H本 管 理 会言
i’
学 会 誌管埋会 計 学2000 年 第8巻第1
・
2 含 併号論 文
非 財 務 的 尺 度 と 財 務 的 尺 度 の 総 合 総 合 的
マネ ジ メ ン ト と 管 理 会 計
浜 田 和 樹
*〈
論 文 要 旨
〉近 年
,
市 場 競 争に勝つ た めの留 意 点の一
つ は,
知 的 資 産を高め た り,
それの効 果 的 管 理で ある とい わ れてい る.
知 的資
産は企業の 生 み 出 し た技 能,
関 係,
知識 情 報等
の 無 形資
産の 集 合であ り, そ の大 部分 は財務諸表
に明示
さ れ ない 「見えざる資産」
で ある.
知 的資
産は大 き く分けて,
顧客資
産,構
造的資産
, 人 的資産
か ら成 り,有
形資
産以上 に収
益 力の増大に有用 で ある場 合が多
い と指 摘 さ れて い る.
知 的 資 産は多
種多
様で あるの で,そ れを高める には , 単
一
の財 務 的尺
度で評 価 する より も,多
様 な 尺 度で 総 合 評価 する方が有 利である
、
も
う 一
つ の留
意点
は,
トッ プ ダ ウン型 経営
とエ ン パ ワー
メ ン ト型経営
を使い 分 け た り,
融 合 するこ とである.
とい うの は,
前 者は市
場の 拡 大・
縮 小や技 術革
新 等の企 業 環 境の 構 造 的 変 化に対 処 する た め に適 切で あ り, 後 者は顧 客ニー
ズ に敏 感に反 応 するた めの 「即応性 」や
「
柔 軟 性 」を持た せ るた
め に有利である か らであ る か らであ る.
近 年,
エ ンパ ワー
メ ン ト型 経 営のため には非 財 務 的 尺
度
が有
用である と,
特に主 張 さ れ てい る が,
ど ち らの場 合 も非 財 務 的 尺 度と財務 的 尺 度の 両 者に よ る総 合 的マ ネ ジメ ン トが必 要である
.
これ らの点
を考慮
し た 総合的マ ネジメ ン トの具体
的 進め方と して , バ ラ ン ス ト・
ス コアカ
ー
ドの手 法がある が, 本 稿で は それ に類 似した, い や むしろそ れ を 進めた日本 発の
「 TP
(tOtal
productiVity
)マ ネ ジメ ン ト」につ い て考 察し た.
TP
マ ネ ジメ ン トは 企業全体のベ ク トル を合わ せ , マ ト リッ ク ス思
考
によ り,各種
の 目標
や施策
を 理論 的・体系
的に考
察する の に適した手 法で あ り,
ま た 決定や実 施の仕 方を 工夫す ることによっ て,
全体 目標
と関連づ け たエ ンパ ワー
メ ン ト型 経営
に も役
立つ手
法で もある.
そ して, この 手 法 を 予 算 管 理 と組み合わ せて用い る こ とに よ り, 予 算の み の管 理による問 題 点が克 服 さ れ るこ と を指
摘
し た.
〈
キ ー
ワー
ド〉知 的 資 産 , トッ プ ダウン型 経 営, エ ン パワ
ー
メ ン ト型 経 営, 非 財 務 的 尺 度, 財 務 的尺 度 ,
TP
マ ネ ジメン ト,
予 算 管理1999年11 月
’
受{t 2000 年 2 月 受理*西南 学 院 大 学 商 学 部 教授
管理会計 学2000 年 第8巻第1
・
2 含併 号1
.は じ め に
現 在
の市 場 競 争
を特徴
づけ
る言葉
はい ろ い ろあ
る が, 基 本的
に は,価 格,品 質 ,時
間の競争
で ある とい える
.
こ れ らの競 争 に勝 つ た めの留
意点
の一
つ と して,
知 的資
産 を高
め たり,
そ れの効 果 的
管
理 という
こ と が挙 げ
ら れ る. 知
的資 産
と は, 企業
の 利益
を生み 出 す 技 能, 知 識, 情 報等
の無
形資
産の集合
である.
