• Tidak ada hasil yang ditemukan

[要旨] マルクス・レーニン主義国家である中国は

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2023

Membagikan "[要旨] マルクス・レーニン主義国家である中国は"

Copied!
8
0
0

Teks penuh

(1)

要旨

マルクス・レーニン主義国家である中国は、物質主義的な発展が不平等を解消し中国 を富強に導くという発想において一貫している。中国共産党は、1980年代における中国 社会主義の動揺を制し、1990年代以後の経済発展へと進む中で、中国における生存権と

「発展権」の充足を自らの役割と位置づけ、中国の「国情」に沿った人権概念を強調す る。しかし中国の「発展権」は、生存権を中心に人権をとらえ、国家や人民をその実現 主体とするあまり、個人の自由権と尊厳を軽視しており、国際連合の「発展の権利宣言」

が想定したような、個人の尊厳を第一とする発展概念とは大きく乖離している。このた め習近平政権は、共産党が代表する「中華民族」「人民」の価値観とは異なる考えの人々 に対して、外国や外来文化に影響されて「発展」を阻害するものと敵視し、「発展権」の 名における人権の危機が新疆・香港を中心に起きた結果、西側諸国と中国の対立も激し さを増している。

1

中国における自由の挫折

中国は中国共産党(以下、「共産党」と略す)が国家のあらゆる場面を指導する国家であり、

一貫してマルクス・レーニン主義的な唯物論を掲げ、人類社会のあらゆる問題の根源は様々 な不平等に由来すると解釈し、中国の全ての事物に働きかけて物質的な発展を志向する。

同じ唯物論に依拠しながら、毛沢東時代と改革開放時代で中国が一変した最大の原因は、

共産党自身が毛沢東時代の過度に平等主義的な集団化による「共産主義への過渡」を貧困の 再生産であったと批判し、中国の現状を「社会主義初級段階」と再定義のうえ、まずは国家 資本主義的な発展を進めて生産力を高めることを優先したためである。

そこで改革開放の当初、共産党はあらゆる積極的な要素を動員するという発想のもと、「党 内民主」の模索に乗り出し、言論の自由も事実上ある程度黙認された。その結果、1980年代 の中国には、毛時代とは比較にならないほど多様な思想・観念があふれたものの、経済過熱 の中で特権を持つ党幹部の汚職への強い不満が1989年の民主化運動につながり、 小平は経 済発展に必要な党の支配と安定が失われることへの危惧から六四事件を発動した。

一方、改革開放当初には少数民族をめぐる状況も好転した。中国は自らの国民統合イメー ジとして、中国国内56の民族が古来中国文明・漢族を中心に交流し、近現代史の対外抵抗を

(2)

通じて団結し「中華民族」意識を共有したという「中華民族の多元一体」論を掲げる(1)。 しかし漢族と、漢字を共有しない内陸アジアの少数民族との間には多大な懸隔があり、そ れを階級闘争で激変させる毛沢東の粗雑な構想は抵抗・弾圧・貧困を引き起こした。

そこで共産党は1980年代になると、少数民族の社会と文化を尊重し再出発する姿勢を強く 打ち出し、1984年に民族区域自治法を定めた。この法律は、中国公民にして少数民族でもあ るというアイデンティティーの重層性を保障するため、独自言語を中心として華語も伝授す る教育を振興し、少数民族の党・政府幹部を増やして彼らに現地の実務を委ね、少数民族の 経済発展を通じて党・政府と少数民族の信頼醸成を促すことを目指していた。

しかし間もなく、チベット問題が暗転した。1987年にダライ・ラマ14世が香港と同様の高 度自治を目指して発表したストラスブール宣言に対して共産党が硬化する中、1980年代の少 数民族政策で再活性化したチベット社会の中から独立運動が生じたことで、ついに1989年3 月、当時チベット自治区党委員会書記であった胡錦濤はラサに戒厳令を発動した。

