テレビ中継の実況では,対戦カードや現在の得点など,画面に表示されている情報への言及が少なめで,音声のみを聴 取しても試合状況が把握しづらいことが多い.テレビ中継はラジオに比べて数多く提供されており,視覚障がい者が健常 者と同様にスポーツを楽しむためには,このようにテレビ中継を活用した取り組みが重要と考える.
会場音声,実況者,解説者,自動解説音声のすべてを使って試合を楽しむためには,新たに加わる自動解説音声がより よくコンテンツに溶け込むことが大切である.我々はこれまでに,声質や挿入タイミング,別スピーカーによる提示など,
いくつかの観点から調査を行った.引き続き検討を進めていきたい.
4. おわりに
自動実況,自動解説放送,いずれも,客観データに特化した伝達という点では,従来の実況や解説放送とは機能が異な るもので,その効用やよりよいサービスのあり方についての検討はまだ十分とは言えない.幅広い観点からご意見をいた だければ幸いである.
参考文献
熊野正 (2017). スポーツ番組を解説する「音声ガイド」生成技術 NHK 技研 R&D, 164, 49-55.
https://www.nhk.or.jp/strl/publica/rd/rd164/pdf/P49-55.pdf
NHK (2018). (報道資料)ピョンチャン五輪のデジタル展開の実施結果について.
https://www.nhk.or.jp/pr/keiei/shiryou/soukyoku/2018/03/002.pdf
一木麻乃・熊野正・今井篤・都木徹 (2018). 生放送番組向けの自動解説音声の挿入タイミング決定法 ~ スポーツ中継 における実況音声の発話末予測 ~ 信学技報, 118(270), 45-50.
JASS カフェ~ゆったり気分で研究のよもやま話をしませんか~
2016 年度に開始した JASS カフェを今大会でも実施します。JASS カフェは,素朴な質問か ら学術的議論まで,昼食を取りながら堅苦しくない自由な雰囲気で語り合うことを目的とし ています.普段はゆっくり話せないような専門領域や研究歴の異なる多様な研究者同士が交 流できる場です.
今大会の JASS カフェでは次の 3 つのテーマのテーブルを準備しています. 出入りも自由.
昼食持参でぜひお気軽にお立ち寄りください.
○よもやま話−−学会に関して,研究について等,ざっくばらんに語りましょう.大会初参加 の方,大歓迎です.
○育児中の会員交流−−育児中の学会参加はどのようにしているのか,学会への希望もふくめ てざっくばらんに話しましょう.
○特集号「新しい学習・教育が変えていく社会―「社会言語科学」からの貢献」エディタを 迎えて.
詳細は学会当日に配布するチラシをご覧ください.
JASS カフェのテーブルテーマやゲストの希望がありましたら,会員マイページ内の「ご意見の送
付」から提案をお送りください.
(企画委員会)
『社会言語科学』特集論文募集のお知らせ
学会誌編集委員会では, 以下の要領で特集「新しい学習・教育が変えていく社会―「社 会言語科学」からの貢献」の論文を募集いたします. 特集に投稿された論文は, 通常の 投稿論文と同じく, 査読を経て掲載が決定されます.
なお, 特集では最終投稿期限が設定されていますのでご注意ください. 投稿論文は基 本的に投稿され次第, 査読作業に入ります. したがって, より早く投稿された論文ほど, 査読が早く済み, 論文を修正する機会が多くなります. 最終投稿期限は特集論文の投稿 を受け付ける最終期限という意味ですので, 早く投稿できる方は早めに投稿されることを お勧めします. 刊行時期までに採択とならないときは, 特集号以外の号に掲載されるこ ともありますのでご了解ください.
特集論文の最終投稿期限:2019年9月30日(月)
掲載号の発行:2020年9月(第23巻第1号に掲載予定)
特集論文の投稿先:電子投稿システムを通じて投稿してください(本学会HPの「学会誌」
ページ参照)
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タイトル:新しい学習・教育が変えていく社会―「社会言語科学」からの貢献
担当エディター: 森本 郁代 (関西学院大学)
井出 里咲子(筑波大学)
宇佐美 洋 (東京大学)
武黒 麻紀子(早稲田大学)
本年、社会言語科学会は設立20周年の節目を迎えた。これを機に、「何のために社会言語 科学があるのか、何のために研究するのか」を考える機会を提供すべく、社会言語科学にお ける学問的知見を、特に「学習・教育」という文脈で積極的に活用することを目指した論文 を募集する。本特集の射程には、本学会との関連も深い言語学習・教育や学校教育の分野だ けでなく、これまで学習・教育と結び付けて議論されることの少なかった社会的実践も含ま れる。
近年、学習と教育をめぐる状況や捉え方は大きく変わりつつある。たとえば大学を含む学 校教育の現場において、これまでの知識重視の講義主体の授業形態から、学生主体の学びを 促すアクティブラーニング型の授業が推進されるようになっている。こうしたパラダイム
