日 本管理 会 計 学 会 誌
管理 会計学2003年 第12巻 第1号
論 壇
資 本 コ ス トを 考 慮 し た 回 収 期 間法
一
割 引 回収 期 間法
と割 増 回 収 期 聞法
一上
總 康 行
〈
論 文
要旨
〉投 資経済計算には ,回収期 間法 ,会 計 的利益率法 ,正味現在 価値 法 ,内部利益 率法, 収益性 指数 法な ど が あ る.理論 的には,正味現在価 値 法や内部利 益率 法な どの割引キャ ッ シ ュ フ ロ ー 法が優れて い る,ア メ リ カ企 業で は, 理論 的に優 れた 正味現在価 値 法や内部利 益率 法が利用 さ れて いる が, 日本企業で は, 理論 的に劣る と さ れ る回収期 間法が利 用さ れてい る.
本稿で は, 日本企業が回収期間法を 選好する理 由 を解 明 する一環 とし て ,単 純回収期 間法の 特徴を説明 し, 次い で
Rappaport
に よっ て提唱 された割引 回収期間法を検討して , さ らに貨幣の時 間価 値の概念 を回収期 間法に組み込ん だ割増 回収期 間法 を理論 的に論証する,
〈 キ ーワー ド〉
割引回収 期 間法 ,割増回収期間法, 貨幣の時間価値, 資本コ ス ト, 投資損益分 岐図
Payback
Period
Methods
consideringthe
Cost
ofCapital
:Disoounted
andPremium
Payback
Perjod
Method Yasuyuki
Kazusa
Abstract
The method evaluating capital
project
includespayback
period
methods , accounting rate of retUrn method ,net
present
value method ,intemal
rate ofreturn method , andprofitabllity
index method , etc,The
discounted
cash 豆ow methods such as net present va王ue and
internal
rate ofretUrn are excellenti1
theory.ln
practice, thediscounted
cash flow methods ate usedin
alot
ofUIS . companies , while the payback period method , whichis
not sogood
in theory,is
usedin
most ofJapanese companies . Why do Japanese comp aniesprefer
thepayback
period
method ?
In
this paper, as a part ofthe researches that study the reasons ,first
, the characteristics ofsimp 且e payback period method willbe
shownin
detaiL
Next
, thediscounted
paybackperiod
method advocatedby
Alf
セedRappaport
willbe
reconsidered .Final1y
,I
insist
that thepremlum
payback
period method means akind
of discounted cash flow method based on the concept of the time value ofmoney in theory.
Key
Words
discounted
payback
period method ,premium
payback
period method , time value ofmoney , cost of capitai,investment
breakeven
chart2003 年 7月 2 日 受付 2003 年 7月19 日 受理 京 都 大 学 大 学院 経 済 学 研究科
Sロbmi重led 2, J闘ly 2003. ・ Accepted 19,」闘ly 2003.
Graduate School of Economic $ Kyoto Universi重y
管 理 会 計 学 第 12巻 第 1号
1
.日 本 企 業
で選 好 され た 回収期 間 法
第二 次大戦 後 ,日本経 済はい わゆる