こうして中国の改革・発展と自由の両立をめぐる可能性が潰えた中、共産党は傷ついた支 配の正統性を回復すべく、1992年の 小平「南巡講話」以後、改めて急速な経済発展に舵を 切った。以来中国は「世界の工場」へと変貌し、2000年以後の西部大開発、習近平政権の

「一帯一路」といった発展構想を経て、ついに2020年

11月には「脱貧困」を宣言した。

一方、共産党は、経済的には西側諸国や香港・台湾との関係を深めつつも、イデオロギー 的には周到にこれらの国・地域からの影響を排除しようとしてきた。共産党は、自国のみな らず東欧・ソ連の激変の原因を、西側先進国による制度・社会・文化的優越性の宣伝による 平和的体制転換の陰謀と見なし(「和平演変論」という)、1995年以後「愛国主義教育」を通 じ、共産党こそ中国を近現代史の混沌から救う存在であると人々に宣伝している。

愛国主義的な人々が団結して飛躍的に経済発展するという方針は、確かに中国社会を大き く変えた。しかし、生産力の発展を最優先する「先富論」のもと、カネとモノへの欲望は半 ば放任・黙認され、改めて顕著な格差と党官僚の汚職、そして環境汚染が顕在化した。これ らを放置することは、改めて共産党の正統性を揺るがせ、持続的な発展を妨げることになる。

そこで胡錦濤政権は、発展の傍らで不平等が拡大した問題に正面から取り組む姿勢を示し、

「和諧社会(調和ある社会)」の実現を掲げた。またこの頃は、独立系メディアを中心に一定程 度独立した公論の世界があり、ネット空間でもある程度の批判の表出は可能であった。

しかし実際には、発展のために「調和」「安定」を重視するあまり、胡錦濤政権のもとで 逆に弾圧が頻発した。その代表的なものは、2008年のチベット独立運動への弾圧、「零八憲 章」を起草して中国における法の支配・憲政の実現を唱えた劉暁波氏等への弾圧、ウイグル 人出稼ぎ労働者の処遇に端を発する2009年の新疆ウイグル自治区での混乱(七・五事件と呼 ばれる)への弾圧であろう。この結果、チベットでは現世を悲観し訣別する人々の焼身自殺 が相次いだし、ウイグル・カザフなどトルコ系民族と中国主流社会の真摯な対話と和解を説 いたイリハム・トフティ氏が有罪扱いを受けるという事態が繰り返された。

(3)

2

発展の権利と中国の「発展権」の間

そこで西側諸国からの批判も繰り返された中、中国は人権状況をめぐって「正当化」する 必要に迫られ、2008年末には初めて網羅的な内容の「国家人権報告」を発表した。その中で 中国が最も強調するようになったのが生存権であり、その延長における「発展権」である。

もともと発展権概念は、グローバルな経済発展の傍らで富の偏在・貧富の格差も顕在化す る中、あらゆる国家・人民・個人のいずれもが自由な立場で多様に発展を追求し協力するこ とで、持続的な発展とグローバルな課題の緩和を目指したものであり、1986年に国連「発展 の権利宣言」が発せられたことを画期とする(2)。この宣言は、発展追求の主体として国家や 人民に比重を置きすぎると、逆に個人の基本的人権が妨げられることから、序文で「市民 的・政治的・経済的・社会的・文化的権利の否定は、発展を深刻に妨げる。全ての人権と基 本的な自由は、それぞれが独立した重要な価値である。発展の実現のためには、市民的・政 治的・経済的・社会的・文化的権利が等しく重視されるべきである。特定の人権及び基本的 な自由のみを促進し重視することは、他の人権と基本的な自由を否定することを正当化しな い」とくぎを刺す。そのうえで第1・

2条では「全ての人権と基本的な自由は完全に保障され

る」「人間一個人は発展における中心的な存在にして受益者であるべき」と強調する。

しかし中国の「発展権」は、この大前提に対して重大な変更を加えた。2009年に中国が国 連に提出した『国家人権報告』は、「各国には政治制度や発展段階、歴史や文化の違いがあ り、人権をめぐり異なる見方があるのは正常」とする。そして公民・政治的権利の面では、

