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責任保険者の防御義務に関する検討

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Academic year: 2023

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日本保険学会関東部部会 2015/06/19

責任保険者の防御義務に関する検討

-アメリカ法の再検討を中心に-

岩手大学 深澤 泰弘

1 はじめに

・アメリカの責任保険においては、一般的に、第三者からの損害賠償責任の追及につき、

保険者が被保険者に代わって防御する義務(いわゆる「防御義務(duty to defend)」)を 負う旨の定めが約款上に存在する。

⇒【具体例】GCL保険(ISO約款):保険者には「損害賠償を求めて提起されたいかなる訴 えに対しても被保険者を防御する権利および義務があります。しかしながら、我々は本 保険契約が適用されない身体的損害または財産的損害に関する損害賠償を求めて被保険 者に対してなされた訴えに対しては防御する義務を負いません」。

○防御義務の利点

①被保険者の事務負担が軽減する。

②保険者が責任訴訟における排他的な管理権を取得する。

●防御義務の問題点:保険者と被保険者の間に利益衝突が発生することがある。

・本報告の目的:アメリカにおける責任保険者の防御義務に関して分析・検討。

○先行研究

・原和朗「責任保険者の防御義務と利益相反」損害保険研究59巻3号93頁以下(1997年)

・広瀬裕樹「アメリカにおける責任保険者の防御義務(一)(二・完)」名古屋大学法政論 集179号71頁以下(1999年)、181号189頁以下(2000年)

・同「責任保険者による防御と利害対立に関する一考察」保険学雑誌580号頁以下(2003 年)。

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2 防御義務の有無の判断

・伝統的・一般的な立場:訴状(complaint)における被害者たる原告の主張(allegation)

から判断するという立場。

⇒「訴状における主張ルール(complaint allegation rule, 以下「CAルール」という。)」、

「フォーコーナーズ・ルール(four-corners rule)」、「エイトコーナーズ・ルー ル

(eight-corners rule)」、「プリーディング・ルール(pleading rule)」など。

○CAルールの最大の利点:ルールの適用基準が明確。保険者の調査費用等の節約

●CAルールの諸論点

①訴状の中に保険担保の対象となる訴因と、対象とならない訴因が存在する場合

②訴状に記載されている主張からは防御義務の有無を判断しがたい場合

③訴状において主張されている内容と客観的な事実が異なる場合

⇒例えば、訴状において主張されている訴因や事実は保険担保の範囲に含まれるもので はないが、保険者は調査等からこれが記載内容の誤りであり、実際には保険担保の範 囲内に含まれるものであったと認識していた場合

・訴状における主張は防御義務の有無を考える上で出発点とはなり得るが決定的なもので はなく、保険者は防御義務の有無を判断する際に知っていた、または合理的に知り得た 訴状には表れない外部の実際の事実をも加えて考慮しなければならないというルール

⇒「外部情報(extrinsic evidence)ルール」

・外部情報ルールを用いると、訴状における主張では保険担保の範囲外であるが、保険者 が訴状における主張は誤りであり、実際は保険担保範囲内であるという事実を有してい る場合、責任保険者は防御義務を負うことになる。

・訴状においては保険担保内であるとの主張がなされているが、訴状における主張が不正 確または不真実であるという外部情報を保険者が有している場合には、保険者が防御を 拒絶することは認められるのであろうか。

⇒保険者は訴状の主張が不正確または不真実であるということを理由に防御を拒絶するこ とはできない。保険者は通常根拠のない、虚偽的な請求に対しては防御を行うことを約 束している。「防御義務は損害てん補義務より広い」。

・保険者の有する外部情報が被保険者の責任に関することではなく保険担保に関すること、

すなわち、保険担保の範囲内ではないということを示す情報であるときはどうか。

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⇒ほとんどの裁判所では、争いのない事実が、被保険者が問題となっている責任に関して 保険担保を有さないということを示す場合、保険者に防御を控えることを認めている。

・防御義務の有無の判断に外部情報ルールが適用されることを前提に、どのような場合に 防御義務が発動するかについて状況の整理を行う。

○訴状における主張:4パターン

・それが担保範囲内の主張である場合(例えば被保険者の過失を主張している場合)

・担保範囲外の主張である場合(例えば被保険者の故意を主張している場合)

・そのどちらも主張している場合

・訴状における主張からは不明である場合

○外部情報からの認識:3パターン

・当該保険事故が担保の範囲内であるという認識がある場合

・担保内か担保外か不明である(確信が持てない)場合(外部情報がない場合を含む)

