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わが国が締結する条約に「租税条約」と

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(1)

はじめに

「租税条約」という表現がよく使われるが、わが国が締結する条約に「租税条約」という 名称の条約があるわけではない。

一般に「租税条約」と呼称される条約は、「所得に対する租税に関する二重課税の回避の ためのA国と

B国との間の条約」または「所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱

税の防止のためのA国と

B国との間の条約」という名称の条約を指す。その名称からも明ら

かなとおり、租税のなかでも、個人所得・法人所得に対する租税を対象とした二国間条約 であり、「所得税条約」(1)とでも呼ぶのがふさわしい。

租税条約は二重課税の調整、脱税および租税回避への対応などを通じて、租税条約を締 結した二国間の健全な投資・経済交流の促進に資する。租税条約は二国間条約として締結 されるものであるが、経済協力開発機構(OECD)モデル租税条約など国際標準となってい るひな型が存在し、わが国の締結している租税条約も基本的に、かかるひな型に準拠した ものとなっている。

このようなOECDモデル租税条約に準拠した、いわば包括的な租税条約の重要性は論をま たないが、近年、こうした伝統的な租税条約とは異なる、租税に係る情報交換を主体とす る条約を、特に「タックス・ヘイブン」と呼ばれる国々との間で締結する事例も増えてい る。人や資本のクロスボーダー化が進展するなかで、自国の主権が及ばない地域にある租 税に係る質の高い情報を取得できる体制の整備は、脱税および租税回避を防止し、適切な 納税・課税を行なう観点から重要な課題となっており、その延長線上には、米国における 外国口座税務コンプライアンス法(FATCA)の問題がある。さらには、国際的な脱税・租税 回避や租税滞納への対応として、自国の主権が及ばない地域における租税債権の徴収も重 要な課題となっている。

日本政府は、2011年10月末現在、52ヵ国との間で二国間租税条約(一部の国とは情報交換 を主体とする租税条約)を締結しており、その適用対象国は

63ヵ国となっている

(2)。日本の 対外直接投資のうち、これら条約の適用対象国への対外直接投資は9割以上を占めている(3)。 このような状況を踏まえれば、わが国にとっては、新規の租税条約の締結による租税条約 ネットワークのさらなる拡大だけでなく、経済関係が深化した国々との間の既存条約を改 正して、その内容をわが国の国益に叶ったものとしていくことが重要である。

(2)

本稿では、まず、第1節において所得に係る租税条約の必要性や効用を取り上げ、第

2、3

節にて近年の進展が目覚ましい租税条約上の情報交換と税務行政執行共助条約を取り上げ、

最後に、筆者の考えるところの租税条約の今後の課題を指摘したい。

1

租税条約

1) なぜ、租税条約が必要か

仮に、今、租税条約がない世界を考えてみよう。A国の企業

a

社は、B国にて企業活動を 行なうことを検討している。A国では、a社を含む企業の所得に

30%

の税金が課税される。

一方、B国では、B国で活動する企業の所得に対して、25%の税金が課税される。a社がB国 にて企業活動を行ない、100の所得を得たとする。a社は、A国に対して30の税金を、B国 に対して25の税金を納め、税引き後の手取りの所得金額は45である。

仮に、a社がA国にて企業活動を行ない100の所得を得た場合には、A国に対して

30

の税 金を納め、税引き後の手取り金額は

70である。税引き後の手取り金額を比較すれば、a

社は

B国への進出を躊躇するであろう。

なぜ、このような問題がおきるのか。A国も

B国も、独立の国家として自由に課税権を行

使しうる。a社の経済活動が

A国内のみで行なわれるのであれば、大きな問題は生じない。

しかしながら、経済活動が広く行なわれるようになると、企業の活動は1国の国内のみにと どまらない。クロスボーダーの取引が行なわれるようになると、その取引に対する課税は1 国のみの問題ではなくなる。上記の例で言えば、a社が

B

国にて事業を行ない得た100の所 得に対して、A国とB国の両方が課税することとなる。このような二重課税は企業に過大な 税負担を強いるものであり、これをこのまま放置すれば国際的な企業活動の障害となること は明らかである。租税条約の基本的な目的は、このような国際的な二重課税の排除にある。

2) 二重課税の排除の方法

では、先ほどのa社の事例で、国際的な二重課税を排除する方法を検討してみよう。

まず、a社の企業活動により所得が生じる

B

国(なお、国際課税の文脈では、このように所 得が生じる国を「源泉地国」と言う)が課税をせず、A国(同様に、国際課税の文脈では、納税 者が居住する国を「居住地国」と言う)のみが課税することが考えられる(源泉地国免税)。こ の場合、a社は、100の所得について

