• Tidak ada hasil yang ditemukan

PDF 研究計画書 大規模実時間イベントのためのサイバーフィジカルシステムアーキ

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2025

Membagikan "PDF 研究計画書 大規模実時間イベントのためのサイバーフィジカルシステムアーキ"

Copied!
10
0
0

Teks penuh

(1)

研究計画書

大規模実時間イベントのためのサイバーフィジカルシステムアーキ Cyber-Physical System Architecture for Real-time and テクチャ

Scalable event

慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科 工藤 紀篤

学籍番号80749098 平成24年4 月29日

概要

インターネットの高速化によって多地点での実時間イベントが可能となった。一方その接続に用いられるインターネット上のコ ミュニケーションは、文字から高度な音や映像を組み合わせ新しいメディアとして発展している。本研究では、実空間上での多 地点を連結して同時に進行する実時間イベントを、高度なコミュニケーションメディアの統合化で実現することにより、規模と目 的に適合するサイバーフィジカルアーキテクチャ、CPARSE (Cyber-Physical system Architecture for Real-time and Scalable

Event)を提案する。本システムは放送メディアなどの一対多の一方向メディア、テレビ会議などの双方向多地点メディア、SNS

などの情報共有型のメディアなどの特徴を統合し、対話型の実時間制御システムとの組み合わせで実現する。発展する要素技術か らの独立性を設計理念とし、持続的な運用可能性が成就している。本研究では、CPARSEによって実現される多大学や多国間の さまざまな遠隔教育システムや、コンサートなどのイベント共有システムなどの実証実験を通じたインクリメンタル開発とその評 価によりシステムの正当性を実証する。

1 研究背景とアプローチ

1.1 背景

授業や会議など参加者全員が時間を共有するイベント をリアルタイムイベントとする。リアルタイムイベント ではイベント参加者の発言が他の参加者に時間差無く共 有されるため質疑応答などイベント参加者間でのコミュ ニケーションが実現する。これまで授業や会議など実際 のリアルタイムイベントは、教室や会議室など同一空間 内で行われてきた。

しかしデジタル情報基盤としてのインターネット上で は、一般家庭におけるブロードバンド環境の普及やモバ イル環境におけるインターネットアクセスの広帯域化、テ レビ会議システムや大規模な動画配信技術など要素技術 の持続的な発展により複数地点間を接続したリアルタイ ムイベントが片方向メディアや双方向メディアなど様々な 手法で実現可能となった。

高等教育においても,複数大学間での遠隔授業による 単位互換や共同授業,各種イベントのインターネット配 信,国内外の研究者との遠隔会議など教育研究活動におい て数多くのリアルタイムイベントが実施されている.筆 者らは,慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科を中 心とする4大学5研究科による先端ITスペシャリスト育 成プログラムなど遠隔授業環境を構築してきた。時間を 共有する遠隔授業は非同期のビデオアーカイブと比較し、

質疑応答や他の受講者とのコミュニケーションにより授 業への参加間や臨場感が高く受講者の満足度が高い。し かし、同一地点内からの参加と比較し臨場感に欠けたり、

集中しにくいなどの課題が挙げられている。特に片方向 メディアを利用する場合、質疑応答や感想の共有などコ ミュニケーションが難しく参加者が時間を共有する意義 を失うこともある。

2000年以降、「情報爆発」という現象が観測されるよう にインターネット上に存在する情報量の増加が爆発的に 加速している。この一因としては、個人が気軽にBlogや SNS上で文字や写真の共有が可能になったことが挙げら れる。リアルタイムイベントにおいても、近年Facebook

やTwitterなどよりリアルタイム性の高い基盤上におい

て、感想や雑談が共有され議論が進むなど従来のテレビ 会議システムや動画配信以外のメディアにより生み出さ れる情報が増加している。またセンサーにより取得され る室内の各種機器や参加者の動作などの情報もインター ネット上で共有可能となっている。

しかし、既存の遠隔授業やイベントのインターネット 配信では、地点間を接続する機器やシステムが対応する ごく一部の情報だけが共有されている。SNSや空間内の センサーなど日々進歩する新しいメディアに対応した環 境の構築は、人と人のコミュニケーションを地点間で再 現するモデルに基づく特定の要素技術では実現が困難で ある。本研究ではこれまでのコミュニケーションモデル とは異なる新たなリアルタイムイベント環境を提案する。

1.2 本研究のアプローチ

近年、サイバーフィジカルシステム(CPS)と呼ばれる 新たな考え方が注目を集めている。サイバーフィジカル

(2)

図 1: 同一フィジカルスペース内での会話

システムの定義はsystem featuring tight combination of, and coordination between the system’s computational and physical elementとされており人や物から生成される 大量のデータをクラウドなどサイバースペース上に蓄積・

処理し新たなサービスを生み出している。本研究が対象 とするリアルタイムイベントにおいても、参加者や機器 から多くの情報が生成されている。

本研究では、こうしたフィジカルスペース上での多地点 を連結して同時に進行するリアルタイムイベントを、高度 なコミュニケーションメディアの統合化で実現することに より、規模と目的に適合するサイバーフィジカルアーキテ クチャ、CPARSE (Cyber-Physical system Architecture for Real-time and Scalable Event)を提案する。