中国の国家利益や社会主義の理想を自覚した人民が共産党の指導のもと、人民代表大会の選 出過程や社会管理に参与することで、公民権・政治権の保障が達成されていると見なす。一 方、経済・社会的権利をめぐっては、生存権と「発展権」の実現こそ共産党と政府の最も重 要な任務と自任し、五ヵ年計画の実施や大規模な開発戦略などを通じて人々が生活水準を不 断に向上させることこそ、中国における生存権と「発展権」の享有であると位置づけた(3)

こうして中国における「発展権」は、主に共産党の指導によって充足される生存権と、「人 民」を主語とした「政治参加の権利」に分解された。そして、党に指導された「人民」の外側 から発せられる自由な意見はことごとく、持続的な経済発展を目指すうえでの前提である

「社会の安定」に影響を与えるために、むしろより強い取締・弾圧の対象となる可能性が増し た。

国務院新聞 公室が

2016

12月に発表した「

《発展権:中国の理念、実践と貢献》白書」

は、このような中国の「発展権」を集約したものといえる。大略、次のようにいう(4)。 生存権と「発展権」は第一の基本的人権である。物質の生産と供給がなければ、人類のそ の他一切の権利の実現は困難なためである。発展があってこそ様々な問題の根源を消除し、

人民の基本的権利を保障できる。発展を堅持することは絶対的道理である。

「発展権」の主体は人民である。人民の積極性や主体性を動員して、発展の参与者・受益 者とする。個人の発展がなければ集団の発展はないが、同時に個人は集団の中においてこそ 全面的な発展を得る。そして、発展権は全ての人の人権であるだけでなく、国家・民族・人

(4)

民全体がともに享受する人権である。ゆえに、個人の発展権は集団の発展権と統一してこそ、

発展権を最大化しうる。

この白書では総じて、「人民」という集団こそ見果てぬ発展を追求する主体であるという 発想のもと、本来「発展の権利」が想定していた、基本的人権を完全に享受する個人の主体 的参加という大前提は、むしろ人民・集団の側に吸収されてしまった。このような発想が個 人の自由権を極めて脆弱にする可能性は明らかである。

3

習近平時代における人権の危機

実際、習近平時代の中国は、一面では「一帯一路」「人類運命共同体」の名における発展 を推進するものの、むしろ人権をめぐる問題については、このような「発展権」の名におい て、稀に見る弾圧と強権をもって従属を強いる動きを強めている。

これこそ、新疆ウイグル自治区や香港での緊張の原因に他ならない。

新疆は近年、「一帯一路」の中国側における最前線として飛躍的な経済発展を続けてきた ものの、漢族を中心とした資本の論理に対し、必ずしも華語が流暢ではない少数民族が従属 するという状況がある。とはいえ共産党は、少なくとも経済格差=事実上の不平等の解決に 向けて尽力し、少数民族が発展へと邁進する中で「中華民族」の一員としての幸福を享受す る機会を提供していると自負する。だからこそ共産党は、新疆において少数民族が様々な不 満を表出し、共産党への積極的な支持や「中華民族」意識の増進ではなくイスラームや少数 民族固有の文化・価値観を重んじる人々が増えている状況に対し、根本的には自らの統治に 問題があるためではなく、中国の主流な価値観ではなく外部の影響を強く受けるあまり、「中 華民族」の団結を阻害し、発展の大前提である社会の安定に危害を与えると見なした。そこ で新疆当局は、AI・

ITを用いて新疆の全ての人々をふるいにかけ、中国の発展と安定に危害

を加える可能性があると見なした人を拘束し、華語教育と職業訓練を通じて真に中国社会で 生きるために必要な知識と常識を伝授し、思想を完全に「中国化」する……これが2017年以 後新疆を覆っている強制収容所(職業技能教育培養転化センター)体制の実相である(5)