A国に対して30

の税金を納め(B国に対しては

0)

、税引 き後の手取り金額は

70となる。a

社にとっては、A国内にて企業活動を行なった場合と異な らない。

しかし、源泉地国免税方式では、B国(源泉地国)の税収はまったく増えない。そこで

B

国としては、a社の企業活動に対して

B国が課税をするが、その課税を A国が考慮すること

により、二重課税を排除することを求めることが考えられる。すなわち、a社が

B国で得た

所得100に対して、B国が課税する(a社は

B国に対して 100

×

25%

25の税金を納める)

が、

A国に収めるべき税額から B

国へ納税した金額を控除する(a社はA国に対して

100

×30%−

25= 5

のみ、税金を納める)という方法(外国税額控除方式)が考えられよう。a社にとって、

税引き後の手取り金額は70と変わらないものの、B国に対して25、A国に対して

5の税金を

(3)

納めることとなる。さらには、a社がB国で得た所得

100に対しては、B国のみが課税をする

こととし、A国は課税しないという方法(国外所得免除方式)によっても、二重課税を排除 することは可能である。この場合、a社はB国に対して25の税金を納めるが、A国に対して は納税せず、税引き後の手取り金額は75となる。

以上のところから明らかなように、a社が

B国で得た 100の所得に対する二重課税を排除

するということは、A国とB国との間で、それぞれが、その所得に対して課税できる限度を 定め、課税権を配分するということにほかならない。租税条約は、各種の所得の類型ごと に源泉地国の課税の限度を定めるとともに、源泉地国にて課税が行なわれる場合の居住地 国における外国税額控除または国外所得免除による二重課税の排除を定めている。

3) モデル租税条約の形成

租税条約の歴史は比較的古く、隣接国との経済取引が盛んであったヨーロッパ諸国の間 では19世紀には租税条約が締結されていたようである。第

1次世界大戦後、国際連盟の下で

調査研究が行なわれ、いくつかのモデル租税条約が作成された。しかしながら、これらの モデル租税条約は、源泉地国課税を広く認めるモデル条約であったり、反対に源泉地国課 税を制限し資本輸出国に有利なモデル条約であったりと、必ずしも統一的な課税原則に基 づくものではなかったようである。第

2次世界大戦後の急激な経済取引の活発化に伴い、国

際的な二重課税排除の重要性が増加するとともに、統一的な原則とルールに基づくモデル 条約作成の必要性が認識された。1956年、欧州経済協力機構(OEEC)内の財政委員会にて モデル条約の検討が開始され、

1961年に OEEC

OECD

に改組された後もこれが引き継がれ、

1963

年に「所得及び資本に対する二重課税回避のための条約草案」、いわゆるOECDモデル 租税条約が作成された。OECDモデル租税条約は、1977年の改正および

1992年以降の継続

的な改正を経て、最新版が2010年に作成されている。

OECDモデル租税条約は、基本的には、OECDに加盟する先進国間のモデル租税条約であ

る。投資や技術供与などの経済活動が双方向的に行なわれる先進国間においては、源泉地 国課税を制限しても利害対立が生じにくい。しかしながら、先進国と開発途上国との間で は、しばしば、投資や技術供与などの経済活動の流れが先進国から開発途上国へと一方的 なものとなり、開発途上国が源泉地国となる場合が多くなる。そのような場合においては、

租税条約による源泉地国課税の制限は、開発途上国の利益を損なうこととなる。そのため、

1979年、国際連合において開発途上国の課税権の確保を考慮したモデル租税条約

(国連モデ

ル租税条約)が作成されている。国連モデル租税条約は、OECDモデル租税条約に比較し、

源泉地国により大きな課税権を分配している点に特徴がある(4)

租税条約は、現在のところ、多国間条約として締結されることはきわめて少なく、日本 が締結している租税条約もすべて二国間条約である。OECDモデル租税条約や国連モデル租 税条約は、二国間における租税条約のひな形として機能しており、かかる枠組みに沿って それぞれの所得分類ごとに源泉地国と居住地国との間の課税権の配分を取り決めている。

4) 企業にとっての租税条約の効用

二国間の租税条約の締結は、その両国間をまたいだ経済活動・投資活動を行なう企業に

(4)

とって、大きなメリットがある。

租税条約が締結されることで、企業にとっては、進出相手国、すなわち源泉地国の課税 の範囲が限定・制限をされることが明確になる。進出相手国の国内税法が変更される場合 にも、租税条約が課税強化に対する歯止めとして機能しうることになろう。一方、これら の源泉地国による課税の制限とともに、居住地国における外国税額控除または国外所得免 除制度を通じて、企業は、国際的な二重課税を避けることが可能となる。