CPARSEは、(1)フィジカルスペースにおけるリアル

タイムイベントのセンシング、(2)サイバースペース上で イベントの規模や目的に応じて複数のメディアを融合す るプロセッシング、(3)融合されたメディアのモニタリン グとコントロールをリアルタイムに行うアクチュエーショ ンから成り立つ。

2 既存環境の分析

2.1 コミュニケーションモデルに基づくリアル タイムイベント

fig:p2pcomに同一フィジカルスペースにおけるコミュ ニケーション例として2人の参加者間での会話を示す。同 一フィジカルスペース内では無意識のうちに無数の情報が 共有されており、お互いに相手の姿を視認することやジェ スチャーだけでなく室内に表示される資料なども参加者 間で共有されている。またこの時相手が自分のことが見 えていること、声が聞こえていることは保障されている。

この環境では図中の参加者aが参加者bに片方向的な情 報伝達を行う際でも、参加者bから参加者aに対してう なずきや表情また視線を合致させるなどのフィードバッ

図2: 複数フィジカルスペース間での会話

クが発生する。fig:dp2pcomにこの環境が複数フィジカル スペースに分断した状態を示す。図 では地点Aと地点 Bが双方向メディアにより接続されている。地点Aの参 加者aが地点Bの参加者Bに情報伝達を行う場合、同一 フィジカルスペース内とはことなり全ての情報が無意識 のうちに共有されない。発言、ジェスチャー、資料などコ ミュニケーションの目的を達成に必要な情報が選択され、

映像音声、画像、文字などのメディアがサイバースペー ス上を通過しコミュニケーションの相手方に伝達される。

利用するメディアの種類はリアルタイムイベントの規模、

目的、利用可能なリソースにより決定される。

fig:dp2pcomにおいて、参加者aの発言とジェスチャー が映像と音声で共有され、参加者bの発言が文字情報と して共有されるとすると、参加者aは参加者bの発言内容 以外の情報を得られない。よって同一フィジカルスペース では実現していた参加者bのうなずきや表情などフィー ドバックを得ながらのコミュニケーションは成立しない。

重近らは,リアルタイムイベントを発言や演奏などイ ベントにおいて主となるコミュニケーションをInbandコ ミュニケーションと定義し、臨場感やイベントへの参加 感に繋がる私語やアイコンタクトなどのコミュニケーショ

ンをOutbandコミュニケーションと定義した。

既存の複数フィジカルスペース間でのリアルタイムイ ベントの多くは、同一フィジカルスペースにおける物と 比較して品質や満足度が低いと言われる。例えば、遠隔 授業において遠隔地の受講者が教室内の受講者と比較し 講義に集中することが難しかったり、教員が受講者から フィードバックを得られないため講義し難い事や、コン サートなどの芸術文化コンテンツを視聴する際の満足度 が演奏会場における体験に及ばない。これは臨場感やイベ ントの参加感に関わりをもつOutbandコミュニケーショ ンが欠落していることによる。

(3)

2.2 メディアの品質と限界

イギリスArt Councilによる芸術文化コンテンツのオ ンラインでの利用状況調査では、芸術文化コンテンツの オンライン視聴では約6割の視聴者が生の体験より品質 が劣ると回答し、また他者とのコミュニケーションが無 いことを惜しんでいる結果が得られている。

リアルタイムイベントへの遠隔参加時の画質は利用す る機器や視聴者の環境によって異なるがほとんどの場合 においてSD品質程度であり、デジタル化した現行のテレ ビ放送のHD品質に劣っており満足度が低い。また専門 のスタッフにより制作されるテレビ番組と比較しカメラ ワークなどコンテンツ制作上の品質でも劣る物が多く同 一フィジカルスペースにおいてイベントに参加する場合 より劣った環境であることが多い。遠隔授業や会議など で利用する双方向のテレビ会議システムでも同様に画質 や音質の問題と伝送遅延によるコミュニケーション時に 違和感が問題となる。

並木らは、等身大に表示される人物映像表示、発言者 の位置が特定できる音場、HDTV映像伝送、一体感をか もし出す高臨場感の会議環境により遠隔地の人物が同じ 部屋にいるかのような会議環境を構築し場の共有を行っ ている。また近年ではCiscoやPolycoomなど多くの企業 が同様のコンセプトのテレプレゼンス装置を販売してい る。しかし少人数の会議など特定の条件に特化し、画質 や音質の高品質化だけでなく什器とそのレイアウトや音 が聞こえる方向の統一によりフィジカルスペース間で共 有する情報の種類と品質を最大限に高めた空間共有でも

一部のInbandコミュニケーションに利用されるメディア

を増やしたりその品質を高めたに過ぎず、同一フィジカ ルスペース内のコミュニケーション環境を模倣したもの である。

よって、コミュニケーションモデルに基づいたコミュニ ケーション環境は、同一フィジカルスペースにおける対 面でのコミュニケーションを超えることはできない。

2.3 参加者間のコミュニケーション

他の参加者と時間を共有するリアルタイムイベントで は各参加者が発言したり、質疑応答などの直接的なコミュ ニケーションが存在しなくても他者の存在が重要である。

コンサートホールやスポーツの試合会場では、直接の会 話がなくとも応援、拍手、歓声などをtooしてイベント参 加者全体が一体感を感じることで参加感が得られる。ま た会場への行き帰りなどに同行者と期待感や感想を共有 することもイベントへの参加における重要な要素である。

