性」ではこの材料系の相境界近傍の特性を詳細に調べた。相境界はTi量が42∼43 mot%にあり、各面晶相と正方晶相との混合相である。k9の最大値はTi量が4 2 mo1% の組成であり、セラミクスとしてはPZTを越えるこれまで最高の晦=71%、k31=44% が得られた。また誘電率と圧電定数d33の最大値はTi量が4 3 mo1%の組成であり、それ ぞれムソh=3200、d33=5 9 0pC/NとPZTを凌ぐ値であることを明らかにした。 この材料県とPZTとの相違点として共振周波数とその3次のオーバートーンから求め たボアソン比がPZTでは相境界で最大値を示すのに対して、PSNT系材料では最低 値い7 11<0.2)を示すことを明らかにした。 2−5のFHIP法により作製したPSNTN2成分県材料の特性」は、PSNTN 系材料の熱開静水圧プレス(HIP)を行いその特性を調べた。HIPにより理論密度 の99.5%に達する緻密なセラミクスを得た。HIPによりセラミクスにストレスが 牛。じキュリー温度が20℃ほど上昇した。k9と密度の相関関係を調べ、結合係数が密度 の向トに伴い数%増加することを明らかにした。 2−6の1ホットプレス法により作製したPSNTN2成分系材料の特性」は、相境 界の組成のPSNTN58/42材料をホツトプレス法により作製し、その後に熱処理 を行い焼結粒径を0.7−3μmと変化させた理論密度の99.5%に達する緻密なセ ラミクスの特性を調べた。 この結果、誘電特性や圧電特性の向上には最適な焼結粒径 いμm前後)と熱処理温度(>1200℃)が重要であることを明らかにした。この 材料では、これまで報告されたセラミクス圧電材料としては最高の結合係数であるk、> 75%が得られた。 第3瞰はIPSN−リラクサーPT3成分系セラミ では第2章で確認したPSN−PT2成分系材料にさ その結晶構造、誘電特性および雨竜特性を調べた。 クス材料」 らに他のリ の研究である。この章 ラクサ材料を固溶させ、 3−1[PSN−マグネシウムニオブ酸鉛(PMN)−PT3成分系材料」では最も 代表的なリラクサ材料であるPMNを含む3成分系セラミクス材料を作製し,その結晶 構造,電気的特性を評価した。29PSN−33PMN−38PTの組成では誘電率 に句臼=3800,Tc=205℃,d33=7 0 0 pC/N,k9=70%,k31=43%,k33= 77%が得られた。またこの3成分系では相境界は両2成分系のMPB組成であるPS NT58/42と68PMN−32PT(PMNT68/32)を結んだ線上にありほ とんど直線的である。 3−2はrPSN一亜鉛ニオブ酸鉛(PZN)−PT3成分系材料」である。ここで の目的は単体ではセラミクスとして合成が出来ないPZNをペロプスカイト構造が安定 なPSN−PT系に固熔させ3成分系セラミクス材料を作製し,その結晶構造,電気的 特性を確認することである。この3成分系ではPZNが5 0 mo1%以下では安定なペロブ スカイト嘔相が得られた。この系で見られたキュリー温度の特異性はPTを囚溶させる ことによって消失する傾向にあった。またこの原因はペロブスカイト構造のBサイトに 入るべき亜鉛がAサイトに取り込まれることによって生じることを示唆した。 第4章は「スカンジウムニオプ酸鉛(PSN)系単結晶材料」である。まず、4−1 -4−2ではPSN単結晶およびスカンジウムタンタル酸鉛Pb(Sc1/2Tal/2)03(PST)県 結晶の既往の研究について述べた。また、その他のリラクサ材料の叫結晶、PZT単結 晶の作製法および特性に関する既往の研究について述べた。 4−3、4−4ではセラミクスとしてknが最大であるこのPSNT材料系の固溶体単 結晶の作製が可能であるかを確認することを目的とした。ここではフラックスの種類に よる単結晶の作製の可能性を調べた。酸化鉛−ボロンフラックスとPSNT原料を入れ た白金るつぼを1200℃から880℃まで徐冷することにより最大菱長さが10nに 達する単結晶が得られた。 この単結晶は菱面晶相のペロブスカイトの単一相であった。 室温における[1 0 0]面の誘電率εりま約800であり、最大値では60000である。 誘電率ε、の最大値であるキュリー温度は200−220℃であった。ICPによる組成分析 の結果により得られた結晶の組成は目標値と比べてTi不足であった。この単結晶の電 気機械結合係数のk33は72%であった。この系ではPZTと異なり2成分固溶体結晶が 容易に得られることが明らかになった。 第5章は「考察」である。これまで得られたセラミクスおよび単結晶の特性から「高 -電気機械結合係数を有する2成分系圧電材料」について述べた。ここでは結合係数がkn >60%、またはk 33>70%以上の2成分系材料として知られている5種類の材料系 についてこれらを比較検討した。 ここでは結合係数が大きな材料系であるPZT53/ 47セラミクス、亜鉛ニオプ酸鉛−チタン酸鉛(PZNT91/9)単結晶、マグネシ ムニオブ酸鉛−チタン酸鉛(PMNT67/33)セラミクスおよび単結晶、スカンジ ウムニオブ酸鉛−チタン酸鉛(PSNT58/42)セラミクスおよび単結晶およびス カンジウムタンタル酸鉛−チタン酸鉛(PSTT55/45)セラミクスの材料系の共 通点を探り、高結合係数圧電材料の開発の指針を得ることである。これらの材料には次 の4つの共通点がある。 (1)菱面晶相(リラクサ)と正方晶相(チタン酸鉛)との相境界近傍 (2)残留分極Prが25μC/cm2以上 (3)適当なB´イオン半径(70−75pm)と大きなB″イオン(64pm) (4)適当な範囲の相境界のBサイトイオンの平均値(64.7∼66.8pm) また、これらの条件とB’、B″元素の秩序性(Order)との関係を述べ、大きな結合 係数がBサイトの秩序性(Order)に関係があり”Order”を減少するような、すなわ ぢDisorder”を促進するような元素を選ぶことにより結合係数の向上が図れることを示 唆した。また、この仮定をX線回折およびTEM観察により確認した。またこれらの条 件を考慮するとPSNTが最大の結合係数を有する可能性のある2成分系材料であるこ とを示した。 さらにこれにPMNを固溶させた材料が優れた圧電特性を広範囲に選べ、 さらに単結晶も作製出来、総合的に見て有望であることを示した。 6章「結論」では本研究の結果を総括した。特に、PSNTセラミクスおよび単結晶 一 の電気機械結合係数について総合的な考察を述べた。またこの画竜材料としての特徴、 利点および医用超音波装置への応用について総合的にまとめ、さらに今後の課題につい て述べた。 3
