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会計学入門
第 4 講 配分と評価
(その 1 )
2
なぜ配分と評価が必要か
|
ちょっと復習コーナー
【練習問題】
会計とは何か,20字以内で述べなさい。
解答では,重要な語句に下線(3箇所以内)を引く こと。
■ヒント
→第1講
問題文にもヒントがあります
!
3
解答
取引を一定の方法で記録し報告すること。
(句点を含め19字)
【参 考】
企業の財政状態と経営成績を取引記録に基 づいて明らかにし,その結果を報告する一 連の手続。(句点を含め43字)
『広辞苑』第5版より。
4
報告するためには
|
項目を認識し,測定することが必要。
認識:財務諸表に記載すること。
=帳簿に正式に記録すること。
測定:項目の金額を決定すること。
項目の金額を決定するための手続です。
配分 allocation
| 一定の基準または計算式に従って金額を割り 当て,あるいは賦課すること。
FASB概念書第6号,par.142。
| とくに,ある期間の収益と費用の金額を決定す るために用いる。その結果,資産・負債の金額 が決まる。
| 費用性資産(利用目的で保有される資産)に適 用される。
評価 valuation
|ある項目の実在的な価値を見積もること。
|実在性の疑わしい資産・負債が計上されたり,
実在性のある資産・負債がオフバランスされるこ とを避けるために,評価が行われる。 斎藤静樹 [2003]91頁。
|配分と評価を合わせて「測定」measurementと いうこともある。
|次回の講義テーマとします。
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配分 概念的な説明
設備 60億円 3年間使用
20億円 40億円
当期の費用 当期末の資産の価額
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配分(1)
土地を除く有形固定資産の減価償却
機械
取得原価 500万円
耐用年数 5年
残存価額 取得原価の10%
減価償却法 1.定額法 2.定率法
3.その他(生産高比例法,級数法,年金法など)
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2 つの減価償却法
| 定額法
各年度に一定額を配分する。
各年度の減価償却費
=(取得原価-残存価額)÷耐用年数
| 定率法
各年度に一定率で配分する。
各年度の減価償却費
=期首の未償却原価×一定の償却率
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定率法の償却率の計算
Sp
1= C ×( 1 ー d ) Sp
2=[ C - dC ]×(1ー d )
= C ×(1- d )
2:
Sp
n= C ×(1ー d )
n∴ d =1-
n√ Sp
n/C
Sp
n=10%, C =500, n =5のとき,
d ≒ 0.369
定額法の計算式
減価償却費
=(取得原価-残存価額)÷耐用年数
=(500-50)÷5
=90
定率法の計算式
減価償却費
=期首資産価額×償却率
1年度の減価償却費=500×0.369≒ 184.5
2年度の減価償却費=(500- 184.5 )×0.369
≒116.4
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減価償却費の計算
450.0 450
合計額
29.2 90
5年度
46.4 90
4年度
73.5 90
3年度
116.4 90
2年度
184.5 90
1年度
定率法 定額法
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減価償却費の推移
減価償却費の推移
0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 200
1 2 3 4 5
年度
万円
定額法 定率法
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利益計算への影響
50.0 50
5年間の利益合計
70.8 10
5年度
53.6 10
4年度
26.5 10
3年度
(16.4) 10
2年度
(84.5) 10
1年度
定率法 定額法
他の条件が同じならば(other things being equal), 収益=100
各年度の利益額は異なるが,5年間の利益合計は等しい。 16
利益計算への影響(分析)
|
経済的実態が同じでも,定率法は,機械 の耐用期間の早い時期に,相対的に多 額の減価償却費を計上する方法となる。
早期償却。
|
耐用期間の早い時期,利益圧縮効果を 持つ。
類似の配分
1.繰延資産の償却 2.のれん(営業権)の償却
配分( 2 )
棚卸資産価額の決定
|
通常の営業循環過程において販売また は費消される資産で,棚卸によって物量 的に把握できるもの。『広辞苑』
|
商品,原材料,仕掛品,半製品,製品な
ど。
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期末在庫価額の計算方法
1.先入先出法(First in First out; FIFO)
2.後入先出法(Last in First out; LIFO) 3. その他の方法