しかし、このような手法で非常に多くの人々を社会から隔離することには大きな問題があ る。隔離された人々は、従来であれば何ら問題にならなかった行為や思想を理由として、遡 及法的に強制収容されている。とりわけ外国との往来、外国人との婚姻、中央アジア諸国で 発行された書物や映像作品の所持、教育の進展によってむしろ高まったイスラームや少数民 族文化への強い愛着といった事柄がことごとく「宗教極端主義」「分裂主義」「恐怖主義」=

「三毒」のレッテルを貼られている。また、「三毒」の傾向がある人々を放置黙認した党官僚ま でも、「両面人(裏表がある裏切り者)」のレッテルを貼られ、処罰や強制収容の対象とされた。

一方、新疆ではここ数年来、ウイグル族など少数民族の出産数も異常な変化を見せている。

その背景として、2010年代中期以後における避妊政策の推進がある(6)。少子高齢化と人口減 による社会的活力の低下が指摘される国家において、順調に人口が増えていた文化的集団の 持続的拡大に急激な改変が加えられる結果となっていることは、中国がウイグル族などトル コ系民族を同じ国家の構成員として適切に待遇していないことを意味する。

(5)

しかし中国は、新疆における一連の人権危機をめぐり、「発展」「安定」「極端化の除去」の 名において正当化している。国務院新聞 公室が2021年9月26日に発表した「新疆の人口発 展」は、大略以下のようにいう(7)

新疆では過去、人口が少ない民族では計画出産を緩め、少数民族は比較的速いペースで人口 が増大した。とりわけ新疆南部では宗教極端主義の蔓延で正常な社会生活が妨害を受け、若い うちから子供を多く産むことが一般的となった。しかし今や、各族群衆の婦女の間では望まな い妊娠や頻繁な出産の負担を減らしたいという願望が高まり、2017年に「新疆ウイグル自治区 計画生育条例」を制定して晩婚・優生政策を進め、法により極端化を取り去る工作を推進した 結果、宗教極端主義の影響は抑えられ、晩婚・優生が社会の新たな気風となった。

中国は法により少数民族の各種の権利を保障する。「職業技能教育培養転化センター」は、多 くの国で運営されている矯正センターと同じであり、国連の反テロ決議の精神にも符合してい る。既に2019年10月、センターの学員は全て課程を終え、安定的な職を得ている。

このように中国は、新疆における過酷な抑圧をも「人権に見合う」と言い切ってはばから ない。

一方、近年の香港で見られた弾圧も、根本のところで新疆に対する弾圧と近似である。香 港ではリーマン・ショック以来、経済振興策として広東・マカオと経済的に一体化し融合さ せる戦略がとられてきた。しかし香港の人々は2010年代になると、そのような流れが香港の 独自性の喪失につながると考え、広東語文化防衛、行政長官直接公選制による完全な民主化 を掲げ、西側諸国と同様の法治と自由に基づく香港を目指してきた。このような香港人の立 場に対し、中国が「外国勢力の影響」を受けていると疑念を深めたことが、2019年以後の弾 圧と混乱、2020年の香港国家安全維持法による香港社会の萎縮の原因となっている

4

西側諸国の反応と中国とのデカップリング

西側先進国をはじめとした外界は六四天安門事件を機に、中国の人権状況に対して極めて 強い懸念を示し制裁を行ったものの、中国が「世界の工場」として急速に変貌して以来、経 済的利益との比較衡量で、中国の人権悪化を黙認するという傾向が続いてきた。とりわけ

2008年に中国がチベット独立運動と国際的な対中批判を抑え込んだのち北京五輪を成功させ、

リーマン・ショックの影響を大規模な財政出動で克服して以来、各国の経済は中国に一層依 存し、「発展」の名における中国での人権抑圧も歯止めが効かなくなった。

そして今や、習近平政権が中国の「発展権」の名において一切の躊躇もなく遡及法的な弾 圧を行うようになっただけでなく、中国こそ西側諸国に代わって国際社会を牽引するという