1−2 圧電材料の基礎 この章ではまず圧電材料の基礎、リラクサ材料、リラクサ系圧電材料の開発の歴史と 問題点について述べ、本研究の目的と意義ならびに研究方針について述べる。 1−2−1 圧定性(Piezoelectricity) ある結晶物質に機械的な圧縮力、張力あるいはすべり応力を加えて歪みを起こさせる ハ、結晶物質に誘電分極が発生し、その両端面に正負の電荷が現れる。これを圧電正効 果と呼ぶ。逆に、この結晶物質に電圧を加えて分極を起こさせると、結晶物質は歪みを 生じ、あるいは機械的な応力が発生する。これを圧電逆効果と呼ぶ。この時圧電正効果 で発生する電荷量は応力の強さに、また圧電逆効果で生じる歪みは電圧に正比例する。 これらを総称して圧電効果と言う。すなわち圧電性を示す結晶では応力Tおよび歪みS なる知性的量(慣習上、機械的量と呼ぶ)と電界Eおよび電気変位Dあるいは分極Pな る誘電的量(電気的量とも言う)とが、圧電効果を介して互いに関連しあっており、こ れを電気機械結合(Electromechanical coupling)という。 このような現象は1880年に j.CurieおよびP、Curie兄弟によって発見された。圧電効果は水晶を初め、電気石、 ロッシェル塩などの対称中心を欠く結晶に現れる。結晶は構成原子やイオンの配列の仕 方、すなわち対称性により32の晶族に分類される。そのうち20晶族は対称中心を欠 き、圧電効果を示す。この圧電性結晶のうち10晶族に属する結晶は結晶構造的に自発 分極を持つ結晶で極性結晶、または温度変化により電荷を発生するために焦電性結晶と 呼ばれる。この晶族に属する結晶のうちで外部電界により自発分極の向きを簡単に変化 出来る結晶を強誘電性結晶と言い、このような物質を強誘電体と呼んでいる。これらの 関係を図1−1に示す。強誘電体は必ず焦電性、圧電性を示すが、焦電性のものが強誘 電体であるとは眠らない。強誘電体であるための条件は、自発分極を反転させるのに必 要なエネルギーが結晶を破壊するエネルギーよりも充分に小さくなければならない。ま た圧電材料の電気機械結合係数はその分極と振動モードにより分類されている。図1− 2に各種の振動モードを示す。これらのうちで円板試料の広がり方向の振動モードであ るkパCoupling factor planar mode)と円柱(または角棒)試料の長さ方向の振動モード であるk33(Coupling factor longitudinal mode)は測定が容易で精度が高いために良く 用いられ圧電材料の評価としては最も重要な値である。 圧電材料の測定方法o.¨に関しては詳細にまとめられたものがあるため、割愛する。 1−2−2 強誘電性(Ferroelectricity) 強誘電性についてさらに理解を深めるために、まず代表的な強誘電体であるチタン酸 バリウム(BaTi03)について述べる。BaTi03はキュリー温度Tc(約1 2 5℃)以上では 立方(Cubic)格子を形成し、図1−3に示すような酸素8面体のAB03ペロブスカイト 型の結晶である。この結晶ではBaは格子の頂点に、Oは面心に、Tiは休心にある構 造である。Tc以下の温度では結晶は正方晶(Tetragona1)となり、Tiが体心から少しず れて〇のどれかに近接した位置を占める。Tiは4価の陽イオンであり、このイオンの 変位により双極子能率(Dipole moment)を生じ、自発分極Psの主な原因になっている。 BaTi03のPsは外部電界により反転させることが出来るからBaTi03は強誘電体である。 4 図1−1 圧電性、焦電性、強誘電性の関係
Relationship among piezoehmt.riciり、 pyroelectricity and ferroelcctricity
rl,S. T..S. (a)棒の槌効果 - ● ● ∼ 72 S2 一 一 (e)円板の広がり振動 7'1 s17 sI J (b)棒の縦効果 (d)厚みすぺり振動 図1−2 圧電材料の振動モード
various vibration modes of piezoelectric materia1.
hTi03のPsを反転さぜるのに要する電界の強さは、1 0 kv/cm程度である。このよう な低電界で分極反転が行われるのは、その分岐構造(Domain structure)による。すなわ ち結晶の内部は図1−4に示すようにPsの方向が90°ずつ傾いた分岐に分かれ、直交 ニコルで観察すると(b)のように各分岐の明るさが異なって見える。図(a)のよう な分喊を90°分岐という。また図(c)のように隣接した分岐とはPsの方向が1 8 0° 毀なっているものもある。 これを1 8 0° 分岐という。また結晶の中にはあらかじめ分 喊反転の芽があり{図(c)のくさび状分岐}、電界が加わると分岐境界が移動し、一 方の分岐が他の分岐を吸収して分極反転が進行する。強い直流電界を加えると分岐は電 界の方向に配列して結晶全体が単一の分岐になるが、交流電界を加えると分極Pと電界 Eの関係は図1−5のようにP−Eヒステレシスを描く。 P−Eヒステレシス曲線を描 くことは強誘電体であることの必要条件である。強誘電体のヒステレシス曲線はその材 料の自然分極、ドメインの存在、電界により分極(およびドメイン)の方向を変える能 力などにより支配されている。ここではこの結晶が正と負のドメイン、すなわち選ばれ た結品軸の方向に関して互いに逆平行のドメインを等量ずつ含むと仮定している。正方 向の電界(E)を増すと負のドメインが減り、正のドメインが成長する。分極は急激に 増大し(図中のOA)すべてのドメインが電界の方向を向くと飽和値(BC)に達する。 このときには、その結晶は単一ドメイン構造になっている。電界を取り去っても大部分 のドメインが向きを揃えたまま止まる。電界が無い場合でも一定値の分極(OD)が観 測され、これが残留分極Pr(Remanent polarization)と呼ばれる。ヒステレシス曲線の 直線部分(BC)を分極軸まで延長すると自発分極Ps(Spontaneous polarization)の値 (OE)が分かる。残留分極を打ち消し去るには逆方向に電界をかけなければならない。 このために必要な電界を抗電界Ec(Coercive field)と呼んでいる(OF)。負の方向に さらに電界を増大させると再び双極子が均一な配向をとるが、今度は前とは逆方向を向 いている。図1−6は弱電界で測定したBaTi03単分岐単結晶の誘電率温度特性でc軸方 向とa軸方向で著しくその値が異なっている。またO℃、−80℃付近の変態点で温度 に対して履歴を示す。図1−7は弱電界で測定したBaTi03セラミクスの誘電率および誘 眼損失の温度特性を示す。誘電率は常温で約1500、キュリー温度付近では最高で 10000前後の鋭いピークを示す。セラミクスは多結晶体であるので、諸定数は単結 晶の各軸方向の値の平均値を取る。すなわち、セラミクスではどの部分から材料を取り 出しても同じ誘電特性および圧電特性を示すが、キュリー温度以下の強誘電体単結晶で はその方位により、異なる特性の定数を取り出せることになる。 hTi03は誘電率がキュリー温度以上の温度では K ES T TO のキュリー・ワイス(Curie-Weiss)の法則を満足することが知られている。ここでKは キュリー・ワイス定数、Toはキュリー・ワイス特性温度と呼ばれるものである。 図1−7に示したようにBaTi03のPsの温度特性においてはPsはTcにおいて不連続的に 消滅する。このような転移は一次相転移と呼ばれる。 6 ︹Y︺45f4 4,03 4,02 4.01 4.00 3.99 3.98 3.97 1← -- / OBa OO ●Ti /(y (a)結晶構造(ペロブスカイト形) −150 −100 −50 0 temp〔'C〕 (b)格子定数 50 100 150 図1−3 チタン酸バリウムの結晶構造(W.J.Merz)53)
Crystal structure and lattice constants of BaTi03. (a)90゜分域 (b)(a)の直交ニコル(c) のもとでの視野 180°分域と くさび形分域 図1−4 強誘電体の分岐 Domain structure of ferroelectrics. − 7 −
3/93 ﹂○ o3/83 10000 8000 6000 40001 2000 0 G j) £ 図!一5 強誘電体のヒステレシス曲線の複式図
P-E hysteresis loop of ferroelectrics.
−160−120 −80 −40 0 temp〔‘C〕
40 80 120
図1−6 弱電界で測定したhTi03単分域単結晶の誘電率温度特性
Temperature dependence of dielectric constant of BaTi03 slngle crysta1 (W.J.Merz)53).