また、租税条約の締結により、国際的な二重課税の排除のために、政府を通じた相手国 との協議・交渉のチャネルが作られるという点も看過できない。租税条約には、通常、「相 互協議」の条項が設けられる。相互協議とは、租税条約締約国の権限ある当局による協議 のことを言い、①個別事案に関する相互協議(租税条約に適合しない課税を受けた、または適 合しない課税を受けることとなる場合に、納税者の申し立てにより、申し立てを受けた権限ある 当局がその適合しない課税を排除・回避するために、他方の締約国の権限ある当局と行なう相互 協議)、②解釈適用協議(租税条約の適用または解釈などに関する協議)、③立法的解決協議

(租税条約に定めのない場合における二重課税を除去するための協議)がある。企業が進出相手 国において租税条約に適合しない課税を受けた場合には、自国政府に対して個別事案に関 する相互協議を申し立て、進出相手国との間で租税条約に適合しない課税を排除・回避す るように協議することを求めることができる。すなわち、租税条約が締結されることによ り、企業は、進出相手国内における救済手段に加えて、自国政府による協議・交渉という 外交チャネルによる保護も受けられることになる。特に、近年は、移転価格課税(5)等による 国際的な二重課税が生じて、納税者が個別事案に関する相互協議を申し立てる事案が増加 しており、企業にとっても、相互協議は国際的な二重課税を排除するための有力な手段と なっている(6)

このように租税条約の締結は、相手国に進出しようとする企業にとって、経済活動・投 資活動への課税に係る予測可能性を高め、一定の法的安定性を与えるということが言えよ う。すなわち、租税条約は、法的安定性の付与を通じて、租税条約の締結国間における企 業の経済活動・投資活動を促進する重要なインフラとして機能することとなる。

5) 課税権分配に係る近年の日本の租税条約締結ポリシーの変化 

従来、わが国の租税条約は、相手国がOECD加盟国である場合には、原則としてOECDモ デル租税条約をベースとし、限られた条項についてモデル租税条約と異なる定めを設けて いた。一方、相手国がOECD加盟国でない場合にも、OECDモデル租税条約を基礎とする内 容での条約が締結され、相手国が開発途上国の場合には、源泉地国での課税の制限を緩和 し、タックス・スペアリング・クレジット(みなし外国税額控除)(7)の供与がなされる場合も あった。

このようなわが国の従来の租税条約締結ポリシーは、2003年

11

月に署名された日米租税 条約の改正条約から大幅に変更された。2003年の日米租税条約の改正では、OECDモデル租 税条約を基礎としつつも、投資交流のいっそうの促進を図るために、一定の親子間配当、

金融機関等の受取利子、使用料などの源泉地国免税等をはじめ、投資所得に対する源泉地

(5)

国課税を大幅に軽減した。一方、特典制限(LOB: Limitation of Benefit)条項や濫用的導管取引

(条約の特典を利用するため条約相手国の居住地を経由して第三国の居住者に所得を支払う取引な どを指す)の防止規定などを設けるなど、租税条約の濫用防止のための措置が強化された。

かかる源泉地国課税の大幅な軽減および特典制限条項等の創設は、その後に行なわれた英 国、フランス、オーストラリア、スイス、オランダとの間の租税条約の改正においても踏 襲されている。

一方、経済交流が進むアジア諸国や資源外交上の重要国との間での既存条約の改正や新 規の租税条約の締結も進んでいるが、これらの諸国との租税条約においても、投資所得(配 当・利子・使用料)に対する限度税率の上限を低くして源泉地国課税をできる限り制限する とともに、タックス・スペアリング・クレジットの見直しなどを行なっている(8)

2

租税条約上の情報交換の強化と租税情報交換協定

1) 租税条約に基づく情報交換の必要性

租税条約の締結の目的として、二重課税の調整のほか、脱税および租税回避への対応と いう点がある。人や資本のクロスボーダー化が進展するなかで、脱税および租税回避の抑 止という観点から、租税条約に基づく政府間の情報交換の重要性が高まり、今世紀に入り、

透明性と課税目的の情報交換に関する「国際的に合意された租税基準」が形成され、各国 の租税条約締結ポリシーに大きな影響を与えている。

租税条約に基づいて交換される情報は、所得税や相続税などの課税目的のために必要な 情報である。なぜ政府間において、課税情報の交換が必要なのか。

A国は自国の居住者 a

に対して、その居住者の稼得する全世界の所得に対して課税する

(A国は、その居住者が国外で納めた税額については外国税額控除を与え適切に二重課税を排除し ている)。A国が居住者

a

の全世界の所得に対して課税するためには、aがいつ、どこで、い くらの所得を得たかという情報が必要である。このような情報を得るために、A国のとりう る手段としては、まず、aに対して、A国の課税当局に対してその全世界で稼得した所得を 申告をさせることが考えられる(①)。しかしながら、aがA国の課税当局に対して、常に正 しい情報を申告をするとは限らない。例えば、aが

