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1 脱炭素経営と保険企業・共済団体の役割

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Academic year: 2023

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【令和4年度 日本保険学会全国大会】

共通論題「社会課題の解決に向けた保険の意義と課題」

報告要旨:米山 高生

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脱炭素経営と保険企業・共済団体の役割-保険学の観点からの課題と展望-

東京経済大学 米山 高生

1. 人新世の時代の到来と気候変動

人新世(Anthropocene)と呼ばれる時代となり、地球環境の問題は、先進国を含むすべての国 が対応しなければならない課題と認識されるようになった。2015年の国連によるSDGs宣言 採択と同年のパリ協定は、大きな転換点であった。その後、IPCC報告で気候変動と産業革 命以来の累積温室効果ガス排出量との因果関係が持されるようになると、炭素予算(Carbon

budget)を基準とする脱炭素経営のための国際的枠組みがEU諸国を中心に構築された。

2SDGs の目的達成のための優先的課題:脱炭素経営

脱炭素経営は、SDGsの一部分であるという意見があるかもしれない。しかし、SDGsを達 成する上で、脱炭素経営は、きわめて優先順位の高いものである。気候変動対策がなされな いことにより、耕作可能な土地や森林資源が減少し、結果として、低開発国の貧困の増大や 健康的な被害を増大させる。脱炭素経営は、かつてのメセナやCSRの次元とは全く次元が 異なる。実際、各国政府がCOPにおいて真剣に議論し、また各国中央銀行が気候変動対策 のために具体的な施策を講じていることからわかるように、企業の社会的責任が要請される のではなく、企業が気候変動を自らのリスクとして認識することを求めているのだ。

3.投資家・政府・中央銀行

環境・社会・ガバナンスに関する企業や投資家の責任については、SDGs+パリ協議以前 からも進展していた。2006年には責任投資原則(PRI)はESG投資の概念を導く上で重要であ った。グラスゴーで2021年に開催されたCOP26を契機に、ESG投資において脱炭素・気候 変動対策に重点が置かれるようになった。各国の中央銀行が、気候変動リスクを金融機関の 主要なリスクとして認識するようになっていることも忘れてはならない。

4.脱炭素経営に対する保険会社・共済団体の貢献:保険学の観点から

脱炭素経営という目標達成に関して金融機関が期待されている役割は、次のようなもので ある。すなわち、2050年ゼロエミッションに向けて企業が脱炭素経営へのトランジションを

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【令和4年度 日本保険学会全国大会】

共通論題「社会課題の解決に向けた保険の意義と課題」

報告要旨:米山 高生

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進めるためのロードマップを明確化することを助け、炭素クレジットの流動性をとおして企 業の目標達成を促進することである。保険会社も金融機関として共通する役割が期待される が、具体的な貢献の仕方に関しては、ビジネスモデルの特徴に即して他の金融機関とは異な るものであるはずだ。本報告では、企業の事例を踏まて、生命保険・損害保険・共済団体の 貢献について検討する。

4.1 生命保険の貢献の領域

生命保険のビジネスモデルの特徴から、資産サイドをとおした貢献が大きく期待される。

長期資金をもつ生保は、金融当局などと協力してその制度的整備にコミットメントする重要 なプレーヤである。さらに、生保は保険学の用語の「ロス・コントロール」分野でも貢献も 期待される。

4.2 損害保険の貢献の領域

損害保険会社について脱炭素経営にインパクトのある貢献は、アンダーライティングの分 野が中心だ。いくつかの損保会社は、石炭にかかる保険引受は行わないとしている。他方、

損害保険会社は「ロス・コントロール」の分野でも組織能力を有している。企業の損失予防 や損失軽減の活動に有益なツールやノウハウの中には、気候変動対策や炭素の「見える化」

などの技術情報が含まれる。

4.3 共済団体の貢献の領域

共済団体のSDGsへの取組は、組合員と事業の特性に適合的な形で行われるべきであろ う。たとえば、JA共済は、農業=食料との関係が深いので、飢餓(目標2)や持続可能は消 費と生産(目標12)とは関連が強い。もちろん海洋汚染(目標14)や生物多様性(目標

15)も重要だ。COOP共済だと、住みつづけられるまちづくり(目標11)や飢餓(目標2)

などが関連するかもしれない。いずれにせよ、協同組合という特徴にそくした「SDGs戦 略」が必要であろう。

5.課題と展望

本報告は理論的なものであり、保険実務的には、様々な課題が残っているはずだ。脱炭素 経営の達成で、気候変動や貧困問題などが緩和されたとしても、SDGsの他の目標への取組 みが残っていることを忘れてはならない。将来の健全な保険経営を実現するために、脱炭素 以外の社会的課題の解決への取組を忘れてはならないことも事実だ。

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