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B Y 奚悦
7章 報酬制度及び債務契約と 会計手続き
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目次
1.経営者報酬制度における会計の役割 2.報酬制度が会計に及ぼす影響 3.債務契約におけいる会計の役割 4.債務契約が会計に及ぼす影響 5.会計手続き変更の株価効果
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1.報酬制度における会計の役割
利益連動型報酬制度
定義:重役の報酬を会社の監査済み年次報告書におけ る利益数値に正式に連動させる報酬制度
発展: 19世紀末 イギリス 20世紀初頭 ヨーロッパ 1950年代 アメリカ
現在:普及+効率的
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利益連動型報酬制度
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効率的?経営者との効率的な契約が経営者に会社価値を最大化 する動機を与える(第6章)
経営者の報酬 経営者が会社市場価値 に及ぼす影響度合
なぜ会計利益に基づいた制度を用いられる?
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報酬制度の役割に関する2つの仮説
インセンティブ仮説
報酬制度は経営者に会社価値を最大にするインセンティブを与 えることを目的にしているという仮説
税金仮説
報酬制度は会社と経営者における税額の現在価値を減少させ ることを目的にしているという仮説
利益連動型報酬制度の2つ種類:
ボーナス制度とパフォーマンス制度
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(1)会計利益に基づく報酬制度が用いられる理由
会社の市場価値(株式+債務)を観察することが不可能
会計利益額(会計上の当期純利益+支払利益)を使う 株式価額が利益額と共に変化する(第3章)
各種業績を分割測定することができない
各部門の会計利益算定できる
税金対策
パフォーマンス制度の存在は税金仮説で説明できらかもし れない
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(2)会計利益に基づく報酬制度を採用する会社の特徴
調査によると、採用する割合が業種によって異なる
(Conference Board,1979)
例:小売業よりも製造業のほうがボーナス制度を採用して いる会社の割合が大きい
理由: インセンティブ仮説
他の条件が等しければ、利益額と、特定の経営者の行動が会 社価値に与える影響との相関が大きいほど、利益連動型ボー ナス制度が経営者の報酬支払方法として採用される可能性が 大きい
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2.報酬制度が会計に及ぼす影響
もし、経営者が損益計算をコントロールできれば
経営者は、会社価値を上げるために利益増加をもたらす 行動を取るのではなく、恣意的に大きい利益額を報告す ると予期する
利益連動型ボーナス制度のインセンティブ目的?
経営者が損益計算に使用する方法を制限
制限事項のモニターをする必要
制限事項をクリアーして算出される利益は、経営者の行動が会 社の市場価値に及ぼす影響を反映
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全面的に制限できない理由
経営者は、部下を動機つけるのに最適な会計手続きを 最も知っている
経営者は、政府の規制によって生ずる費用を最少にする 会計手続きを最も知っている
経営者の機会主義的行動が減少するという便宜 最適な手続きを喪失する費用
認められた手続き
認められた会計手続きからの選択
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(1)認められた手続き
経営者は減価償却費を計上したがらない
監査を受ける傾向があった
経営者の楽観主義
低価主義、保守主義
経営者の損益計算操作能力と、利益額が経営者の会社 価値に対する影響力に相関する度合とのトレードオフ関 係
客観性(会計数値が検証できるかどうか)
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業種間の会計手続きの相違
大部分の業界:販売基準
生産基準 経営者が販売を気にせず、できるだけ多く生 産する(利益増大) 在庫品増加 財政困難
建設業と鉱業:生産基準
理由:販売契約、請負契約 製造原価を重視
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(2)認められた会計手続きの中からの選択
(Smith and Watts,1982) ボーナスが支給された場合、
その最高額が報告利益額に関する正の一次関数で求め られる
ボーナス制度仮説:他の条件が等しいとすれば、ボーナ ス制度のある会社の経営者は、報告される利益を将来の 期間から当期に移す会計手続きを選択可能性が相対的 に高い
インプリケーションから検証可能
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新しいインプリケーションの例
上限額
目標額
利益額
利益額
利益額 利益を繰り延べ、報告利
益を減らすインセンティ ブを持つ
当期利益額を上限額 に等しくするため、そ の額だけ利益を移し 変えるインセンティブ を持つ
ビッグバス:将来発生 し得る損失で当期に 計上できるものはすべ て計上し損失額を増 やす
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以上のようなインプリケーションから..