しかしテレビ放送のような片方向メディア単体によるコ ンサートやスポーツ観戦には他のイベント参加者とのコ ミュニケーションが存在しない。よって会場での一体感や イベントへの参加感を得るため、不特定多数の集団を形 成するパブリックビューイングが催されることもある。

サッカーなどスポーツの試合に試合会場ではなくテレ ビ放送などを集団で視聴するパブリックビューイングで

参加することは近年一般的となった。西尾らはパブリッ クビューイングをコンテンツの予測不可能性の高さ、場 所の脱個人性の高さ、オーディエンスの匿名性の高さの3 点から成り立つイベントを再イベント化した物と定義し、

スポーツの試合など結果がわからないイベントに自宅で はなくあえて公共の場所から不特定多数の参加者と一緒 に応援したり歓声をあげることがイベントへの参加感や 一体感に繋がるとしている。しかし、パブリックビューイ ング会場と試合会場、また複数のパブリックビューイン グ会場間は独立しており試合会場からの放送以外に会場 間を接続するメディアは存在しない。よって各パブリック ビューイング会場は試合会場とは独立したイベントであ り、試合会場と全てのパブリックビューイング会場をふく めた全体としての一体感や共感を生むことは難しい。ま たパブリックビューイング会場はフィジカルスペースな ので収容人員や会場が遠いなどの物理的な制約を受ける。

2.4 新たな技術への対応

TwitterやFacebookなどリアルタイム性の高いSNSを 用いて講演や議論の内容を要約し文字情報として共有し たり,その感想や意見を共有し会場での議論にフィード バックする新しい形のリアルタイムイベントが近年注目 されている.

しかし従来型リアルタイムイベントではこうした新し い技術は考慮されておらず従来型リアルタイムイベント では,映像や音声の高品質化や伝送される情報の種類を 増やしコミュニケーション品質を改善するアプローチを とる.一方,SNSへの投稿はテキスト化など情報量を減 らすアプローチが取り,イベント参加者だけでなくSNS の他のユーザへも情報を拡散しフィジカルスペースにお けるコミュニケーションに近づけるのではなく別の価値 を創造している.拡散した情報から途中からでもログを 参照して途中参加したり,他の作業をしながらイベント に参加するなどこれまでとは異なるイベントへの参加方 法が提供される.

SNSに限らずサイバースペース上で日々進化する新た なサービスやアプリケーションを柔軟にリアルタイムイ ベントに取り込めない点で従来型リアルタイムイベント には限界がある.

3 本研究のアプローチ

本研究では,従来のフィジカルスペース間の接続による リアルタイムイベントに変わる新しい形態として,フィジ カルスペースから取得した情報をサイバースペース上で 共有するアプローチをとるサイバーフィジカルシステム アーキテクチャCPARSE(Cyber-Physical system Archi- tecture for Real-time and Scalable Event)を提案する.

(4)

3.1 本研究におけるサイバーフィジカルシス テム

サイバーフィジカルシステムとは,一般にフィジカルス ペースにおける事象から取得(センシング)したデータを サイバースペースにおける計算能力により処理(プロセッ シング)し,フィジカルスペースにおける機器のコント ロールなどのアクチュエーションを行うループを構成す るアーキテクチャである.

サイバーフィジカルシステムは,センサネットワーク の発達によりフィジカルスペース内における多くの情報 がセンシングできるようになり,またそのデータをイン ターネット上で共有可能になったこと,またサイバース ペース上でそのデータを処理できるコンピューティング リソースが安価に利用できるようになったことで近年注 目を集めている.

代表例の一つであるスマートグリッドでは,リアルタ イムに変化する各地の電力需要を機器レベルからセンシ ングしプロセッシングを行う.プロセッシング結果に基 づき発電量や送電網の調整,個別機器の制御を行うアク チュエーションを繰り返し送電網全体を最適な状態にす るループを構成している.

本研究では,フィジカルスペースにおけるリアルタイ ムイベントから人間のコミュニケーションに必要な情報 をセンシングする.これをサイバースペースにおけるプ ロセッシングとアクチュエーションによりメディア変換を 行い参加者毎に適切なメディアを提供しリアルタイムイ ベントを実現する.

3.2 CPARSE

fig:cparseにCPARSEの概要を示す.リアルタイムイ ベント参加者が複数人いる地点をフィジカルスペースと 定義する.フィジカルスペースにおける参加者は,講演や 演奏などを同一フィジカルスペース内のリアルタイムイ ベント時と同様に行う.CPARSEは1)フィジカルスペー スにおけるイベントのセンシング,2)センシングされた イベントの情報を参加者に適したメディアに変換しマッ ピング情報を生成するプロセッシング,3)複数のマッピ ング情報を統合しリアルタイムイベント全体のモニタリ ングとコントロールを行うアクチュエーションからなる.

教員による講義や講義資料,演奏者による演奏などフィ ジカルスペース内のイベントを構成する情報をカメラや マイクなどでセンシングしサイバースペースへ送信する.

