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GPIアンカー生合成系における新規バイパス経路 - J-Stage

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283

化学と生物 Vol. 52, No. 5, 2014

GPI アンカー生合成系における新規バイパス経路

酵母細胞を用いた脂質リモデリング系の解明

グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)は糖 脂質の一種であり,膜タンパク質の一部は,GPIによっ て細胞膜の表層につなぎ止められている.GPIがあたか もタンパク質を係留する錨(アンカー)のような役割を 果たすことから,このようなタンパク質は,GPIアン カー型タンパク質と呼ばれる.GPIアンカー型タンパク 質は,マイクロドメインあるいは脂質ラフトと呼ばれる 細胞膜上の特定の領域に組み込まれる.マイクロドメイ ンは,GPIアンカー型タンパク質やスフィンゴ脂質,ス テロールなどにより構成される微小な領域で,シグナル 伝達の場として働くなど,細胞の機能に重要な役割を果 たしている(1, 2)

GPIの前駆体であるリン脂質(ホスファチジルイノシ トール)の多くは, -2位に不飽和脂肪酸を有してお り,このままではマイクロドメインに組み込まれること はできない.GPIアンカー生合成系において, -2位の 脂肪酸鎖はホスホリパーゼA2によって取り除かれ,そ の後,アシル基転移酵素によって飽和脂肪酸鎖が転移さ れる.このプロセスをGPIの脂質リモデリング(あるい は脂肪酸リモデリング)と呼び,脂質リモデリングを受 けて初めて,GPIはマイクロドメインと会合できるよう になる(3, 4)

出芽酵母 の場合,脂質リモ

デリングにかかわるホスホリパーゼA2は 遺伝子 産物(Per1p),アシル基転移酵素は 遺伝子産物

(Gup1p)である.pG2型のGPI脂質はPer1pによって Lyso-PI型となり,さらにGup1pによってpG1型へと変 換される(図1.また,GPIアンカー型タンパク質の種 類によっては,脂質部分がセラミド骨格を有するIPC型 に 変 換 さ れ る.こ の 反 応 に は 遺 伝 子 産 物

(Cwh43p)が関与する.出芽酵母のGPIアンカー型タ ンパク質の脂質部分はIPC型が過半を占めるが,pG1型 のままのものも少なからず存在する.

これら3つの遺伝子産物はいずれも小胞体に局在する 膜貫通型タンパク質である.これらがPer1p, Gup1p,  Cwh43pという順序で働き,GPIの脂質部分は直線的な 経路でpG2 → Lyso-PI → pG1 → IPCのように変換され ると従来は考えられてきた.この経路をより詳細に調べ

るため,筆者らは 二重遺伝子破壊株を作製 したところ,この二重破壊株は, 単独破壊株と比 較して著しい増殖遅延を示した.もし脂質リモデリング 系が厳密に直線的な経路であり,Cwh43pはpG1型の GPIのみを基質とするならば,このような結果は得られ ず, 破壊株も 二重破壊株も同一の表現 型を示すはずである.可能性の一つとして,Cwh43pが 多機能タンパク質でGPIの脂質リモデリング系以外でも

Per1p Gup1p

Cwh43p

pG2 Lyso-PI pG1

IPC ジアシルグリセロール型

P O O

O O O

P O O

O O O P

O O OH O

セラミド型

タンパク質

イノシトール

ホスホエタノールアミン マンノース

グルコサミン

P O HO OH

HN O

図1出芽酵母におけるGPIの脂質リモデリング経路.

小胞体において,脂質部分がpG1型あるいはIPC型(図中の網か けで示す)にまで変換されると,GPIアンカー型タンパク質はマ イクロドメインと会合できるようになる.Cwh43pの通常の基質 はpG1型であるが,経路が阻害されるとLyso-PI型やpG2型も基 質となりうる.