ある年度、経営者は利益額を減少させるインセンティブを持 つことがあり、ボーナス制度仮説と矛盾する
報告利益の現在価値を増加させる手続きを経営者が単純に 採用するのではなく、毎年様々な手続きの調整を試みる
損失や将来の費用を当期に認識するような方法が行われや すい
ボーナス制度の持つインプリケーションと利益平準化仮説と の比較
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3. 債務契約における会計の役割
監査済み財務諸表が債務契約をモニターする目的を果 たしている
公募債、私募債の契約が、監査済み財務諸表の会計数 値を用いた条項を設け、経営者の行動を制限する
違反すれば、債務不履行とみなされる
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(1) 会計数値を使用する条項
目的:経営者の会計価値の減少をもたらす投資、財務意 思決定を制限する(6章)
『起債コメンタール』
① 配当及び自己株式取得の制限
配当可能資金有高を限定して、経営者が投資を最小限に 抑えることを防止する
② 運転資本の維持
一定の最低水準を設け、それを超える運転資本の維持を 会社に求める、清算配当の支払防止
③ 合併活動の制限
経営者が会社のリスクを増加しそれによって既発債の価値 を減少させるなめに合併を利用するという可能性を減らす。
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『起債コメンタール』
④ 他社への投資の制限
他社の証券に投資して自社のリスクを変化させることを 制限する
⑤ 資産処分の制限
経営者の裁量で会社のリスクが変動する可能性を減らす
+生産配当が支払われる可能性を減少させる
⑥ 社債追加発行の制限
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(2) 債務契約におけるGAAPの使用
債務契約は基本的にGAAPに従った会計報告数値を 用いる
公募債より私募債のほうがGAAPから離れた手続きを用 いる例が多い
理由:再契約費用が異なる
私募債より、公募債のほうが契約の再交渉の費用が多い 制限条項の技術的違反の再交渉する費用が多ければ多 いほど、制限条項が少なくなると推測できる
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4.債務契約が会計に与える影響
会計数値計算をコントロールする経営者の力を制限する 必要
(1)認められた手続き(保守主義と客観性の原則) GAAP =認められた手続き?
GAAPに準拠していても利益額と資産価額の増加をも たらす手続き 不許可
GAAPで要求してない利益額と資産価額の減少及び負 債の増加をもたらす手続き 求める
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(2)認められた手続きの中からの選択
債務条項仮説
会計数値に基づいた特定の条項に抵触する恐れのある 会社ほど当期利益額を増やす手続きを用いる傾向がある
負債比率仮説
他の条件が等しいとすれば、会社の負債比率が大きけれ ば大きいほど、その会社の経営者は報告する利益を将来 の期間から当期へ移す会計手続きを選択する傾向がある
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5.会計手続き変更の株価効果
会計手続き変更はエイジェンシー費用に影響を及ぼし、
会社の利害関係者間で富を移転させる
経営者の任意で行われた変更
FASBのステートメントまたはSECの通牒で強制された 変更
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(1)任意の変更
認められた会計手続きの組み合わせの変更
①会社業種変更 ② 会計の技術革新
期待エイジェンシー費用が投資を反映した株価変動に織り込ん で、区別できなくなり、エイジェンシー費用の変動分で株主が負 担する割合が不明
株価にの影響を予測することはできない
認められた手続きの中から経営者の選択の変更
ボーナス制度から引き起こす 株価下落
債務契約から引き起こす 株価上昇
市場の予期が存在するため、株価効果の調査が難しい
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(2)強制の変更
(FASB SECによる)会計基準の変更 GAAPの変
更 既存の契約の変更 株主への富の移転(株価 の上昇)、株主の富の減少(株価下落)
会計手続きの組み合わせを削減する場合 株価は下落するが、緩和される
会計手続きの組み合わせを拡張する場合 株価は上昇しするが、一部相殺される
強制された手続き変更の株価効果が任意に変更よりも 観察しやすい
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要約
報酬制度と債務契約は会計数値を用いる
経営者が利益と資産を過大評価するインセンティブを持 つため、保守主義と客観性の会計手続きを制約する(認 められた手続き)
経営者の裁量が全面的に排除されない(経営者の選択)
ボーナス仮説と負債比率仮説
任意と強制の会計手続き変更が株価効果を持つ可能性
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