8 hTi03の場合、! 2 5℃付近のTc以外にも図1−7に示したように、O℃および、 一一80℃付近にも変態点がある。O℃では結品はjTミ方晶(Tetnlgonal)から斜方晶 (Orthorhombic)に転移する。また−80七以下で菱面品(Rhombohedrai)になる。この変 態点での大きな変化は、hTi03の場合は単結晶でもセラミクスでも見られる。PsはO℃と1 25℃ の間では[001]の方向を取り、−80℃以下では[111]の方向を向く。1 2 5℃の Tc以上の温度では立方品(Cubic)となり、Psを持だなくなるから強誘電性ではなく、単な
る常誘電相(Para-electric state)を示す。 hTi03セラミクスのPsはランダムな配列を しているので巨視的に見ると等方性と考えて良い。ところが、これに直流電界を加える
と図1−8に示すように分岐が一一定の方向に揃う。常温では分極の方向が結晶のc軸方 向で、かつc/a=1.01であるから、電界を印加した方向にわずかではあるが伸び、
電界と直角方向には縮む。これが電気ひずみ効果(Electro strictive effect)である。 強誘電性セラミクスに直流電界を加えて取り去ると、妓初等方性であったセラミクスに 極性が付与されるわけであるから、この処理のことを分極処理(Poling)という。 分極処理では素子の両面に電極を付け、直流電界を印加する。この電圧は材料にもよ るが、10∼1 0 0kv/cm程度の高電圧であるため、放電をさけるためにその素子をシ リコンオイルなどの絶縁油の中に浸して行うのが普通である。また分極を促進し双極了・ のすべてを効率良く配向させるために素子を加熱して行う。BaTi03では、例えば130℃ の温度で4∼1 2 kv/cmの電界を印加し、そのまま80℃程度まで冷却する。この処理に は通常10分から1時間をかけて行うのが一般的である。また機械的な応力により分極 させる方法は機械的分極(Mechanical poling)として知られておりPbTi03単結晶の単分 域化に利川されている。 60(療 5 0 0 0 4000 Q 30001 2 0 0 0 1000
一昔こ卜−?゛
y−90°−7.Ey ・RII[m] CI。 β=90°−8,4' 玲1〔1頂 G。 - ヽ . へ C 正万晶系¬-●i P,lj[1ooa CO り、としー
al 立方晶系・ R−0 ○& / 〃.〃 〃〃=へ9 rc へ?1で .///// X10'l 10 9 Q7 .l々 詞7 ×10‘4 200 100 4 UIrlビフフ
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0総
tcmバ゜C] 図1−7 弱電界で測定したBaTi03セラミクスの誘電率および誘電損失温度特性 Temperature dependence of dielectric constant and dissipation factors of BaTi03 ceramics.Tc=Curie temperature,To:Curie-Weiss temperature
( 図1 2'瓦=0 →・ 七 電気ひずみ (electro-strictive strain)
↓
£I
残留ひずみ Fr=JPI (residual strain) a)処女状態 (b)電界印加 (c)電界を取り去る 8 BaTi03の分極処理(A)処女状態,(B)電界印加,(C)電界除去Poling treatment of BaTiO。,ceramlcs(A)vir!μn state,(B)when the electrlc field Ep is applied,(C)when Ep is removed.
に・2−3 ジルコンチタン酸鉛(PZT) ジルコン酸鉛PbZr03(PZ)とチタン酸鉛PbTi03(PT)の固溶体であるジルコンチタ ン酸鉛Pb(Zr、Ti)03は通常PZTと呼ばれ、最も重要な位置を占める圧電セラミクス材料 じある。PZTはキュリー温度が240℃の菱面晶のPZと、キュリー温度が490℃の │「力品のPTの固溶体であり、その比率が5 3 mo1%PZ/47mo1%PT(以後、慣例に よりPZT53/47と略す)の菱面晶と正方晶の相境界近傍で電気機械結合係数や誘 咀率が最大になることが知られている。この材料はBaTi03と同様なペロブスカイト構造 を示す。図1−9にチタン酸鉛(A)、ジルコン酸鉛(B)、およびPZT(C)の結晶構造を示 す。チタン酸鉛はTcが490℃にある強誘電体で結晶構造は正方晶である。一方、ジル コン酸鉛はTcが240℃にある反強誘電体で結晶構造は斜方晶である。PZTはこれら の格fがほぼ1:1にあるもので、これらを表わすには最低2つの格子が必要となる。 図1−10はこの系の状態図と格子定数である。この系は、両端成分のほぽ中間組成である Pb(Zr0.53Ti0.47)03(PZT53/47)組成の近傍で菱面晶と、正方晶の相転移MPB (M()I・photropicphase boundary)を示す。この近傍で自発分極の向きはジルコン酸鉛の い11]からチタン酸鉛の[001]へ変化し、この過程で結晶構造が不安定になる ため誘電的、圧電的性質が著しく高められる。図1−11は、1955年にB.Jaffe`o により報告されたPZTの誘電率と電気機械結合係数の組成による変化である。不純物 か加えない純粋のPZTセラミクスは図1−11に示されたように誘電率が1300で 結合係数k、が50%とさほど大きな圧電特性は得られなかった。このために多くの添加 物¨や置換9が試みられた。これらの添加物は大きく2種類に大別出来る。一つはLa203、Nd203、 Nb205、Ta205、W03などのようにAサイトを置換する3価の元素(La3祀Nd3勺やBサイ トを置換する5価や6価(Nb5祀Ta5刎W6勺の元素である。これらは結晶内部にA 一 IO サイト空孔を作り、ドナー一添加物と呼ばれる。この空孔の形成により結晶粒内の分城壁 の移動が容易になり、抗電界が減少する。 ↑ ↑ (a)PbT10 (b)PbZr03 ◎ り ♭ マ ● ZIRCONIUM (Zr4゛)
●
@○
/ X○
T Pbl゛ O Zid゛ Plls° Q Q TITANIUM (Ti“) 図1−9 チタン酸鉛(A)、ジルコン酸鉛(B)、Crystal structures of PbTi03(A)
11 −
○
o7
PhTi03(A)
正方晶
-PbZr03(B)
斜方晶
ノPb(Zr,Ti)03(C)
正方晶/菱面晶
混合相
およびPZT(C)の結晶構造 PbZr03(B)and PZT(C).ヽ k 0 8 6 4 2 04 1 0 0 0 0 □ ︱ り4 ︺es
回
図1 Z , (a)状態図 / ' n t l l PbTi01 PbZrOI 〔mol%〕 (b)格子定数 10 PZTの(a)状態図と(♭)格子定数 Phase diagram and lattice constants of PbTi03 PbZr03 solid solution. S3 54 56 58 60 r〔atom%〕 150{y 10㈲ 500 0 48 5()52 54 56 58 60 Zr〔atom%〕 図1−11 PZTの電気機械結合係数と誘電串の組成による変化(B.Jaffe3)日ectromechanical coupling factor and dielectric constant of plane PZT ceramics.
