2019年度・線形代数学・同演義II 2019年12月5日
§9 微分方程式,漸化式への応用―――授業で扱わなかった問題の 解答例
9.1 Rで定義された複素数値関数 𝑓 に関する次の微分方程式の一般解を求めよ.
(2) 𝑓′′′′−4𝑓′′′+4𝑓′′+4𝑓′−5𝑓 =0
(2) 以下,微分方程式 𝑓′′′′−4𝑓′′′+4𝑓′′+4𝑓′−5𝑓 =0を(∗)で引用する.
𝑉 = { 𝑓 : R→ C| 𝑓 は𝐶∞ 級,(∗)をみたす}とおく.𝑉は複素線形空間で,Φ: 𝑉 → 𝑉 をΦ(𝑓) = 𝑓′によって定めればこれは線形変換である.
𝑔0,𝑔1,𝑔2,𝑔3 を,それぞれ,初期条件 (𝑓(0), 𝑓′(0), 𝑓′′(0), 𝑓′′′(0)) = (1,0,0,0), (0,1,0,0),(0,0,1,0),(0,0,0,1) をみたす(∗)の解とする.するとΣ = [𝑔0, 𝑔1, 𝑔2, 𝑔3] は𝑉 の基底となる.
基底 Σ に関する Φ の表現行列 𝐴 を求める.まず Φ(𝑔0) については,Φ(𝑔0)(0) = 𝑔0′(0) =0,Φ(𝑔0)′(0) =𝑔0′′(0) = 0,Φ(𝑔0)′′(0) =𝑔0′′′(0) = 0,Φ(𝑔0)′′′(0) = 𝑔0′′′′(0) = 4𝑔0′′′(0)−4𝑔0′′(0)−4𝑔0′(0)+5𝑔0(0) =5より,Φ(𝑔0) =5𝑔3.同様にしてΦ(𝑔1) =𝑔0−4𝑔3, Φ(𝑔2) =𝑔1−4𝑔3,Φ(𝑔3) =𝑔2+4𝑔3が得られる.ゆえに
𝐴=©
«
0 1 0 0
0 0 1 0
0 0 0 1
5 −4 −4 4 ª®®®
¬ . 𝐴の固有多項式𝜑𝐴(𝑥)は
𝜑𝐴(𝑥) =
𝑥 −1 0 0
0 𝑥 −1 0
0 0 𝑥 −1
−5 4 4 𝑥−4
=𝑥4−4𝑥3+4𝑥2+4𝑥−5= (𝑥−1)(𝑥+1)(𝑥2−4𝑥+5)
なので,Φの固有値は±1,2±𝑖.各々に対応する固有ベクトルとして𝑒±𝑡,𝑒(2±𝑖)𝑡 をと ることができる.これらは線形独立であり,したがって𝑉 の基底になっている.よっ て一般解は
𝑓(𝑡) =𝑐1𝑒𝑡 +𝑐2𝑒−𝑡 +𝑐3𝑒(2+𝑖)𝑡 +𝑐4𝑒(2−𝑖)𝑡 (𝑐1, 𝑐2, 𝑐3, 𝑐4 ∈C).
9.2 複素数列 {𝑥𝑛} に関する次の漸化式の一般解を求めよ.
(1) 𝑥𝑛+3+𝑥𝑛+2+𝑥𝑛+1+𝑥𝑛 =0 (2) 𝑥𝑛+4−2𝑥𝑛+2−16𝑥𝑛+1−15𝑥𝑛 =0
(1) 漸化式𝑥𝑛+3+𝑥𝑛+2+𝑥𝑛+1+𝑥𝑛 =0を(∗)で表す.
𝑉 = { {𝑥𝑛} | {𝑥𝑛}は(∗)をみたす} とおく.𝑉 は複素線形空間で,Φ:𝑉 → 𝑉 を Φ({𝑥𝑛}) ={𝑥𝑛+1} によって定めればこれは線形変換である.
𝒗0,𝒗1,𝒗2を,それぞれ,初期条件(𝑥0, 𝑥1, 𝑥2) =(1,0,0),(0,1,0),(0,0,1)をみた す(∗)の解とする.するとΣ = [𝒗0,𝒗1,𝒗2]は𝑉 の基底となる.
