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金融危機の処理策とその代価

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産研通信 No.74 (2009.3.31) 7

金融危機の処理策とその代価 

任   雲 

 目下、世界が大恐慌以来最も深刻な 金 融 危 機 に見 舞 われている。アメリカ 発の世界金融危機は、金融システムだ けではなく、実 体 経 済 にも相 当 なダメ ージを与え、世界経済の同時不況をも たらしている。 

 今回の金融危機に当たり、アメリカ政 府はすでに金融安定化法案を通過さ せ、公的資金で処理に当たっている。

しかしどれだけの公的資金が必要か、

最終的にどのような結果になるのかは、

行き先が不透明のため、誰にも正確に 予測できないことであろう。 

 IMF のエコノミスト Luc Laeven らは  1970-2007 年の間に世界各国で発生 した金融危機について研究してきた。

彼 ら は 最 新 の 研 究 成 果 ( Luc  Laeven  and Fabian Valenci, Systemic Banking  Crises :A New Date base, IMF  Working Paper,November,2008 ) に お いて、37 カ国で発生した 42 回の金融 危機の処理方式と処理コストを分析し、

いくつか興味深い結果を明らかにした。

小 稿 は 、 Laeven and Valencia ( 以 下 L&V)の研 究 結 果 の一 部 を紹 介 したう え、今回のアメリカ政府の金融危機処 理策と公的支出のコストを簡単に説明 する。 

1. 1970-2007 年の金融危機の一般像   まず、L&V の定義した金融危機は、

システミックな銀行危機であり、一国の 企 業 や金 融 セクターが大 量 に債 務 不

履行の状況に陥ったため、金融機関が 予定通り債権を回収するのに極めて困 難となり、その結果、不 良債権が急 増 し、銀 行 組 織 全 体 の自 己 資 本 が毀 損 した状況を指している。その他に、L&V も通貨危機及び政府債務危機につい て定義した。 

 金融危機が発生する前に、上昇し続 けてきた株価や不動産価格がいきなり 下落する現象がよく見られる。また金利 の急上昇、資本フローの逆流または流 動性の減少もしばしば付随している。 

 その結果、定義に従って観察された 銀行危機は 1970-2007 年に、全部で 124 件あった。通貨危機と債務危機も それぞれ 208 と 63 件あった。なお、124 件の銀行危機の中に、42 件は通貨危 機や政府債務危機とのツイン危機で、

10 件はトリプル危機であった。ただし、

124 件の銀行中に、政府の対応策、つ まり金融危機進行中の封じ込め策とそ の後のより長期的な問題解決策をとっ たケースは、37 カ国の 42 件だけがより 詳細に記録されており、そのため、L&V もこの 42 件のケースの研究に限定した。

勿論、42 件のケースでは、先進国と途 上国の両方が含まれている。 

 金融危機発生の初期的条件は、マク ロ経済条件の悪化や不良債権率の上 昇など様々がある。しかし L&V が指摘 した信用膨張の問題はとくに重要であ ると思う。42 のケースにおいて、危機前

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の 3 年間信用総量が平均的に 30%増 え、民間部門の信用総量対 GDP の比 も年平均で 8.3%増えた。 

 銀行危機の処理手段には、発生した ときの封じ込め手段とその後の本格的 解決手段があると L&V が考えている。

封 じ込 め策 について、71%のケースは 流 動 性 拡 大 策 をとり、29%は預 金 の全 額保護(平均で 55 ヶ月)を実施した。ま た取り付け騒ぎを防ぐための預金凍結 や銀行の休日停業などの措置をとるケ ースは 5 件だけで、過去より少なかっ た。 

 抜本的処理策について、規制の緩和 や猶 予 がもっとも常 用 されている手 段 である。統計では 67%が猶予の延長を 行 い 、 73% は プ ル ー デ ン ス 政 策

(prudential regulations)を一時ないし 部分的停止した。そして、政府の介入 によるリストラは問題解決のため重要で ある。86%のケースでは、危機 5 年以内 に 政 府 の 大 規 模 な 介 入 で 銀 行 の 閉 鎖・国有化・合併などが行われた。また 51%のケースにおいて銀 行 の外 国 資 本への売却が実施された。銀行のリスト ラに当 たって、48%は銀 行 整 理 機 構 を 設立し、60%は資産処理会社 AMC を 設立した。 

  抜 本 的 処 理 策 のもう一 つは、なんと 言 っても政 府 による資 本 注 入 である。

危 機 後 の3年 以 内 に資 本 注 入 を行 っ たのは、42 ケースの中に 33 件で全体 の 79%を占めている。政府の資金は 11 件が現金で、14 件が公債で賄っている。