少人数会議における密な議論では,全参加者の映像音声が 双方向で共有されなければ成立しないが,大規模な講義 型授業であれば教員の映像音声だけが共有されれば成立 するなどセンシングする情報は,イベントの目的や規模 により異なる.センシングされた情報はサイバースペー ス上のサービスやアプリケーションによるプロセッシン グにより,サイバースペース上にマッピングされたフィジ カルスペースの情報(マッピング情報)となる.

マッピング情報はサイバースペース上で共有され,遠 隔参加者がリアルタイムイベントに参加するために利用 する.遠隔参加者は,自宅など固定されたフィジカルス ペースからのアクセスだけでなく,移動中であったりイベ ントが行われているフィジカルスペース内で携帯端末を 利用する場合もあり,特定のフィジカルスペースから参 加しない.また1人が複数のアプリケーションを用いた り,フィジカルスペースからもイベントに参加する場合 もある.よってフィジカルスペース内の参加者に対して,

サイバースペース上でマッピング情報にアクセスする主 体をサイバーエレメントと定義する.

サイバーエレメントはマッピング情報にアクセスする だけでなく質問や意見など発言もする.CPARSEではサ イバーエレメントからの発言もセンシングしサイバース ペース上でマッピング情報として共有する.サイバーエ レメントからセンシングされる発言では,映像や音声と いった既存のメディアだけでなく,文字入力や拍手等特定 のアクションボタンをクリックするなど抽象化を行い他 のメディアを用いることもある.

CPARSE により実現するリアルタイムイベントは,

H.323やSIPなど特定の要素技術に依存した構築された

環境ではない.フィジカルスペースからセンシングとそ のプロセッシングにおいて複数の異なる技術を併用でき る.その結果生成されるサイバースペース上に分散する 複数のマッピング情報をイベントの規模や目的により組 み合わせ,帯域やデバイスが異なるイベント参加者それ ぞれが利用可能なマッピング情報へ誘導し,リアルタイ ムイベント全体のモニタリングとコントロールをおこな う機能をアクチュエーションと定義する.

3.3 目的と要求事項

授業や会議などの目的、参加者数や接続される拠点数、

利用可能な帯域、利用できる機器により遠隔リアルタイ ムイベント

4 CPARSE による放送型リアルタイ ムイベントの設計と実装

CPARSEでは目的や規模に応じてリアルタイムイベン

ト環境を構築する.本研究では実証実験として,演奏会 と卒業式の2種類の規模や目的の異なるリアルタイムイ ベントにおいてその評価を行った.

4.1 実証実験 1:演奏会

4.1.1 イベント概要

演奏会における実証実験を2010年12月31日に東京文 化会館大ホールで開催された「ベートーヴェンは凄い!全 交響曲連続演奏会2010」のインターネット配信で行った.

(5)

図3: サイバーフィジカルシステムアーキテクチャ

本演奏会は毎年大晦日にベートーヴェンの全交響曲を 演奏するイベントである.指揮者のロリンマゼール氏の 希望により世界中で演奏を共有するため動画配信を実施 した.本実証実験では,大画面での3D映像とサラウンド 音声によるパブリックビューイングと,遠隔参加者の環 境別の動画配信を実施し低帯域から広帯域環境で演奏が 楽しめる環境を構築した.また12月に数多く催される第 九演奏会への参加に期待される一年の締めくくりを他の 参加者と共有し得られる一体感を得るため参加者の感想 など発言を共有した.

4.1.2 演奏会場からのセンシング

オーケストラの演奏会は視聴環境の品質に対する要求 が高い芸術文化イベントであり,演奏会場内の座席によっ て販売価格が異なったり,高価なアンプやスピーカーで クラシック音楽を楽しむファンが多い.よって動画配信時 には画質や音質を可能な限り高品質としなければならな い.またオーケストラ演奏では,曲の進行にあわせて見 せ場となる楽器や演奏者が異なる.よって映像制作者が 演奏を理解し,曲にあわせた撮影やミキシングがされな ければならない.本実証実験では,テレビ放送品質の番 組制作能力をもつ株式会社NHKメディアテクノロジーを 中心としたオーケストラ演奏を熟知したスタッフが演奏 会場でオーケストラ演奏をセンシングした.隔参加者が 高い臨場感を得られるよう,通常のテレビ放送における HD(1080i)撮影,3Dカメラを用いた奥行き感を得られる 撮影,5.1チャンネルサラウンド音声と24bit/96kHzステ レオ音声による録音を行った.

一方で,演奏中には質疑応答など観客が発言する機会 はなく私語はノイズとなる.拍手や歓声など観客からの フィードバックは演奏者に必要だが,演奏会場内にも観

客がいるため,本研究では遠隔参加者からのフィードバッ クは行わない.また会場内の参加者の様子も会場全体の 雰囲気を伝える全体映像や環境音程度とし個別の観客に よる発言やジェスチャーはセンシングしない.

演奏会場からの片方向配信では,遠隔参加者は孤立しイ ベントへの参加感を失う.本実証実験では,(1)パブリッ クビューイングによる集団視聴,(2)感想や意見の文字情 報による遠隔参加者間での共有,の2つの手法で参加感 や一体感が得られる環境を構築する.

