6)  D. J. Hardick & D. W. Hutchinson:  , 49, 6707  (1993).

  7)  M.  Shibano,  Y.  Fujimoto,  K.  Kushino,  G.  Kusano  &  K. 

Baba:  , 65, 2661 (2004).

  8)  R. Miyauchi, T. Takatsu, T. Suzuki, Y. Ono & Y. Shiba: 

116, 87 (2015).

  9)  R. Miyauchi, H. Sakurai & Y. Shiba:  , 6, 6  (2016).

10)  R. Miyauchi, C. Ono, T. Ohnuki & Y. Shiba: 

,  82, 6414 (2016).

11)  L. F. Clark, J. V. Johnson & N. A. Horenstein: 

12, 2147 (2011).

(宮内隆記*1,柴 陽一郎*2,*1 第一三共株式会社モダ リティ研究所,*2 第一三共株式会社CMC企画部)

プロフィール

宮内 隆記(Ryuki MIYAUCHI)

<略 歴>2003年 早 稲 田 大 学 理 工 学 部 卒 業/2005年同大学大学院理工学研究科修 士課程修了/同年三共株式会社(現・第 一三共株式会社)入社,現在に至る<研究 テーマと抱負>タンパク質製剤の創製,タ ンパク質の安定化<趣味>水泳,競泳観戦 柴 陽一郎(Yoichiro SHIBA)

<略 歴>1988年 大 阪 大 学 工 学 部 卒 業/

1990年同大学大学院工学研究科修士課程 修了/同年三共株式会社(現・第一三共株 式 会 社) 入 社/2001年 博 士(工 学) 取 得/2004〜2006年 カ リ フ ォ ル ニ ア 大 学 バークレー校留学/2011年より現職<研 究テーマと抱負>バイオ医薬品の承認申 請・上市<趣味>ウォーキング,水泳,ス ポーツ観戦

Copyright © 2017 公益社団法人日本農芸化学会 DOI: 10.1271/kagakutoseibutsu.55.161 図1 におけるネクトリシ ンの生合成遺伝子クラスターと推定生合成 経路

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