具体
的に は, 社 員
の能
力や 経 験等
の 人的資 産, 商
標や特 許等
の 知 的 財 産, 顧 客との望 ま しい 関 係,技
術, ノウハ ウ, 情 報シ ス テ ム基 盤 , 企 業 固 有の業 務手
続き
等
であ
る.
た だ情 報
シ ステ ム等
の イン フ ラ は,知 的資 産形 成
の た めの触媒
であ
り, 知
的資 産
その もの で は ない とす
る考
え方
も あるが,本 稿
で は広
く,
そ れ を も知 的 資
産 とす
る.
こ れ らの多 様
な 知 的資
産の大部
分は, 財 務 諸 表に計 上 さ れ ない「
見 えざ
る資
産 」で ある.
こ の 見 え ざ る資 産
が ,競 争優 位
を もた らす
重要
な源 泉
になっ てい る.
も
う 一
つ の留
意点
は, トッ プ ダウ ン 型 経 営 とエ ン パ ワー
メ ン ト型 経営
を使
い 分 け た り, 融合
した
りす
る必 要
があ
る という
こ とである.情 報化 社 会
で は周 知
の ごとく, 顧 客
ニー
ズ に敏感
に 反 応 す るた めに即
応性
が 重 要 であ り,
その た めに は,素 早
く新規
な もの や異 なる こ とに取
り組
め る
能
力で ある柔 軟 性 が必 要 に な っ て い る.
それ故
, エ ン パ ワー
メ ン トの 重 要 性が 指 摘 され てい る
.
エ ン パ ワー
メ ン ト と は, 単
な る現場 従 業員
へ の権
限の委
譲で は なく,彼
ら に自
らの 知 識 と経
験 に よ り,
問 題 解 決が 可能
とな る よう
な,
よ り大き
な自律
性 が 与 えら れ る こ とで ある.
ま た事前
に委 譲
さ れ る権
限の範 囲
も,
フ ォー
マ ル に詳細
に は確定
さ れ て い な い.
た だ, 近 年,
エン パ ワ
ー
メ ン ト型 経 営 の みの 必 要 性 が 強 調 さ れ 過 ぎて い る が, 現 実
に は,
そ れ と トッ プ ダウ ン型 経営
を使
い分
けたり, 融 合
し たりす
る必 要
があ
る と 思 わ れ る.
またエ ン パ ワー
メ ン ト型 経営
とい
え
ども, 全 体 的 統 制 が 重 要で ある.
こ れ らの
留
意点
か ら判 断
して,知 的資 産
の充 実
を 図り
, 上 記の 両タ イ プの経営
を効
果 的 な らし め る た めに は
, 非
財務
的 尺 度 と財 務 的 尺度
の 両者
を用 い た,
総合
的マ ネ ジメ ン トが 必要
であ
る と思 わ れ る
.
その 点の考 察
が,本 稿
の第 1
の特 徴 になっ て い る.
こ こ で の「
総 合 」 と い う 意味
は,「 非 財務 的
尺度
と財 務 的 尺度
の総合 」
に加
え, 「 多 様
な 目標
と施 策
の総 合 」,「 従 業員
の全 体」
という 意 味
が含
まれて い る. ま
た「
総合的 」
という 意味
は , 上記
の よう
な「 総 合
という性 質
を もっ た」
という意
味で用 い て い る.
こ の よ
う
な総 合的
マ ネ ジメ ン トとい え ば,
バ ラン ス ト・
ス コ ア カー
ドに よ る管
理 がす ぐ
に思い 浮か ぶ が , こ の考
え
方 は必 ず しも新
しい 考え
方で は ない,
古 くは総 合 的 マ ネ ジメ ン トの方法
と して , 目標 管
理,方 針管
理 が あ る.
近年
で は, そ れ ら を進
め たTP
(total
productivity
)マ ネ ジ メ ン トが考 案
さ れて い る.
こ れ ら は, バ ラ ン ス ト・
ス コ ア カー
ドに よ る管
理 と多
くの類 似点
を もっ て い る.