パブリックビューイング参加者間のコミュニケーション とそれにより得られる一体感は,会場内でのみ得られる 感覚である.よって他のフィジカルスペースの参加者と の共有を行わない.

本実証実験では,遠隔参加者の感想や意見などの発言 を文字情報としてセンシングし共有する.文字情報は,演 奏会において最重要な演奏を妨害するノイズとならない.

過去には坂本龍一コンサートにおけるRemote Clapsでは 拍手の共有,Gayaシステムではランダムに表示される短 文を表示して遠隔参加者とイベント会場内の参加者が同 一のコミュニケーション基盤を共有している.どちらも会 場内では発言という音声メディアを用いて共有されてい たものだが,発言や行動の抽象度を高めることでスケー ラビリティが高められる工夫がされている.抽象度が高 まると表現できる情報量は減少する.本実証実験ではボ タンなど抽象化されたアクションではなくコンテンツに 関する感想意見だけでなく自分の状況や技術的なトラブ ル報告などを自由記述できること,またイベント参加者 だけでなく友人や知人などへの情報拡散ができるTwitter により参加者の発言をセンシングする.

またイベントへの参加者数を測定するため,動画の視 聴者数をリアルタイムでセンシングする.

(6)

表1: 演奏会におけるマッピング情報

マッピング情報名 映像 音声 アクセス方法

(1)3Dサラウンド音 3D(1080i) 5.1ch オリジナル

(2)サラウンド 3D(720p) 5.1ch CDN(WMT)

(3)3Dサラウンド 3D(720p) 5.1ch マルチキャスト

(4)3Dステレオ 3D(720p) 2ch(44.1kHz)) Ustream (5)2D HD 2D(720p) 2ch(44.1kHz) Ustream (6)3Dモバイル 3D(SD) 2ch(44.1kHz) Ustream

(7)静止画 静止画 2ch(48kHz) Ustream

(8)音声(24bit) 無し 2ch(48kHz) CDN(WMT)

(9)音声(24bit96khz) 無し 2ch(96kHz) CDN(WMT)

(10)音声(マルチキャスト) 無し 2ch マルチキャスト

4.1.3 プロセッシング

本実証実験では,センシングした情報を演奏会場から 慶應義塾大学日吉キャンパスへHD-SDI over IP(H.264

18Mbps)で伝送し参加者の環境にあわせたマッピング情

報を生成するプロセッシングを行った.パブリックビュー イング会場では,センシングされたオリジナルのフルHD 3D映像と5.1chサラウンド音声を用いる.

遠隔参加者向けインターネット配信用には,帯域別に 複数種類のマッピング情報を生成する.本研究では参加 者のインターネット接続を1)高帯域(2Mbps以上),2)中 帯域(500Kbps程度),3)低帯域(100Kbps程度)と定義し た.広帯域では,3D映像もしくはHD解像度の映像とサ ラウンド音声により3D対応ディスプレイなどと組み合わ せることで高い臨場感が得られる事とする.中帯域では SD解像度の映像とステレオ音声による一般的なPC環境 での視聴もしくは,映像無しの高ビットレートの高音質 ステレオ音声によりDAC等と接続してCD以上の品質を 持つ音声で視聴とした.低帯域では,ステレオ音声のみ で国外やスマートフォンなどのモバイル環境からでもア クセスできる.この方針に基づき最終的に表tab:henkan に示すマッピング情報を生成した.これらのマッピング 情報には数万人単位でのアクセスできることとする.本 実証実験では,Ustream,WIDE Cloud,協力CDN事業

者によるCDN,IPマルチキャストという独立した複数の

手法を併用してスケーラビリティを確保した.

Twitterを用いてセンシングされた遠隔参加者のツイー

トを不特定多数のイベント参加者間で共有するためハッ シュタグを定めUstreamのソーシャルストリーム機能に より動画を視聴しながら同一画面内にツイートを表示し た.fig:ustscreen左側にU streamによる画面表示例をし めす.ツイートだけでなく同一画面内に視聴者数を表示し

,他者の存在感を表現した.f ig:ustscreen右上にスマー トフォンによる(5)3Dモバイルへのアクセス時の表示例

,右下に(4)3DステレオへP CでアクセスしHDM Iケー ブルで3D対応テレビへ出力した際の表示例を示す.これ らの視聴方法ではツイートは同時に表示されないが,ツイ ートはU stream以外のT witterクライアントやW eb

ラウザからも利用でき,ハッシュタグ検索を行うことで イベント中の他の参加者の発言を参照できる.

4.1.4 アクチュエーション

本実証実験では,サイバースペース上に生成された複数 のマッピング情報の統合と遠隔参加者が各自の環境にあ わせた環境でイベントに参加するためのゲートウェイと してWebページ(http://a4a.wide.ad.jp/)を構築し,遠 隔参加者がそれぞれの環境に最適なマッピング情報へア クセスできるようにした.

リアルタイムイベントを実現するため,慶応大学日吉 キャンパスにおいて全てのマッピング情報を実際に視聴 するモニタリングと,音量調整やチャンネル間の誘導を 行うコントロールをおこなった.