12 またPZTの電気伝導はp型であるからNbのようなドナーの添加により、p型のキャ リアが補償されるために抵抗率を!∼Z桁程度大きく出来る。これらの添加物を添加す ると分極が容易になり圧電特性が向11し、また分極過程で生じる内部歪みを急速に分散 さぜるので経時変化が減少する。しかし空孔の存在はセラミクス内の弾性波の減衰を大 きくし機械的品質係数Qmの低下をきたし、いわゆる柔らかい材料(Soft PZT)となる。 一方、Fe203、Co0、MnOなどの添加は、Bサイトを置換する2価や3価の元素(Fe3+ Co2≒Mn2j・)でBサイト空孔を作りアクセブタ添加物と呼ばれる。これらの添加物は 抗電界の増大を招く。従って、分極が困難となり圧電特性は低下するが、Qmは著しく大 きくなり、いわゆる硬い材料(Hard PZT)となる。また、これらの添加は共振周波数の温 度および経時変化を少なくする効果がある。 現在ではプロセスや添加物の研究の進歩により、ほとんど純粋のPZTでも誘電率が !800、電気機械結合係数恥が70%のものが得られるようになったo。この相境界 MPBはTcが約350℃にあり、BaTi03と比べて充分に高いために相境界での大きな圧 電性を高温まで安定に利用することが出来る。またこの圧電セラミクスは圧電効果が BaTi03の2倍以上もあるため、発見以来、圧電セラミクスの研究対象の主流を占めるよ うになった。PZTの単結晶も1960年代から研究されてきたが7)o lmm以下の小型 の結晶の作製に成功しているのみで、その圧電特性はほとんど明らかにされていない。 この理由はこのPZTでは高温からの冷却時にジルコン酸鉛とチタン酸鉛に近い組成の 2種類の単結晶に分離して圧電特性の優れた相境界付近の組成が極めて得にくいためで ある。 1−3 リラクサ材料 リラクサは誘電率の最大値を示す温度が周波数とともに高温度へ移動し、さらに誘電 率最大値が低下する性質(これをDielectric relaxation と呼ぶ)を示す強誘電体材料 の総称である。しかしながら一般的には鉛を含む複合ペロプスカイト化合物、すなわち Pb(B’B″)03(但し、ぼはMgやZn等の2、3価の陽イオン、B″はNbやW等の5、 6価の陽イオンである)の組成式を持つ材料を表す。このタイプの材料は1950年代 に旧ソビエト連邦で数多くの物質が合成され9)、10)その特性が明らかにされた。これら の材料のほとんどは前述のリラクサ現象を示すが、Pb(Fel/2Nbl/2)03(PFN)などはリ ラクサ現象は示さない。1980年代に米国のPennsylvania州立大学の材料研究所がこ の現象を示す材料の総称としてリラクサ(Relaxor)の名称を用い出してから、現在では この名称が学会などでも一般的になっている。 表1−1に各種のリラクサとその略号、キュリー温度、誘電率最大値、結晶構造およ び結晶相をまとめて示す。 図1−12に代表的なリラクサ材料であるマグネシウムニオプ酸鉛−チタン酸鉛系材 料、PbL(Mg1/3Nb2/3)0.9Ti0.1103(略号PMNT90/10)と通常の強誘電体であるチタ ン酸バリウムの誘電率の温度特性を示す。チタン酸バリウムでは誘電率のピークが鋭い が、リラクサでは比較的にブロードなピークを示す。また、リラクサでは周波数の上昇 とともに誘電率が減少し、そのピークの温度が高温度側にシフトする。 リラクサ現象は強誘電体のTcが低温に移動する際にのみ観察される低温領域の現象で 13
あり、Tcが上昇するとともにリラクサ現象を示す材料はこれまで知られていない。 これらの現象の理論的な解明も研究され、種々の理論が提案されっつある。
これらの理論のうちで代表的なものはE.CrossのSuper Paraelectric modeレ」)、 N.ThomasのCluster mode1にJおよびC.Randa11&A.BhallaのNano-composite modeL白o などであるが、ここでは詳細については触れない。 表1−2はリラクサ材料の歴史を示す。リラクサは当初は旧ソビエト連邦で研究され ていたが、最初に実用化されたのは1960年代に日本で、圧電材料として知られるジ ルコンチタン酸鉛材料(PZT)に加える第3成分として用いられた。これは当時、米 国のクレバイト社がPZTに関する強力な特許¨)を持ち、この特許に抵触せずに同様な 特性を出す圧電材料の開発が急がれていたためである。松下電器の大内などは前述のP MNを固溶させた圧電材料を開発し呂’日本、米国で特許¨)を取得した。この成功をき っかけとして多くの日本メーカーが種々のリラクサとPZTの固溶体を開発し1にlo、 現在でもこれらの材料が広く用いられている。 1969年に、米国のデュポン社のL.H.Brixnerはリラクサをコンデンサの誘電体材料 芦して用いることを提案しだ≒
図1−13に積層セラミクスコンデンサ(Multilayer Ceramic capacitor 略号MLC) の製造1こ程とその構造を示す。当時のMLCは1300℃前後で焼成する必要のある高誘 貳率のチタン酸バリウム系材料が用いられていた。誘電体と同時焼成する必要のある内 部電極としては、誘電体との反応を避けるために高価な白金(Pt)やパラジウム(Pd) が用いられており、コストが商い欠点があった。 リラクサはその焼成温度が1 1 0 0℃程度と低いために安価な銀・パラジウム合金が 内部電極として使用できる。さらに誘電率最大値が大きく、その温度に対する変化が散 漫なため容量の温度特性に優れる。このために低コストのMLC用誘電体材料が種々研 究された。NECの米沢等はPb(Fel/2Nb1/2)03−Pb(Fe2/3W1/3)03系材料を開発し、最初 の大容量MLCを実用化しだo。その後もこのようなリラクサを用いたMLC用誘電体 の研究開発は進み、様々な組み合わせのMLC用材料が提案されだ白¨)。開発当初の 1980年代には種々のリラクサがMLC用誘電体材料として調べられた。 しかしなが ら現在では量産されている組成のほとんどはPMN−PTを主体にしたものである。こ の理由はPMNが大きな誘電率と高い絶縁抵抗および安い原料価格のMLC用誘電体と しての3つの重要な材料特性をすべて満足するためである23)。1997年現在ではリラ クサを用いたMLCは1μF以上の高容量のコンデンサを中心に日本だけでも7社で製 造販売されており、その売り上げは150億円/年以上となっている。これはリラクサ 材料の最大の応用分野である。 一 14 表1−1 各種のPb(rr B″)o=.材料とその略号・、キュリー温度、 誘電率最大値、結晶構造およぴ結晶相
Typical relaxor laterials and their l】ropnrt、ies.