ま たこれ ら は, 目標
を管
理す
る という点
で ,広
い意 味
で の目標 管
理であ
る が ,重 点
を置 く
べき箇
所 が異
な り,狭 義
の意味
で は区 別 さ れ る.
本稿
で は そ れ ら を区
別 して扱う
こ とにす
る. 本 稿
で は, TP
マ ネジ メ ン ト を「
日 本 発 の バ ラ ン ス ト・
ス コ ア カー
ド」 と考
え, 異同点
を考察 す
る と同時
に,
そ れ を予算 管
理 と 関係
づけ る こ とに よ り, 予算管
理の 問 題 点 が 解 決で
き
る こ と を指 摘
したい.
こ れ らの点
の考 察
が,本 稿
の第 2
の特 徴
になっ て い る.
2
.知 的 資 産 の 重要 性 と 総 合 的
マネ ジ メ ン トの 必 要 性
企
業
が競争 優 位
を確保 す
る た め に は,当然
の こ とで はあ
る が ,有
形資 産
と無
形資
産 を有 効に非 財 務 的卜4度と財帝的 尺度の総合
一
総含凵リマ ネジメ ン トと 管理 会司一
活
用 す るこ とが 重 要で ある.
た だ 無 形資
産 と して,貸借 対 照表
に計
上 さ れる無形 資産
に限
ら ない で ,
広
い意 味
で の 知 的資
産 を も含
め た もの を対象
とす る必 要 が あ る.
コ カコー
ラ社やマ イ クロ ソ フ ト社 など は, 簿 価ベ
ー
ス の純 資 産に 対 す る株 式 時 価 総 額 が20
倍 を越 えて い る と報 告 さ れ てい る(
[4
】,19 − 21 頁 )。
こ れ は,見
え ざる知的 資産
の価値
に依
っ てい る.
また優良
企業
であ る ほ ど その 価 値 が 高 くなるの で, その増 大 を 目 指 した管
理 が 必要
に なる.
企 業の資 産 全 体
財 務 的
資
産一
金融 的・
物 的資
産顧
客資
産・ 一 一
顧 客 との つ な が り,
潜在
的 顧 客 との状 況 等知 的
資
産構
造 的資
産一一一一組 織
マ ネジメ ン トや業務
の構
造,L 人 的
資
産イ ノベ
ー
ショ ン
,
ソ フ ト ウェ ア の 状 況,
文化 ,
サプラ イ ヤー
との 関係等
能 力, 態 度, 経 験, 教 育 水 準 等
図
1
企 業資 産
の体
系 と知 的 資産
知 的 資 産 を
資
産 全 体 の中で位 置づ けた ものが , 図1
で ある.
図1
で は知 的資
産 を,
顧客
資 産, 構 造
的資 産 ,人 的資 産
の3
つ のも
の に 区分
し てい る.
知 的資 産
のう
ちの 人 的資
産 につ い て は,そ れの 重
要
性 を認 識せ しめ , 適 正 配 置, 有 効 利 用,管
理保
全等
を 目指
し た 人的 資 源 会計
の分
野 があ
る が,現 在
は,知 的資 産
に 関す
る議 論
の中
で , よく扱
わ れ る よう
に な っ てい る.
B / S
金 融 的
・ 物 的資 産
知 的 資
産有形 資
産負債
BIS
上BIS
に表
され ての
資
産資
産,負 債 ,資
公 正 な価値
で評無形 資産 株
主資
本 な お す 必要 一一一
皿一 一
( 商標
,特 許等
の
知 的資 産 〉 一 一一一一一 }一 ↑ }冖 一一
B
/S
に表 示
されて い ない 知 的
資 本 無形 資
産一 一}
図
2
知 的 資 産 を含 む 公 正 価値
で評 価 後 の貸
借対照
表知 的
資 産
と知 的資
本に つ い て の議 論は,会
計 上の資
産,資
本 概 念 に対応
して い ない もの も多
管理会言
1
学2000 年 第8巻 第1・
2 含 併 号く ある が
,
そ れ ら を 整 理 し た ものが 図2
で あ る.