1992
年のバ ブル経済の崩壊まで , 世 界に類を見ない高度 成長 を遂 げて き た が,こ の期 間 を通じ て ,日本企 業は設備投資な どの投資資金を主とし て メ インバ ン ク か らの銀行借 入に極度に依 存 して きた(松 村,1997,
p
.55).投資計 画を自己資金で ま か な う場合に は, 投資決定 は企 業 内で 自己完結 する.しかし,企業
が投 資計 画のた めの資金 を間接金融っ ま り銀行か らの借入 金に極 度に依存 する場合に は,投 資 決 定が 企業 内で 自己完 結 しない .企業の投資 決定プロ セ スは, 銀 行融 資を 通 じて企業外部 の銀 行に対 して延長 さ れる こ と に なる (上 總
2003
,pp
.6
・11
).高度 成長期の 日本企 業で は銀行 借入に極 度に依 存 して投 資計画 が実 行さ れて き た とい う事実
に着目して , 筆者は, 日本企業で 実践された 投資経済計算の た めの 回収期 間法は, 銀 行か らの 借入 金 に極 度に依 存して投資計画 を行 う 限 り,経 営者がそ れ を意識 する と しない とに か か わ ら ず ,正 味 現 在 価 値 法 や 内部利 益率 法と 同 じ く,貨 幣の 時間価値を考 慮 し た回収 期間法の一種,
すな わ ち割増回収 期 間法で あっ たこ と を 明 ら か に し た (上總,
2002
).こ の よ うな私見に対して ,これ まで に多くの方か ら貴重な ご批判 ご意見を賜っ た が,その大 半は,貨 幣の 時間価 値を考慮した割増 回収 期 間法を提 唱した際に , 「資 本 コ ス ト率 ≒借 入 金利 子率」 と仮 定 し て い た こ と か ら生 じ る批判で あっ た.これ らの批 判 に応え るた め に は,まずは 一般 的な資本コ ス ト の下で, 貨幣の時 間価値 を考慮 した割増 回 収 期 間法が成 立 しうる こ と を理 論的に論 証 する必要が ある.次に , そ れ らの検討を踏ま えて , 日本 企業が回収期間法 を選好 し
た 理 由 を 改め て検 討す る 必 要 が ある と思 わ れ る,
本 稿で は,これ まで定式化の 中で用い て きた 「資本コ ス ト率≒ 借 入金利 子率」 と いう仮定に 代わっ て ,一
般 的な資本コ ス トの仮定の 下で割増回収期 間法が理論 的に成立 しうる こ とを論 証
したい .以 下 ,これ まで に発表 し た諸論 文と内容 的にか な り重複す る部 分が あ る け れ ど も, ま ず単 純 回収 期間法の特 徴を 明 らかに し,次に そ の短 所を改 善す る 方 法 と して提唱 さ れ た 割 引 回 収期 間 法を検 討 し,最後に資本コ ス トを 用い て割 増 回収期 間法 を 論 じ るこ と に す る.
2
.貨 幣
の時間価 値 を 無 視
した 単純 回 収期 間法
説 明の都合上,本稿で使 用 する記号ない し文字は次のよ う な 意味を もっ て い る. / :初期 投 資額
CF
‘ :t
年度の純現 金 流入額 c :資本コ ス ト率R
‘ :t
年度の投資の回収額 n :プロ ジ ェ クトの 経済命数単純 回収 期 間法(simple
payba
。k
period
method :SPP
法 )で は, 投 資額が将来の現金流入額に よっ て全額回収さ れ る期間を計算し, こ の 回収期 間が短い 投 資案ほ ど有利な投 資と み な され る. 単純回収 期 間5PP
は,次の式で計 算さ れ る.ノ
・…… (
1
)SPP
=
CF
単純回収期間法の下では, 複数の投資計画 がある場合に は,計算さ れ た回収期 間の短い順に 投 資計画が優 先さ れ る.
1
つ しか 投資計画 が ない 場 合は,回収 期間が基準 回収期 間よ り も短けれ ば, こ の投 資計 画は経済的に合理的で あ る,っ まり収益 性 あり と判断さ れる ことになる.単
42
一
資 本コ ス トを考 慮し た 回収 期 間 法
一割引 回収期 間法と割 増 回 収 期 間 法一
純回収 期間 法に対 して , い くっ か の 長所と短所が指摘さ れて い る.
長所 計算が簡便であ る 「こ の 回収 期間法 は ,あ ま り厳密 な計 算 を必要 としない よ うな投 資に用い られた り, ある いは他の 方法を利用する前の準備 段 階と して広 く普及 して い る.