Relaxor materials Abbreviation Tc
(℃) Emax. Crystal struelure ForAF Pb(B‰/3B5‘2/3)03 Pb(Cd1/3Nb2/3)03 PCdN 270 8、000 PC F Pb(Zn1/3Nb2/3)03 PZN 140 22、000 R F Pb(MgL/3Nb2/3)03 PMN −10 18、000 PC F Pb(Ni1/3Nb2/3)03 PNN ,120 4、000 PC F Pb(Mnl/3Nb2/3)03 PMnN ,120 4,000 PC F Pb(Co1/3Nb2/3)03 PCON -98 6,000 M F Pb(Cd1/3Ta2/3)03 PCdT 9 ● 9 蕃 ?ry 9 ● Pb(Mg1/3Ta2/3)03 PMgT -98 7,000 PC F Pb(Ni1/3Ta2/3)03 PNT -180 2、400 PC F Pb(Mn1/3Ta2/3)03 PMnT 9 ● 9 ● R 9 ● Pb(Co1/3Ta2/3)03 PCOT -140 4,000 PC F Pb(B3≒/2B5゛1/2)03 Pb(Yb1/2Nb1/2)03 PYbN 280 150 M AF Pb(Hol/2Nb1/2)03 PHON 240 480 M AF Pb(Lu1/2Nb1/2)03 PLuN 260 350 M AF Pb(ln1/2Nb1/2)03 PIN 90 550 M F Pb(Sc1/2Nb1/2)03 PSN 90 38,000 R F Pb(Fel/2Nb1/2)03 PFN 112 12、000 R F Pb(Yb1/2Ta1/2)03 PYbT 280 100 M AF Pb(Lu1/2Ta1/2)03 PLuT 280 145 M ? ● Pb(ln1/2Ta1/2)03 PIT 9 ● ? PY ? ● Pb(Sb1/2Ta1/2)03 PSbT 9 9● PY 9 ● Pb(Se1/2Ta1/2)03 PST 26 28,000 R F Pb(Fe1/2Ta1/2)03 PFT -30 3,700 R F Pb(B2゛1/2B6゛1/2)03 Pb(Cd1/2W1/2)03 P(3V 400 400 M AF Pb(Mnl/2W1/2)03 PMnW 150 200 M AF Pb(Zn1/2WI/2)03 PZW 9● 9 ● PY AF Pb(Ma1/2w1/2)03 PMRW 39 300 O AF Pb(Co1/2W1/2)03 PCOW 32 240 O AF Pb(Ni1/2W1/2)03 PNW -3 Pb(B3゛2/3B6゛1/3)03 Pb(Fe2/3W1/3)03 PFW -75 9、000 C F Others ゛PbZr03 PZ 240 3,000 O AF (Pb,La)(Zr,Ti)03 PLZT <350 30,000 R,T F,AF PbTi03 PT 490 9、000 T F C: Cubic, PY: Pyrochlore, AF: Antiferroelectrics, 1Ⅵ:Monoclinic、 R: Rhombohedral、 F: Ferroeleclrics 一 15 0: Orthorhomhic, PC: Pseudocubic T: Telragolsl,
mo 25000
レ,
仁o
3!Jpala!(1 1 0 0 0 0 5 0 ( 1 0 ) 、 ; 拓 15 5 jS 11 G 応,105 125 05 Temperature((C) 図1−12 通常強誘電体(チタン酸バリウム)とリラクサ材料(マグネシウム ニオブ酸鉛−チタン酸鉛PMNT90/10)の誘電率温度特性Die!ectric properties of normal ferroelectric materia1(BaTi03) and relaxor materia1(1ead magnesiul niobate-1ead titanate PMNT90/10)
表1−2 リラクサ材料の歴史
llistory of reiaxor lateriaIs
年, 代 リラクサ材料 研究者 1955 (PZT) PMN,PFN,PSN B.JAFFE G.SMOLENSKli 1960 PSN,PST,PMW PYbT,PYbN,PLuT,PLuN, PCOW,PCdW V.BOKOV 1965 (PMN−PT) (PZT−PMN) (PZN−PT),(PSN−PT) H.0UCHI S.NOMURA,V.TENNERY 1970 [PMW−PT−ST] (PZT−PCON) (PZT−PZN) L.H.BRIXNER T.KUDO H.0UCHI 1975 (PLZT) [PFN−PFW] [PMN−PT] G.H.HEARTLING M.YONEZAWA S.FUJIWARA t980 [PMN−PZN−PT] [PNN−PMW−PT] [PZN一PMN−BT] (PZN−PT) Y.SAKABE M.YONEZAWA Y.YAMASHITA J.KUWATA 1985 [PMN−PMW−PT] M.YONEZAWA 1990 (PST一PT) (PSN−PT十Nb) J.F.WANG Y.YAMASHITA 1995 (PSN−PMN−PT) Y.YAMASHITA (圧電応用),[コンデンサ応用] 一 1 6 酉Tでぷ 1)I
D
1.MILLINGCalcizleddielectricpawder is mmed with biildarilla bd mill.
2.SHEET CASTING
The mined slurry is cast ㎞to a sheet form using doctor blade method.
こい
・圓罰g 一回繭u ・圃− 酋−︱ 3.PRINTINGElectrode ik paste is printed on to the sheet.
晋弓
分合 4.LAMINATING
The printed sheets are stacked and laminated in a die applying heat and pressure.
1
c = : 〉
5.CUTTING
Thela而nated sheets are cut into chips
1 7
6.SINTERING
The chips are siltered ixll tunnel ki】n.
t●ΓΥilination ●│●ctrod●
7.TERMINArlON I
The termination ends of&ips lfe dipμd ilo Al paste,then they as drid lnd nied inabeltfi】msce. ↓
c = : 〉
8.ASSEMBLING AND ENCAPSULATING Chips are soldered to lead wires and coated with epQxy resin,
9.TESTING
Capacitance,D.F.,I.R.and other parameters are tested by auto testin8 machine.
宍日日
回目目
10.FINISHED回目
回目
ODUCTS 図1−13 積層セラミクスコンデンサの製造工程とその構造Manufacturing process and structure of multilayer ceramlccapacltor.
1−4 リラクサ系圧電材料 1955年のB.JaばeによるPZTの発見以来、現在では種々の用途にPZT2成分 系セラミクス材料が用いられている。PZTでは菱面晶相と正方品相の相境界(MPB) 近傍の組成であるPZT53/47付近の組成で大きな誘電率、電気機械結合係数を示 すことが知られている。PZT以外でこのような特性を示す2成分系圧電材料としては Pb( 「B″)03の一般式で表され、リラクサと総称される材料とチタン酸鉛(PT)との 固溶体がある。 図1−14にPZTの相境界(MPB(I))とリラクサーPTの相境界(MPB(II)) を示ず‰MPB(II)の組成は用いられるB´、B″イオンの種類により変動する。表 1−3に各種リラクサとチタン酸鉛との相境界を示す。これまでに発見されたリラクサ ーチタン酸鉛2成分系材料の相境界はすべてチタン酸鉛が5 0mo1%以下で生じる¨’¨‰ 喪1−4にはMPB(I)と(H)の比較を示す。 MPB(II)の組成はMPB(I)よりも高 誘電率相であるペロブスカイト構造が分解しやすく不安定であり、材料に高価なニオブ やタンタル、タングステンを使用するために原料コストが高い。またキュリー温度が低 く、さらに圧電特性がPZTに比べて劣るものが多いために圧電材料としての実用化の 観点ではこれまではさほど注目されていなかった。 表1−5はMPB(II)組成をMPB(I)組成と比較した時の長所を示す。 リラクサベースのMPB(II)は組成に分解しやすいジルコン酸鉛を含まないために焼 成時に酸化鉛の蒸発が少なく、大型の振動子でも均一に作製出来る。また機械的強度も PZTよりも優れている。また材料の組み合わせが多く、大きな結合係数を示す可能性 のある材料がある。 しかしながら、最も重要な特徴はMPB(II)の組成はPZT系のM PB(I)に比べて単結晶が作製しやすく、新たな用途が開ける可能性があることである。 単結晶は特定の方位ではセラミクスに比べて優れた特性を示すことが知られている。 図1−15、図1−16には圧電材料のトレンドを示す。圧電材料として最も重要な 電気機械結合係数k33および圧電定数d33の値の年代による変化を示す。圧電材料の本格的 な応用は、1940年代に発見されたチタン酸バリウムにより始まった。この材料のk33 =40%、d33=2 0 0 pC/N程度であった。1955年にPZTが発見され、k33=70%、 d33==4 0 0pC/Nまで増加した。その後に、PZTに少量のリラクサを固溶させたり、鉛の一部を Ba、Sr、Ca、Laで置換した変性PZTが1970年代から開発され、k33=75%、 d33=6 0 0 pC/N程度まで増加した。しかしその後の20年間では圧電特性は種々の材料、 プロセスが試みられたにもかかわらずほとんど進歩していない。 1982年に東京工業 大学の桑田等は亜鉛ニオプ酸鉛−チタン酸鉛の2成分系固溶体単結晶において、相境界 近傍のPZNT91/9の組成はk33=92%、d33=1 5 5 0 pC/N の材料であることを 報告した27≒1990年にはペンシルバニア州立大学のT.R.Shroutは、マグネシムニオ ブ酸鉛−チタン酸鉛2成分系固溶体単結晶において、相境界近傍のPMNT70/30 の組成はd33=1 5 0 0 pC/Nが得られることを報告したヽ¨≒ この電気機械結合係数k33は その後に92%と報告された。これらの報告された圧電単結晶の値(k33=90−92%)はセラ ミクス(k33<80%)と比べて極めて大きい。 1 8 表1 3 Pb Pb (B (B B″) B″) 03 03 PbTi03材料の相境界
PbTi03 materials and their MPB.