知 的 資 本 全 体 の評
価 法 と して, 超 過 収益
力の 源泉
を キャ ッ シュ・
フ ロー
を 用い て評
価 す
る方 法
と,株 式時 価総 額
か ら公
正価 値
で修
正後
の純 資
産額
を控
除 して評
価す
る方 法
が ある. 前
者は フ ロー
面 か らの評
価で あ り,後 者
は ス トッ ク面 か らの 評価
であ
る. 前 者
の方法
を 用 い る場 合 ,
超過収
益力
の源泉
は多様
であ
るの で,
これ ら全て の もの につ い て
,
キャ ッ シュ・
フ ロー
の 額 を 評 価 す るこ と は不 可能
で, 代表
的 な もの をい くつ か選ん で評 価 す る こ と に なる
.後 者
の 場合
,純 資
産 を公 正 価値
で評 価 しない で,簡
略 的 に簿価
を用 い る こ ともあ
る.
理論
上 , フ ロー 面
か ら評価
し た値
とス トッ ク面
か ら評 価
した値
は一 致
し な
け
れば な ら ない が,実 際
上 そう
なる こ と は殆
どない と思わ れる.
知 的
資 産
の管
理 の た め に は,
上 述 の よう
な単 一
の貨 幣
金額
に よ る評価
より
も,
財務 的
尺度,
非 財務 的尺 度 等
の各種 尺度
に よる各種 側 面
か らの評価
の方
が有利
で ある.
という
の は,知 的資
産 は多 種 多
様 であ り, 単一
尺 度で直
接 的 に 測 定で き ない もの も多
く, また仮 に金
額 評 価 され た と し て も,
それだ けで は何
をす
べ きか わ か ら ない か ら であ
る. 各 種
尺度
に よ る管
理法
とし て,
バ ラ ン ス ト
・
ス コ ア カー
ドに よる方法
が ある.
北 欧の保 険サー
ビス会 社で あ る ス カ ン デ ィ ア 社は, ス カ ン デ ィ ア
・
ナ ビ ゲー
ター
とよぶ一 種
のバ ラ ン ス ト・
ス コ ア カー
ドを 開発
し,管
理 に利
用 す る と同時
に ,外 部
に も 公表
して い る[ 4 ] [ 18 ] [ 21 ] [ 22 ].
その会 社 で は, 知 的 資 産 は,財 務 面 , 顧 客 面 , 社 内プ ロ セ ス面 , 人 的 側 面 , 革 新 的 側 面 に区 別 して 示 され,
1997
年 度の 報告
で は, 総合評 価
も行
っ てい る.
「 経 営品 質賞」 も
, 企業
に知的 資 産
の管
理 を援 助 す
る手 段
を提 供 す
る た め に設置
さ れ た ものと も
解 釈
さ れ る.経 営 品 質
とは,審
査 基準書
に よ れ ば,顧 客
の最終 評 価
に影響
を与
えるす
べ ての要 素の こ と である と して , 狭い
意
味 で の 品 質 と区 別 を 図っ て い る.
こ の賞
は,(
財)
社 会 経 済生
産性本 部
が1995 年 12
月に , マ ル コ ム・
ボ ル ドリッ ジ国家 品質賞
を参 考
に し て,「
顧客 ・市 場
の
求
め る価値
を創 り
,長 期
に わ たっ て競 争力
を維 持
で きる体 制
づ くり」
を支援 す
る た めに設 け
た
も
の であ
る[ 15 ] [ 19 ] .
図3
と表 1
は, 日本 経営 品 質賞
の フ レー
ム ワー
ク と審 査基 準
であ
る.