そ れは何よりも簡便性 が長 所にな っ て い るか らで あ ろ う」 (佐藤 ,
1989
,p.370
).長所 短期的な投 資計画 を優 先 する 「こ の方法は, 収益 性より も財務 流動 性ない し 安全性に重点を おい た計 算法であり, 回収期間の短い もの ほ ど投 資の流動性 が高 く,逆に 回収 期間の 長い もの ほ ど不確実性や危険にさ らされると考え られるか ら, で きる だけ短期に投資額
を 回収で き る もの を もっ て優れ た投 資案で あ る とする」 (櫻井,1979,
p
.600 ).短 所 貨 幣の時間価 値 を無 視 して い る 「回収期間法で は現金流入の時間的要素を考 慮に入れ ない .これは現 在価 値 法や内 部利益率法 と 比べ る と き, 決 定的な欠点と な る」 (櫻 井,1979, p.602 ). 「プロ ジ ェ クトの 全て の キ ャッ シ ュ フ ロ ーあるい は貨幣の 時間価値を考慮し
ない の で , 投 資意思決定を間違 う原 因 と な り う る」(Bennett&Hendricks, 1987,
p
.45),短所 回収 期 間到 達以 後の現金流入 額が無視さ れて い る 「回収期間は, 安全性の尺 度 とし て は有 用で あるが,収 益性の尺度で は ない .投 資額を回収 し た後に ど れだけの利益 が獲 得 さ れるかにっ い ては, 何 も語 ら ないか らで あ る」 (廣 本,
1997
,p
.542
).短所 基 準とな る回収 期 間が明 確で は ない 「回収期 問の 目標数字をいかに設定 し た
ら よい か とい う点に 関 して曖昧さ が残る」 (杉 山, 2002, p.
25
).もち ろ ん, 単純回収期間 法が持 っ て い る長 所に対 する反 論 もある .
Bierman
は, 「不 幸に も,回収期間は信頼で きる リス ク尺度で は ない .例 えば, ラス ベ ガス で の ギ ャ ン ブルは, 合衆 国貯 蓄債を購入する よ りも短い回収期間で 行わ れ る.しか し,ギ ャ ンブル は同 時には る かに高い リ
ス ク を持っ て い る」(Bierman, 1986,
p
.6)と して ,短 期 間= 低 リス クで は なく,短 期 間 =高 リスクもあ る と プ ラッ クユ ーモ ア風 に 反論 して い る,あるいは,単 純 回収 期 間法の下で は, 厂い く
ぶ ん逆説的に聞こえ る か も しれ ない が,投 資 をしない こ と が もっ とも有 利である とい う結論に な るこ とで あ る.投 資を し な け れば ,回収 期 間はゼロ に なる し, 待ち時 間を必要としない か ら
で ある」 (佐 藤,1989,p.369 )とする見解も同種の批判で あ ろ う.
いずれに し て も,多 くの論者は, 単純回収期間法に対して計算の簡便性や短期計画の 優先的 評 価な どの長 所を わずかに認めつ つ , 欠点に 対 しては きび しい批 判 を浴 びせ て い るよ うに思 わ
れる.とりわけ, 単純回収期間法で は, 時間の経 過と ともに現金 流入額が減価 する に もか か わ
ら ず, 回 収期 間の 計算に際して, 貨 幣の時 間価値が無視 されて い る.この点に批判が集 中し て, 単 純回収期間法 は 「決定的な 欠点」 (櫻 井,1979,p,
602
)や 「重 大な理 論 的欠 点」 (長屋,1984
, p.32
)を持っ て い る と さ れて いる.か くし て投 資経 済計 算に関して は, 理論的に は, 貨幣の時間価 値 を考 慮 した 正味現在 価値 法
(
NPV
法)や内部利益率法 (IRR
法 )が優れて い る とされて お り, 実 際に も,1970
年代以 降の ア メ リ カ 企業で は ,これ らのNPV
法やIRR
法が広 く一般 的に使 わ れて い る(Kim
&Farragher
,1981
,p.28
),他 方 ,回収 期 間法 が理論 上 「決 定 的な欠点」 を持っ て い るに も か か わ らず, 日本企業で は,
ア メ リ カ 企業 と は 異 な り, 回収 期 間法が選 好 されて きた (加登 ,
1989
,p .119
).それは何故だろ うか,こ の 点に関して も, もちろん ,これ まで に多 くの検討が な さ れて き た が, そ れ らの多 く は 回収期間法の 長所を強調 した 理由づけであっ た (長屋 ,1984,p.33
;後藤 ,1967
,p ,23;櫻井 ,1991
, p.33
;佐 藤,1989
,p
.379
).確か に, これ らの 見解 はいずれ も傾 聴に値 する. しか し,回収 期 間法は 「貨 幣の時 間価 値 を考 慮 しない 」 とい う批判に対して は, 有効な反論が ほ と ん ど行わ れて こ
管 理会計 学 第12卷 第 1号
な かっ た.