4.2 実験概要 2: 卒業式

4.2.1 イベント概要

演奏会とは異なるタイプのイベントとして2011年3月 に実施された慶應義塾大学の4つのイベントにおいても 実証実験を行った.卒業式は本来同一フィジカルスペー ス内に参加者が集合して実施されるが,2010年度は東日 本大震災の影響により参加者が同一地点に集合すること が困難となったため,インターネット配信によるイベン トとして実施した.

平成22(2010)年度慶應義塾大学学部学位記授与式

日時:2011年3月23日11:00〜13:00

場所:慶應義塾大学三田キャンパス北館ホール

SFC卒業式

日時:2011年3月23日15:00〜16:00

場所:慶應義塾大学三田キャンパス北館ホール

平成22(2010)年度慶應義塾大学学部学位記授与式

日時:2011年3月29日11:00〜12:00

場所:慶應義塾大学三田キャンパス北館ホール

SFC大学院卒業式

日時:2011年3月29日15:00〜16:00

場所:慶應義塾大学三田キャンパス北館ホール/フィ リピン(ゲスト)

本実証実験では学部や研究科毎の卒業生代表や学部長な ど登壇者だけが会場から参加し,他の卒業生や保護者は インターネット配信により参加した.SFC大学院卒業式 ではフィリピンからのゲストスピーカーと登壇者の対談 も行いその様子も配信した.

(7)

4.2.2 イベント会場からのセンシング

卒業式は演奏会と比較すると品質に対する要求は低い.

特にサラウンドや非圧縮音声であることで参加者の印象 が大きく変化することはない.映像に関しても表情やジェ スチャーが認識できれば問題なく,演奏会のように無限 に高い品質を追求する必要がない.本イベントでは,壇 上で進行する式典の様子をHD解像度の映像とステレオ 音声でセンシングする.

卒業式も演奏会と同様に代表者以外の卒業生は発言す る機会はない.しかし,着飾った他の卒業生の存在感,友 人との会話や記念写真など参加者間コミュニケーション は重要である.本イベントではこうした参加者間のコミュ ニケーションの補完するため,遠隔参加者の視聴風景を 写真や動画,感想などの発言を文字情報としてセンシン グし共有する.演奏会と同様にTwitterを用いてこれら をセンシングする.写真や動画など文字以外のメディア はWebサービスを用いて実現しTwitter上でURLを共 有することとした.

4.2.3 プロセッシング

演奏会と同様に広帯域から低帯域まで様々な環境から イベントに参加できるようプロセッシングを行う.本イベ ントでは(1)広帯域(2Mbps程度),(2)中帯域(200kbps 程度),(3)低帯域(64Kbps程度)の3種類のマッピング 情報を生成した.またマッピング情報への同時アクセス は,例年の卒業式への参加者数約1万人程度と予測した.

広帯域では,解像度720p(1280×720ピクセル)の映像 とステレオ音声とし,自宅や大学からの視聴を想定した.

中帯域では解像度は352×198ピクセルとステレオ音声 としモバイル環境を含め幅広くアクセス可能な映像音声 の配信を行った.また音声チャンネルではより低帯域の 環境を想定し64kbpsで音声のみとした.

4.2.4 アクチュエーション

演奏会と同様に複数あるマッピング情報へ参加者が円 滑にアクセスしイベントに参加するためのゲートウェイ としてWebページ(http://live.wide.ad.jp)を用いて複数 のマッピング情報から参加者がそれぞれ適切なマッピン グ情報へアクセスする.

また,遠隔参加者がアクセスするマッピング情報をス タッフがモニタリングし映像や音声にトラブルが無いこ とを常時監視し,必要に応じたコントロールを行う.同 時に遠隔参加者が発信するマッピング情報のモニタリン グをおこない,誹謗中傷など不適切な発言があった場合

はUstream画面内からの削除を行える体制をとった.

図 5: 演奏会中における同時視聴者数とツイート数

4.3 評価

4.3.1 イベント参加者数

表tab:numbersに各イベントの遠隔参加者数としてUs- treamへのアクセス数とTwitterにおける発言数(ツイー ト数)を示す.

演奏会ではUstreamを利用した4つのチャンネルにの べ117,992のアクセスを集めTwitterでは2,200のアカウ

ントから14,821ツイートを観測した.ユニーク視聴者数

でも55,135アクセスを集めており,東京文化会館(定員

約2,000人)を大幅に上回る遠隔参加者が50カ国以上か らイベントに参加した.

fig:a4aにUstreamとWMTへの同時アクセス者数と ツイート数を示す.時間の経過と共にイベントへの参加 者数もツイート数も増加を続けている.イベントへの参 加者のほとんどはUstreamを利用しており,そのアクセ ス元は約6割がUstream内からのアクセスもしくは公式 Webページ経由であった.また2割がTwitterを経由し ており,ツイート内容を分析すると,知人友人へ向けて の案内やそれを元とした会話も観測されており,イベン ト中の口コミが視聴者数増加に関与したと考えられる.

学部学位記授与式では 6,000 人の卒業者数に対して 18,397のユニークアクセス,SFC学部卒業式では700人 程度の卒業生に対し6,933のユニークアクセスを記録する など,卒業者数以上のアクセスを記録している.ツイー ト内容の分析からOBや在学生など本来の卒業式関係者 以外も数多くイベントに参加していたと考えられる.

