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Shinki hoteru ni okeru rebenyū manejimento to kakaku senryaku

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Academic year: 2021

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(1)Title Sub Title Author Publisher Publication year Jtitle Abstract Notes Genre URL. Powered by TCPDF (www.tcpdf.org). 新規ホテルにおけるレベニュー・マネジメントと価格戦略 野村, 昌広(Nomura, Masahiro) 村上, 裕太郎( Murakami, Yūtarō) 慶應義塾大学大学院経営管理研究科 2018. Thesis or Dissertation http://koara.lib.keio.ac.jp/xoonips/modules/xoonips/detail.php?koara_id=KO40003001-00002018 -3464.

(2) 慶應義塾大学大学院経営管理研究科修士課程 学位論文(. 2018. 年度). 論文題名. 新規ホテルにおけるレベニュー・マネジメントと価格戦略. 主. 査. 村上 裕太郎. 副. 査. 林 洋一郎. 副. 査. 氏. 木村 太一. 名. 野村. 准教授 准教授 専任講師. 昌広. 1.

(3) 論 文 要 旨 所属ゼミ 村上裕太郎 研究室. 氏名. 野村昌広. (論文題名) 新規ホテルにおけるレベニュー・マネジメントと価格戦略 (内容の要旨) 近年、インバウンド需要の急増やヘルスツーリズム、スポーツツーリズムなどによっ て日本の観光市場が右上がりの成長を続けている。国内の動向に合わせ、ホテル業界に おいては、都心部からローカル地域までの全域において積極的な宿泊施設への投資が行 われ、至る所で建設が進められている。また、ホテルの運営についても、これまで日本 で主流だった直営方式から、リース方式やマネジメントコントラクト方式、フランチャ イズ方式など、新たな形態が取り入れられるようになり、ホテル業経験のない場合でも ホテル経営を行えるようになってきた。北海道・大樹町に 2018 年 11 月オープンした 筆者が代表取締役を務めるホテルも、本研究の中で一部概要を説明するリース方式を用 いて経営を行っている。しかしながら筆者を含め、実際にホテル事業経験のないホテル 経営者が新たに誕生している昨今、経営トップは損益コントロールをどのようにして行 うのだろうか。また、どのような指標がホテルの業績を決定付けるのに最もふさわしい だろうか。ホテル業は、他のサービス業とは異なり、自社のサービスや商品を翌日に繰 り越すことが出来ないため、日々の価格に伴う需要と供給のコントロール、いわゆるレ ベニュー・マネジメントが特に重要だと考えられている。本研究はこのレベニュー・マ ネジメントに注目し、当該ホテルのような新規ホテルが今後市場を生き抜くためにはど のような施策を行うべきか、また限られたデータの中でどのように適正な宿泊価格を決 定するか、について研究したものである。具体的には、筆者が営むホテル情報を基にア ンケートを用いた仮想市場法(CVM)を行い WTP(支払意思額)の割合を求めた後、 2 つの分析手法を用いて同アンケートにおける適正価格の導出を行う。1つ目の分析手 法は、ロジスティック回帰分析を用いた適正価格帯の検証である。ロジスティック回帰 とは、統計分析における回帰分析の一種である。通常の回帰分析とは異なり、目的変数 が 2 値の時に用いる手法である。2 つ目の分析手法では、単回帰分析から収益曲線を導 出した後に具体的な適正価格を検証する。さらには同適正価格を用いて本アンケート結 果から考えられる最大収益を求める。以上から2つの分析手法で用いた価格の整合性を 検証した後、具体的な RevPAR(販売可能客室1室当たりの客室売上高)を導出するこ とまでを目的とした。RevPAR とは、ホテル業において近年特に重要だと考えられてい る業績指標であり、平均顧客単価と客室稼働率の積から求めることが出来る。 そのほか、潜在ニーズの把握についてもアンケート調査票からの情報を分析し、当該 ホテルとの比較による施策を検証・構築していく。. 2.

(4) 目次 目次 ............................................................................................................................ 3 1. はじめに ............................................................................................................... 4 1.1 問題意識 ............................................................................................................ 4 1.2 研究の目的 ........................................................................................................ 4 2. 市場分析 ............................................................................................................... 6 2.1 日本における観光市場 ...................................................................................... 6 2.2 北海道における観光市場................................................................................... 8 2.3 大樹町(十勝)における観光特徴と抱える問題 .............................................. 11 3. ホテル業界のビジネスモデル ............................................................................. 12 3.1 ホテルの運営方式 ........................................................................................... 12 3.2 日本におけるホテル業界の特徴 ...................................................................... 13 3.3 近年のホテル業界の動き................................................................................. 14 4. 価格決定のためのレベニュー・マネジメント .................................................... 16 4.1 ホテル業界における収益構造 ......................................................................... 16 4.2 導入方法と課題 ............................................................................................... 17 5. 自社ホテルにおける適正価格設定...................................................................... 21 5.1 目的 ................................................................................................................. 21 5.2 対象ホテル ...................................................................................................... 21 5.3 仮想市場法(CVM)によるデータ集計 .......................................................... 22 5.4 検証方法① ロジスティック回帰による分析 ................................................. 24 5.5 検証方法② 最小二乗法による分析................................................................ 27 6. アンケート調査からの示唆 ................................................................................ 30 6.1 アンケートの分析 .......................................................................................... 30 6.2 自社ホテルとアンケート結果の比較 .............................................................. 31 7. 結論と課題 ......................................................................................................... 33 7.1 結論と課題 ..................................................................................................... 33 8. 謝辞 .................................................................................................................... 35 参考文献 ................................................................................................................... 45. 3.

(5) 1.. はじめに. 1.1 問題意識 近年、インバウンド需要の急増やヘルスツーリズム、スポーツツーリズムなどによ って日本の観光市場が右上がりの成長を続けている。国内の動向に合わせ、ホテル業 界においては、都心部からローカル地域までの全域において積極的な宿泊施設への投 資が行われ、至る所で建設が進められている。 ホテルの運営についても、これまで日本で主流だった直営方式から、リース方式や マネジメントコントラクト方式、フランチャイズ方式など、新たな形態が取り入れら れるようになり、ホテル業経験のない場合でもホテル経営を行えるようになってきた。 北海道・大樹町に 2018 年 11 月オープンした筆者が代表取締役を務めるホテルも、本 研究の中で一部概要を説明するリース方式を用いて経営を行っている。しかしながら 筆者を含め、実際にホテル事業経験のないホテル経営者が新たに誕生している昨今、 経営トップは損益コントロールをどのようにして行うのだろうか。また、どのような 指標がホテルの業績を決定付けるのに最もふさわしいだろうか。 ホテル業は、他のサービス業とは異なり、自社のサービスや商品を翌日に繰り越す ことが出来ないため、日々の価格に伴う需要と供給のコントロール、いわゆるレベニ ュー・マネジメントが特に重要だと考えられている。具体的には、航空チケットの販 売方法も同様と考えられるほか、近年では、スポーツ観戦に伴うスタジアムチケット の販売方法についても、価格と需要のコントロールが必要だとされており、AI シス テムの導入や人材育成に力を入れる企業が増えている。 本研究はこのレベニュー・マネジメントに注目し、当該ホテルのような新規ホテル が今後市場を生き抜くためにはどのような施策を行うべきか、また限られたデータの 中でどのように適正な宿泊価格を決定するか、について研究したものである。 これまで、レベニュー・マネジメントに関する先行研究は多岐にわたり存在するも のの、その多くは既存のホテルに焦点をあてられたものが多く、新規事業としてホテ ル業を行う場合に具体的にどのように価格設定を行うか、まで正確に研究された研究 は少ない。そこで本研究では、新規ホテルにおける適正価格を新市場の中でどのよう に設定するのか、自社のホテルを例に分析したいと考えた。. 1.2 研究の目的 前節でも述べたように、今後ホテル経験のない経営者が事業を行う場合、レベニュ ー・マネジメントを導入するためには数々の問題が存在している。当該ホテルにおけ る適正価格の決定や顧客ニーズの把握など枚挙に暇が無いほどの課題が存在してい るが、本研究はその中でも現段階における適正価格の導出と需要分析に特に重点を置 いて研究を行った。本来、大型また老舗ホテルや旅館については、過去のデータを基 4.