B

国に所在する取引相手方bとの取引を 正確に申告せず、A国課税当局に対して自己の所得を少なく申告をするかもしれない。その ような場合、A国課税当局は、取引相手方

bから直接に a

との取引の情報を取得して、aの申 告内容が正しいか否かの確認をしたいと考えるであろう(②)。取引相手方bが

A

国内に所 在するのであれば、A国課税当局は、質問検査権を行使して、そのような情報を取得するこ ともできよう。しかしながら、取引相手方bが

B国に所在する場合には、国際法上の限界が

ある。質問検査権の行使のような執行管轄権は原則として自国領土内でしか行使すること ができない。そのため、A国課税当局のとりうるのは、A国課税当局が

B国の権限ある当局

に情報の提供を要請し、B国の権限ある当局がこれに応じて

A国に情報を提供するという手

段である(③)。

租税条約上の情報交換は、③のルートを定めるものである。③のルートを確保すること

(6)

により、A国課税当局は居住者

a

の申告の正確性を検証できる。いわば、B国当局を通じて、

自国居住者aに対する反面調査(納税者の取引先などを調査すること)を行なうことが可能に なる。また、B国の権限ある当局から

A国課税当局へ情報が提供される場合には、A国課税

当局はかかる受領情報を端緒として自国居住者

aに対して税務調査を開始するということも

ありうる。このような情報入手ルートが確保されていれば、居住者aは、A国課税当局に適 正な申告を行なうインセンティブが増すことになろう。

2) 透明性と課税目的の情報交換に関する「国際的に合意された租税基準」の形成(9)

OECD

モデル租税条約は、1963年に作成された当初から情報交換条項を設けていたが、

2005年の OECD

モデル租税条約の改正を経て現在の規定となっている。かかる改正の背景 にあるのは、1990年代末以降のタックス・ヘイブン諸国へ対抗する動きである。OECDの

1998年「有害な税の競争」報告書は、タックス・ヘイブンの問題として、とりわけ、透明

性の欠如と効果的な情報交換の欠如を指摘していた。OECDは、2000年に同報告書に従い、

タックス・ヘイブンのブラック・リストを公表し、その後タックス・ヘイブン諸国との協 議を通じて、タックス・ヘイブン諸国に効果的な情報交換の枠組みの構築を求めた。

OECD租税委員会は 2002年にOECD

モデル租税情報交換協定(OECD Agreement on Exchange

of Information on Tax Matters)

を作成した。これは、タックス・ヘイブン諸国に求めた効果的な

情報交換の枠組みを条文の形に具体化したものであった。2005年の

OECD

モデル租税条約 の改正は、このような流れを受けて行なわれた。同改正では、権限ある当局間の情報交換 を定める26条を改正した。主要な改正点は、①対象となる情報の範囲を拡大(それまで「必 要な(necessary)」情報を交換すると規定されていた文言を、運用もしくは執行に「関連すると予 測される(foreseeable relevant)」情報を交換する内容に変更)(10)、②自国の課税利益の有無による 制限の撤廃(要請を受けた国が自国の課税目的で当該情報を必要としない場合であっても、他国 のために情報を収集する義務を明記)、③金融機関保有情報へのアクセス(要請を受けた国は、

金融機関が保有する情報であるというだけの理由で、情報の提供を拒んではならない旨を明記)

であった。

OECDモデル租税条約 26条の改正に結実した情報交換の新基準は、2008年に発覚した 2つ

の国際的な脱税事件の影響もあり、透明性と課税目的の情報交換に関する「国際的に合意 された租税基準」として急速に国際社会に受容されていく。ひとつは2008年

2

月、リヒテン シュタインの信託会社の元従業員が同国LGT銀行(Liechtenstein Global Trust)の1400名の顧客

第 1 図 租税条約上の情報交換ルート

A国課税当局

居住者a

B国課税当局

取引相手方b

③情報交換要請

②質問検査権?