「中国夢」を鮮明にするにつれ、西側諸国において波紋が広がった。こうして、新疆における 強制収容所を中心とした問題や香港問題は、2020年以後の疫病禍、台湾問題、そしてアジア 太平洋地域での主導権争いと並んで米中対立の一大争点となっており、強制労働と関連する 可能性がある工業製品・商品を取り扱うことへの商業倫理上の懸念を著しく喚起しつつある のみならず、科学技術の発展と人権の関係をめぐる幅広い議論を惹起しつつある。

米国では、2017年以後深刻になった新疆問題の実態が、自由アジア放送(RFA)の報道等

(6)

を通じて次第に知られ始め、2018年になると連邦議会「中国に関する特別委員会」は、新疆 での弾圧を80万人―110万人として詳細に扱った(8)。そして

2019年以後、新疆問題は香港問

題と同時並行的に米国の対中政策における争点となり、2019年の「香港人権・民主主義法」

と2020年の「ウイグル人権法」が超党派的コンセンサスを得て成立した。これを承けて米国 トランプ政権は、新疆産の農作物や電子製品に対する制裁や、新疆・香港当局者への制裁を 実施し、2021年1月には新疆におけるジェノサイドを認定した。バイデン政権もこれらの判 断を継承し、4月の米国国際宗教自由委員会(USCIRF)報告書でも、新疆をめぐるジェノサ イド認定を継承している(9)

ほか、既にカナダ連邦議会・オランダ下院・リトアニアが新疆におけるジェノサイドを認 定しているほか、各国から新疆への調査団派遣を求める声が相次ぎ、EUは人権問題を外交政 策全会一致原則の対象外とする「グローバル人権制裁制度」を導入した。また、2020年末に 採択されたEU・中国包括投資協定について、欧州議会は

2021

年5月、批准に向けた協議を 無期延期する決議を採択した。

科学技術と人権の関係についても、中国の人権問題は多大な影響を及ぼしている。新疆当 局がAIを用いて個人情報や出入国情報をふるいにかけ「三毒分子」を判断している実態は外 界で衝撃をもって受け止められ、米国は2020年

10

月の「重大・新興技術国家戦略」におい て、権威主義国家への技術流出防止と同盟国との連携強化を打ち出したほか、EU欧州委員会 は2021年

4月、個人の行動や人格を政府が AI

でスコアリングすることを固く禁じた。

5

白書を頻発する中国

こうして、普遍的人権に鑑みて異質な中国を商品供給網に組みこむことの道義的問題をリ スクととらえる認識が西側諸国で広まり、中国に対する主要国間の協力枠組みが機能し始め た中、中国も対抗を強めている。その最も分かりやすい一側面は、中国外交部関係者が事あ るごとに西側諸国に強く反発する「戦狼外交」であろう。そして中国は、西側諸国に振り回 されて中国に対し疑念を抱く企業や関係者を幅広く制裁するため、2021年

6

月に「反外国制 裁法」を制定した。

こうした反応や措置の背後にあるのは、中国なりの「発展権」解釈である。国務院新聞 公室や、学術団体を自称する中国人権研究会は2021年に入ると、人権問題や新疆問題をめぐ る白書や論評を次々に発出し、国内外で自らの政策の「正しさ」を強調し牽制するとともに、

米国ではなく中国こそが今後の世界において人権を主導する国家であると主張する。これら の白書の大略は以下の通りである

1) 国務院新聞 公室「2020年米国人権侵犯報告」(10)、(20213

24

日)

トランプ政権は新型ウイルス問題を軽視して時間を浪費し、米国で膨大な人命の喪失を引 き起こした。米国は自由・民主・人権を守る模範を称する割には、諸外国に圧力を加えて混 乱をもたらすのみならず、国内においても民意が操縦されて分裂著しく、ついにはガバナン ス(治理)が破綻した。ついには大統領選をめぐる混乱が連邦議会襲撃という未曾有の事態 を惹起し、自らのイメージを失墜させた。ネイティブ・アメリカン、黒人、アジア系、ヒス

(7)

パニック系の人権は必ずしも保障されず、貧困も蔓延している。疫病に対する全世界的協力 が必要なときに米国は世界保健機関(WHO)を脱退し、気候変動問題でもパリ協定から離脱 した。孤立主義的な米国こそ全世界のトラブルメーカーである。