(6) にレベニュー・マネジメントを行うことで、適正価格を求めることが可能となるが、 筆者のホテルは 2018 年 11 月からの開業によりデータ及び経験が乏しく、適正価格 の決定が極めて困難な状況だと考えられる。 そこで今回は、筆者が営むホテル情報を基にアンケートを用いた仮想市場法(CVM) を行い WTP(支払意思額)の割合を求めた後、2 つの分析手法を用いて同アンケート における適正価格の導出を行う。 1つ目の分析手法は、ロジスティック回帰分析を用いた適正価格帯の検証である。 ロジスティック回帰とは、統計分析における回帰分析の一種である。通常の回帰分析 とは異なり、目的変数が 2 値の時に用いる手法である。 2 つ目の分析手法では、単回帰分析から収益曲線を導出した後に具体的な適正価格 を検証する。さらには同適正価格を用いて本アンケート結果から考えられる最大収益 を求める。 以上から2つの分析手法で用いた価格の整合性を検証した後、具体的な RevPAR (販売可能客室1室当たりの客室売上高)を 導出することまでを目的とした。 RevPAR とは、ホテル業において近年特に重要だと考えられている業績指標であり、 平均顧客単価と客室稼働率の積から求めることが出来る。 そのほか、潜在ニーズの把握についてもアンケート調査票からの情報を分析し、当 該ホテルとの比較による施策を検証・構築していく。. 5.

(7) 2.. 市場分析. 2.1 日本における観光市場 日本における国内旅行消費額は、近年右肩上がりで成長を続けている。図表 2.1 を みると、2012 年に約 21.8 兆円だった同消費額は、2017 年では約 26.7 兆円と 25% 弱上昇した。しかし、その内訳を見てみると 2 つの特徴が明らかになっている。 1 点目の特徴は、日本人の国内旅行における宿泊額の成長が鈍化を続けていること である。理由として、アウトバウンドの増加が考えられる。日本政府観光局の調査デ ータを見ると、日本人出国者数は 2015 年以降、約 100 万人単位で増加を続けており、 国内旅行よりも海外旅行を選択する傾向があることから、国内での消費額が鈍化して いると考えられる。要因の一つとして、円高があげられる。円高になることで、日本 人にとっては海外旅行の価格が下がったり、輸入品の値下げが起こるため、国外にメ リットを見つけて足を運ぶ観光客が増加する。これにより、国外での消費が促される ので、国内での消費が少しずつ鈍化していることが考えられる。 一方で、2点目の特徴および国内消費額を成長に導いている最大の要因として、イ ンバウンド需要が挙げられる。日本政府観光局のデータによると、2017 年の訪日外 国人観光客は 2,869 万人(対 2011 年比 4.6 倍)、旅行消費額は 4 兆 4,162 億円(対 2011 年比約 5.4 倍)を記録した(図表 2.2 参照)。さらに今後は、2016 年 3 月 30 日 に発表された安倍晋三内閣総理大臣を議長とする「明日の日本を支える観光ビジョン 構想会議」により、2020 年に 4000 万人訪日、8 兆円消費という新たな訪日外国人の 目標値が示されたほか、 「『観光先進国』への『3つの視点』と『10 の改革』」という 具体的な方針も示され、さらなる成長が期待できると考えられる。 以上から、今後観光ビジネスを行っていく場合、停滞が続く日本人旅行客をどのよ うに獲得するか、またインバウンドに対して競合とどのように差別化をして顧客獲得 を図るか考える必要がある。消費者行動としては近年、Facebook や Instagram など SNS の影響により、旅における「コト消費」のような体験型観光が人気、注目を集め ている。さらに旅の目的が個人の趣向に合わせて多様化していくにつれ、これまで旅 先になかった体験や景色、付加価値への注目が増している。宿泊及び観光事業を行う 場合、これらのトレンドや特色を踏まえ上でプランニングしていく必要が有ることが 分かった。. 6.

(8) 図表 2.1. 日本国内における旅行消費額推移. 出典:観光庁データを参考に筆者作成 図表 2.2. 訪日外国人旅行消費額と訪日外国人旅行者数の推移. 出典:日本政府観光局、暫定値を引用. 7.

(9) 2.2 北海道における観光市場 次に、北海道全体の観光市場について考える。北海道経済部観光局によると、2017 年の北海道全体における総消費額は 1 兆 4,298 億円と記されている。これは 2000 年 からの 17 年間で約 17%成長し、現在では日本全体の観光総消費額の 5.4%を支えて いる。また、 「じゃらんリサーチセンター」がアンケート調査した「都道府県別の延べ 宿泊旅行者数」をみると、北海道は東京の 1,541 万人に次ぐ第 2 位の 1,066 万人を動 員しており(図表 2.3 参照)、高い集客力があることを示している。北海道経済部観 光局が発表した年間来道者実人数については、東日本大震災の起きた平成 23 年以降 右肩上がりを続けている。同局のデータを基に筆者が作成した、図表 2.4 を見ても道 内客 1.62 倍(885 万人)、道外客 1.16 倍(4,725 万人)、外国人 4.9 倍(279 万人)と 上昇を続ける(※全て対平成 23 年度比)ことが分かる。 特に外国人観光客の伸びは顕著に読み取ることができ、平成 29 年度においては、 都道府県別にみても 4 番目の集客力を誇る(図表 2.5)。近年大きな成長がみられる 要因として、新千歳空港の発着枠の拡大が挙げられる。観光庁が記す外国人観光客を 国・地域別でみると、最多は中国で、前年度比 22%増の 66 万 6,000 人と全体の 24% を占めている。また、ビザ発給の要件が緩和されたのに伴い、個人旅行者が増えたこ とが大きいと考えられる。 成長の著しさが見受けられる一方で、外国人観光客における課題も 2 点ある。 1 点目は、観光客の道央圏における集中化である。北海道は、観光客の訪問先とし て、道東・道南・道央・道北4地域に分けることが出来る。なかでも、道央圏は札幌 市や室蘭市などが含まれる地域で、2017 年度の延べ観光客数は 8,060 万人、全体の 55%と最も多かったことが分かった。次いで道北圏が 2,293 万人と 16%占めており、 外国人観光客の観光先が特に道央圏や道北圏に集中している。 2 点目は、訪日外国人観光客に偏りがあることである。図表 2.6 を見ると、平成9 年からアジア圏の観光客がそのほとんどを占めており、今後はこの偏りをバランスよ く分散させるために、北米やヨーロッパからの観光客を積極的に取り込む必要がある。 特にヨーロッパにおいては、冬季の気候が近しいことから、スキー以外にもアクティ ビティを開拓するなど、冬の資源を有効に活用することが重要になると考えられる。 以上から観光市場として北海道を俯瞰してみると、国内有数の観光地としての立場 を確保することはできているが、道央圏以外の地域はそのメリットを十分に享受でき る立場にはおらず、地の利を生かすためには道央圏に集まっている注目をいかにして 道央圏以外に向けるかといった施策が必要であることが分かる。また、訪日外国人観 光客の偏りも大きく、これも同様に訪日外国人観光客を詳細に調査し、マーケティン グ施策を構築していく必要があると考えられる。. 8.

(10) 図表 2.3. 都道府県別の延べ宿泊旅行者数(推定値). ※上位 10 都道府県のみ表記. 出典:じゃらんリサーチセンター「じゃらん宿泊旅行調査 2018」より引用 図表 2.4. 来道者数推移(平成 9~29 年度). 出典:北海道経済部観光局データより筆者作成. 9.