・担保の範囲外であるという認識がある場合

表 4×3パターン

訴状における主張 外部情報 防御義務を負うか否か

担保範囲内(ex.被保 険者の過失)

担保範囲内(過失) 負う。利益衝突Ⅰ ①

不明 負う。利益衝突Ⅱ ②

担保範囲外(故意) 負わない。 ③

担保範囲外(ex.被保 険者の故意)

担保範囲内(過失) 負う。利益衝突Ⅰ ④ 不明 負う可能性あり。利益衝突Ⅲ ⑤ 担保範囲外(故意) 負わない。 ⑥ 担保範囲内と担保範囲外

の両方(ex.被保険者の過 失と故意の両方を主張)

担保範囲内(過失) 負う。利益衝突Ⅰ ⑦

不明 負う。利益衝突Ⅱ ⑧

担保範囲外(故意) 負わない。 ⑨ 不明

担保範囲内(過失) 負う。利益衝突Ⅰ ⑩

不明 負う。利益衝突Ⅱ ⑪

担保範囲外(故意) 負わない。 ⑫

(網掛けは厳格なCAルールであれば結論が逆になると思われるもの。)

・保険者が外部情報(争いのない事実)から担保範囲外であるということを認識している 場合には、訴状における主張にかかわらず保険者は防御義務を負わない。

・訴状における主張では訴因または事実は担保範囲外であることを示しているが、保険者 が外部情報によってそれは実は担保範囲内であることを認識している場合(④)は、防 御義務を負わなければならず、保険者が義務を履行しないときは防御義務違反となる。

・外部情報からは不明である(または外部情報がない)場合(⑤)も同様。

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3 防御義務違反の効果とその回避方法

・防御義務違反につき、保険者に故意・過失があった場合、当然に損害賠償責任を負う。

⇒「期待利益(expectation interest)」(防御義務が履行されていれば被保険者が得ること ができた利益)。弁護士費用、調査費用など防御のために必要な費用。ただし、「抑止可能 損害(avoidable consequences)の法理」あり。

・保険者の損害賠償責任は、保険金額の上限を超えても及ぶか?

⇒保険者は「不誠実(bad faith)」に防御の提供を拒絶したことを根拠として、超過部分を 保険者に負担させようとする傾向にある(不法行為責任)。

・責任訴訟における争点効(collateral estoppels)が及ぶ可能性がある。

◎防御義務違反の回避方法

・上記表②⑧⑩のような場面

⇒保険者には被保険者に防御を提供しつつ、後に保険契約上の抗弁を主張することができ るような手法として、「権利留保(reservation of rights)」および「不放棄合意(non- waiver

agreement)」という制度が認められている。

・保険者としては条件付であるとはいえ被保険者に対し防御を提供している。

⇔保険者が後で保険担保の問題を争う権利を留保しているという状態は、既に保険者と被 保険者の間で利益衝突が発生している(利益衝突Ⅱの状況)。

・被保険者は保険者から不放棄合意を求められてもそれに応じなければならないわけでは なく、自己の判断でそのような合意を締結しないこともできるし、権利留保の通知がな されたときは、被保険者は、保険者が提供する防御を拒絶して、固有の防御を遂行する ことが許される。

・保険者が責任訴訟の防御を提供する前に、あるいは責任訴訟を防御しながらも、一方で、

それとは別に、保険者と被保険者の法的な権利義務関係を明らかにするために、それら を訴訟物とした「宣言的救済判決(declaratory judgment)」を得ることができれば、保 険者の防御義務の有無に関する問題は解決される。

●宣言的救済判決の問題点

・宣言的救済判決が下されるまでに時間がかかる可能性がある。

・この判決を得るための訴訟と責任訴訟の二重の手続きを踏まなければならない。

○宣言的救済判決を認めない理由

・保険者と被保険者との訴訟では免責事由である被保険者の故意が争点となっており、被 保険者と第三者との責任訴訟では被保険者の故意または過失による責任が問題となって いる場合、宣言的救済判決により被保険者が不利益を受ける。

⇔このような場合、被保険者は責任保険における保護は受けられる。一切責任を認めたく

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5 なかったという事例だけが問題。

・また、被保険者は保険者との訴訟における費用を負担しなければならず、本来であれば 訴訟(ここでの訴訟は第三者との責任訴訟)の負担から免れるために責任保険に加入し たのに、これでは被保険者が不憫。