羅
攤
鬻 纏
飜 雛
難
離 鞭 腰 螺 鞴 欝 攤 鱗 i 鱗 輯 猫 購難
方向性と推進力〉 〈業務シ ス テ ム 〉
羅 齢 鰻
讎
曙『 難
遘
舐
撃
餐 ぽ 嬲
覊 驤
灘
聾
無 黼
霊”
〈目標と成果〉
饕糠 騨 腰黼 轢 嚇 灘覊 1
,
sps.叮
離 鯨薦 華 黼靆 難 i 騫
钁灘 盤 轗 綴 飜 羅
〉灘 鏨灘躡難 懸
(
出典)
日本 経 営品質賞
委 員 会 : 『日 本経 営品質
賞審
査基準 書( 1999
年 度 版)
』,
1999
年2
月,14
頁図
3
日本 経 営 品 質賞
の フ レー
ム ワー
ク( 1999 年度版 )
非 財 務 的 尺 度 と 財 務的 尺 度の総 合
一
総 合 的マ ネ ジメン ト と 管 埋 会 副一
表
1
日本 経 営 品 質 賞の審 査 基 準 (1999
年 度 版 )〈
審
査 基 準一 覧
>1
経 営ビ ジョ ンと リー
ダー
シッ プ
170
1. 1
リー
ダー
シッ プ発 揮の仕 組み
1 . 2 社会 的責任
と企業倫
理2 。
顧 客・
市 場の理 解 と対応
10070
150
2, 1
顧 客・
市 場の理 解2 . 2
顧 客へ の対 応2. 3
顧客
満 足の明 確 化3,
戦略
の策定
と展
開000 744
80
3 . 1 戦略
の策定
3 . 2 戦略
の展
開 4.
人材
開発
と学
習 環境
0044
110 4 . 1
人 材 開発の 立 案と学 習 環 境の構 築4 . 2 学
習 環境
4 . 3
社 員教
育4. 4
社 員 満 足5 。
プロ セ ス・
マ ネジ メ ン ト0000 2333
110
5 . 1
基 幹 業 務 プロ セ ス のマ ネジ メ ン ト5. 2
支援
業 務プロ セ ス のマ ネジメ ン ト5, 3
ビジ ネス パー
ト ナー
との協
力 関 係6 . 情報
の 共有化
と活
用000
FDOD3
80
6 。 1 情報
の選択
と共有化
6 . 2 競合
比較
とベ ンチ マー
キ ン グ6 . 3
情 報の分 析 と活
用7 .
企 業 活 動の 成 果000
只
》 32
200
7. 1
社 会 的 責 任 と企 業 倫 理の 成 果7. 2
入材
開発 と学 習 環境
の成 果7. 3
ク オ リ ティ活
動の成 果7 . 4
事 業の 成 果8
顧 客 満 足0000 4466
100
8. 1
顧客
満 足 と市
場での 評価 100
合
計 1000
(
出 典)
日本 経営
品質賞委
員会
:『
日本 経 営 品質賞
審査
基準 書
( 1999 年度版)
』,1999 年2
月,19
頁.
その
特 徴
は,(i )
顧客
,市
場へ の 迅速
な 対応
と社会
的責 任
を果たすた め に, 顧 客資 産
,構
造 的資
産, 人的 資 産等
の知的 資産
を向
上す
る こ とが必 要
であ
る.
管理会 計 学2000 年 第8巻第1
・
2 含 併号伍 )
トッ プ ダ ウ ン型経営
とエ ンパ ワー
メ ン ト型 経営
の 両者
の融 合
が 重 要 であ
る. (
この テー
マ につ い て は,次 節
で考察 す
る. ) 前 者
の重要 性
は , リー
ダー
シ ッ プ,
戦
略展 開
の項
目に示 さ れ
,
後 者の 重 要 性は, 人 材 開 発 と学 習 環 境の項 目に示さ れて い る.
(
皿) 非
財 務 的 尺度
と財 務的
尺度
の両者
が重 要であ
る. 財 務 的
尺度
は事業
の成
果の項
目の みに
関係
し, ウ ェ イ トが少
ない と 思 わ れ が ち だ が,各 項
目の中
に分 か れて含 ま れてい る.
例 えば, 戦 略の 策 定と展 開の 項 目, プ ロ セ ス・
マ ネジメ ン トの 項 目, 情 報の共 有 と活
用の
項
目等
に含
ま れ れて い る.
これ らの特 徴は , 序 論で 述べ た競
争
優 位を もた らす た め の留 意点
に も共
通 して い る.