かかる事 情の中で ,筆 者は 「日本企業で は, 貨幣の時間価値を考慮 した割 増 回収期 間法が実 践 されてい た」 ことを理 論的に解 明 し たの である (上總,2002;
2003
),3
.将来 キ
ャ ッ シ ュ フ ロ ー の現 在 価 値
に注 目
した 割 引 回 収 期 間法
現 代 的な資本 予算 論は
Fisher
(1930
)に端を発 する と さ れて い る(Bierman,1986
, p.4
). し か し「次の段階へ 進む に は
20
年 も待た なければな らなかっ た.1951
年, 経済学 者に よ る2
冊の著作に よっ て 投 資の期 待 収 益 性を測 定す る た め に内部利益率が導入された 」 (Bie an,
1986
, p .4
),Dean
の 「資 本 予算 論』(1951
年)とFriedrich
and VeraLutz
のr
会社の投 資理 論』(1951年)がそ れである,興味深い こ とは , 「これ らの
2
冊の書物が出版 され る以前に は, 経営者は投資を評価する た めに , 回収期間法や 平均投 資利 益 率法 (average
incorne
divided
by
averageinvestment
)とい っ た 技法 を利用 して い た」 (Bierrnan,1986, p.4). しか し 「 『ハ ーバ ー ド・ビジ ネス ・レ ビュ ー』誌 に掲載さ れ たDean
の1954
年の論文は,企 業経 営 者が 資本予算に割 引キッ シュ フロ ー法を導入 する際に と り わけ重 要で あっ た,Dean は内部 利 益率 法の利 用を推 奨 した。 その 方法は, キ ャッ
シ ュ フ ロ ーの現在価値の総和がゼ ロ に等 し くなる
1
っの率 (割引 率 )を見い 出す こ とであ っ た.… …内部 利 益 率 法は広 範な産 業 会 社で急 速 に受 け入 れ られる よ うに な っ た」 (Bierman,1986, p.4).
1965
年 ,Rappaportは,当時の 様 子を次の よ うに描い て いる.「回収期 間法は,依然とし て投 資計 画を評価 する最も一
般的な方法で ある.回収 期 間が収益 性の測 定に ほ と ん ど価値を持た ない こ とに関 し て , 理論 家た ち に よ る満場一致に近い 議論があ
る に も関わ らず, それ は, 多 くの企業における資本的支 出の評価に おい て利 用さ れ る唯一の財 務的尺度で あ る.割引キャ ッ シ ュ フ ロ ー法 を採用する大 会社で さ えも,しば しば追加的手段と
して 回収期間法を存続させ て い た」(Rappaport,1965, p30 ).
Rappaportは続けて言 う, 「本 論 文 の 目的は, その人 気の 秘密を探る こ と, そ して人気 が ま だ続 くもの と して ,回収期間の改 良さ れ た概 念 ,つ まり割 引回収期間(
discounted
payback
period
)を提 唱する ことで ある」 (Rappaport,1965,
p
.30).