①申告 ③情報交換要請に

 基づく調査

(出所) 筆者作成。

(7)

情報を各国租税当局に提供した事件である。各国で税務調査が開始され、特にドイツでは 著名な実業家の脱税事件に発展した。もうひとつは、スイスの

UBS

銀行(Union Bank of

Switzerland)

をめぐる事件である。2008年、米国課税当局がUBS銀行に対して米国人顧客の

情報開示を求める召喚状を発行した。これは米国とスイスの間の外交問題に発展し、スイ ス議会・裁判所を巻き込む形で事態が進展したが、最終的には2010年に米国とスイス政府 との間の租税条約を改正してスイス政府が米国に対して米国人顧客の情報を提供した。か かる過程において米国富裕層の一部が適格仲介者制度(QI〔Qualified Intermediary〕制度)を悪 用して、脱税をしていたことなどが明らかになった(11)

このような事件と前後して、2008年秋以降、リーマン・ショックに端を発した世界的な 金融危機が発生し、金融システムの安定化等の観点からも、不透明な資金の流れが国際社 会のなかで問題視されるに至った。2009年

4

月、20ヵ国・地域首脳会議(G20サミット)は

「銀行機密の時代は終わった(The era of banking secrecy is over)」と宣言し、OECDの新基準に 基づく情報交換を約束する動きが加速されることとなり、新基準を取り込む多数の租税条 約が締結されることとなった。こうした流れを受けて、2009年

9

月、OECDのグローバル・

フォーラムの参加国・地域において情報交換の国内法制および執行についての検証(peer

review)

を行なうこととされ、現在

91

の国・地域がその対象となっている(12)。この間、国連

でも、2008年に国連モデル租税条約を改正することを決定し、OECDモデル租税条約

26条

と同様の改正を行なった。

3) 日本の租税条約締結ポリシーへの影響

上記に記載した透明性と課税目的の情報交換に関する国際社会の潮流は、日本の租税条 約締結ポリシーへも影響を与えている。

日本は、OECDモデル租税条約

26条の 2005

年改正に対応し、2005年以降の租税条約の新 規の締結・既存条約の改正において、自国の課税利益による制限の撤廃および金融機関保 有情報へのアクセス、という点を取り入れるようになっている(13)

さらに、近年の租税条約締結ポリシーの特徴的な変化として、軽課税国(法人の所得に対 する課税がない、または著しく低い国・地域)との間の条約の締結がある。わが国はこれまで、

いわゆる「タックス・ヘイブン」と呼ばれるような軽課税国との間では租税条約を締結し ない方針であった。しかしながら、2009年以降、バミューダ、バハマ、ケイマン諸島、マ ン島、ジャージー、ガーンジーといった軽課税国との間で情報交換を主体とする租税条約 を締結しており、また、リヒテンシュタインとの間で情報交換を主体とする租税条約締結 に係る基本合意が成立している。加えて、香港との間では、OECDモデル租税条約を基礎と する包括的な租税協定が締結されている。

なお、条約の改正・締結に対応して租税条約等実施特例法も改正され、租税条約上の情 報交換に対応するための質問検査権の創設(平成

15年度改正)

、犯則事件調査のための情報 収集手段の拡充(平成

18

年度改正)、外国税務当局との間の情報交換に関する規定の創設

(平成

22年度改正)

が行なわれた。

(8)

4) 企業への影響

租税条約に基づく政府間の情報交換の進展は、各国で適正に納税をしている企業にとっ ては、大きな影響がないように思われる。もっとも、グローバルに活動する多国籍企業は、

タックス・へイブン等を含めた各国の租税制度や租税条約の違いを利用して合法的に租税 負担の軽減を図っている場合もあろう。株主への利益還元を最大化すべき多国籍企業にと って合法的に租税負担の軽減を図ることは、非難されるべきことではない。しかしながら、

企業の租税負担軽減とそれに対する課税当局の対応は、繰り返される。これまでは、課税 当局が十分な情報を有していなかったために問題とされなかった企業の租税負担軽減策に 対して、課税当局が強化された情報交換を通じて十分に認織することにより、立法を含め た対応措置がとられることも生じよう。

3

税務行政執行共助条約への参加

2011年 11月、日本政府は、租税に関する相互行政支援に関する条約

(税務行政執行共助条 約)および同条約を改正する議定書に署名した(14)

税務行政執行共助条約は、1988年、欧州評議会および

OECD

が作成した多国間条約であ る。その内容は、主として、①締約国における情報交換、②租税債権の徴収の支援(徴収共 助)、③要請による文書送達(送達共助)を定めている。①の締約国における情報交換では、

OECD

モデル租税条約には規定のない、同時税務調査や外国における税務調査立ち会いなど も定めている。欧州評議会およびOECDは、2010年に税務行政執行共助条約を改正し、自 国の課税利益による制限の撤廃や金融機関保有情報へのアクセスを明記するなど情報交換 規定を「国際的に合意された租税基準」に合致させるとともに、欧州評議会および