(11) 図表 2.5. 図表 2.6. 平成 29 年度における都道府県別訪日外国人客数. 北海道における地域別訪日観光客推移(平成 9~29 年度). 出典:北海道経済部観光局データより筆者作成 10.

(12) 2.3 大樹町(十勝)における観光特徴と抱える問題 大樹町は十勝に含まれる町の一つで、2018 年においては人口 5,628 人と北海道全 体の中でも 0.1%程度の小さな町である。一方、これまでの活動から「 宇宙のまち」 として、北海道の中でも一つの観光地に生まれ変わろうとしている。具体的には、大 樹町は、今から約 30 年前(1980 年代)に「航空宇宙産業基地」の候補地とされて以 来、官民一体となって「宇宙のまちづくり」を進めている。また、町内美成地区の「大 樹町多目的航空公園」では、JAXA をはじめとして、民間企業や大学等により様々な 実験や、宇宙に関連した取り組みが活発に行われている。そして近年では、実業家で 元ライブドア社長の堀江貴文氏が創業に携わったロケット開発スタートアップ企業 の参入により、地域全体のメディア露出も増えるようになった。今後新たなロケット 発射台を整備した場合の道内経済波及効果を試算したところ、年間 267 億円の経済効 果が見込める1とし、さらなる注目を集めている。 一方、宿泊施設においては、新たな問題が発生してきている。図表 2.7 をみると、 北海道および十勝という地域柄、気候に大きな変動があり、夏季と冬季においての観 光入込客数に大きな差(繁忙期・閑散期)があること分かる。しかし、近年の国内消 費を支えているインバウンドの増加に伴い、繁忙期においては宿泊施設および人手が 全く足りず、サービスのクオリティを保持・向上することが出来ない、という問題が おきており、自治体では人材確保や宿泊施設の増設が早期検討材料として挙げられて いる。 図表 2.7. 十勝における月別観光入込客数の推移と対前年同期比. 出典:十勝観光協会. 1. 平成 29 年度「十勝管内観光入込客について」. 2017 年 6 月 1 日付 日本経済新聞より引用 11.

(13) 3.. ホテル業界のビジネスモデル. 3.1 ホテルの運営方式 ここまで、日本国内および北海道における観光市場について述べてきた。次に、ホ テル事業を営む上で基本となる運営形態について考える。サプライチェーンで捉えた 場合(図表 3.1)、オーナーとホテル会社が、①「資本」=不動産の保有、②「経営」 =損益、③「運営」=サービスオペレーション、④「ブランド」=ブランディングや 予約インフラまでの中で、どこまでを担うかにより運営方式は異なり、運営方式は 4 つのパターンに分けられる。 第 1 に「所有直営方式」について述べる。同方式では、ホテル会社が上記①から④ まですべてを担う。つまり、土地・建物を所有し、ホテル開発運営を行う経営形態を 指す。代表例として、帝国ホテルのほか、地方の小さな温泉旅館やペンションなどの 個人事業者も規模は異なるが直営方式といえる。1980 年代後半から 1990 年代初頭に かけてのバブル時代においては、土地・建物の値段が急上昇したことでこの方式を採 用していた事業者は富を築くことが出来たものの、バブル崩壊後は一転して評価が大 幅に下がり、大重荷になってしまった。そのほか、他業種で利益を出す企業が、多角 化戦略や福利厚生としてはじめることが多くみられた。同方式が当てはまる一般的な 条件として、多額の資金があること、立地条件がいい土地であること、経営管理とオ ペレーションノウハウを持っていること、またそれに伴う人材が確保できていること が必要とされる故、主に大企業に当てはまる方式と考えられている。そして地方の小 さな温泉旅館やペンションの場合でも、小規模ビジネスのため所有者本人が一定の経 営管理とオペレーションノウハウを持っていれば、多額の資金や人材の確保が困難で あっても可能なビジネスモデルとなっている。 第 2 に「リース方式」について述べる。同方式は、遊休している不動産を所有する オーナーに対して、ホテル会社が土地・建物を長期間借り上げ、売上の一部を賃借料 として支払う運営方式である。代表例では、東横インやペニンシュラ東京が該当する。 資金調達能力を持たない所有者が取り入れることの多い方式であり、短期間で複数チ ェーン店化する場合にも有効とされている。 第 3 に「マネジメントコントラクト(運営委託)方式」である。同方式では、前述 のリース方式同様に、資本や不動産を所有するもののホテル経営もしくはオペレーシ ョンノウハウを持たないオーナーが、ノウハウを持つホテル会社と委託契約を結ぶ方 式である。運営に特化することが出来るホテル会社は、豊富な経験を持つ人材や巧み な集客ノウハウを効率的に活用することで利益最大化に努める。外資系ホテルでは一 般的な手法として用いられており、マリオット・インターナショナルが運営する東京・ 六本木のザ・リッツ・カールトン東京は、東京ミッドタウンの所有者である三井不動 産と賃貸借契約を結びテナント入居している。 第 4 に「フランチャイズ方式」を挙げる。同方式では、オーナー自らがホテル経営 12.

(14) に携わるが、フランチャイズ元であるホテル会社からブランド使用権および運営管理 ノウハウが提供された上で経営を行う一方で、その使用料をホテル会社に支払う形態 となっている。前述のリース方式やマネジメントコントラクト方式との違いは、素人 であるオーナー自らが経営管理やオペレーションを行うことである。小型で単機能な ホテルで適している故、近年では、APA ホテルやプリンスホテルで積極的に用いられ ている。 図表 3.1. ホテル業界における業務形態. 出典:ホテルメディア「ホテリエ」から筆者作成. 図表 3.2. ホテル会社とオーナーの関係. 出典:UZABASE 社から引用. 3.2 日本におけるホテル業界の特徴 日本におけるホテル業界の特徴として挙げられることは、料飲部門(婚礼を含む宴 会部門やレストランなど)の売上比率が高いことである。特にシティホテルではその 傾向が強いと考えられている。飲料および宴会部門の売上高比率が高い背景として、 日本では売上単価の高い挙式・披露宴がホテルで行われることが多いことが挙げられ る。そのため、敷地内にチャペルなど婚礼施設を併設するホテルも多くみられる。ま 13.

(15) た椿山荘のように、結婚式場からホテル事業へと発展した例もあり、総じて宴会部門 の売上高比率が高いといえる。 また、料飲部門についても、集客の一環としてレストラン事業に力を入れる企業は 多い。多くのホテルが、利用しやすいカジュアルなブッフェ方式レストランを導入す るなど、宿泊客以外にもランチでの利用客を増やす取り組みを行っている。さらに大 手ホテルにおいては、有名なレストランや料亭とアライアンスを組み、ホテル内に名 のある飲食店を設置することで、PR 促進、顧客満足度の向上につなげる取り組みが 盛んに行われている。 ホテルおよび旅館の販売チャネルとして、宿泊施設への直接予約、旅行代理店、宿 泊予約ウェブサイトなどがある。従来は旅行代理店の販売力が強かったが、インター ネットの普及や旅行代理店より手数料が安いメリットから、近年は楽天トラベルやじ ゃらん net、ヤフートラベル、一休.com などの国内サイトや Expedia、Booking.com、 Hotels.com といったインターネット宿泊予約サイト経由での予約が増えている。た だし、インターネット宿泊予約サイトの普及により、多くの顧客層へリーチすること が出来るようになった一方で、価格比較が容易になったため、各ホテルにおいては価 格競争が激化するというデメリットも生じているという。. 3.3 近年のホテル業界の動き 近年、日本のホテル業界において、注目を集めているのが「所有」と「運営」を切 り離した方式である。中でも、これまでの老舗や大規模ホテルが用いている手法が、 マネジメントコントラクト方式だ。背景として、これまで日本の宿泊事業においては、 ホテル以上に旅館形態が多かったため、 「所有」と「経営」を合わせて行う直営方式を 用いる会社がほとんどであった。しかしながら、不動産の所有は固定費を大幅に押し 上げる要因となるため、バブル崩壊後、地価の暴落により同方式を採用する旅館やホ テルでは黒字化が困難を極めた。 そんな業界に一矢報いたのが、星野佳路氏が代表を務める「星野リゾート」である。 同社では、マネジメント・コントラクト方式を用いて「所有」と「運営」を分離した ことで、近年成長を続けている。先代からの老舗ホテルを再開発した高級旅館「星の や 軽井沢」を、同社傘下のリート(不動産投資信託)に売却済み。星野代表は、東 洋経済新報社の取材に対して「所有と経営を分離したおかげで、我々は投資を集中す ることが出来ている」と述べている2。現在では、運営については「ほしのや」、 「界」、 「リゾナーレ」などに分け、ブランドごとターゲットを設定していることに加え、自 社がこれまで蓄積してきたノウハウを最大限に生かし、ロイヤリティで収益を稼ぎ出 しており、高い利益率を誇っている。 以上から、 「所有」と「運営」を切り離した方式の登場により、これまでホテル運営. 2. 2014 年 10 月 22 日付 東洋経済より引用 14.