2) 中国人権研究会「米国の対外戦争による深刻な人道主義的災難」(11)20214

9

日)

「天賦人権」を支持する米国の「使命」のもと、1945年以後の世界における武力衝突の8割 に米国の一方的な行動が関わっている。これらは、アル・カーイダへの反撃を除けば米国の 切実な安全保障の利益と関係なく、多くの一般民の死傷を招いた。米国の対外戦争こそ国際 的・地域的危機の根源である。中国が提唱する、国連のもとの相互尊重による人類運命共同 体こそ、各国での人権保障を実現できる

3) 国務院新聞 公室「《中国共産党の人権尊重・保障の偉大な実践》白書」(12)2021624日)

19

世紀半ば以来の列強の圧迫と清の無能により、中国人民は生存の危機に陥る中、中国共 産党は

100

年来、人民至上の精神のもと、救国救民と人権獲得を掲げ、人権の普遍的原則と 中国の実際を結合させ、生存権と発展権を第一の基本的人権としてきた。党の指導のもと、

中国の国情に即して人々は政治・社会的枠組みに参与し、生存権と発展権を中心とした人権 保障が充実・発展した。そして共産党は、平和共存五原則以来、国連や上海協力機構などを 通じて国際協力や反テロ・反分裂主義・反極端主義・疫病抑制に邁進し、グローバルな人権 ガナバンス(治理)に貢献することで人類運命共同体の構築を推進してきた。このような中 国の人権事業は、中国人民の判断こそが比較衡量の尺度である。

4) 国務院新聞 公室「国家人権行動計画(20212025年)」(13)2021

9

9日)

2020年 11月に脱貧困を実現した中国社会の主要な矛盾は、人民のより良い生活への願望と

現実の不均衡・不平等な発展の間の矛盾である。習近平政権は、人民の幸福な生活こそ最大 の人権であるという発想のもと、全体の人民の共同富裕を推進する。発展を一層推進するた めに教育を推進し、公民の参与と自由な発展を拡大するため、法により人身の権利・財産 権・宗教信仰の自由権を保障する。

宗教信仰の自由は、法による宗教管理のもと、宗教極端主義に反対し、社会主義社会と適 応すべきで、外国勢力の影響なき独立自主的な宗教組織とするべきであり、宗教の名におけ る暴力・テロ・国家分裂には懲罰を加える。

少数民族の権益は、国家通用語言文字(北京語に由来する華語の標準語と漢字の簡体字)の普 及による教育水準の向上で発展を加速し、中華民族共同体意識を鋳造することによって保障 される。国家通用語言文字は国家主権の象徴であり、その使用は全ての公民の権利義務であ り、各民族の交流と融合によって発展と進歩を促進するものである。これと同時に、少数民 族が自民族の言語文字を使用し発展させる自由も保障する。したがって「文化ジェノサイド」

の批判は当たらない。

以上のように、中国当局が僅か半年のうちに「発展権」概念をめぐって集中的に白書や論 評を発したこと自体、西側諸国による急激な対中批判への危機感のあらわれといえよう。し かし、米国の衰退や西側諸国の混乱を目にした中国が改めて強調するのは、人民を主語とし た政治・社会参加による「社会の安定」を最優先させ、生存権と「発展権」を保障すること

(8)

である。共産党が代表する中国の主流社会の価値観念から逸脱した自由な見解や活動は、今 後一層「極端化」「社会の安定を乱す」「分裂主義」といったレッテルを貼られ、政治・社会 的に抹殺されるか、「中国化」の方向へと改変させられる運命のみが待つ。ゆえに、少なくと も共産党がもたらす経済発展が行き詰まり、主流社会における支配の正統性が揺るがない限 り、今後ますます中国の内外で、中国の「発展権」がもたらす弊害と、国際社会のさらなる 緊張が加速されることになろう。

1) 費孝通『中華民族多元一体格局』、中央民族学院出版社、1989年が、今日の中国で最も正統な「中 華民族」解釈である。

2 Declaration on the Right to Development, Adopted by general Assembly resolution 41/128 of 4 December 1986(https://www.ohchr.org/en/professionalinterest/pages/righttodevelopment.aspx).

