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複合動詞の二山型のアクセントとその意味の分析

「博」の二山型は「[有]り[得]る1(この数値は出現度数),[起こ]り[得]る1,[攻]め[寄せ] る1,[あ]いし[合]う4,[有]り[あま]る3,[生か]し[切]る3,[うご]き[出]す1,[買い]た[た]

く2,[くさ]り[切]る,[くわ]え[込]む2,[こま]り[切]る4,[じゅ]くし[切]る4,[好き]こ[の] む3,[すす]り[泣]く1,[たど]り[着]く1,[突き]さ[さ]る1,[泣き]落[と]す1,[泣き]く[る] う4,[名乗]り[合]う2,[乗り]う[つ]る2,[履き]ふ[る]す2,[跳ね]飛[ば]す,[まか]せ[切]る 2,[撒]き[散ら]す1,[焼き]尽[く]す3,[やぶ]り[取]る1,[揺れ]う[ご]く3,[攀]じ[のぼ]る1, [よわ]り[切]る4」,「己」は「[生か]し[切]る1,[くさ]り[切]る 1,[こま]り[切]る 3,[ころ] げ[込]む1,[しが]み[付]く1,[たお]れ[込]む1,[まか]せ[切]る1,[まぎ]れ[込]む1,[まも] り[抜]く1,[やぶ]り[取]る1,[よわ]り[切]る1」であり,並列かそれに近い意味である場合,

もしくは後部要素が強調の意味を持つ場合に二山型が現れている(従来の拙論通り)。なお 表4ではこれらのデータも前部要素の型に注目して1単位形のデータに計上している。

3. まとめ

前部要素が平板型である複合動詞の内部境界に存在する核が(例:[拭き]込む),平板型 連用形そのものの核に由来するという考え方を採らない仮説の根拠は,平板型のテ形・タ 形が安定して有核である状態(例:[拭い]て,[拭い]た)の方言が未発見だった点にあると 考えられるので,そのような仮説が成り立つとは考えにくくなった。高知県伊豆田神社付 近の方言においては前部要素が 1 モーラの語で一斉に②型以上となるが,これは内部境界 が規則的な音変化(表5)の歯止めにならなかったことを意味すると考えられる。

表5.2018年8月高知県幡多複合動詞調査:代表的な語例のアクセント対応

高知市方言(中央式;推定形は*付き) 高知県伊豆田神社付近の方言(ほぼ中輪東京式)

[寝る, [], []込む, [, [], []込む [寝る, [寝た]], [寝込], [], [見た]], [見込] [寝る, [], []過ぎる, [, [], []過ぎる [寝る, [寝た]], [寝過]ぎる, [], [出た]], [出過]ぎる

[拭く, [拭]いた, [拭]き込む [拭く, [拭い]た, [拭き]込む

[, [], []込む [], []いた, []き込む

[着る, [], *[]始める, [, [], *[]始める [着る, [着た]], [着は]じめる, [], [出た]], [出は]じめる

[言う, []うた, []い過ぎる [言う, [言う], [言い]過ぎる

有[る, 有っ[た, 有[り, 有[り]過ぎる [有]る, [有っ]た, [有]り, [有]り過ぎる

[ころげる, [ころ]げた, [ころ]げ込む [ころげる, [ころげ], [ころげ]込む

[まぎ]れる, []ぎれた, []ぎれ込む [まぎれ], [まぎ]れた, [まぎ]れ込む

参考文献

高山林太郎(2012)「岡山市方言の複合動詞のアクセント」『東京大学言語学論集(TULIP)』

32:305-332.東京:東京大学言語学研究室.

高山林太郎(2017)「多型の日本語諸方言の複合動詞の有標アクセント」『東京大学言語学 論集電子版(eTULIP)』38:e119-e321.東京:東京大学言語学研究室.

高山林太郎(2018a)『タッスイのッとは何か』高知:リーブル出版.

高山林太郎(2018b)「高知県伊豆田神社付近の方言のアクセント」『音声研究』22(3):1-16. 東京:日本音声学会.

都竹通年雄(1951)「動詞の連用形とアクセント」『国語アクセント論叢』383-412.東京:

法政大学出版局.

廣戸惇・大原孝道(1952)『山陰地方のアクセント』島根:報光社.

岐阜県旧益田郡方言のアクセントにおける2拍名詞(0)型と(2)型の区別

―明治生まれ話者の録音資料から―

福井 玲(東京大学大学院人文社会系研究科)

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1. はじめに

本発表では,岐阜県飛騨地方の旧益田郡馬瀬村黒石(現在の下呂市馬瀬黒石)出身で明 治生まれの話者の録音資料に基づき,2拍名詞の(0)型と(2)型の音調が単独形においても明 瞭に区別されることを報告する。この地域はいわゆる内輪式アクセントを持ち,共時的な 体系と音調の実現は東京方言とさほどかわらない1。しかし,2拍名詞の(0)型(いわゆる平 板型)は単独形の発話で第2音節の音調が平板か若干上昇し,拍内での著しい下降が現れ ないことが多いのに対して,(2)型(いわゆる尾高型)は第 2 音節に著しい拍内下降が見ら れ,両者が区別される。また,本発表においては2拍名詞についてのみ報告するが,実際 には1拍名詞の単独形についても同様の現象が見られる。岐阜県の近隣の方言では,馬瀬 良雄氏によって長野県の一部の地域について同様の現象が報告されており(馬瀬良雄1983),

その他の近接する地域では富山県でも(2)型が下降調で発音されることが知られているが

(上野善道1982),岐阜県についてはいまだ報告されていない。また,こうした現象につい ての本格的な実験音声学的研究はまだどの方言についても行なわれていない。

以下では,こうした音調の違いを,まず,主観的聴取判断によって記述的に示し,次い で,実験音声学的手法によって,第 2 音節

の音調の特徴を音節内での下降幅などを測 定することによって示す。また,どのよう なパラメーターを用いるのが両者の違いを 表わすのに効果的であるかも併せて論じる。

本発表において,現存する話者に対する 調査ではなく録音資料を用いる理由は,筆 者の知る限り,筆者が1981年に行なったア クセント調査の際に録音した音声資料にお いてこの現象が最も顕著に見られることに よる。ただし,録音資料であることによる 限界は当然存在し,録音に用いた機器の性 能も満足できるものではないが,結果的に ピッチの測定に関しては実用上あまり問題

1 句音調については,岐阜県内でも岐阜市など美濃地方では名古屋と同じように最初の2音節が低く第3 音節から高まる特徴が見られることがあるが,当地ではそのようなことはなく,この点では東京と大きく 変わらない。

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がないことが明らかになった。また,技術的な問題の他にも,すでに亡くなった話者の過 去に録音された資料であることによって,第三者による検証実験が行なえないという方法 論的問題点も提起されうるが,それをいかにして科学的検証に耐えるものにするかについ ての議論も本発表の最後に併せて行なう。