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植物ホルモン・ジャスモン酸の主要な不活性化経路 - J-Stage

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化学と生物 Vol. 50, No. 3, 2012

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今日の話題

にどのような表現型があるのかは,迅速に回路をマップ する方法がなかったためにほとんど検討されていない.

このように,トランスシナプス標識法と遺伝学のさらな る組み合わせは,神経回路が形成され機能する分子・細 胞機構を研究するのに大いに役立つことになるだろう.

  1)  L.  Luo,  E. M.  Callaway  &  K.  Svoboda : , 57,  634 

(2008).

  2)  O.  Yizhar,  L. E.  Fenno,  T. J.  Davidson,  M.  Mogri  &  K. 

Deis seroth : , 71, 9 (2011).

  3)  G. Ugolini : , 194, 2 (2010).

  4)  I. R.  Wickersham,  D. C.  Lyon,  R. J.  Barnard,  T.  Mori,  S. 

Finke, K. K. Conzelmann, J. A. Young & E. M. Callaway :   , 53, 639 (2007).

  5)  K. Miyamichi  : , 472, 191 (2011).

  6)  E. A.  Rancz,  K. M.  Franks,  M. K.  Schwarz,  B.  Pichler,  A. T. Schaefer & T. W. Margrie : ., 14, 527 

(2011).

  7)  F. Osakada, T. Mori, A. H. Cetin, J. H. Marshel, B. Virgen 

& E. M. Callaway : , 71, 617 (2011).

(宮道和成,米国スタンフォード大学生物学部)

植物ホルモン ジャスモン酸の主要な不活性化経路

ジャスモン酸イソロイシン 12 位水酸化酵素 CYP94B3 の発見

植物は自ら移動することができないため,栄養飢餓,

乾燥,温度,病害,虫害などの周囲の環境変化に対応す る独特の仕組みを発達させてきた.これらのストレスに さらされた際,植物ホルモンは植物自身の生理機能を調 節するために中心的な役割を担う.それ自身が生物活性 を有するいわゆる活性型の植物ホルモン量は,植物の体 内において巧妙に制御されており,その生合成と代謝と のバランスによって決定される.

7-イソジャスモン酸 (JA) は重要な植物ホルモンの一 つであり,塊茎などの形態形成,虫害や病害に対する防 御応答に寄与するシグナル伝達物質である.これまでに 数種類のJA類縁体が植物より発見されているが,多く のJA応答において重要な役割を果たすのは,イソロイ シンとの結合体である7-イソジャスモノイルイソロイ シン (JA-Ile) であるとされている.JA非存在下におい ては,JA応答を担う転写因子MYC2にJAZタンパク質 が結合し,その転写活性を抑制している.各種のストレ ス刺激により生体内のJA-Ile濃度が上昇するとSCFCOI1 複合体がJAZタンパク質を認識し,JAZタンパク質の

ユビキチン化を経て26SプロテアソームによるJAZタン パク質分解が起こる.これによりMYC2の抑制が解除 されると,その転写活性が上昇し,下流にあるJA応答 遺伝子群の発現変化が起こる.

JAの生合成は葉緑体膜の 

α

-リノレン酸が切り出され ることにより開始され,環化による5員環の形成,数段 階の 

β

 酸化などを経て生成する.JAの主要な代謝経路 の一つとして12位の水酸化が知られており,それぞれ JAとJA-Ileが水酸化された12-ヒドロキシJA(ツベロ ン酸,TA)および12-ヒドロキシJA-Ile (12-OHJA-Ile) 

の植物体内における存在が確認されている.TAの12位 の水酸基が硫酸エステル化や配糖体化された代謝物も見 つけ出されており,これら化合物のジャスモン酸不活性 化機構への関与が示唆されている.またそれらの知見に 加えて,TAやその類縁体がJA-Ile応答遺伝子の発現を 抑制し,JAシグナル伝達を負に制御するという報告も ある(1)

近年,筆者らのグループとアメリカのKooらのグ ループは,シロイヌナズナにおけるシトクロームP450

図1植物において知られるジャス モン酸類の生合成・代謝機構

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化学と生物 Vol. 50, No. 3, 2012 157

今日の話題

の一種CYP94B3が,JA-Ileの12位を水酸化し12-OHJA- Ileを生成する酵素として機能することを明らかにし

(2, 3).この酵素CYP94B3は,傷害応答やジャスモン

酸処理でジャスモン酸受容体であるCOI1依存的に誘導 される.またこのCYP94B3の基質特異性を調べたとこ ろ,JA-Ile, JA-Phe, JA-Valなどジャスモン酸-アミノ酸 結合体を基質として用いることができる一方で,JAを 水酸化する活性は有しないという結果が得られた.実 際,野生株と比べ 変異株では,基質であるJA- Ile, JA-Val, JA-Pheは多く蓄積する一方,それらの水酸 化物である12-OHJA-Ile, 12-OHJA-Val, 12-OHJA-Pheの 蓄積量は少ない.また, 変異株においては,

SCFCOI1依存的に生じることが示されている根の伸長阻 害がより強く観察される.これは,植物体内において JA-Ileの代謝が抑制されることにより,JA-Ileがより多 く蓄積した結果であると予想される.