(16) に関する知識・経験がなかったオーナーでも、資金に余力があれば、自身の所有する 遊休地をホテルとして運用することが容易な時代になってきた。インバウンド需要の 加速により宿泊施設の不足が目立つ日本にとって、このようなホテル構造の転換は、 大きな追い風になるといえる。. 15.

(17) 4.. 価格決定のためのレベニュー・マネジメント. 4.1 ホテル業界における収益構造 次にホテルにおける宿泊費などを含む価格をどのようにコントロールしているか についての分析を行う。この価格コントロールの方法は一般的にレベニュー・マネジ メントによって行われている。以下、レベニュー・マネジメントについての説明を行 う。 まず、ホテル産業における収益(イールド)は、平均客室単価と稼働率(客室数) の積によって求めることができる。式に表すと、以下の通りとなる。 収益(イールド)=平均客室単価×稼働率(客室数) 上記式において、一般的に、平均客室販売価格と客室稼働率はトレードオフの関 係にあるといわれている。例えば、平均顧客単価を上昇させることにより、需要は 減少し、顧客数の減少につながる傾向にある。一方で、平均客単価を下落させれ ば、需要は増加すると考えられ、顧客数の増加につながると考えられる。 以上から、ホテルマネジメントにおいては、稼働率は下げつつも平均顧客単価を 高めるか、稼働率を高めて平均客室単価を落とすか、あるいは両者のバランスが取 れる価格を見出すか、という3種類に分けられる。このなかで、両者のバランスが 取れる価格を見出すこと、すなわちトレードオフの関係にある平均客室販売価格と 客室稼働率を最適化することを、一般的にレベニュー・マネジメント(RM)と呼 ぶ。Kimes(2009, p15)によれば、レベニュー・マネジメントとは「収益を最大化 するために、適正な価格で、適正な収容量タイプを、顧客に割り当てるプロセスで ある」と定義付けされている。そしてこの RM を用いた業績指標について、青木 (2007)や山口(2009)では、ADR (=平均客室料金:Average Daily Rate)に OCC(客室稼働率=稼働客室数÷販売可能客室数)を乗じた RevPAR(=販売可能 客室1室当たりの客室売上高:Revenue Rer Available Rooms)という指標を用い ている。数式に表すと、以下の通りとなる。. RevPAR =. 客室売上 販売可能な客室数. =. 客室売上 販売された客室数. ×. 販売された客室数 販売可能な客室数. そしてこの RevPAR について、「宿泊産業統一会計基準. 3. = 𝐴𝐷𝑅 × 𝑂𝐶𝐶. 第 10 版」3によれば、次の. “ Uniform System of Accounts for the Lodging Industry (10th Revised 16.

(18) ように説明されている。 「販売可能客室一室あたり客室売上高(RevPAR)は、一機関 におけるホテルの販売可能客室数との比較によって、ホテルが達成した客室売上高を 測定する。RevPAR は、客室稼働率と平均客室料金[ADR]の2つの要因の影響を含ん でいる。RevPAR は、客室総売上の成果を前年度と比較する手法として、また、実績 値を予算値とを比較する方法として用いることが可能である。さらに、客室総売り上 げをホテルの客室数で除算した値として示されているので、ホテルの客室売上高を競 争業者や比較可能なホテルとの間で比較するための1つの方法として用いることが 可能である」4。(The Hotel Association of New York City, Inc.,2006.p188) さらに、The Hotel Association of New York City, Inc.,(2006.p188)では、RevPAR を算出するための公式として、以下のように示している。. 販売可能客室 1 室あたりの客室売上=. 客室総売り上げ:𝑇𝑜𝑡𝑎𝑙 𝑅𝑜𝑜𝑚 𝑅𝑒𝑣𝑒𝑛𝑢𝑒 販売可能客室数:𝑅𝑜𝑜𝑚𝑠 𝐴𝑣𝑎𝑖𝑙𝑎𝑏𝑙𝑒. 以上までの研究から、ホテル業界におけるレベニュー・マネジメントでは、業績指 標として主に RevPAR を用いていることが分かった。. 4.2 導入方法と課題 ここまでで、レベニュー・マネジメントがホテル業界にどんな役割を果たしている のか把握することが出来た。しかしながら、多くのホテルにおいて、導入することは そう容易ではないと考えられている。Donaghy and McMahon(1995)によると、ホ テル会社がレベニュー・マネジメントを導入するためには、10 段階の工程(図表 4.1) よってはじめて達成できると考えられている。. Edition) ”(The Hotel Association of New York City, Inc.,2006) 4 Rooms revenue per available room(RevPAR)measures the rooms revenue yield a property achieves relative to the rooms available in the property for a period. RevPAR includes the influence of two factors‐occupancy and overall average room rate. RevPAR can be used as a way to compare rooms revenue results with prior period results or to compare actual to budgeted results. In addition, since the rooms revenue is scaled by the number of rooms at the property, it can be used as one comparison of the rooms revenue yield of a property to its competitors or comparable properties."(The Hotel Association of New York City, Inc.,2006,p188) 17.

(19) 図表 4.1. ホテルにおけるレベニュー・マネジメント導入のための 10 ステップ. 出典:Donaghy and McMahon(1995)より筆者作成 第 1 段階「人員」:レベニュー・マネジメントを行うためには、まず従業員の理解 を醸成する必要がある。そして、社内からであれば予測担当者を決定し、外部 からであれば専門家を招き入れる体制を整えた上で、利用可能な顧客と市場デ ータを峻別する。 第 2 段階「需要分析」 :競合他社の需要の源泉を明らかにし、自社の強みと弱みを 識別する必要がある。そして、需要の水準と予約のパターンとを予測し、外部要 因を定期的に監視することである。 第 3 段階「市場細分化」:人口統計や心理、地理データを基に、既存と潜在的な市 場を明らかにすることを意味する。 第 4 段階「最適な顧客ミックスの決定」:支出の傾向や利用人数に基づいて、自社 にとって最も良い組み合わせで顧客設定を行う。 第 5 段階「トレードオフの分析」:金銭の漏洩を厳密に計算する。そして、より高 い価格を支払う顧客を追い出すことを回避する。 第 6 段階「キャパシティの水準を確立する」:第4段階で設定した市場セグメント の需要を満たすように、キャパシティを設定する。 第 7 段階「RM の導入」:このタイミングで初めて、レベニュー・マネジメントの 導入となる。大規模なホテルグループやコンソーシアムにはテイラーメードのシ ステムが必要であるとされる。一方で小規模または独立系のホテルには、上記シ ステムの修正版を導入すれば問題ないとされる。 第 8 段階「顧客の再設定」:レベニュー・マネジメントを導入する目的と顧客のニ ーズを満たすことが実現するにつれて、訓練が実践になっていく。 第 9 段階「業務の評価」:客室の配分を修正し、需要の変化を評価する。需要を決 定づける追加的な要因を明らかにする。 第 10 段階「アクション」:あらゆる必要な変更を迅速に実施する。. 18.