1950
年代の半ば以 降 ,内部利 益 率法 (IRR
法 )が 急速にア メ リカ企 業に普 及 し て い っ た が,そ れで も な お伝統 的な回収 期 間法は根強い 人 気を保っ て いた.こ の 人 気に注 目し たRappaport は, 伝統的な回収期間法に資本コ ス ト概念 を持ち込み, 割引回収期間法 を提 唱 したの であ る. 彼は長期資本に支払 うべ き加重平均利率で ある借入利率(
borrowing
rate),お よ び機 会 原価概念で あ り,異なる リス クを持っ 投 資 案の下で獲 得で き る利率で あ る貸付利率 (
lending
rate)を指摘 し た上で ,こ の 「貸付利率, ない しこれ以 降で はr
機 会 投 資利 益 率』(“opportunity investmentrate”)と呼ぶ 利 率は, 割 引キ ャッ シ ュ フ ロ ーに と
っ て適切 な利 率で ある」(
Rappaport
,1965
,p
.30
) と主張 し た.さ らに,
「伝統的な 回収期間計算は,明らかに ,会社の 資本コ ス トを考慮 するこ と に失 敗 し
て い る。伝統的に測定さ れ た 回収 日(the conventionally measured payback
date
)が あ る計画案の損 益 分 岐日(break
−evendate
)で ある と主張 する ことは, 資本がコ ス トな しで獲得で き る とい うこと に等しい.よ り合理的な接近法は,割 引回収 期 間基準に よっ て提 示 される.割引回収期間は,投資支出額 を回収 するた めに投資案の 増分キャ ッ シ ュ フロ ーが
r
機会 投 資利 益率』 で割 り引か れた 時間の 長 さである,こ の 期 間の終わ りで のみ、 〔投 資案 〕の損益 分岐点は,経済 的実質 を 持つ もの と な る」 (Rappaport,1965,p
.32)とされ た.そ し て ,初 期 投 資額100
,00
ドル , 経済命数44
一
資本コス トを 考 慮 した 回 収期聞法
一割 引 回 収 期 間 法と割 増 回 収 期 閥 法一
7
年, 割 引率15
% とし て, 表 !の ような例 示を提示 した.表 1 割引
回収期間
と 「収
益性指数
」 の計算
(
1
) (2
) (3
) (4
) (5
) (6
) 期 間 投 資額 現 金 流入 額1
ドル の現在 現金 流入額 現金 流入額の 投資回収率ドル ドル 価値atl5 % の現 在価値 累 積 現在 価値 ・(
5
)/(1
)to100
,000
ドル ドル ドル %t
且20
,000
.8692 17
,392 17
,392 17
.39 t2 30
,000
.7561 22
,683 40
,075 40
。08 t3 50
,000
.6575 32
,875 72
,950 72
.95 t
‘30
,000
.5718 17
,154 90
,104 90
.10 t5 20
,000
.4972 9
,944 100
,048100
.05
←DP t6 10
,000
.4323 4
,323 104
,371104
.37 t7 10
,000
、3757 3
,759 108
,130108
.13
←P1
備 考 )(
1
)キ ャッ シュ フロ ーは期 末に受け取られた.(
2
)DPD
:割 引 回収 日(discountedpayback
date)(
3
)PI
:収益性指数(profitability
index
) 出所)Rappaport
,1965, p ・32
.
Rappaport
は, こ の表1
を次の ように解 説 して い る。「伝 統 的な 回収期間 計算の枠組で は, 意 思決定者は初期 投資 額が
3
年 間で回収 さ れる こ と,そ し て そ の時点で , 会 社は損益分 岐点に到達 する こ と を容 易に結 論 するだろ う.も ち ろん ,こ れ は 全 く誤解を招く考え方で あ る.な ぜ な ら, そ れ は投 下 した資本の代替 的, 生産 的利 用が存 在し ない とい う誤っ た前提に基づい て い る か らである.
こ の計画 案を検討 中の会 社 がそ の
r
機会 投 資利益 率』が15
%で分 かっ て いる と仮 定する.つ ま り, 検 討 中の計 画 案に とっ て ,15
%が最低 受入 可 能な投 資利 益 率 と現 金 流 入 額(ineremental
cash
flows
)の適切な割 引率で あ る.・・… ・検 討 中の計 画案では割 引回収 期 間が5
年で ある こ とに 注 意 しな さい.伝統的に計算さ れ た 回収期間の下で は3
年で あるの と は対照 的で ある.また3
年末に は, 会社は初期投資額の73
%の み を 回収 してい るこ と, つ ま り伝統的な回収期間計 算に よっ て示 唆さ れ る よ う に100
%では ない こ と に も注 意 しな さい」(Rappaport
,1965
,p
.33
).追加 的な説明 は 不要で あ ろ う.機会投資利益率
15
% を考慮 すれ ば, 投 資案の 回収 期間= 「損 益分岐日」 は,3
年で はな く5
年で あると明確に指摘されて い る. かく して , 資本コ ス トを考 慮 し た割 引回収期間法が提唱さ れ た が , その計算技術的な特徴は, 回収期間を求め る際に ,芬 毎 あ 瓊 金 流 入 額
に貨幣の時間価値を考慮し たことで ある,こ こ で割 引回収期間 法の計 算 式を示 して おこ う.(
D
式 の分母で あ る現金流 入額CF
の現在 価 値 を求め, こ の合計 額が投 資額と等 しくな る年数, した がっ て正味 現在価 値NPV
=0
となる年数を計算する,これ は, 次の式で示 さ れ る.