転換の背景には、変化が激しく、複雑化してきている現代社会において、そこに内在する諸 問題を解決し、持続可能な社会を作り上げていくための人材や市民の育成が急務であるこ と、またその上で思考力やコミュニケーション力の育成がこれまでになく求められるよう になったことが挙げられるだろう。同時に、このパラダイムシフトは、学習が個人の中だけ に閉じたものと捉える個体主義的学習観から、社会生活のさまざまな営みの中で、そのつど の文脈によって引き起こされるとする状況論的学習観へと変わりつつある現状と軌を一に している。
こうした学習観・教育観の変化に伴い、目標が明確でその達成を意図した学習・教育から、
日常的な営みの中で意図せず生じている学習・教育のあり方へと関心も広がってきている。
また教育や学習の対象としては、知識や技能のほか、協調性や問題解決への意欲といった
「態度」の養成も含められるようになっている。教育や学習を状況やそのつどの文脈に埋め 込まれたものとして捉えるという教育・学習観のパラダイムシフトは、研究のフィールドを 学校という限定的な場から、より広い社会的場面へと押し広げつつある。こうした考え方に 基づく研究は、私たちの教育・学習に対する捉え方を豊かにしてくれるとともに、人材や市 民の育成のあり方についても多くの示唆を与えてくれることが期待できる。
本学会誌においては、第12巻第1号の「言語・コミュニケーションの学習・教育と社会 言語科学―人間・文化・社会をキーワードとして」で既に学習と教育をテーマに取り上げて いる。しかしながら、今回の特集では、研究対象を言語やコミュニケーションの学習・教育 にとどまらず、一見学習・教育とは無関係に見える社会的実践を、学習・教育と関連づけて 論じるような論文を特に歓迎する。取り上げるトピックや対象とする学習・教育の文脈は、
スポーツや音楽活動、職場や地域の市民活動、医療や裁判員制度など、私たちの社会のあら ゆる場面に見出すことができるだろう。
学習と教育について問い直すことが、本学会の目指すウェルフェア・リングイスティクス の実践につながることは、多くの学会員に賛同していただけると確信している。「新しい学 習・教育が変える社会」という観点の下、さまざまな分野からの論文が集まることにより、
社会言語科学がこれまで歩んできた道のりと、これからの方向性について議論するための 視座を与える特集号となることを期待している。
学会誌 社会言語科学
(The Japanese Journal of Language in Society)
投稿規定(2015 年 7 月 19 日改訂)
1.投稿内容は未公刊のものに限る.ただし学会での口頭発表ないし予稿集に掲載された原稿,科学 研究費補助金などの研究報告書に掲載された原稿,公刊されていない修士論文や博士論文の一部 は投稿して差し支えない.なお,機関リポジトリなどウェブ上で公開されているだけの博士論文 は未公刊のものとして扱う.
2.他の学術誌に投稿中の原稿と同じ内容で投稿すること(二重投稿)は認めない.
3.原稿の投稿者は社会言語科学会の会員でなければならない.共著の場合は,筆頭著者が会員であ ればよい.なお,編集委員会が原稿を依頼する場合は,この限りでない.
4.投稿は随時受け付ける.ただし特集の原稿に関しては受付の期限を定める.
5.投稿原稿の執筆は「執筆要項」に従うこととする.提出された原稿は,原則として返却しない.
6.投稿原稿は,編集委員会が審査し,掲載の可否を決定する.
7.掲載される原稿の原稿料は支払わない.
8.掲載原稿の執筆者には,1 編につき抜刷 20 部を無料で贈呈する.
9.掲載原稿の印刷に要する費用は,原則として本学会の負担とする.ただし,特殊な活字,図版の 作成等により特別な費用がかかるときには,その費用は投稿者の負担とする.
10.図やイラスト,写真などの掲載に際して著作権・肖像権に関する処理が必要な場合は,執筆者自 身が行うこととする.
11.掲載された論文等に関する国内外の著作権は,原則として本学会に帰属する.本学会は掲載原稿 を電子化または複製の形態などで公開・配布する権利を有するものとする.
12.掲載原稿の執筆者は,掲載された論文等を機関リポジトリや個人のウェブサイトで公開すること ができる.ただし,学会誌刊行後 2 年間は公開できないものとする.
執筆要項(2016 年 5 月 1 日改訂) 1.投稿原稿の種類
・投稿原稿の種類は研究論文,展望論文,資料,ショートノートとする.
a. 研究論文 ― 独創性のある実証的または理論的な論文
b. 展望論文 ― 重要な課題に関する内外諸研究を幅広く検討し,独自の観点から総合的に概観 する論文
c. 資料 ― 言語資料,実験・調査の結果などの報告で,従来の学説の吟味検討や今後の研究展 開に資することを目的とする論考
d. ショートノート ― 萌芽的な問題の指摘,新事実の発見や興味深い観察及び少数事例に関す る報告,研究装置や研究方法に関する指摘・提案など
・原稿の種類は著者が投稿時に指定する.ただし編集委員会は判定結果に基づき,審査途中で著者 に種類の変更を求めることがある.
・編集委員会は,上記の種類の原稿のほかに,巻頭言,特別寄稿,書評,報告などを会員に依頼す ることがある.
・依頼原稿も含め,投稿原稿はすべて編集委員会が主体となって査読を行う.
2.投稿原稿の書式・分量
・原稿本文は日本語または英語で書くこととする.表題と要旨とキーワードは日本語と英語の両方 とする.
・原稿は縦置き横書きとする.句読点は「.,」とする.
・原稿は,原則として「投稿原稿テンプレート」(日本語用 Word ファイル,英語用 Word ファイ