(20) 以上から、レベニュー・マネジメントを実施するために、システムを構築するまで のデータ収集および分析に多くのコストを費やす必要があることが分かる。 また、Jones and Hamilton(1992)では「レベニュー・マネジメントの成功は、技 術と同じくらい人の問題に依存する」と述べている。つまり、データ収集からシステ ム構築ができたからといって必ずしも達成されるわけではなく、そのシステムを稼働 できるだけの知識や経験を持った人員や組織がなければ、成功はないと考えられてい る。 以上から、レベニュー・マネジメントを導入するためには、データ収集のための時 間および人的コストが導入に伴う課題なのではないかと、筆者は考える。 4.3 インタビュー調査 4.2 節によるレベニュー・マネジメントにおける先行研究から、新たな課題が見え てきた。そこで本節では、実務において東京都内でレベニュー・マネジメントを導入 しているホテル(非公開)2社、及び、これまでラグジュアリーホテルの立上げに携 わってきた当時のレベニューマネージャー1名にインタビュー調査を実施し、導入の 背景や手法、課題等について確認を行った(図表 4.2)。 2 社へのインタビューの中で、共通して見えてきたことが 2 点ある。 1点目は、導入の「きっかけ」である。近年、インターネット化により、顧客のリ アルエージェント5離れと OTA6の普及が加速していることにより、自社で価格コント ロールを行う傾向が高まってきた。レベニュー・マネジメントを用いる場合、4.2 節 でも述べたように、市場の中での顧客を明確に選定し、各層に合ったプライシングと プラン内容を需要動向や予約システムの状況から最適化を目指す必要がある。こうい った場合に、自社サイトを使ったネットによる直販が適していると考えられ、今後は より多くのホテルでレベニュー・マネジメントを取り入れていく可能性が高まると感 じられた。 2点目は、導入に伴う「課題」の部分である。システムの導入により、料金のコン トロールは楽になったが、ここまでのスキルを取得するためには、多くの時間と経験 が必要だということが、インタビューの中で改めて感じられた。また、レベニュー・ マネジメントという考え方が、日本ではまだまだ主流になっていないことから、B 社 に関しては、外国人の人材獲得も検討しているという。社内育成ではなく外部からの 調達となれば即戦力とはなるもの、調達コストが高まるため、回収期間についても新 たに見直しが必要になるなど、経営の様々な面にまで影響を及ぼすことも確認できた。 また、これまで多くのスモールラグジュアリーホテルの立ち上げに携わったレベニ ューマネージャー経験もある X 氏の話によれば、導入のためには大きく 2 つのポイ ントがある、という。 5. 店舗を持つ旅行代理店を指す。国内では、JTB、近畿日本ツーリスト、日本旅 行、阪急交通社、H.I.S.などがある。 6 Online Travel Agent の略。インターネット上だけで取引を行う旅行会社のこと。 19.

(21) 1 点目は「コンセプト(ブランド)の確立」である。何が強みで、どんなサービス を、どのようなお客様に、どうやって提供するのかを明確にすることで、まず自社に おける一本の軸を作る。そして、その軸を基に、様々な価格帯のプランを作り市場に 出した後、需要動向や市場の反応からトライアル&エラーを繰り返してデータを蓄積 させていくことで、正しいレベニュー・マネジメントにつながるという。 2 点目は、マーケティング・リサーチである。競合調査や前述の市場分析はもちろ んだが、特に注意すべきは過去のデータを細かくカテゴリー別にすることである。X 氏が携わった伊豆にあるホテルでは、前年比を月別、曜日別、男女別、地域別、レー ト別、チャネル別、ADR 別などに細分化してデータ管理を行い、翌年のプラン作り に活用していた。 以上から、レベニュー・マネジメントとは、あくまでコンセプトを軸にした価格設 定やプラン作りによるデータ収集を繰り返し行うことが重要であり、市場やターゲッ トを無視した価格設定やプラン作りは導入には繋がりづらいということが、本インタ ビューを通じて分かった。 図表 4.2. レベニュー・マネジメントにおけるインタビュー項目と回答. ホテルA. ホテルB. 地域. 東京. 東京. 規模. 大規模. 中規模. きっかけ. 顧客のSNS等インターネットの主流化. 宿泊単価を落としたことによる売上の減少化. 手法. パターン毎に価格決定方法をルール化. 予約システムの変更、OTAやリアルエージェントの一括コントロール. 主体. 施設により異なる(総支配人、インターネット部門). 宿泊部門. 課題. ソフトによる作業時間短縮や作業効率化、人材育成. 人材不足、AIシステム導入の検討. 出典:インタビュー内容から筆者作成. 20.

(22) 5.. 自社ホテルにおける適正価格設定. 5.1 目的 これまでの内容から、既存のホテルが価格設定を行う場合には、過去のデータを参 考にレベニュー・マネジメントを行い、平均客室単価と客室稼働率の最適な販売価格 を導き出す、という手法が用いられてきた。しかしながら、筆者が営む新規ホテル、 あるいはこれからホテル業を営もうと考えているような、過去のデータの蓄積がない 人にとって、宿泊価格を設定することは容易なことではない。 そこで本節では、自社ホテルにおける適正価格を導出するために、仮想市場法 (CVM:Contingent Valuation Method)を用いて自社における宿泊料金の価格弾力 性を推計した後、、2つの分析手法を使って検証を行っていく。1つ目では、ロジステ ィック回帰を用いて需要曲線を導出し、新市場における適正価格帯を導出する。2つ 目では、最小二乗法(OLS)を用いて需要曲線および収益曲線を導出し、同収益曲線 から本研究での収益最大化が見込まれる価格を算出する。 最後は、実際に自社が既に設定している宿泊価格との乖離を確認し、本研究との整 合性を確認するとともに自社ホテルにおける適正な価格を導出することを目的とす る。 なお、本研究における適正価格帯とは、自社における収益が最大となる価格帯を見 つけること、と定義する。. 5.2 対象ホテル 筆者が 2018 年 11 月より開業したホテルは、北海道・とかち帯広空港から車で 45 分ほど離れた、大樹町という町の中に位置する。施設全体で約 60,000 坪、自然の木々 や農場に囲まれた広大この施設は、元々タイキトレーニングセンターと呼ばれる競走 馬の育成所だった。これまでに GI を制したタイキシャトルやタイキブリザードなど、 名競走馬を輩出した場所として知られている。 施設内には、「実験住宅」と呼ばれるサスティナブルをテーマに作られた住宅が点 在している。住宅の設計・監修には世界的にも有名な隈研吾氏や伊東豊雄氏に携わっ ており、来訪者はこれら建築物の一部に宿泊することができる。施設を象徴する宿泊 棟では、アイヌ民族のチセと呼ばれる住居建築を基にした建物「MEME(メーム)」 が代表例として挙げられる(図表 5.1 参照) 。 サービスの特徴は、一日数組の限定のクローズド・サービスを提供している点であ る。宿泊のためにサービスやアメニティの用意のほか、送迎も要望に応じて対応可能 である。食事は、地元十勝で育った有機食材をふんだんに使い、風土に沿ったダイナ ミックかつワイルドな調理で提供する。例えば肉料理は、豚・牛・羊に加え、地元ハ ンターから直接仕入れた熊肉や鹿肉などもシーズンに合わせて積極的にメニューに 21.