資金注入の方式では、劣後債 11 件、

優先株 6 件、不良債権の買い取り 7 件、

銀行一般株の買い取り 4 件、政府信用 の銀行適用 2 件、銀行債務保証 3 件

がそれぞれあった。もちろん複 数の方 式を採用するケースもその中に含まれ ている。 

 こうして政府は危機発生したときの封 じ込 め策 と危 機 後 の抜 本 的 処 理 策 を 使って、危機からの脱却と経済の再生 に努める。もちろん、通常 の金融 政 策 を実 施 するケースも多 い。では、政 府 はそれらの対策を採るのにどれだけの 代価を払うのか。また金融危機で全体 の経済的損失は幾らになるのか。 

 L&V の計算では、政府の資本注入の 純 コスト(回 復 段 階 で資 産 売 却 益 を控 除したもの対年間平均 GDP 比)は、平 均的に 6%であり、金融危機の対応に 掛 かる純 財 政 コスト(回 復 後 の収 益 を 差し引く純コスト、危機発生以降 6 年間 の集計対 GDP 比)は、平均で 13.3%で ある。一方グロス財政コストは平均的に 18.2%である。なお、金融危機処理の 初年度、財政赤字が平均的に GDP の

−3.6%を占める。 

  金 融 危 機 で生 じた経 済 産 出 の損 失 (Output Loss)は危機 発 生以 降の4年 間に、毎年の実質 GDP と危機前の成 長トレンドで算出した潜在的 GDP のと の差 と定 義 されている。ただしトレンド は危機発生前の 3 年間に成長率の最 も低い年度の数字を用いる。その経済 産出の損失は潜在 GDP の比の 4 年間 の 合 計 を 計 算 し た 結 果 、 平 均 的 に 20%である。近似値で単純に言えば、

金 融 危 機 が 発 生 し た 国 の 4 年 後 の GDP は発 生 しなかった場 合 と比 べて 1/5 も少なくなる。このように、金融危機 の代償が極めて大きいといえよう。 

2. アメリカの危機対応策とそのコスト   今回の金融危機は、アメリカからヨー

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ロッパを席 巻 し、その規 模 とインパクト は当然 1930 年代以来のすべての金融 危機を遥かに上回っている。イギリス、

フランス、ドイツ、アイルランドが去年の 10 月中旬ごろに発表した財政支援資 金はそれぞれ 6910、6800、4920、5440 億ドルである。紙幅の制限よりここでヨ ーロッパ諸国の詳細を説明せずに、ア メリカ政府の対応策と公的支出の状況 だけを詳しく紹介しておこう。 

 アメリカにおいては、すでに 2008 年の 3 月に Bear Stearns 証券の破綻対策と して 290 億ドル、9 月に入り政府系住宅 金融公社2社に対して最大の 2000 億 ドル、さらに AIG に対し 850 億ドルの融 資が行なわれた。2008 年 10 月に通過 した金融安定化法案は、最大 7000 億 ドルを投 じ、住 宅 ローンや住 宅 ローン 担保証券など金融機関の不良資産を 買い取るとの計画であった。金融安定 化法案の具体的内容は以下の通りで ある。 

 銀行資本注入:適格金融機関に対し、

250 億ドルあるいはリスク調整後資産の 3%を上限に、計 2500 億ドルを注入。

買い取りと引き換えに金融機関の新株 取得権を獲得する 

不良資産の買い取り:財務省が金融 機関から不良化したモーゲージ資産を 買い取り。 

 銀行預金保護:25 万ドルまで保証。

破綻した銀行の預金支払いに向け財 務省は預金保険機関に無制限で融資 が可能。後に預金保護の上限の一時 的撤廃を決定。 

  会 計 原 則 の緩 和 : 証 券 監 督 当 局 が 時価会計評価の一時停止の権限をも つ。 

 流動性確保:FRB がさまざまなオペで 最大 9000 億ドルの資金を供給。このほ か CP の買い取り、AIG や JP Morgan など個別機関への融資。 

 金融安定化法案が採択されてから今 年の 2 月 6 日までに、政府は数回に渡 って全米の数多くの金融機関に公的 資金を注入した。中には、JP Morgan,  Citigroup, Wells Fargo, Bank of 

America はそれぞれ最高枠の 250 億ド ル、Merrill Lynch, Goldman Sachs,  Morgan Stanley はそれぞれ 100 億ドル、