Per1p Gup1p

Cwh43p

pG2 Lyso-PI pG1

IPC ジアシルグリセロール型

P O O

O O O

P O O

O O O P

O O OH O

セラミド型

タンパク質

イノシトール

ホスホエタノールアミン マンノース

グルコサミン

P O HO OH

HN O

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今日の話題

284 化学と生物 Vol. 52, No. 5, 2014

機能しているならば,このような結果はありえるが,セ ラミド変換活性を失わせた点変異型のCwh43pを用いて も同様の結果が得られたことより,この可能性も低いこ とがわかった.したがって,脂質リモデリング系は pG2 → Lyso-PI → pG1 → PCという直線的な経路のみで はなく,バイパス経路が存在することが示唆された.

この表現型を生化学的に検証するため,酵母細胞の GPIアンカー型タンパク質より脂質部分を分離し,その 組成を調べたところ, 破壊株ではIPC型の脂質が 少量ながらも認められ,これは 二重破壊株 においては完全に消失した.このことは, 破壊株 においてはpG1型以外のGPIを基質としてCwh43pがセ ラミドへの変換を行っていることを意味する.さらに,

セラミド型の脂質を有し,主に細胞膜に局在するGPIア ンカー型タンパク質であるGas1pの局在を調べたとこ ろ, 破壊株では培地中にGas1pが漏出しており,

二重破壊株ではその程度はさらに顕著と なった.すなわちここでも,二重破壊による相乗効果が 見られた.

同様の手法で, と との二重破壊株の表現 型解析により得られた結果を考え合わせると,酵母細胞 における脂質リモデリングには,図1の矢印に示すよう な多様な経路が存在し,通常のリモデリング経路が阻害 された場合,Cwh43pはLyso-PI型やpG2型のGPI脂質 を基質としてセラミド型に変換できることが明らかと なった(5).酵母細胞の増殖速度,GPI脂質の組成,そし てGPIアンカー型タンパク質の漏出,という3つの事象 がいずれも二重破壊による相乗効果を示すという実験結 果は,酵母細胞を用いた解析のエレガントさを再認識さ せてくれるものであった.

実は,GPIアンカー型タンパク質がマイクロドメイン に会合するためには,脂質部分がpG1型にまで変換さ れていればよい.それなのに,酵母細胞においてわざわ ざIPC型にまでGPIの脂質部分を変換することには,ど のような生理的意義があるのだろうか.この残された謎 を解明すべく,筆者らは研究を進めているところであ る.

  1) P. Orlean & A. K. Menon : , 48, 993 (2007).

  2) M. Pittet & A. Conzelmann : , 1771,  405 (2007).

  3) M. Fujita & Y. Jigami : , 1780, 410 

(2008).

  4) M. Fujita & T. Kinoshita : , 1821,  1050 (2012).

  5) T.  Yoko-o,  D.  Ichikawa,  Y.  Miyagishi,  A.  Kato,  M. 

Umemura, K. Takase, M. Ra, K. Ikeda, R. Taguchi & Y. 

Jigami : , 88, 140 (2013).

(横尾岳彦,産業技術総合研究所生物プロセス研究部門)

プロフィル

横尾 岳彦(Takehiko YOKO-O)   

<略歴>1990年東京大学理学部生物学科 卒業/1995年同大学大学院理学系研究科 植物学専攻博士課程修了/同年工業技術 院生命工学工業技術研究所研究員/2001 年産業技術総合研究所研究員(改組によ る)/2006年同研究所主任研究員,現在に 至る<研究テーマと抱負>複合糖質の生合 成機構について,主に酵母細胞を用いて研 究を行っている.酵母をもの造りなどに応 用するにあたっては,研究を進めていくう ち,いったん基礎研究に立ち返る必要性が 生じるケースも少なくない.そのような基 礎研究に焦点を当てていきたい<趣味>

「見る」こと(ウォッチング).鳥,乗り 物,近代建築など,幅広く対象としている

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