Relaxor material Abbrcv Tc (七) Ti@MPB (mol%) Tc卯MPB (℃) Rererences Pb(B詣/3B゛2/3)03 Pb(Cd1/jNb2/J)03 PCdN 270 28 380 【251, Pb(Znl/3Nb2/3)03 PZN 140 9-10 190 【261,1271,15o】 Pb(M只□Nb2/3)03 PMN −10 32-34 160 1281,1291,130】 Pb(Nil/3Nb2/3)03 PNN -120 30-35 130 【311 Pb(Mnl/3Nb2/3)OJ PMnN ,120 30-35 130 1321 Pb(COI/3Nb2/3)03 PCON -98 33 250 【171 Pb(Cdl/3Ta2/3)03 PCdT 9 ● ? ? Pb(Mgl/3Ta2/3)03 PMgT -98 30? 100 【331 Pb(Nil/3Ta2/3)03 PNT -180 ? ● ? ● Pb(Mnl/3Ta2/3)03 PMnT 9 ● 38,41 ? ● 1321 Pb(Co1/3Ta2/3)03 PCOT -140 9 9 ● Pb(B3゛I/2B91/2)03 Pb(Ybl/2Nb1/2)03 PYbN 280 50 360 1341,1351 Ph(Hol/2NbE2)03 PHON 240 9 9 Pb(Lul/2Nbl/2)03 PLuN 260 41 357 1521 Pb(ln1/2Nbl/2)03 PIN 90 37 320 1361 Pb(Scl/2Nbl/2)03 PSN 90 42 260 【371,1381,1391 Pb(Fel/2Nbl/2)03 PFN 112 7? 140 1401 Pb(Ybl/2Tal/2)03 PYbT 280 9 ● ? Pb(Lul/2Tal/2)03 PLuT 280 ? 9 Pb(lnl/2Tat/2)03 PIT ? ● ? ? Pb(Sbl/2Tal/2)03 PSbT 9 ● 9 ● ツ ● Pb(Scl/2Tal/2)03 PST 26 45 205 1411 Pb(Fel/2Ta1/2)03 PFT -30 9 ● 9 【421 Pb(B2゛1/2B6゛I/2)03 Pb(Cdl/2WI/2)03 PCXV 400 9 ● 1431 Pb(Mnl/2WI/2)03 PMDXV 150 9 慟 Pb(Mgl/2WI/2)03 PMgxV 39 55 60 【441 Pb(Col/2WI/2)03 PCOXV 32 45 310【451 Pb(Nil/2WI/2)03 PNXV -3 Pb(B3゛2/3B6゛1/3)03 Pb(Fe2/3Wt/3)03 PFXV -75 Others “PbZr03 PZ 240 47 360 1461,【471 (Pb、La)(Zr、Ti)03 PLZT <350 30-45 <350 1481 PbTi03 PT 490 1 9
- = = = ゝ
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− −Longitudina¶Mode vibralion of Bar Element k33 .9 c 四竹 窟 ` Tetragonal `J 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 Rhombo (Year) Modiried PZT) PbZr03 MPB− I PbTi03 図1−15 圧電材料の電気機械結合係数k33のトレンド Technological trendofk33forpiezo(川ect,fj(:】jlateri副s. 図1−14 ジルコンチタン酸鉛(PZT)の相境界(MPB(エ))と - リラクサチタン酸鉛(PT)の相境界(MPB(II)) こ Morph()tropic phaseboundaryMPB(I)ofPZTandMPB(H)ofrelaxor-PTsystem. 一 S! ‘’`’`’`’ 邱1,800 芯 表1−4 PzT相境界(MPB(I))とリラクサーPT相境界(MPB(11))の比較 g l・600
Comparison of MPB(I)of PZT and MPB(H)of relaxor-PT. てコ 1,400
1− ←● PZN・PT PMN-PT SLNGLE S1NGLE CRYSTALS CRYSTALS TERNARY TERNARY PZT ビFシ’ . / cERAMlcs BaTiO3 MPB(I) MPB(II)
i
l,2oo
i
l,ooo
8 800
9 gnn
結合係数 大 中? キュリー温度 200-350℃ <200℃ へ≒バスカイト構造安定性 良好 不安定材料費
安価 高価 −- トー S 400 _J S 200 4- . ,,一にL ,,4uむg ・ヽ・い‥い 一日ゴ N jRI J ソノyソ r 1111∂もりrlvl r 13 y11ノノvノJKり│ Advantages of relaxor−PT MPB(II)overPZT MPB(I). l ゛ 1940 1950 1960 1m l曜 1990 2頴 (YEAR) (1) 組成の選択肢が広い。 (2) 機械的強度が大きい。 (3) 酸化鉛の蒸発が少ない。 (4) 単結晶の作製が容易。 図1一1b 比竃珂料の汰岨短気d33のトレンIヽ Technological trendofd33forpiezoelectricmateriajs. − 20 − − 2士 −1−F5 本研究の目的と意義 本研究の目的の一つは、これまで知られている圧電セラミクス材料としては最も大き 々市気機械結合係数を持つPZTよりも結合係数の大きな国電セラミクス材料を探索す ることである。本研究のちう一つの目的はこれまで報告されているPZNT91/9や ljMNT65/35単結晶と少なくとも同等以上の電気機械結合係数や圧電定数d33の 大きな圧電単結晶材料を探索することである。さらに本研究の最終の目的はこれらの材 料開発か通じて圧電材料の特性として最も重要な電気機械結合係数の大きな2成分系材 料の玖通点を探り、今後の材料開発の指針を得ることである。これまでに報告されてい ない大吉な電気機械結合係数の新しい材料を開発できれば種々の圧電応用の分野に大き なインパクトを与えることが出来る。このため新高結合係数圧電材料の開発は材料研究 名にとって大きな意義かおり重要である。 特に医用超音波診断装置の圃質向上は圧電材料の大きな結合係数により広帯域、高感 碓が実現出来、ブローブの高性能化に極めて重要である。図1−17には医用診断装置 の与真を、図1−18には各種超音波プローブの写真を、図1−19には超音波ブロー ゾの構造を示す。この用途では短冊状の振動子がアレー状に配置され、アレー型振動子 と呼ばれる。 この振動子形状では棒の縦振動k33と平板の厚み振動ktの中間である矩形板 の縦振動k3yが大きいことが重要である。通常のPZTセラミクスではk3y=68%程 度である。 ! L==・・=. ………・71711 ∠J J, j-│?7 4 j 図1−17 医用超音波診断装置
DiagnosGc uhrasound system
2
た
図1一18 医用超音波診断装置用各種ゾロープ
various ultrasonic medl(冷l pr()bes.