4.3.2 マッピング情報の品質

演奏会では,品質の異なる10種類のマッピング情報を 生成しパブリックビューイング会場や遠隔参加者へ配信 を行った.各マッピング情報の品質はTwitter上で画質 や音質だけでなくカメラワークなどコンテンツ制作に関 しても多くの好意的メッセージがが集まり参加者に好評 であった.また,24bit 96kHzの音声は現行のテレビ放送 やCDの品質を超えておりインターネット配信であって も高品質が実現できることを示した.

(8)

表 2: イベント参加者数

イベント名 ユニーク視聴者数 のべ視聴者数 ツイート数 発言者数

演奏会(Ustream) 55,135 117,992 14,821 2,200

学部学位記授与式 18,397 28,531 725 307 SFC学部卒業式 6,933 10,356 656 221 大学院学位記授与式 5,182 7,871 67 36 SFC大学院卒業式 1,990 2,519 127 45

図6: 交響曲第九番演奏中のツイート

コンテンツ制作に関しては,オーケストラ演奏を熟知 したスタッフにより制作され後日テレビ放送も行われる 高品位なコンテンツが制作された.また,テレビ放送時 にはカットされたが,イベント中は休憩時間も映像音声 の配信を続けたため,テレビ放送ではカットされる休憩 時間中の一部演奏者による音出しや,第九前の合唱団用 ひな壇設置など会場内でしか見られない様子を遠隔参加 者も視聴できた.これはTwitter上での雑談のきっかけと なっておりイベントへの参加感を感じることに役立った といえる.

4.3.3 演奏会におけるTwitterログの解析

交響曲第九番演奏中のツイートを5分ごとに内容別に 分類した結果をfig:dai9に示す.配信サーバやプレイヤー 側のバッファリングなどの要因により参加者は数分程度 の時間差で参加している.よって演奏の開始や終了など が厳密には同時にならないため5分程度毎に集計した.

ツイート数は演奏が始まる前22時と演奏終了直後の23 時30分頃にピークとなっている.しかしその内容は異な る.演奏が始まる前には,参加者数をカウントや,視聴し ていない友人知人への紹介など,これから始まる演奏への 期待感を募らせるものが多く内容は分散している.しか し演奏終了後は拍手や歓声を表す表現が多くなり演奏者 に対する賞賛や感謝に変わり内容もほぼ同一となる.ま た演奏終了後のツイート数が最も大きな盛り上がりを見 せている.これは第九番以外の他の交響曲演奏時にも同

図 7: 学部学位記授与式におけるツイート数の推移

様の傾向だった.拍手や歓声など演奏会場における意思 表示を抽象化した機能がなくとも多くの参加者から拍手 や歓声を表す表現がツイートされ,発言全体ほほとんど が得そうに対する賞賛となっており参加者間で共感が生 まれていたと考えられる.

演奏中も常時ツイートがあり,参加者数の推移や感想 など演奏会に関するツイートだけでなく,家事や帰省な ど大晦日の生活の様子を通して世界中から演奏会へ参加 している様子が共有されたことが,それぞれの参加者が 大晦日にベートーヴェンの演奏会に参加していると感じ られた事につながった.

従来の演奏会における演奏会場内では,演奏を楽しむ 以外の行為は存在せず他者とのコミュニケーションはノ イズとなるため存在しなかった.しかし遠隔参加者に演 奏の視聴を邪魔しないTwitterによるコミュニケーション を用意することで会場とは異なるカジュアルな演奏会へ の参加が実現した.

4.3.4 卒業式におけるTwitterログの解析

表tab:numbersに卒業式の各イベントで定めたハッシュ タグに対するツイート数とユニークアカウント数を示す.

Ustreamの視聴画面からの発言には自動的にハッシュタ

グが付与されるが,会場内の参加者なども発言にハッシュ タグを含めることでサイバースペースにおける参加者間 コミュニケーションに参加できていた.

fig:tweetsに学部学位記授与式における5 分ごとのツ イート数をしめす.式典の開始前後と終了時と中盤の12 時15分頃にも発言数が多いピークがありイベント参加者 の盛り上がりがあった.

演奏会と同様に,イベントの開始前には友人知人への 紹介や視聴者数の報告など期待や卒業の喜びの表現が多

(9)

く見られた.イベント開始後には参加者数の推移や感想 だけでなく,演奏会では見られなかった登壇者の発言内容 の要約が共有され,動画視聴をしなくともツイートだけ でイベントに参加できた.また,中盤に盛り上がりをみ せた12時15分頃は塾歌(校歌)の斉唱時であった.この 時,演奏にあわせ歌詞がツイートされ発言数が増えてお り,会場で歌うかわりにTwitter上で発言することでイ ベントへの参加意識が高まったと考えられる.イベント 終了直後の盛り上がりでは,卒業生への祝福のメッセー ジや,インターネット配信による式典への感想などがよ せられた.

イベント中の参加者の私語は,演奏会と同様に卒業式 の会場内では禁止されている.しかし本実証実験では,参 加者のイベントへの参加感を高めたり,イベントの存在 を広めより多くの参加者を集める働きをした.これは演 奏会における実証実験時と同様に,Twitter上で共有され る情報が卒業式そのものを視聴するにあたり邪魔になら なかったためである.