(23) 組み込む。このほかには、サービスの付加価値向上および周辺地域の活性化を図るた め、スタッフによるコンシェルジュ機能も兼ね備えている。具体的には、予約段階で、 近隣アクティビティや周辺観光スポットを情報として提供する中で、必要に応じて 我々の方で予約等を請け負い、旅のプランをコーディネートすることで、日本のみな らず海外からの観光客に対して地域の周知を行い、十勝全体の活性化を図ろうと考え ている。 こうした条件の中で、次節以降では、現役大学生以下を除いた不特定多数の男・女 215 名に対してアンケート調査を行い、得られたデータからさらに詳しい分析を行っ ていく。 図表 5.1. アイヌ民族の住居建築チセを基に作られた宿泊棟「MEME(メーム)」. 5.3 仮想市場法(CVM)によるデータ集計 本論文における検証を行うにあたり、まず初めに、仮想市場法(以下「CVM」と省 略)を用いた。CVM とは、新しい市場における需要を把握する手段として公共経済 学において広く用いられる方法である。具体的には、需要者の移行を直接把握するた めに、アンケート調査を用いて需要者に対して条件を提示した後、いくつかシナリオ を示し(例えば、ある財に対していくらであれば需要するかどうか)、その結果を基に して定量的手法によって価格弾力性を推定する方法である。事例として、保育サービ スや農村、公共事業に関する研究はあるものの、筆者が調べた中では未だホテル事業 における研究がみられなかったため、筆者の行うホテルサービスを基に実証調査を行 う。 実際のアンケートでは、前節 5.2 で記した施設における宿泊棟やサービス内容を前 22.

(24) 提条件として提示した上で、大学生以下を除いた不特定多数の男・女 215 名に対して、 ①2 万円未満、②2~4 万円未満、③4~6 万円未満、④6~8 万円未満、⑤8~10 万円 未満、⑥10 万円以上、という6パターンの料金帯への将来支払意思額(WTP:Willing To Pay、以下「WTP」と省略)の分布を調査した(付録参照)。ただし、母数は 215 ではあるものの、1人ずつに対して上記6パターンによるダミー変数を用いているの で、本アンケートでは 215 名に 6 質問項目を掛けた 1,290 が、全体のサンプル・サイ ズとなる。 調査の結果、最も WTP が高かった価格帯は②2~4 万円(46.5%)であり、次いで ③4~6 万円(25.6%) 、①2 万円未満(18.6%)、④6~8 万円(4.7%)、⑥10 万円以 上(3.3%)、⑤8~10 万円(1.4%)であると分かった。以上から、上記におけるヒス トグラムおよび需要曲線を作成したところ図表 5.2 となった。 図表 5.2. 6 種類の価格帯における WTP と需要曲線. 23.

(25) 図表 5.3. WTP(アンケート額) 度数. 有効. 10,000 30,000 50,000 70,000 90,000 110,000 合計. 240 600 330 60 18 42 1290. % 18.6 46.5 25.6 4.7 1.4 3.3 100.0. 有効% 18.6 46.5 25.6 4.7 1.4 3.3 100.0. 累積% 18.6 65.1 90.7 95.3 96.7 100.0. 5.4 検証方法① ロジスティック回帰による分析 本節では、前節 5.3 において導出した WTP から適正な価格帯を導出する。分析手 法に関して、本研究では多項ロジスティック回帰を用いた。ロジスティック回帰とは、 統計分析における回帰分析の一種である。通常の回帰分析とは異なり、目的変数が 2 値の時に用いる。例えば「買う」か「買わないか」、 「転職する」か「転職しない」か など 2 値で示すことができる変数を目的変数に設定し、それらに関する確率を導出す る際に使用される回帰分析である。 この確率を目的変数として設定するためにロジスティック回帰では目的変数を以 下のロジスティック関数によって表現する。. 𝑦=. 1 1 + 𝑒𝑥𝑝(−𝑥). 上記の式の𝑒𝑥𝑝は指数関数を示し、式からわかるように𝑥が−∞の時は𝑦 = 0、∞の時 は𝑦=1となり、𝑥がどのような値になったとしても最小値 0、最大値 1 の間で目的変 数を表現することができる関数となっている。 本研究ではこの目的変数に調査票から得られた「利用する」か「利用しない」かを 2 値とするダミー変数を設定した。 次にロジスティック回帰における説明変数について説明する。本研究では上記の式 の𝑥、つまり説明変数に当たる部分を多項式に設定している。この多項式はダミー変 数と切片から構成される多項式であり、ダミー変数には当ホテルに宿泊する際に支払 ってもいいと考える価格帯に関するダミー変数を設定した。 本研究では、上記の目的変数と説明変数を調査票における質問 4 の「あなたが一泊 する場合一人当たり最大いくらまでだったら支払いますか?」という質問項目から取 得した。この質問項目には 6 個の選択肢が設定されており調査票ではこの選択肢から 調査対象者が回答する形式になっている(図表 5.4)。 24.

(26) 図表 5.4. アンケートで用いた質問項目(※一部抜粋). 本節における研究では、この質問から得られた解答を説明変数に設定し、ロジステ ィック回帰分析を行った。前節 5.3 でも記したが、対象者 215 名から一人ひとりに対 して 6 種類の価格帯における利用ダミー変数を用いているため、ここでも、サンプ ル・サイズは 1,290 となる。そして、説明変数の各質問の回答に関するダミー変数を 𝑥𝑖 と置くと以下の式が本研究で用いたロジスティック回帰の式に該当する。. 𝑦=. 1 1 + 𝑒𝑥𝑝(−(𝛼1 𝑥1 + 𝛼2 𝑥2 + 𝛼3 𝑥3 + 𝛼4 𝑥4 + 𝛼5 𝑥5 + 𝛽)). 上記の式で𝑥1 は 2 万円未満、𝑥2 は 2 万円~4 万円未満といったようにそれぞれの価 格帯に関するダミー変数を示しており、各𝛼はそれらのダミー変数に掛かる係数、つ まりは価格弾力性を示す係数として解釈できる。上記の式から各係数は 図表 5.5 のようになった。 図表 5.5. ロジスティック回帰分析から導出された分析結果 アンケートを用いた分析結果. 利用DUMMY a. 係数. 標準誤差. Wald. 切片. -1.609. 0.632. 6.476 **. 2万円未満. 3.219. 0.656. 24.096 ***. 25.000. 2万円~4万円未満. 2.303. 0.638. 13.011 ***. 10.000. 4万円~6万円未満. 1.609. 0.642. 6.285. 6万円~8万円未満. 0.916. 0.689. 1.768. **. Exp(B). 5.000 2.500. b. 8万円~10万円未満. 0. 10万円以上. -20.691. 0.000. 1.033E-09. ※a. 参照カテゴリは 1 とする ※b. このパラメータは冗長であるため 0 に設定している. 25.

(27) 本研究で用いたロジスティック回帰分析から算出される数値は、ある価格帯を提示 した際に 1 人の顧客が「利用する」確率を示していると考えられる。そして、図表 5.5 における数値を用いると、各価格帯を提示した際の 1 人の顧客の利用確率は以下のよ うに算出される(図表 5.6)。例えば、2万円未満の提示か価格帯における利用確率を 導出する場合、係数 3.129、切片-1.609 を本研究で用いたロジスティック回帰の式 に代入すると、以下の通りとなる。. 𝑦=. 1 = 0.8205 1 + 𝑒𝑥𝑝(−1.52). 以上から、2万円未満の利用確率は 82%となる、また、その他5つの価格帯につい ても同様の計算から導出することができ、結果は以下の通りとなる。 図表 5.6 各提示価格帯における利用確率 提示価格帯. 利用確率. 2 万円未満. 82%. 2~4 万円. 67%. 4~6 万円. 50%. 6~8 万円. 33%. 8~10 万円. 17%. 10 万円以上. 2.06649E-08 %. この結果から、顧客 1 人当たりの期待値が最大となる価格帯を決定していく。この 期待値は以下の式によって算出される。 期待価格=利用確率 × 提示価格帯 上記式から顧客 1 人当たりの期待値を算出すると以下のようになる(図表 5.7 参 照)。. 26.