以上
,知 的資 産管
理 の重要 性
を指 摘
し て きた が, 筆 者
は,
知的資
産 を高
め る た めに は,
財務
的 成果
に よ る 評 価 だ けで は な く, 知 的 資 産 を高
める た め の プ ロ セ ス の 評 価, その結 果の 評 価を含
め た総合
的な評 価 を行
い,常
に知
的資 産
の向
上 に努
め る よう仕 向
け る管
理 が必要
であ
る と考
える.
しか し, 知 的資
産の向
上の み を 目 標 と考
え るの で はな く, 市 場で の成 果 を表
す 目 標 と同時
に, あ
るい は関係
づ けて考 察す
る必 要
が ある.
その た めに は,両 者
の 目標
を非財 務 的
尺度
と 財務 的
尺度
を 用い て具体
的 に バ ラ ン ス よ く設定
し,
そ れ らの達 成 を 目 指 す 総 合 的マ ネ ジメ ン ト が必 要 となる.
この側 面に管 理 会 計 人 が 重 要 な 役 割 を果たそう
とすれ ば, 財 務1
青報の み を扱 う も
の が 会計
だと考 え
ない で ,管
理会
計の対 象範
囲 を,
財務 清報
と非
財務 情報
の 両者
の融 合
に よる
管
理 まで 拡 大 する必 要 が あ る.
3 . ト
ップ ダ ウ ン 型 経 営 と
エン パ ワ ー メ ン ト 型 経 営 の 使
い分 け ・ 融 合 の 必 要 性
序 論
に も述べ たよう
に,近 年
, エ ン パ ワー
メ ン トの重要性
が指摘
さ れ , それの み で経 営
は可 能
という
よう
な 主張 も
あるが ,市
場 が 著 しく
拡 大・
縮 小 し た りして い る時や, 技 術 革
新
が急 速
で ある
時
な ど,
企業環 境
に構 造的 変化
が生 じてい る場 合
に は,
リス ク を賭 け
た戦 略的 判断
を必
要 とし,
トッ プ ダウ ン 型 経 営 が 適 して い る.
す な わ ち, トッ プ ダウ ン型 経 営 とエ ンパ ワー
メ ント型 経 営 を使い 分 けた り
,
融合
する必 要が ある と思 わ れ る.
トッ プ ダウ ン
型経 営
の利 点
は, 全体
の計 画 ・
目標
が ,目標 相
互 間の関係
を考 慮
しなが ら, 下位
に体 系
的に展 開で きる とい うこ と で あ る.
ま た,
下位
部 門は何 をすべ きか が 明 確に具 体 的 に 示 さ れ るの で ,従 業
員の 目指 す方 向
を一 致
さ せる こ と がで き,従 業員
の方
も 目標 達
成度
を容 易
に知る こ と が で
き
る という
こ と で ある.
施 策 も 全 体 的 立 場か ら選ぶ こ と が で きるの で ,一
貫 性の ある
対策
が 立 て られ, 適 切な実行 体制
も組
め る という
こ とで ある.
こ れ らの 利
点
を 生かす
た め に は, 財務
目 標 と同時
に非 財務
目 標 を考 慮
するこ とが 必要
になる.
という
の は,長 期 的
に好
ましい 財務 的成
果 を達 成す
る た め には,各種
の非
財務
目標
をバ ラ ン スよ く達 成
す
る こと が 必要
だ か らで あ る. す
な わ ち, 非 財務 目標
と長期 的
な財務 目標
との間
に は 原 因と結果
の 関係
が あ り,
長期
的 な 財務
目標 を達
成 す る た めの実 施
目標
と して非
財務
目標
が ある と
考 え
られ るか らで ある.
それ故
, 財 務 目 標の み を展 開 した とす れ ば, そ れ を 達 成 す るた めに
具体 的
に何
を行
えば よい か が不 明確
とな る か ら である.
逆 に非
財 務 目 標の み を展 開 し た とす れ ば,
財 務 的 成 果 の向
上 が疎か に され る か らで ある.
しか し, トッ プ ダウ ン の 管 理は 目 標 展 開 が あい まい だっ たり
す る と,
思っ たほ ど効
果が 上 が ら ない場 合
もあ
る.
また,
日々 の 環境
変化
に対