基底Σ に関する Φ の表現行列 𝐴 を求める.まずΦ(𝒗0) については,𝒗0 = {𝑦𝑛(0) } とおくと,Φ(𝒗0) = {𝑦𝑛+1(0) } であることから,Φ(𝒗0) の第0 項は 𝑦1(0) = 0,第 1 項は 𝑦2(0) = 0,第 2 項は 𝑦3(0) = −1.ゆえに Φ(𝒗0) = −𝒗2.同様にして Φ(𝒗1) = 𝒗0− 𝒗2, Φ(𝒗2) =𝒗1−𝒗2が得られる.したがって
𝐴=©
«
0 1 0
0 0 1
−1 −1 −1 ª®
¬ . 𝐴の固有多項式𝜑𝐴(𝑥)は
𝜑𝐴(𝑥) =
𝑥 −1 0
0 𝑥 −1 1 1 𝑥+1
=𝑥3+𝑥2+𝑥+1=(𝑥+1)(𝑥2+1)
なので,Φの固有値は−1,±𝑖.各々に対応する固有ベクトルとして { (−1)𝑛},{𝑖𝑛},
{ (−𝑖)𝑛}をとることができる.これらは線形独立であり,したがって𝑉 の基底になっ
ている.よって一般解は
𝑥𝑛 =𝑐1(−1)𝑛+𝑐2𝑖𝑛+𝑐3(−𝑖)𝑛 (𝑐1, 𝑐2, 𝑐3∈C).
(2) 𝑉 を漸化式𝑥𝑛+4−2𝑥𝑛+2−16𝑥𝑛+1−15𝑥𝑛 =0をみたす数列全部からなる複素線形空間 とし,Φ: 𝑉 →𝑉 をΦ({𝑥𝑛})={𝑥𝑛+1}によって定義される線形変換とする.するとΦ の固有多項式は𝜑Φ(𝑥) =𝑥4−2𝑥2−16𝑥−15=(𝑥−3)(𝑥+1)(𝑥2+2𝑥+5)であり,固有値 は3,−1,1±2𝑖.各々に対応する固有ベクトルとして{3𝑛},{ (−1)𝑛},{ (1+2𝑖)𝑛}, { (1−2𝑖)𝑛} をとることができる.これらは線形独立であり,したがって𝑉 の基底に なっている.よって一般解は
𝑥𝑛 =𝑐1·3𝑛 +𝑐2(−1)𝑛 +𝑐3(1+2𝑖)𝑛 +𝑐4(1−2𝑖)𝑛 (𝑐1, 𝑐2, 𝑐3, 𝑐4∈C).
â (2)の解答は短縮バージョンで書きましたが,もちろん,固有多項式を求める箇所はもっと説明 が必要です.
9.3 𝑛次正方行列
©
«
13 6 6 13 . ..
. .. ... ...
. .. ... 6 6 13
ª®®®
®®®®
®
¬
(ただし何も書かれていない箇所は0)の行列式を 𝐷𝑛 とする.𝐷𝑛 を𝑛の式で 表せ.
𝑛次正方行列
©
«
13 6 6 13 . ..
. .. ... ...
. .. ... 6 6 13
ª®®®
®®®®
®
¬ を 𝐴𝑛 と書くことにする.
𝐴𝑛+2=
©
«
13 6 0 0 · · · 0 0 6 13 6 0 · · · 0 0
0 6
0 0
... ... 𝐴𝑛
0 0
0 0
ª®®®
®®®®
®®
¬ と表すことができる.
第1列に関する余因子展開によって
𝐷𝑛+2=det𝐴𝑛+2 =13 det𝐴𝑛+1−6
6 0 0 · · · 0 0 6
0... 𝐴𝑛
0 0
であり,第 2 項に第1 行に関する余因子展開を適用して 𝐷𝑛+2 = 13 det𝐴𝑛+1− 36 det𝐴𝑛 = 13𝐷𝑛+1−36𝐷𝑛 を得る.
漸化式𝑥𝑛+2=13𝑥𝑛+1−36𝑥𝑛 の一般解は𝑥𝑛 =𝑐1·4𝑛+𝑐2·9𝑛 である(詳細は省く).そこで 𝐷𝑛 も𝐷𝑛 =𝑐1·4𝑛 +𝑐2·9𝑛 と表すことができる.ここで 𝐷1 =13,𝐷2 = 132−62 =133だ
から, (
4𝑐1+9𝑐2=13, 16𝑐1+81𝑐2=133. したがって𝑐1 =−4/5,𝑐2 =9/5となり,ゆえに
𝐷𝑛 =−4
5 ·4𝑛 + 9
5 ·9𝑛 = 9𝑛+1−4𝑛+1
5 .