OECD以

外の国に対して、当該条約の締結を開放した。

税務行政執行共助条約については、次の2つの点を指摘しておきたい。ひとつは、税務行 政執行共助条約は多国間条約であるという点である。わが国が締結した租税条約は、モデ ル租税条約をベースとしているため各租税条約における類似点は多いが、すべて二国間条 約であった。情報交換や徴収共助、送達共助という限られた分野とはいえ、国際租税にお けるルールの共通化が図られ、日本が多国間条約としてそのルールに参加する意義は大き い。税務行政執行共助条約は、現在32ヵ国が署名している。なお、税務行政執行共助条約 は、他の国際協定・取極が同条約と併存することを前提としており(27条)、同条約の締約 国との間では、税務行政執行共助条約と二国間租税条約が併存することとなる。そのため、

税務行政執行共助条約は、当該条約の締約国間における税務行政執行の協力の下限を定め るものとして機能することになろう。

2 つ目は、税務行政執行共助条約が国際的な徴収共助を定めている点である。経済活動の 国際化の進展に伴い、わが国の租税債権につき納税義務を有する者が国内に財産を所有し ていないケースも想定され、諸外国においても同様の事案が生じうる。そのようななか、

租税債権の徴収についても国際的な協力体制を構築する必要性が認識されてきている。外 国の租税債権を日本国政府が国内にて徴収することについては、租税法律主義や適正手続

(9)

保障との関係の議論も存在するところであるが、適切な手当てが講じられれば、憲法上、

それが認められないわけではないように思われる(15)。平成24年度税制改正では、税務行政 執行共助条約等の徴収共助等に関する規定の国内法整備が行なわれ、国税通則法、国税徴 収法および租税条約等の実施に伴う所得税法、法人税法および地方税法の特例等に関する 法律(租税条約実施特例法)の改正が行なわれているが、共助対象者が当該共助対象外国租 税の額等について当該相手国等において争う機会を与えられていないと認められる場合、

当該共助を行なうことがわが国の利益を害することとなるおそれがあると認められる場合 など一定の場合には、租税徴収の共助を行なわないものとして(16)、適正手続保障への配慮が されている。

4

租税条約の今後の課題

1) 既存の租税条約の改正

冒頭にて指摘したように、日本の対外直接投資のうち、すでに租税条約を締結している 国・地域に対する対外直接投資は9割を超えている。日本の租税条約ネットワークはすでに 一定の規模に達しており、今後は、経済関係が深化した国々との間の既存条約を改正して、

日本の国益にかなった内容としていくことが、より重要となろう。

かかる観点からは、移転価格課税等に係る対応的調整規定の明示と相互協議に係る仲裁 規定の導入を推し進めることが必要であると思われる。

例えば、日本において、日本法人とその完全子会社である外国法人との間の取引価格が 独立当事者間価格ではないとして、課税当局が当該日本法人の所得を増額更正した場合、

日本法人にて増額された所得金額の分、外国法人子会社の所得を減額してもらえなければ、

当該所得分については日本でも外国でも課税され、企業グループ全体として国際的二重課 税が残ることとなる。このような場合、OECDモデル租税条約

9条 2

項では、外国法人が所 在する国・地域の課税当局が当該外国法人の租税の額について適当な調整を行なうこと、

また、必要がある場合には、権限ある当局間にて相互に協議することを定めている。日本 の締結する租税条約では、相互協議により合意した場合に、かかる対応的調整を行なう旨 を規定している場合が多い。かかる対応的調整規定は、現在、27ヵ国との間の租税条約に 定められている。しかしながら、古い租税条約では対応的調整規定が定められていないも のも多く、そのために企業が国際的二重課税を甘受せざるをえない事態も生じている。わ が国の課税ベースを確保しつつ、多国籍企業グループにおける国際的二重課税を排除する ためには、租税条約相手国に対して、対応的調整を租税条約に明示して締約国の義務とす る必要がある。

また、対応的調整規定があっても、あるべき独立当事者間価格について、日本の課税当 局と外国の課税当局との間の見解が異なれば、結局のところ、国際的二重課税は排除され ない。租税条約では、このような場合を念頭に、権限ある当局間での相互協議を行なうこ とを定めているが、相互協議では権限ある当局間が(協議をする義務はあるものの)最終合 意をする義務を課されておらず、終局的な解決が保証されているわけではない。そのため、

(10)

OECD

モデル租税条約では

2008

年の改正にて、相互協議の合意が成立しない場合における 仲裁付託の規定が定められた。かかる仲裁付託規定は、現在、日本が締結した租税条約の なかでは、オランダ、香港およびポルトガルとの間の租税条約の3つのみである。近年、わ が国企業が活動を拡大している新興国との間で、国際的二重課税の問題の発生が少なくな い。問題解決の実効化のためには、これら諸国との間の租税条約に仲裁付託規定を積極的 に導入する必要があろう。

