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4 天気図の利用と天気予報
4.1 地上天気図を用いた天気予報一般的な傾向として、低気圧の周辺では天気が悪く、高気圧の周辺では天気がよい。
したがって、高低気圧の位置がわかれば大体の天気は予測できる。気象通報では、漁 業気象で高低気圧の移動速度(進行方向、速さ)を放送している。大雑把にはその速 度が持続するとして線形外挿を行ない、後の時刻の高低気圧の位置を推測するとよい
(緯度
1
度が約110km
である)。
中学校の理科第2分野では、翌日の気圧配置を自分で予想したうえで、天気を予 想する。中学校の理科第2分野や高等学校の地学の教科書には数値予報について の解説もあるが、数値予報を利用して気圧配置を予想するわけではない。
小学校、中学校、高等学校とも、24時間おきの天気図や雲画像を取り扱うことが 多い。しかし、日本国内のみの比較的狭い範囲での天気の移り変わりに注目する 場合には、12時間おきのデータを用いたほうがよい場合もある。4.2 高層天気図を用いた天気予報
温帯低気圧や移動性高気圧は、それぞれ、上空に気圧の谷や尾根を伴う。発達中の 温帯低気圧においては、以下のような特徴がみられる。
上空の気圧の谷が、地上の低気圧の中心よりも西にずれている。
気圧の谷の東側に暖気が、西側に寒気が流入している。逆に発達が終わった温帯低気圧では、上空の気圧の谷と地上の低気圧の中心がほぼ同 じ位置にあり、東側での暖気移流や西側の寒気移流が不明瞭になっている(そのよう な場合には閉塞前線ができている場合が多い)。したがって、地上の低気圧の中心と上 空の気圧の谷の位置関係や、暖気・寒気の流入の有無から、低気圧の発達を予想する ことができる。
高等学校の地学では、発達する温帯低気圧の特徴として、これらの特徴を挙げて いる。気圧の谷の位置のずれに重点を置く場合には500hPa
面天気図を、温度移32
流にも注目する場合には
700hPa
面天気図を用いるのが適切であろう。4.3 数値予報資料の活用
数値予報資料を利用できるときは、
500hPa
高度・渦度予想図
地上気圧・降水量・風予想図 850hPa
気温・風、700hPa上昇流予想図を活用するとよい。
低気圧の発達、移動を予想するためは、基本的には、「地上気圧・降水量・風予想図」
に描かれた地上気圧の分布をみればよいが、気圧の谷の位置のずれをみるときには
「500hPa 高度・渦度予想図」を、温度移流や鉛直流をみるときには「850hPa 気温・風、
700hPa 上昇流予想図」を利用する。前線の位置を予想するときにも、「850hPa気温・
風、700hPa上昇流予想図」に描かれた等温線を参照する。
(1)地上気圧・降水量・風予想図
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時間おきの地上気圧の分布の予想が描かれているので、これに沿って予想天気図 を作成すればよい。予想はあくまで予想であるが、最近の数値予報は精度が向上して いるので、1~2日程度であれば、多くの場合、数値予報のとおりに経過すると考えて よい。① 低気圧と高気圧の中心を×印で示す。数値予報資料では、計算機が出力した結果 をそのまま作図しているので、等圧線が不自然な形になっていることがある。印 刷されている低気圧や高気圧の中心の位置も、計算結果から機械的に位置を決め たものである。したがって、天気図として自然なように、平滑化して理解すると よい。
自分で予想天気図を描く場合は、基本的には数値予報に従いながらも、天気図とし て自然なように描くとよい。
(2)850hPa 気温・風、700hPa 鉛直流予想図
前線の予想や、温度移流、鉛直流の把握に用いられる。等温線が太い実線で、鉛直 流が細い線と影で、風が矢羽根で示されている。温帯低気圧に伴う前線は、低気圧の ライフサイクルや等圧線の形から、ある程度予想することができる。しかし、前線の
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定義は気団と気団の境界であるから、気温分布をみたほうが正確に予想できる。
① はじめに、地上気圧・降水量・風予想図に描きこんだ、低気圧、高気圧の中心を 描き写す。
② 前線の位置を予想して、所定の色で描きこむ。等温線の間隔が狭くなっている場 所が前線である。厳密には、等温線が集中している場所の暖気側に前線を引く。