3) 中国向聯合国人権理事会提交的『国家人権報告』2009年2月2日(http://www.humanrights.cn/uploadf ile/2014/1016/20141016013655864.pdf)

4) 国務院新聞 公室「《発展権:中国的理念、実践与貢献》白皮書」2016年12月1日(http://www.

scio.gov.cn/zfbps/ndhf/34120/Document/1532313/1532313.htm)

5) 詳しくは、2018年以後の『中国年鑑』中国研究所刊のうち、筆者が毎年執筆している「民族問題」

の項、平野聡「中国公式資料の オウンゴール 『新疆ジェノサイド』を許すな」『Wedge』2021 3月号、「ジェノサイド黙認は許されない」『正論』令和3年4月号、産経新聞社、「ウイグル問題と 日本」『改革者』20216月号、政策研究フォーラム、「凄惨な弾圧を招く『外』への負の感情」

『Voice』2021年8月号、PHPなどで概況を論じた。また、2019年11月にNew York Timesがリークし た新疆秘密文書を通じて、その全貌を窺い知ることが可能である。

6) たとえば『西日本新聞』2021年2月4日付記事は、過去10年分の『中国人口・雇用統計年鑑』『中 国保健衛生統計年鑑』『新疆統計年鑑』を比較検討し、2014―18年にかけて、不妊手術10万件、中 絶13万件、子宮内避妊具装着300万人超であることを明らかにし、中国全体では産児制限が緩和さ れているにもかかわらず、新疆のみ抑圧的な政策を実施していることが明らかだとした。

7) 国務院新聞 公室「新疆的人口発展」2021年9月26日(http://www.scio.gov.cn/zfbps/32832/Docum ent/1713595/1713595.htm)

8 Congressional-Executive Commission on China Annual Report 2018, October 10, 2018, pp. 273–283(https://

www.cecc.gov/sites/chinacommission.house.gov/files/Annual%20Report%202018.pdf).

9 United States Commission on International Religious Freedom Annual Report 2021, April 2021, p. 16

(https://www.uscirf.gov/sites/default/files/2021-04/2021%20Annual%20Report.pdf).

(10) 国務院新聞 公室「2020年美国侵犯人権報告」2021年3月24日(http://www.scio.gov.cn/37234/Docu ment/1700891/1700891.htm)

(11) 中国人権研究会「美国対外侵略戦争造成厳重人道主義災難」国務院新聞 公室公式HP、2021年4 月9日(http://www.scio.gov.cn/37234/Document/1701937/1701937.htm)

(12) 国務院新聞 公室「《中国共産党尊重和保障人権的偉大実践》白皮書」2021年624日(http://

www.scio.gov.cn/zfbps/ndhf/44691/Document/1707316/1707316.htm)

(13) 国務院新聞 公室「国家人権行動計画(2021―2025年)」2021年9月9日(http://www.scio.gov.cn/

xwfbh/xwbfbh/wqfbh/44687/47004/xgzc47010/Document/1713611/1713611.htm)

ひらの・さとし 東京大学大学院教授

Referensi

Dokumen terkait

2011年2月1日 「中国外交の問題領域別分析」研究会 【活動の趣旨】 (平成 21年度研究会発足時の【研究概要】) 今日、中国の存在感が急速に高まっており、国際社会の様々な分野における中国の振舞 いは、世界の動向に大きな影響を与えることが広く認識されるようになった。しかも、中 国が大国化していく中で、その外交は多元化し、実に多様な展開を見せるようになってい

第 8 章 「中国の特色ある大国外交」と中東 八塚 正晃 はじめに 中東地域において中国のプレゼンスが顕著に高まっていることについて異論はないであ ろう。それは経済に留まらず、政治・軍事の領域を含めて幅広く看取される。中国はアラ ブ連盟と2022年には中国・アラブサミットをサウジアラビアで開催することに合意してお