2)「FATCA条約」への対応

2012年 2

8日、米国財務省は米国、フランス、ドイツ、イタリア、スペインおよび英国

によるFATCAに関する共同声明(Joint Statement)を公表した(17)。FATCAとは、米国の外国口 座税務コンプライアンス法(Foreign Account Tax Compliance Act)のことである。FATCAは、米 国の2010年追加雇用対策法の一部として成立した。アメリカ人富裕層が国外資産・国外所 得に係る申告・納税を適切に行なっていないのではないかとの認識の下、追加雇用対策法 に基づく税制優遇措置による歳出を賄うために、アメリカ人および米国事業体の国外資産 に係る報告義務などを強化することにより、米国税収の増加を目指すものである。FATCA は、米国企業が米国外金融機関に対して行なう一定の支払いに対して源泉徴収を行なうと いう不利益を組み合わせることにより、米国外に所在する金融機関が米国課税当局に当該 口座情報の提供を行なうように動機付けている。具体的には、米国企業による米国外金融 機関への支払いについて

30%

の源泉徴収税を課することとし、米国外金融機関が米国課税 当局との間で一定の契約(FFI〔Foreign Financial Institution〕契約)を締結すれば、30%の源泉 徴収税が免除される。FFI契約には、米国外金融機関がアメリカ人・米国事業体の口座を精 査・特定し、その残高・取引情報等を米国課税当局に報告しなければならない旨が規定さ れるとともに、当該米国外金融機関がFFI契約を締結していない他の米国外金融機関に対し て一定の支払いをする場合には

30%の源泉徴収をしなければならない旨などが規定される。

本稿第

2

節1項において、課税当局が自国領土外の私人に対して質問検査権を行使する場合 に国際法上の限界がある旨を述べたが、FATCAは、源泉徴収制度と

FFI

契約を組み合わせる ことにより、自国領土外の私人が米国課税当局に直接に情報を提供するように仕向け、政 府間の情報交換を介することのない、情報収集手段の枠組みを構築しようとするものにほ かならない(18)

しかしながら、FATCAの枠組みは、米国法の域外適用ないし過剰管轄権行使の可能性を 含むものであり、米国外における各国の法規制と抵触・衝突しかねない。例えば、本邦に おいては、信義則ないし商慣習法を根拠とする金融機関の守秘義務や、個人情報保護法等 との関係において、金融機関がFFI契約に基づき米国課税当局に顧客の口座情報を提供して よいか、問題となろう。

FATCAに関する共同声明は、米国外における各国の法規制との抵触・衝突の問題の存在

を受け、FATCAの目的とする情報収集を政府間情報交換の枠組みを通じて行なうことを意 図するものである。具体的には、米国と各国(FATCA協力国)の間で

FATCA

を施行するた めの条約を締結し、FATCA協力国の政府は、自国内の金融機関が当該政府に対して

FATCA

(11)

の求める情報を提供するように必要な立法措置を行ない、米国との間の自動的情報交換を 通じて当該情報を米国に提供する。その代わり、FATCA協力国に所在する金融機関は、個 別に米国課税当局とFFI契約を締結しなくとも、FFI契約を締結した場合と同様に源泉徴収 税が免除される。また、米国は、米国内金融機関に開設されている

FATCA

協力国の居住者 の口座情報を収集のうえ、FATCA協力国に提供するなど、双方向の取り扱いを約束する。

FATCA

および

FATCA

に関する共同声明が提起した情報交換の枠組みは、透明性と課税目 的の情報交換に関する「国際的に合意された租税基準」を超えるものである。「国際的に合 意された租税基準」は、金融機関保有情報へのアクセスを認めるが、これは情報提供要請 があった場合に、要請を受けた国は、金融機関が保有する情報であるというだけの理由で 情報の提供を拒んではならない、ということであって、いわば、受動的な金融機関保有情 報の提供義務である。しかしながら、「FATCA条約」が求めるものは、条約締約国が、相手 国居住者に係る金融機関保有情報を能動的に提供する義務であって、既存の租税条約上の 情報交換とは性質を異にする。

日本政府は、今のところ、FATCAに関する共同声明への参加を表明してはいないが、類 似の枠組みの可能性について米国と折衝を行なっているようである。日本政府が

FATCAの

求める金融機関保有情報を提供しようとする場合には、当該金融機関保有情報を日本政府 が国内金融機関から収集する必要があり、既存の国内法の枠組みだけでは、対応はできな いだろう。一方、そのような情報を収集するために国内金融機関に過度な負担を強いるよ うであれば、それもまた、問題である。「FATCA条約」が求めるような、自国非居住者に係 る金融機関保有情報の能動的な情報交換の枠組みは、早晩、OECDなどで議論される可能性 もある。日本政府として、日本の国益に沿った枠組みとなるように行動することが求めら れよう。