⇔責任保険の防御義務の場面に特有のものではない。保険者が不誠実にこのような訴訟を 提起している場合には保険者の不法行為責任を問うことで費用は回収することもできる。

また、被保険者が資産のある個人や企業であれば大した問題とはならない。

・保険者との訴訟の争点と第三者との責任訴訟の争点とが重ならない場合の問題、例えば、

保険者は被保険者との間で契約上の被保険者の地位に該当するか否かや所有者の許可を 得ていたかなどについて争いたいという場合には、前者の点については問題とならない。

4 保険者と被保険者の利益衝突

・保険者が被保険者に対して無条件に防御を提供する場合は、両者の間に利益衝突が発生 する可能性はない。

⇒被保険者の責任が一切存在しないという結論を目指した防御活動を行うことにおいて両 者の利害は一致するし、仮に被保険者の責任が認められたとしても、より少ない金額の 判決や和解がなされることに利益を共通にするから。

○保険者と被保険者の利益衝突構造の典型例

(1)被害者側が被保険者には故意があったと考えている(外部情報により確信を持つまで には至らない)場合で、第三者が訴状における主張において被保険者の故意を争点と している場合。裁判でそのまま故意が認められれば保険者は免責となるので、保険者 とすると一生懸命防御しないかもしれない。そこまでいかなくても、被保険者の意に 反して故意が認められないかと思ってしまう。その結果、意図的かそうでなくても十 分で適切な防御行動がなされないといったことが生じる(上記⑤利益衝突Ⅲの場合)。

(2)保険者の支払保険金額に限度額が設定されている場合で、保険金額内での和解が成立 する可能性があったが、保険者としては、訴訟で争い判決を得るほうが低い賠償額で 済むと考え、和解に応じず訴訟を継続したが、その結果、判決では意に反して保険金 額の上限を超えた損害賠償額が認められ、被保険者としては保険金でてん補されない 責任まで負ってしまう場合(上記①④⑦⑩利益衝突Ⅰの場合)

・(1)について、そもそも個人に対する損害賠償において被害者である第三者が故意を主

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張する戦略をどの程度とるであろうか。被保険者に資力がない場合、仮に不法行為に基 づく損害賠償訴訟において、被保険者の故意が認められ、過失の場合よりも高額な損害 賠償請求権が認められたとしても、被保険者の有する賠償責任保険をあてにすることが できなくなるので、第三者が被保険者の故意を主張する戦略はとらないのではないだろ うか。

・企業に対する損害賠償や個人であっても資力のある者に対する損害賠償の場合であれば、

第三者は少しで多くの賠償金を得ようとするために、当該企業や個人の故意を主張する かもしれない。このような場合は先の場合と異なり、第三者が被保険者の故意を主張し ているので、保険者が防御をするとなると利益衝突が生じるかもしれない。

⇔当該企業は責任保険者に訴訟を任せず、社内(または顧問)弁護士に訴訟を遂行させる であろうし、当該個人においても自らが選任した弁護士に訴訟を指揮させるであろうか ら、そうするとやはり責任保険者との間で利益衝突が生じる場面は少ないのではないか。

・(2)について、この場合の被保険者側の懸念が損害賠償額と保険金額との差額を誰が払 うのかという問題だけであるのならば、保険者が自らの判断で和解に応じず訴訟を継続 し、負けた場合にその責任を負ってくれるというのであれば問題とならない。

⇔和解(特に裁判以前の示談)で穏便に事を公にせずに済ませたかったのに敗訴判決が出 ることで評判に傷がつくといった被保険者側に賠償金の支払といった事情以外の事情が ある場合には、単に負けたら差額を支払うから訴訟を継続したいという保険者の意向を 単純に認めて良いかについては検討が必要である。

⇒また、このような状況では逆のパターンの利益衝突も考えられる。それは保険者として は和解が妥当であると考え、和解金額も保険金額内であることから、これを被保険者に 勧めるが、被保険者としては自らに責任はなく、評判等の問題から責任を負うことが認 めがたいという場合、和解されてしまうことは被保険者の利益に反するので、訴訟を継 続してほしいと考えている。このような場合はどうであろうか。

5 結びに代えて

○今後の研究課題

・解決義務

・防御を行う弁護士の行為規範(専門家責任)

・我が国へのフィードバック・・・etc.

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