・一
#
, (CF 1
十 ‘c)t… …… (・)
上式の年 数
k
を 「割 引回収 期 間 (discounted
payback period)」(Rappaport
, 1965, p.32)ない し 「利 付回収期間(pay
−ba
磁period
with interest)」(NAA ,1967,p
.121)と呼んで い る.通常, 割 引回収期 間く基 準 回収
期
間の とき,投 資計画は 「収益性あり」 と判断 され, 割 引回収期
間〉基準 回収期間の と き, 「収益 性な し」 と判 断される.し か し,こ の割 引 回収 期間 法に は,単純回収期間法の
管 理 会 計 学 第 12巻第 1号
短所 である回収 期間到以後の 現金 流入額が無 視 される とい う短 所が残 されて い る.
4
.回 収 す
べき投 資 総額
に注 目
した 割増 回 収 期 間法 4
,1
.割増
回収期
間の計算
割引回収期間法では, 分母の現 金 流入額に注 目して貨 幣の時間価 値 が考 慮 された が, 今度は,
芬字
あ授資額
に 注目して み よ う.一般に投 資計画 を実行 する場合に は,投資計画の経 済命数の 期間を通じて資本コ ス トが かかっ て い る と考えるこ とがで きる.回収すべ き投資総額は, 初期 投資額にこ の資本コ ス ト を加え た金額と な る.い ま初期投資額に資本コ ス トを考 慮 し た回収 期 間PPP
を計算す れ ば,次の と お りで あ る. .PPP
一 初 搬 資額+鮴 コ ス ト ー 投資纐._ … (
3
)現 金 流入額
CF
この回収期 間
PPP
は, 単純回収期間法と比べ て , 資本コ ス ト相当分だけ長 くなる.した がっ て ,資本コ ス トを考慮 して投資決定を行う場合には, 当初の投資額 よ りも利 子計 算した資本
コ ス ト相 当分 だ け割増した 「投 資総額」 を回収 することが要 請 される.そ こ で,分 子の初期 投 資額に資本コ ス トを考 慮 し た回収 期 間法 を割 増回収 期 間法(premium payback period method :
PP P
法)と呼ぶ こ とに し たい .回収すべ き投 資総額を計 算 する方法に はい くっ か考え られ る.こ こで は, ご く単 純に,初 期 投 資額
L
投 資計 画の経済 命数n , 資本コ ス ト率 c , 毎年均等回収額R
とい う仮定の下で ,投資総 額が回収さ れ る もの と す る.こ の仮 定は銀行ロ ーン の 元利均等返済法と 同 じ考 え 方である, この 回収方法の下で は,
投資総 額= 回収総額= ・ nR
と な り, 割増回収 期 間
PPP
は, 次の よ う に計算で き る. nR
PPP
≡
CF
ま た, 毎年均等額で 回 収 さ れ る回 収 額
R
は,2002
, pp .66−67).こ こ で は,初期 投 資 額J
, 期末の投 資未 回収額は,1
年後の投 資未 回収 額2
年後の投 資未 回収 額3
年後の投 資未 回収額n 年 後の投 資未回収額
・・・・・・… (
4
)・・・・・・… (
5
)次の ように計 算 する こ と がで き る (上總 , 資本コ ス ト率 c ,毎年の均 等回収 額
R
で ある の で,(
1
+ o)if −R
(
1
+ c)t ノ ー (1
+ o)iR −R
(
1
+ o)3 / − (1
+ o)2R − (1
+ c)iR −R
ロ
(
1
+ ・)・∫一Σ
i (1
+ ・)卜 ]R
と な る,n 年後に全額 を回収で きる とすれば,
(
1
+ ・) ・ ノーΣ
、 (1
+ ・)t’iR −o
R
−(
1
+ °)n1_
1
_ (6
)幺
(1
+ ・)t−1s
(1 ÷
。)、と して, 回収額
R
を計算で き る.こ の (6
)式を式(5
)に代入する と, 割増回収期間PPP
は, 次のように計算で き る.
46 一