最終仕入原価法,総平均法,
移動平均法など
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設 例
商 品
4月 1日 期首在庫 100個,@¥100
5月20日 仕 入 50個,@¥150
6月17日 販 売 80個,@¥180
7月15日 仕 入 60個,@¥160
8月25日 販 売 40個,@¥190
9月30日 期末在庫 90個,時価@¥140
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FIFO 概念的説明
期首在庫
@¥100×100個
5月20日仕入
@¥150×50個
7月15日仕入
@¥160×60個
6月17日販売 80個
8月25日販売 40個
9月30日在庫 90個 80個
20個
20個 60個
先に仕入れた商品から先に払い出す。
帳簿上の計算。実際の払い出しとは必ずしも対応せず。
30個
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FIFOによる計算
1.払い出し額(販売額)
6月17日販売分 @¥100×80個=8,000 8月25日販売分 @¥100×20個=2,000
@¥150×20個=3,000 5,000 払い出し合計額 ¥13,000 2.期末在庫額
9月30日 @¥150×30個=4,500
@¥160×60個=9,600 期末在庫額 ¥14,100
LIFO 概念的説明
期首在庫
@¥100×100個
5月20日仕入
@¥150×50個
7月15日仕入
@¥160×60個
6月17日販売 80個
60個 20個
8月25日販売 40個 30個 10個 90個
9月30日在庫 90個
後に仕入れた商品から先に払い出す。
帳簿上の計算。実際の払い出しとは必ずしも対応せず。
LIFOによる計算
1.払い出し額(販売額)
6月17日販売分 @¥160×60個=9,600
@¥150×20個=3,000 12,600 8月25日販売分 @¥150×30個=4,500
@¥100×10個=1,000 5,500 払い出し合計額 ¥18,100 2.期末在庫額
9月30日 @¥100×90個=¥9,000
25
最終仕入原価法
|
最終回の仕入単価で,期末商品在庫の価額 を決定する。
1.払い出し額(販売額)
期首在庫+仕入総額-期末在庫=¥12,700 2.期末在庫
@¥160×90個=¥14,400
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総平均法
|期首在庫額と期中仕入額の全体を平均して,
商品の単価を決定する。
(期首在庫額+期中仕入額)÷総個数
=(¥10,000+¥17,100)÷210個
≒¥129.04
払い出し額=@¥129×120個≒¥15,486 期末在庫額=@¥129×90個≒¥11,614
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利益計算への影響
6,514 9,300
3,900 9,000
利 益
22,000 22,000
22,000 22,000
売上高
11,614 14,400
9,000 14,100
期末在庫
15,486 12,700
18,100 13,000
売上原価
最終仕入 総平均法 LIFO 原価法
FIFO
売上高22,000=14,400(6月17日販売分)+7,600(8月25日販売分)
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利益計算への影響(分析)
|
経済的実態が同じでも,物価の上昇期には,
LIFO→総平均法→FIFO→最終仕入原価法 という順番で,利益圧縮効果が大きい。
|
物価の下落期には,利益圧縮効果は,反対の 順番となる。
費用金額と期末資産価額
|
利益への影響に差はあるが,費用金額 と期末在庫価額の合計は常に一定。
機械の減価償却
累計額+未償却残高=一定
500 50.0 450.0 500 50 5年度 450
500 79.3 420.7 500 140 360 4年度
500 125.6 374.4 500 230 270 3年度
500 199.1 300.9 500 320 180 2年度
500 315.5 184.5 500 410 90 1年度
①+② 合計額
② 未償却残
高
① 減価償却
累計
①+② 合計額
② 未償却残
高
① 減価償却
累計
定率法 定額法
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棚卸資産の価額決定
売上原価+期末在庫=一定
27,100 27,100
27,100 27,100
合計額
11,614 14,400
9,000 14,100
期末在庫
15,486 12,700
18,100 13,000
売上原価
最終仕入 総平均法 LIFO 原価法
FIFO
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まとめ
|配分の意味を理解しましょう。
|配分は,費用性資産に適用されます。
|土地を除く有形固定資産の減価償却と棚卸資 産の価額決定が代表的な事例です。
|各年度の利益への影響は異なりますが,[費用 額+期末資産額=一定]です。