また他の多数の金融機関は 100 万ドル から数十億ドルまで、合計 1955.6 億ド ルの公的資金の注入を受け入れた。そ の他に、Citigroup は目標融資という 特別なプログラムでさらに 200 億ドルの 融資を受けた。なお、ABS 資産の買い 入れにもすでに 200 億ドルが使われて いた。(米財務省のホームページ、http: 

//www.treas.gov, 2 月 14 日発表した 報告を参照)  

上記の政府の公的資金の支出額と 法案前にすでに支出した資金の合計 は、5495.6 億ドルに達しており、アメリ カ 2008 年の GDP14.22 兆ドルの約 3.86%を占めている。 

 因みに、L&A によれば、1988 年アメ リカの S&L 危機の処理に当たって、政 府 のグロスコストが GDP の 3.7%で、

1400 社の S&L と 1300 の銀行の清算に 掛かった資金が 180 億ドルで GDP の 3%であった。日本もバブルが弾けたあ と、金融機関の不良債権の買い取りや 資本注入をしたが、金額は不良債権の 買い取りで 9 兆円強であった。比べれ ば、今回のアメリカの公的資金の注入 は遥かに巨額であり、金融危機がいか

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に深刻であるのかがわかる。また、アメ リカの公的資金注入の殆どは去年の 9 月以後に実施され、対応のスピードは かなり早い。 

 しかし、金融安定法案の公的資金の 残りが明らかに足りない。そのため、今 月 10 日にガイトナー財務長官は追加 措置として、新たな金融安定化策の基 本構想を発表し、最大1兆ドルの不良 資産買い取りや FRB の個人・企業向け 融資拡大方針を示した。しかしエコノミ ストや専門家の間では、これでも足りな いとの意見が多い。一部の米金融機関 大手は健全性維持のために追加支援 が必要になるとの見方が出ている。 

  2 月 13 日付の New York Times の記 事(Ailing Banks May Require More Aid  to Keep Solvent)によると、ニューヨーク 大 学 ビ ジ ネ ス ス ク ー ル の Nouriel  Roubini 教授は「アメリカの銀行システ ムは事実上破たん寸前にある」と指摘 し、金融機関の貸し倒れ損失や資産の 市場価格下落による損失は 3 兆 6000 億ドルに達するとの見方を示し、これま での 2 兆ドルという予想を修正した。明 らかに金融業界の問題解決に向け、政 府は今以上の役割を担う必要がある。 

  仮 に追 加 的 金 融 安 定 法 案 が採 択 さ れれば、アメリカの公的資金の投入は 合計で 2 兆ドルを超えよう。これで財政 のグロスコストは GDP に対して 15%前 後に達する。しかし今回の金融危機の 深刻さと波及範囲の広さから見れば、

最終的にこれを超える公算もあり得る。

結局、アメリカは前節で紹介したこれま で 30 年間の金融危機の平均像と近い 状態になるであろう。 

 また、周知のように、アメリカ政府は急

激に悪化している実体経済を立て直す ために、金融安定策以外に、緊急経済 刺激策計 7870 億ドルの法案を国会に 提出した。その法案が採択されたばか りである。法案では、財政出動で大規 模な公共建設を行うなどの項目が柱と して盛 り込 まれている。オバマ大 統 領 は早くも来週の早々にこの法案にサイ ンし、速 やかに実 行 に移 ると宣 言 して いる。 

 アメリカの金融対策や景気刺激策に よる支出は今回の金融危機と不況から 脱出するために必要不可欠であると思 うが、アメリカの国民全体が、一握りの 人間が操った金融資本主義の暴走の 苦果を味わい、その金融危機の対価を 高 く払 わざるを得 ないことを考 えると、

本当に理不尽である。 

 なお、アメリカの今回の金融危機によ る経済産出の損失は、現時点では推 測しにくい。ただし危機発生以前の成 長率(2004 から 06 年にそれぞれ 3.6%、

2.9%、2.8%)と比べると、危機発生の初 年度 2007 年と深刻化した 2008 年の成 長率はそれぞれ 2%と 1.3%で、かなり下 降している。特に 2008 年の第 4・四半 期の成長率が年率換算で−3.8%で、

1982 年以来最悪な結果となっている。

(米商務省経済分析局ホームページ http://www.bea.gov/national/index.ht m#gdp)。そして、大方の予想では 09 年 の成長率はマイナスになる。L&V の定 義で経済の損失を計算すれば、間違 いなく相当悪い結果になるであろう。  

 

 (2009 年 2 月 15 日執筆) 

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