また,イベントの参加者へ向けた写真アップロードの 呼びかけに対して図fig:sfcpicsに示すような一部参加者 による自主的なパブリックビューイングの様子や動画配 信,家庭での視聴環境が共有された.文字に限定されず さまざまなメディアにより参加者からのフィードバック や互いの存在感が共有された.

SFC学部卒業式はイベント当日に実施が決定されたた め,開始直前には数多くのイベントの紹介がTwitter上 で観測された.

学部学位記授与式や演奏会の実証実験とは異なり,登

壇者もTwitterへのアクセスをするためそれぞれのノー

トPCをもって登壇した.よってイベント中にも参加者か らのメッセージや写真を確認したり,壇上からツイート に返信するなど参加者と直接コミュニケーションを交わ すこともあった.その結果SFC学部卒業式では,単位時 間あたりのツイート数が学部学位記授与式(6ツイート/

分)と比較し11ツイート/分と大幅に増加しており単なる 動画の視聴ではなく,発言を行うイベントへの参加とい う感覚がより強い物となった.またSFC大学院卒業式で は,修了証書の授与に代わり研究会委員長による修了者 の氏名呼び上げを行い,それに対してTwitter上で「は い」という返事をツイートさせる試みを行った.この試

みでもTwitter上に多くのツイートが集まりイベントの

双方向性を高めた.

4.3.5 スケーラビリティ

演奏会における実証実験では,第九演奏中の23:30ころ Ustreamを用いた2D HDチャンネルに6,313の同時アク セスを記録した.2D HDチャンネルは約2Mbpsのビッ トレートで配信をしているため最大で約13Gbpsのトラ フィックが発生した.アクセス数の増加に伴い,23時頃に 一部参加者がUstreamの2D HDチャンネルで映像や音 声が途切れるなど不具合を訴えた.しかし,Ustream側

での対応と,リソースに余裕のあるUstream以外への誘

導をTwitter上で行った結果イベント全体としては支障

なく運営できた.

卒業式の4つのイベントの中でUstreamへの同時接続 が最大となったのは学部学位記授与式における3月23日 12:25分頃で,HDチャンネルへ3,075アクセスを記録した.

HDチャンネルでは2Mbpsでの配信であり,合計6Gbps 以上のトラフィックが生成されたが問題無く配信できた.

またUstreamは2010年に行われた宇多田ヒカルのライ ブ配信において同時接続数10万を超える規模での配信を 行うなど本実証実験を大きく超える規模でも利用可能で あり十分なスケーラビリティを持っていた.

実施した実証実験におけるTwitter上のツイート数は,

演奏会の実証実験時には全ての演奏が終了した直後お 23:35からの5分間に600ツイートを記録した.またSFC 学部卒業式の終了直後の16:00からの5分間に155ツイー トを記録した.

時間あたりのツイート数が増加すると全ての発言を読 むことが難しくなるが,発言数が急増することで場の盛 り上がりや一体感を感じられる.フィジカルスペースに おいても少人数では意味をもった会話やかけ声だが多数 集まる事でざわめきや歓声となり個々の発言のもつ意味 が薄くなるが場の雰囲気に影響を与えている.サイバー スペース上でも多数の発言が集まることで個々の発言内 容を把握できなくても盛り上がりを感じさせる効果を持 つため,本実証実験より規模の大きなイベントにおいて より大量の発言が短時間に集中しても支障はないと考え

る.またTwitterでは天空の城ラピュタのテレビ放送時

に25,000ツイート/秒のアクセスを記録しておりイベン

ト参加者から発言を収集するために必要十分なスケーラ ビリティを持っていると言える?

5 複数大学間における実践 6 評価

7 まとめ

本研究では、リアルタイムイベントが行われるフィジ カルスペースからイベントの目的や規模にあわせてコミュ ニケーションに必要な情報のセンシングと、サイバース ペース上で共有を行うサイバーフィジカルシステムアー キテクチャCPARSEの提案を行った。

CPARSEを用いたリアルタイムイベントでは講義、演

奏、質疑応答だけでなく、参加者の感想や意見が主となる コミュニケーションを妨害せずに共有可能となった。この 結果、イベントへの参加感が高まったりサイバースペー ス上でイベントに関する情報が広まることでイベント規 模が拡大する効果も確認された。特に演奏中の感想の共 有は演奏会場内のような同一フィジカルスペース内にお いてもノイズとして扱われていた情報もSNS上で共有す

(10)

ることでイベントへの呼び込み効果やイベント参加者の 一体感や共感を呼ぶ役割を持たせることができた。

遠隔授業においても教室間を直接テレビ会議システム で接続したり、片方向メディアで教員による講義を配信 するモデルと比較し

本研究における実践においても目的や規模に応じて最 適なメディアを用いたイベントの設計が行われた。また 設計された環境は

時間を共有するリアルタイムイベントにおける設計 する本研究のアプローチにより、既存のコミュニケー ションモデルとは異なる新たな複数地点間でのリアルタ イムイベントを要素技術の発展から独立した環境で実現 できた。

Referensi

Dokumen terkait