Kooらは, 過剰発現株を用いた実験を行な い,CYP94B3のJA-Ileの不活性化機構に関してさらな る知見を加えた.この過剰発現株はJA-Ile存在下で根の 伸長阻害活性に耐性を示す一方で,強力なJA-Ileアゴニ ストとして知られるコロナチンに対する影響は野生株の ものと同等であった.このことからも,CYP94B3がJA- Ileの代謝を調節することによる植物体内の活性調節機 構の存在が示唆される.この過剰発現株は不稔性を示 し,野生株と比べ蛾の一種であるシロイチモジヨトウの 幼虫によるより深刻な食害をうけた.これらは,シロイ ヌナズナのJA欠損変異株やJA非感受性変異株で一般 的にみられる表現型である.

興味深いことに,野生株と比べて変異株 にお いて,病原菌  DC3000に対する 感受性が増すことが明らかにされている(4).JA経路が,

サリチル酸依存的な防御応答に対して拮抗的に働くと示 唆されており,この  DC3000に対する感受 性の上昇は,変異株 で多く蓄積したJA-Ileがサ リチル酸による防御応答を拮抗的に抑制したため生じた と推定される.また,JAと拮抗的に働くと考えられる アブシジン酸やサリチル酸処理によって の発 現が誘導される結果が得られており,植物ホルモン間の 拮抗機構の一つとしてJA-Ileの水酸化によるJA類の不 活性化の関与が予想される.

12-OHJA-IleはJA-Ileと 比 べ て,SCFCOI1とJAZの 相 互作用を促進する活性は弱い.傷害処理後,不活性体へ と代謝されることにより,傷害後誘導されたJA-Ileの濃 度は減少し,それに伴ってジャスモン酸応答遺伝子の発 現量が下がる.JA-Ileを不活性型へと代謝する能力が損 なわれた変異株 においては,野生株と比べ傷害 応答後12-OHJA-Ileへと代謝されずJA-Ileの量が多い状 態で蓄積し,JA応答が持続する.これらの結果は,植 物の傷害応答時にこのJA-Ileの12位の水酸化が不活性 化に重要な役割を果たすことを支持する.

しかし,12-OHJA-Ileは弱いながらもJA-Ile様の活性 を有する.このことは,12-OHJA-Ileがさらに代謝され ることの重要性を示唆する.筆者らは,12-OHJA-Ileが 配糖化される,もしくはさらに酸化されることにより,

活性のより低い化合物になるという,「二段構えの不活 性化」が植物体内で行なわれ,活性調節に寄与している という仮説を立て研究を進めている.実際,植物体内に おけるそれら化合物の内生量を分析したところ,傷害処 理後これら化合物の蓄積が認められた.現在,それら化 合物を生成させる代謝酵素の探索を行なっている.

ジャスモン酸は植物の成長制御や虫害・病害に対する 防御応答に重要な役割を果たす植物ホルモンである.し たがって,その存在量を調節する上で鍵となる代謝酵素 の解明は農業分野などへの応用が期待される.また,12 位が水酸化されたJAおよび,その配糖体がSCFCOI1非 依存的にネムノキの就眠運動に関わるという結果(5),馬 鈴薯の塊茎形成に何らかの役割を果たすという結果(6), 傷害を受けた植物における処理後1時間以上経過した段 階で生じる急激な蓄積などの結果(7)も得られており,今 後のジャスモン酸12位水酸化類縁体に関する研究の進 展が望まれる.

  1)  O. Miersch  : , 177, 114 (2008).

  2)  N. Kitaoka  : , 52, 1757 (2011).

  3)  A. J.  Koo  : , 108,  9298 

(2011).

  4)  I. S. Hwang  : , 232, 1409 (2010).

  5)  Y. Nakamura  : , 155, 1226 (2011).

  6)  T. Yoshihara  : , 53, 2835 (1989).

  7)  C. Sato  : , 52, 509 (2011).

(北岡直樹*1,松浦英幸*2,*1北海道大学大学院農学 院,*2同大学大学院農学研究院)

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