(28) 図表 5.7. 顧客一人当たりにおける期待価格. 提示価格帯. 顧客 1 人当たりの期待価格. 2 万円未満. 16,668 円. 2~4 万円. 20,005 円. 4~6 万円. 25,000 円. 6~8 万円. 23,335 円. 8~10 万円. 15,005 円. 10 万円以上. 2円. 上記期待価格の算出には各価格帯の平均値を用いた。例えば、2~4 万円未満の価格 帯に対する期待価格は利用確率に 3 万円を、8~10 万円未満の場合には 9 万円を掛け 合わせている。なお、2万円未満と 10 万円以上については平均値をとることが出来 なかったため、本研究においては、2万円未満の場合は1万円、10 万円以上の場合は 11 万円に置き換えて期待価格を算出している。 上記の結果から、顧客 1 人当たりの期待価格を最大化させる価格帯は、4~6 万円 であることが分かった。. 5.5 検証方法② 最小二乗法による分析 本節では、前節で求めた図表 5.2 を基に回帰分析から需要曲線を導出した後に収益 最大化価格と本アンケート結果から考えられる期待収益を求めることを目的とする。 まず、具体的な最適価格を求める。本研究における最適価格とは、自社ホテルにお ける収益を最大化する価格と定義する。最適価格は需要曲線を算出し、その需要曲線 と価格を掛け合わせた収益曲線を微分してイコールゼロすることによって導き出し た。例えば、需要曲線を式(1)とすると収益曲線は式(2)で示すことができる。そ して収益曲線を微分し、その微分した値が 0 となる価格を求め、その価格を最適価格 とした(式(3))。 𝐷(𝑝) = 𝛼+𝛽𝑝 𝑅(𝑝) = 𝑝 ∗ 𝐷(𝑝) = 𝑝(𝛼+𝛽𝑝) 𝛼 𝑝∗ = − 2𝛽. (1) (2) (3). ※α=切片、β = 価格に対する需要の感応度、p = 価格 とする 以下では、需要曲線の算出方法について述べる。本研究で行ったアンケートの母 数は 1,290 であり、図表 5.2 から価格帯に応じた需要が分かる。ここでは需要曲線 27.

(29) を算出するにあたって、この需要を被説明変数、価格を説明変数とする回帰分析を 行った。ここで価格は、本研究のアンケートでは「2 万円未満」と「2 万円~4 万 円」といったように価格に幅を持たせてアンケートで尋ねている。これを連続値と して扱うために、今回は図表 5.8 に示したように各価格帯を数値へと変換して回帰 分析を行い、需要曲線を導出した。回帰直線は SPSS を用いて導出し、その係数は 図表 5.9 に示す通りとなり、式(4)の需要曲線が導出された。 図表 5.8. 各価格帯と変換後の価格(数値). 価格帯. 変換後の価格(数値). 2 万円未満. 10,000 円. 2 万円~4 万円. 30,000 円. 4 万円~6 万円. 50,000 円. 6 万円~8 万円. 70,000 円. 8 万円~10 万円. 90,000 円. 10 万円以上. 110,000 円. 図表 5.9. 説明変数. 需要曲線導出に伴う回帰分析結果. 非標準化係数. 有意確率. α. 1319.714. 0.002. β. -0.014. 0.006. 𝐷(𝑝) = 1319.714 − 0.014𝑝 𝑅(𝑝) = 𝑝(1319.714 − 0.014𝑝). (4) (5). この需要曲線を式(2)に当てはめることで、本研究における収益曲線が導出され た(式(4))。さらに、この収益曲線を微分した際の値を 0 とした場合の価格𝑝∗ は式 (3)から𝑝∗ = 47132となり、これが本研究における最適価格(47,132 円)であると 考えることができる。この最適価格を見てみると、5.4 節で導出された価格帯とも合 致しており、整合性がとれているものと考えることができる。 また、収益曲線(式(5))に最適価格 47,132 円を代入することから最大収益を算 出することが可能となる。結果、本研究で考えられる最大収益は 31,100,804 円とな る。さらに、収益曲線を可視化すると図表 5.10 のようになることが本節より分かっ た。. 28.

(30) 図表 5.10. 本研究における収益曲線と適正価格. 29.

(31) 6.. アンケート調査からの示唆. 6.1 アンケートの分析 今回のアンケート調査では、一般的にホテルに求められているニーズに関する調査 を行った。質問項目は、ホテル選びで重視する点について尋ね、16 項目から回答を選 択する形式をとった。質問と選択肢は以下の通りである(図表 6.1)。 図表 6.1. 質問項目. 30.

(32) 図表 6.1 から選択肢の中で最も重視する点についてまとめたものが以下の通りと なる(図表 6.2)。 図表 6.2. ホテル選びで最も重視する点. (※n=215). 6.2 自社ホテルとアンケート結果の比較 5.2 節で述べた自社ホテルと今回のアンケート結果を比較すると、顧客ニーズに合 致する部分と今後の課題が確認できた。 合致する部分として、全体の項目の中でも最もポイントの高かった「食事」を挙げ る。顧客にとって、地元で獲れた食材を使用した料理や風土を味わえる料理などは体 験を通じた価値創造につながるため、食事という要素はコト消費を活発にすると考え られる。自社ホテルにとっても、北海道という土地柄、食の提供方法に注力すること で、多くの宿泊客にとって多面にわたる価値体験につながると考えられる。 今後の課題としては、 「周辺観光」や「アクティビティ」を挙げる。これら項目は全 体の中でも 5 番目、6 番目に選ばれており、顧客にとっても重要な項目の一つである ことが読み取れる。しかしながら、閑散期と繁忙期をもつ北海道にとっては重要な課 題になると筆者は考える。例えば、北海道における閑散期は主に冬季である。稼働率 31.

(33) が下がり収益も上がらないことに加え、繁忙期となる夏季に比べてると灯油や電気代 など販管費が逆に膨れ上がり、経営を一層圧迫することから冬季の間は締めてしまう お店が多い。こうなってしまうと、地域全体の活気が衰え、繁閑期の差はより大きく なり宿泊観光客の動員が困難になってしまう。今後は、自社ホテルが中心となって冬 季における周辺アクティビティの開発や、近隣観光施設の積極的な PR を共同で行っ ていくことで、地域が一丸となって観光に力を入れることが必要である。 また「立地」についても、対策を考える必要がある。空港から車で 45 分という道 のりは、道民にとっては一般的だが、道外からの観光客にとっては走行距離が長い点 はマイナスの要因になってしまうことが考えられる。さらに冬季においては路面の凍 結が起こるため、運転が不安な観光客にとっては、加えて足を運びづらくしてしまう。 そのため、自社サービスの一環で送迎サービスやドライバーの手配などを行うことで、 運転に対する懸念や立地に対するネガティブな要因を消し去る取り組みも必要だと 考えられる。. 32.