Acoustic lens ∼ヽ Acoustic matchin9籾 Pjezoelectric material Backin9 Common electrode Probe head 図1 19 医用超ぼ波プローブの構造 Structure of ultrasonicmedicalprobe 23
25 1−6 高結合係数圧電材料探索の指針 ぽ雷定数である電気機械結合係数の大きな材料としては、前述のPZTが知られてい ろ、AB03型ペロブスカイト構造のPZTにおいてZrはBサイトに固溶し、6配位 で、そのイオン半径が7 2pmと大きい(以後、イオン半径はすべてR.Shannonの値¨l を川いた。)。一方、Tiは6配位の場合60.5 pmであり比較的にイオン半径が小さい。 また。この相境界における組成であるPZT53/47の平均イオン半径は66.7 pmで ある。 -一方、亜鉛ニニオプ酸鉛(PZN)はジルコン酸鉛(PZ)と同様な菱面晶であり、キ ごj.リー温度が1 4 0℃である。このPZN系セラミクスはパイロクロア構造が安定であ りべl]ブスカイト構造が得られない¨’。しかし、単結晶は酸化鉛をフラックスとして容 易に作製出来る¨l。このPZNとPTとの固溶体単結晶はPT量が9 mo1%のPZNT 91/9近傍組成で電気機械結合係数が最大の菱面晶と正方晶の相境界があり、その結 合係数k33が92%と極めて大きい¨’。またZnはペロプスカイト構造においては6配 位であり、そのイオン半径が74.5p・と大きい。一方、Nbは6配位の場合64pmで ありH″・イオンとしてはイオン半径が最も大きい。またこの相境界における組成の平均 ● ・J イオン半径は66.8pmとPZTの相境界の平均イオン半径とほぽ同等である。 さらに結合係数が大きいことで知られているマグネシウムニオプ敵船−チタン敵鉛 CPMNT68/32)のMgは72p圃とZnのイオン半径(74.5pm)と近い。 V.』.Jollson等はAサイトが鉛であるペロブスカ・イト化合物では、Bサイトの平均イオ ン半径が7 5p・近傍で、自発分極Psが最大になると報告している¨’。彼等はL.Ahrens ぴ)イオン參径‘¨を用いているためこれをR.Shannonのイオン半径で表示すると68.5pm となる。一一般に強誘電体では自発分極の大きい材料は圧電定数である結合係数が大きい ‘‘ヽ‘−-・いヽヽ・仙・ハ。。/、/。-2 傾向がある.たとえば、結合係数k33=56%のBaTi03セラミクスではPsは約1 0 g C/c・ n .、_..=. 、.、 slj (?あり、k33=75%のPZTセラミクスでは20∼40μC/cm2、k33=92%のPZNT ・・`゜之`I°・−I.ゝ1. マー〃¶-S り1/9の単結晶では50μC/c.2である。以上の理由により結合係数の大きなPZT 53/47セラ 材料には ① ② ③ ④ 々 ' ヽ クスとPZNT91/9単結晶およびPMNT68/32セラミクス 菱面品でTcが高いペロブスカイト化合物と正方晶のチタン酸鉛との固溶体 Bサイトを構成する2種類の元素のイオン半径が大きい 相境界近傍の平均イオン半径が6 7pm程度である 自発分極が20μC/cm2 以上と大きい などの共通点がある。これらの観点からPZT53/47、PZNT91/9、PMNT68 /32以外の新たな圧電材料の探索を行った。 一 り ー 4 1 ) 2 ) 3) 4) 5) 6) 7) 8) 9) 10) H) 12) 13) 14) 15) 16) 17) 18) 19) 20) 21) 22) 23) 24) 25) 26) 27) 28) 29) 30) 31) 32) 33) 34) 35) 36) 37) 38) 39) 40) 41) 42) 43) 44) 仙) 46) 47) 48) 49) 50) 51) 52) 53) 参 考 論 交
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-第2章 スカンジウムニオブ酸鉛(PSN)−チタン酸鉛(PT)2成分系セラミクス材料 [既往の研究] 2−1 スカンジウムニオブ酸鉛の特性 スカンジウムニオブ酸鉛Pb(Scl/2Nbl/2)03(PSN)は、1959年に、最初に │.G.【smailzadeによりセラミクスで合成され、そのキュリー温度が90℃にある菱面晶 の強誘電体であることが報告されているj≒図2−1−1はPSNの結晶格子を示す。 PSNでは2種類のBサイトイオンのScとNbを含むためにこれらを表すためには最 低2個のペロブスカイト格子か必要となる。PSNの報告されている格子定数は4.08Å、 α−89.8 9゜ で理論密度は7.91g/cm3である白。図2−1−2はPSNセラミ クスの誘電率の温度特性を示す。Tc以下では弱い周波数分散が見られ、この材料がリラ クサであることを示している。焼結密度が理論密度の97%程度で、焼結粒径が2μm 程度では1 kHzにおける誘電率の最大値は18000であり、最も代表的なリラクサであ るPMNよりも大きい。M.Dambekalneなどは1992年にPSNをホットプレスしてそ の誘電率の温度特性を測定している9.この値は30000であり単独のリラクサ化合 物として報告されたものでは最も大きい。PSN単体での電気機械結合係数はkrこ18%、 圧電定数d31=−4 4 pC/Nとの報告がある。1995年にはF.ChuはPSNおよびPST の欠陥構造について調べ、欠陥の無い場合は最大誘電率がそれぞれ38000および 27000であると報告している。これらの値はこれまでに報告されているリラクサ材料の 中で最大の値である゛4)。 2−2 PSN2成分系材料の特性 PSNを含む固溶体のセラミクス材料に関しては、1962年にV.J.Jonson等により 最初に調べられ報告されているo。彼等はPSN材料の一部をZr、Ti、Hfで置換 し、比較的に自発分極Psが20∼30μC/cm2と大きいこと、および誘電率の温度特性 について述べているが圧電定数に関する記述はない。スカンジウムニオブ酸鉛−チタン 酸鉛2成分系材料は1968年にV.J.Tennery等によりさらに詳細に調べられたo。 図2−2−1にV.J.Tenneryにより調べられたPSNT系材料の相図を示す。相境界 は、57.5 mo1%PSN−4 2. 5mo1%PT(以後PZTの慣例に従いPSNT57.5 /4 2.5と略す)付近とされている。この近傍組成でのキュリー温度は260℃であり リラクサーPT系としては比較的に高い。しかしながら、この材料系は焼成温度が1320 ---t385℃と極めて高いこと、焼結密度が理論密度の89−93%であり、焼結密度の 高いセラミクスが得にくい欠点があるとの記述がある。図2−2−2にV.J.Tenneryによ り報告されたPSNT系の電気機械結合係数陥の祖成依存性を示す。圧電特性はMPB 近傍で最大となり陥=46%とされている。 1992年にM.DambekalneはPSN−PMNやPSN−PZN2成分系セラミクス について調べ、その特性を明らかにしている白。ホットブレス法で作製されたこれらのセ ラミクスは、電気機械結合係数kr3=20%以下で、d31=−5 0 pC/N以下である。しかし、 透光性は50%との記述がある。1994年にV.A.lsopovは55PSN−45PMNの セラミクスを用いて圧電アクチュエータの応用を発表している7≒またPSNと同様な 材料系であるスカンジウムタンタル酸鉛Pb(Sc1/2Ta1/2)03とPTとの固溶系の圧電特性 は1992年にJ.F.wangにより報告されているo。 − 26 − 図2 ゝ ω 1 LEAD (Pb2゛)
●
SCANDIUM
(Sc3゛)@
N10BIUM (Nb5゛)○
OXYGEN
(02‘) 1 50,000 40,000 30,000 20,0〔〕0 10,000 0 スカンジウムニオブ酸鉛(PSN)の結品構造 Crystal structure of PSN. 60 図2−1−2 Temperature and constant of PSN 80 100Temperalure(゜C)
120 140 PSNの誘電率の温度特性frequency dependence of dielectric ceramics(after F.Chu3)).
︹U・︺6 6・ 501 40・ ︲ リ 、 ︶ 1!