前線の種類は、気温と風の分布から、寒気と暖気の勢力(北風か南風か)を考慮 して判断するのが基本であるが、温帯低気圧の一般的な構造を想定して決めてよ い。また、実況天気図における等温線と前線との関係を参考にしてよい。
(3)500hPa 高度・渦度予想図
上空の気圧の谷や尾根の移動の予想に用いられる。等高度線が太い実線で、渦度(相 対渦度)が細い線で示されている。渦度が正の領域には影がつけられている。地上の 低気圧と上空の気圧の谷との位置関係を確認するとよい。
課題
(1)4、5日の天気図、自分が描いた
6
日の天気図(実況天気図)に描かれた、地上 の低気圧の中心と前線(中国大陸から日本付近に移動してきているものと、6
日に日本 の南海上に発生したもの)、上空の気圧の谷と寒気の位置(前述の低気圧に伴うもの)を回答欄の地図に描き写しなさい(それぞれがどの日に対応するか適宜日にちを書き 入れること)。4、5 日の低気圧、寒気については、複数あるときは強いものだけを描 き入れればよい。相互の位置関係や移動の様子をみて、わかることを書きなさい。
(2)6日の実況天気図を簡略化して回答欄に描き写しなさい。さらに
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時間後の天 気図を予想しなさい。予想にあたっては、(1)の結果に基づいて低気圧の発達を考慮 しなさい。ここでは、低気圧(熱帯低気圧や台風を含む)・高気圧(示度、移動方向は 省略してよい)、前線、等圧線が示されていればよい。(3)翌日(7日)の東京と札幌の天気を予想しなさい。
※(2)と(3)については、予想が当たったかどうかは成績評価とは関係ない。
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天気図や観測データの入手について過去の天気図、アメダスの観測データは、気象庁のウェブサイトで入手できる。
気象庁 http://www.jma.go.jp/jma/menu/obsmenu.html
過去の天気図 http://www.data.jma.go.jp/fcd/yoho/hibiten/index.html アメダスの観測データ http://www.data.jma.go.jp/obd/stats/etrn/index.php 天気図 http://www.jma.go.jp/jp/g3/
雲画像 http://www.jma.go.jp/jp/gms/
アメダス分布図 http://www.jma.go.jp/jp/amedas/
レーダー(解析雨量) http://www.jma.go.jp/jp/radame/
また、過去の雲画像は、
高知大学気象頁 http://weather.is.kochi-u.ac.jp/
赤外画像 http:// weather.is.kochi-u.ac.jp/sat/gms.fareast/
可視画像 http:// weather.is.kochi-u.ac.jp/sat/JPN/
で入手可能である。さらに、最新の専門的な天気図を入手することができるウェブサイト としては以下のものが挙げられる。
北海道放送 http://www.hbc.co.jp/pro-weather/
アーカイブ http:// www.hbc.co.jp/tecweather/archive/index.html
いであ(株) http://www.bioweather.net/detailed/rfax.htm
国際気象海洋(株) http://www.imocwx.com/wxfax.htm
また、過去の天気図、気象観測データについては、(財)気象業務支援センターでCD-ROM の形で入手できる(有料)。
(財)気象業務支援センター http://www.jmbsc.or.jp/
※授業に使えそうな事例を見つけたら、天気図、雲画像、アメダス分布図、レーダー(解 析雨量)を気象庁のウェブページから早めにダウンロードしておくのが無難です。過去に さかのぼる場合は、気象庁のウェブページから過去の天気図(1か月でひとまとまりにな ったPDF形式のファイル)を入手して必要なところを切り出して利用し、雲画像は高知大 学気象頁から入手することができます。アメダスや解析雨量については、調べた範囲では 無償で入手できるサイトはないようです。
過去半日~2日程度
過去2週間程度