(34) 7.. 結論と課題. 7.1 結論と課題 本研究では、まずホテルにおいて収益管理を行う際にはレベニュー・マネジメント が重要であると考えた。そして実際に自社ホテルを対象として、CVM 法を基に WTP を求めた後、2つの検証方法(ロジスティックス回帰分析、最小二乗法)による適正 価格の導出ならびに整合性の確認を行った。また併せて、ホテルにおける重要な業績 指標となる RevPAR の導出も行った。 結果として、最小二乗法を用いて導出した適正価格(47,132 円)は、ロジスティッ ク回帰分析で導出した適正価格帯(4~6 万円)の中に納まったことから、本研究にお ける 2 つの検証方法の整合性を確認することが出来た。 しかしながら、今回の研究で用いた RevPAR は疑似的なものに過ぎない。というの も、実際の収益計算を行うためには、利用者の母数という概念が必要である。母数と は、実際に当ホテルを利用する可能性があると考えられる顧客群であり、ロジット回 帰分析によって算出された利用確率は本来この母数に掛け合わされるべきものであ る。この母数と利用確率が掛け合わさった値に、本研究で算出した最適価格を掛け合 わせることで、当ホテルの収益を始めて計算することが可能となる。つまり、母数が 未知の状態で収益を算出するのは困難であり、実際に収益を計算するためには、例え ば日本国内に住む全世帯を使った調査など範囲を拡大する必要となる。 この他の課題は、アンケートの作成方法についていくつか考えれる。 1つ目は、季節変動が加味されていない点である。当ホテルの所在地は北海道・帯 広という特殊な地域にある。他の観光地にある宿泊施設においても同等のことが言え るが、当ホテルの所在地においては特に季節に顧客動員数が左右される、と考えるの が妥当である。しかし本研究では、この季節性に関する調査を行うことが出来ず、重 要な指標が欠落している状況である。北海道は特性として夏季に繁忙期、冬季に閑散 期を迎える。今回導出された価格が夏季の価格帯だとすれば、ここからさらなる価格 のジャンプアップは難しいと考えられる一方で、冬季に焦点を合わせた価格であった とすれば、この金額は夏季に需給のバランスを加味してさらに上げることが出来る。 しかしながらこの季節性を考慮するには、本研究で用いたロジット回帰分析に季節性 を表現するダミー変数を導入する必要があり、なおかつアンケートにおいても季節に 考慮したものを作成し、実施する必要があることから、具体的な季節に伴う適正価格 帯の調査については、別途必要となる。 2つ目の課題は、 「最低価格(2 万円未満)=必ず宿泊する」と考えている点である。 このためミニマムの価格が 2 万円に固定されてしまった。しかし実際には、2万円未 満でも宿泊しないという回答も考えられるため、選択肢についてはより細かく分類す る必要があったと考えられる。具体的には、2 万円未満を選択した回答者について、 さらに「あなたならここでの 1 日の宿泊に対して最大いくらまでだったら支払います 33.

(35) か?」という質問を追加で行うことで、最小は 0 円と回答する人(実際に泊まらない) も出てくるため、より正確な適正価格の導出が可能になると考えられる。 3つ目の課題は、回答者に対する宿泊利用における期間を設けなかったことである。 今回の分析から導出された最大収益は、利用期間を設けなかったことで、いつまでに 回収できる最大収益なのかが不明確となっている。仮に、1 年以内と 10 年以内での 回収期間の違いでは、根本的な事業計画に大きな影響を及ぼすため、期間の設定を尋 ねることによってさらに詳細な需要予測が可能となった。 以上から、本研究において未だ課題は数多く存在する。しかしながら、改めて新規 ホテルを立ち上げた際の、価格決定に伴うプロセスも本研究を通じて学ぶことが出来 た。今後当該ホテルでは、今後より正確なレベニュー・マネジメントを導入するため にも、定期的にアンケート調査とデータ管理を行うことで、適正価格の再設定や今後 のマーケティング施策の構築を行っていきたい。. 34.

(36) 8.. 謝辞. 本修士論文の作成にあたり、多大なご尽力を頂いた村上裕太郎准教授をはじめ、研 究に伴う専門的な知識および手法をご指導くださった林洋一郎准教授、木村太一専任 講師、東北大学・黄耀偉助教授には心から感謝を伝えたい。また、本論文ではアンケ ートやインタビューを行ってきたが、取材ならびに回答に協力してくださった皆様、 そして、それに伴う分析に協力を頂いた村上研究室の同期の仲間にも、深く感謝を述 べたい。 改めて、本修士論文を執筆することが出来たのも、私を取り巻くたくさんの方々の ご協力があったからこそであり、私一人の力ではこの研究を行うことが出来なかった。 日本の観光市場が成長を続けている昨今、この機会を通じて本研究を行えたことを、 心から誇りに思うと同時に、この場を借りて全員にお礼の気持ちを伝えたい。 最後まで、本当に、ありがとうございました。 以上. 35.

(37) 付録 アンケート. 36.

(38) 37.

(39) 38.

(40) 39.

(41) 40.

(42) 41.

(43) 42.

(44) 43.

(45) 44.

(46) 参考文献 [1] 青木章通・植竹朋文(2012) 「自社販売余地の少ないリゾートホテルにおける収益 管理 ―インタビュー調査に基づく検討―」 『専修マネジメント・ジャーナル』第 1 巻 2 号, 115-129 頁. [2] 青木章通・植竹朋文(2018)「レベニューマネジメント実施における KPI に関す る研究」 『専修マネジメント・ジャーナル』第 8 巻 1 号, 41-53 頁. [3] 青木章通・植竹朋文・佐々木郁子(2018) 「日本の宿泊施設の収益管理に関する実 態調査:質問票に基づく研究」『専修経営学論集』第 8 巻 105 号, 7-22 頁. [4] 青木章通・植竹朋文(2015) 「リゾートホテルにおける収益管理のあり方の検討: インタビュー調査に基づく検討」『専修マネジメント・ジャーナル』第 5 巻 1 号, 1324 頁. [5] 青木章通・植竹朋文(2009) 「リゾートホテルにおけるレベニューマネジメントの 実態調査:質問調査票に基づく分析」『専修大学経営研究所報』第 179 号, 1-32 頁. [6] 青木章通(2006)「キャパシティ制約型サービス産業における収益管理:イール ド・マネジメントと顧客別首席性分析との統合」 『専修経営学論集』第 83 号, 147-165 頁. [7] 吉岡勉(2010)「日本のホテル産業における業績指標値の調査と含意」『AIBS ジ ャーナル/アジア・国際経営戦略学会』第 4 号, 42-52 頁. [8] 大島正克(2011) 「ホテル産業における客室料金設定に関する一研究 ―投資資金 回収の視点から―」 『亜細亜大学経営論集』第 47 巻 1 号, 3-35 頁. [9] 大島正克(2012)「ホスピタリティ戦略会計 ―ホテル産業における戦略会計に 関する研究―」 『亜細亜大学大学院アジア・国際経営戦略研究科』(博士論文). [10] 青木章通(2017) 「ホテルにおけるレベニューマネジメントにレピュテーション が及ぼす影響」『専修マネジメント・ジャーナル』第 7 巻 1 号, 15-25 頁. [11] 田尾桂子(2016) 「ホテル産業における所有・運営の機能分化と企業統治に関す る研究 ―マネジメント契約の普及による影響―」『立教観光学研究紀要』第 18 巻, 35-43 頁. [12] 田尾桂子・庄司貴行(2016) 「ホテルアセットマネジメントとホテルのガバナン スに関する研究 ―先進事例としての米国ホテル産業―」 『日本観光研究学会』第 28 巻 1 号, 45-55 頁. [13] 松岡孝介(2006) 「顧客満足および顧客ロイヤルティと財務業績の関係に関する 実証研究」 『大阪大学経済学』第 55 巻 4 号, 106-126 頁. [14] 清水谷諭・野口晴子(2003) 「保育サービス需要の価格弾力性と潜在需要推計 ― 仮想市場法(CVM)によるアプローチ」『ESRI Discussion Paper Series』第 83 巻, 1-20 頁.. 45.

(47)

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図表  2.2  訪日外国人旅行消費額と訪日外国人旅行者数の推移
図表  2.6  北海道における地域別訪日観光客推移(平成 9~29 年度)

Referensi

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