Pb(Sc1/2Nbl,2)03
図2− Phase diagram ofQ。9a
lo'dflual)!poD
6ulldr.9Dlolpoa
図2 0.50 0.40 0.30ユ
2− PSN・ 1 PTz
、
〔mol〕
1.00-PbTios
PSNT系材料の相図 (PSNT) ceramics(after Tennery6))QOO
QIO Q20 0.30
0.40
Q50
Composition
PcromQtar
2 2 060 0X) X PSNT系セラミクスの電気機械結合 Electromechanical coupling factor PSNT ceramics (after Tennery6)).28
乙
22 3 ・ 3 NbおよびScを添加したPSN I はじめに PT(PSNT)2成分系材料の特性 PSN単体は90℃にキュリー温度を有する菱面品であることが報告されており` 4へ結 晶構造および組成がPZNと類似性が高い(前述の1章一6の条件①)。PTとの相境界は、 PSNT57.5/4 2.5付近とされており、この近傍組成でのキュリー温度は260℃ である4几 自発分極Psは最大で35μC/cm2とPZT並に大きい(条件④)o。 しかしな がら、図2−2−2に示したように広がり方向の電気機械結合係数k9は最大でも46%と期 待に反して低くo、PZT系材料のkr=65%と比べてなんら魅力のない値である。スカン ジウムの6配位のイオン半径はジルコニウムとほぼ│同等な73pmであり(条件②)、相境界 をPSNT57.5/42.5とするとその平均イオン半径は65.1 pm(条件③)とPZ T53/47やPZNT91/9の約6 7pmと近い値であり、前記の1章一6で示した高結 合係数の条件である①∼④のすべてを満たす。さらにペンシルバニア州立大学のJ.F.Wang等 は1992年にスカンジウムタンタル酸鉛−チタン酸鉛、Pb(Scl/2Tal/2)03−PbTi032成分 系セラミクス材料においてMPB近傍(5 5mo1%PST−45mo1%PT)で結合係数k9 が61%、k33が73%、誘電率3400の材料があることを報告しだo 。この結合係数 の値はPZT系材料以外では特筆すべき大きさである。複合ペロプスカイト構造の化合物 ではタンタルよりもニオブを川いた化合物が誘電率、圧電定数が大きく、キュリー温度も 高いことが経験的に知られている。表1−1から明らかなように、例えばPb(Fe1/2Nb1/2)03 (Tc=112℃)はPb(Fe1/2Ta1/2)03(Tc=−30℃)よりもTcが高く、最大誘電率も大きい。 またPb(Mg1/2Nb1/2)03(Tc=−8℃)も同様にPb(Mg1/2Tal/2)03(Tc=−98℃)よりもTc が高く最大誘電率も大きいため、PZTの添加成分として広く用いられているo。このた めPb(Sc1/2Nb1/2)03−PbTi032成分系材料は本来、Pb(Sc1/2Ta1/2)03−PbTi032成分系よりも Tcが高く、優れた圧電材料のはずである。前出のV.J.TenneryとJ.F.Wangのデータを詳細 に比較すると前者の試作した試料は理論密度が89−93%であり、後者の96%以上と いう値に比較して低く、低密度であったがゆえにPSNT系材料の電気機械結合係数が低 かった可能性が高い。最近、圧電セラミクスの分野ではそのプロセス技術が大幅に進歩し ている。高純度材料、超微粉原料、2段階仮焼、微粉化に適する部分安定化Zr02粉砕ボー ル、アトリッションミル、最適な焼成プロファイルなどの最新プロセスは1960年代に 報告された圧電セラミクスの特性を大幅に変える可能性がある。PSNT系のような難焼 結性のために高密度が得にくいとされていた材料もこれらの最新プロセスを用いることで 商い密度と改善された圧電特性をもたらす可能性は高い。さらにAB03ベロブスカイト では、Aサイト空孔を生じる添加物をドナー、Bサイト空孔を生じる添加物をアクセプタ と呼んでいる。PZTにおけるドナーとしては、Nb205、W03やLa203が知られているo。 またアクセプタとしてはSc203、Fe203、K20が知られている。PZTではその構成元素の 中にこれらの成分を含まないために、僅かのこれらの添加物により大幅に特性が変化する ことが知られている。しかしながら、PSNT系材料のようにその構成成分にNb205やSc203 を含む系におけるドナーやアクセプタの添加物の効果を調べた報告は少ない。このために。 2章一3の目的はドナーであるNb205およびアクセプタであるSc203を少量含む相境界の近 傍組成のPSNT系セラミクス材料を最新のプロセスで合成し、高密度なセラミクスを得 て、その圧電特性を明らかにすることである。 29① ② ③ Pb[(Sc1/2Nb1/2)0.575Ti0.425103 Pb[(Sc1/2Nbl/2)0.575Ti0.425103十1 mo1% Pb[(Sc1/2Nb1/2)0.575Ti0.425103十2mo1% 1 -k/ =O、398 I kゾor(kt Qm 一 ﹄ n・ -t`a一行 十〇.579 =0.405 f「一 fa−fr 一 一 ) I 4πAf CR Rは共振抵抗をそれぞれ示す。 十〇.810 一 Nb205 SC203 30 − (2-3-1) (2-3-2) (2-3-3) -2−3一一2 実験方法 以ドの実験ではPSNT系セラミクスの特性が実際に優れているかを確認するために 相境界の近傍組成を実際に試作した。 今回の実験には下記の3種類の組成を用いた。 ①の組成は、前出のV.J.Tenneryにより報告されている最も大きな結合係数を示すM PB近傍の組成である(以後、PSNT57.5/4 2.5、または無添加品と略す)。 ②の組成は、絶縁抵抗を向上させる目的で、PZTなどで実績のある代表的なドナー添加 物であるNb205を1.0mo1%過剰に加えたものである(以後Nb添加品と略す)。③の組 成は、アクセプタ添加物であるSc203を過剰に加えたものである(以後Sc添加品と略す)。 試料の作製は図2−3−1に示す方法により行った。純度が99.99%以上のSc203、Nb205 の等mo1を計量し、16時間粉砕、混合を行った。その後に乾燥させ1200℃、4時間で 仮焼した。この塊を再び粉砕し、SCNb04を得た。 このSCNb04と純度が99.99%以上の Pb0、Ti02、Sc203、Nb205を16時間粉砕、混合を行った。その後に乾燥させ、800℃、 2時間で仮焼した。再び16時間粉砕し乾燥して粉体を得た。この粉体にバインダーとし てPVA5%水溶液を7wt%入れ、乳鉢で混合した後に28#の箭を通過させて造粒を行 った。25mmφx2∼3mmに9 6 MPaの圧力で成型した。その後に600℃でベルト炉を L時間通して脱脂を行い、その後に1275℃および1300℃で3時間焼成した。高密 度のマグネシアさやを用いるほかは、その他の特別な鉛雰囲気などは用いなかった。その 後に20mmφx1.0mmに仕上げ、両面に銀電極ペースト(富士化学SP5020)を700℃で 焼き付けた。k33測定用の試料は、焼結体から2.0×2.0×8mmの角棒を切り出し、両 端に銀電極を焼き付けたものを用いた。分極は2.5 kv/mmの直流電界を印加したままで 125℃から30℃まで約4時間で冷却した。室温で24時間以上のエージングを行い、 ぞの後に圧電特性の評価を行った。圧電特性の評価はネットワークスペクトラムアナライ ザ(HP4195A)を用いて共振・反共振周波数を求め、EMAS6100白oに従い 圧電特性を求めた。電気機械結合係数およびQmは次の式により求めた。 ここでfrは共振周波数、faは反共振周波数、△fはfa−fr、Cは1 kHzの容量、 Mixing&Milling Granulation Pressing Sc203,Nb20s
with 5 mmφ Zr02 bail in pure water for 24 h
150℃20 h.
SCNb04,1200℃3 h.in a alumina crucible
Pb0,Ti02,SCNh04,Sc203,Nh205
Pb{(Scl/2Nbl/2),.575Ti,.us}03,Pbl(Scl/2Nbl/2),I.ssTio.,51()μSc20:l,Nh2()5
with 5 mmφ Zr02 ball in pure water for 24 h
Electronic oven quick dry w 850℃2h.in alu 「na sagger
φ5 mm Zr02 ba11 一 1 一︱ th bo − 1 1 I I ng n pure water for 24 h 150℃20 h.dry oven
with 7wt%PVA,#28 pass
ψ20× 2.0mm 100MPa/cml
1250℃−1300℃,3 h.in dense MgO crucible
#1000,φ17mm x l mm thickness
Silver electrode by firing at 700℃
120℃,3 kV/・・ 15 1in.,co・ling to 30℃w/ voltage
XRD,SEM,Density,electrical properties
図2−3−1 試料作製フローチャート
Sample preparationnow chart.