1) 日本の現在の税制においては、個人の所得に係る租税については、所得税・個人住民税であり、

法人の所得に係る租税については、法人税・事業税・地方法人特別税・法人住民税である。本文 の「所得税条約」のなかの「所得税」とは「(個人・法人の)所得に係る租税」という趣旨である。

2) 旧ソビエト連邦との間の条約が独立後の各国との間で適用されることなどもあり、締結国数と適 用国数が異なっている。なお、条約締結数などは、財務省ホームページ上の「我が国の租税条約 ネットワーク」(http://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/international/182.htm)による。

3) 日本租税研究協会『抜本的税制改正と国際課税の課題―(公社)日本租税研究協会第63回租 税研究大会記録 2011』、公益社団法人日本租税研究協会、平成23年11月、137ページ。

4 OECDモデル租税条約と国連モデル租税条約の比較についてまとめた近時の文献として、青山慶

二「OECDと国連のモデル租税条約の比較」『租税研究』730号(平成22年8月)、242ページ。

5) 親子会社等の関連企業の間では、相互に独立した当事者間の取引において通常設定される対価

(独立当事者間価格)とは異なる対価で取引を行ない、税負担の高い国から低い国へ所得を移転す ることにより、企業グループ全体としての税負担を減らすインセンティブが働く。移転価格課税 は、課税上、このような恣意的な取引を認めず、独立当事者間価格により取引が行なわれたもの とみなして課税を行なうことを認めることで、国家の課税権の適切な調整を行なうものである。

6) 近年の日本の相互協議の実施状況については、国税庁HP「平成22事務年度の『相互協議の状況』

について」(平成23年10月、http://www.nta.go.jp/kohyo/press/press/2011/sogo_kyogi/index.htm)、城地徳

(12)

政「最近の相互協議の状況について」『租税研究』749号(平成24年3月)、183ページ。

7) タックス・スペアリング・クレジット(みなし外国税額控除)制度とは、二重課税の調整方法と して外国税額控除方式を採用している場合に、開発途上国が外国企業の誘致を目的とした租税の 優遇措置の効果が減殺されないように、先進国の法人が開発途上国において優遇措置により減免 した租税の額を、当該法人が実際に開発途上国に納付したものとみなして、先進国において納付 すべき税額から控除することを認める制度である。租税条約に定められる。日本は、19ヵ国との 租税条約で、かかるタックス・スペアリング・クレジットを供与していたが、一部は租税条約の 改正により廃止されている。

8) 近年の租税条約に係るポリシーについて、武内良樹「租税条約交渉の相手国の選定」『ファイナ ンス』平成18年9月号(2006年9月)、4ページ、大津俊哉「租税条約の概要と我が国の締結の動向」

『ファイナンス』平成21年2月号(2009年2月)、25ページ参照。

9) 国際的に合意された租税基準の形成過程については、増井良啓「租税条約に基づく情報交換―

オフショア銀行口座の課税情報を中心として」、日本銀行金融研究所「Discussion Paper」No. 2011-J-

9(2011年5月)参照。

(10) 同時に、任意に「証拠漁り」を行なったり、特定の納税者の租税問題とは関連しそうもない情報 を要請できないことを明確にする意図であるとされる。OECDモデル租税条約第26条コメンタリ ー、パラグラフ5参照。

(11) LGT銀行事件およびUBS銀行事件に関する米国上院の調査文書として、U.S. Senate, Permanent Subcommittee on Investigations, “Staff Report on Tax Haven Banks and U.S. Tax Compliance,” July 17, 2008.

(12) なお、日本は、グローバル・フォーラムの下部組織であるピア・レビュー・グループの副議長国 の一員として運営に参画している。

(13) 2003年に改正された日米租税条約はこれに先立つものであるが、同条約26条4項において、自国

の課税のために必要とするか否かを問わず、権限ある当局に対して、情報交換のために情報を入 手する十分な権限を付与する国内法上の必要な措置をとることを義務付け、また、交換書簡8にお いて、権限ある当局が情報を入手するための権限には、金融機関等が有する情報を入手する権限 を含み、金融機関等が有する情報を交換することができる旨が了解されている。

(14) 財務省HP「税務行政執行共助条約に署名しました」(平成23年114日報道発表、http://www.

mof.go.jp/tax_policy/summary/international/press_release/sy231104g20.htm)

(15) 多国間税務行政執行共助条約の批准に係る問題点等を検討している文献として、森浩明「国際間 の徴収共助―条約上の徴収共助条項の考察を中心として」『税大論叢』44号(平成16年6月30日) 354ページがある。

(16) 租税条約実施特例法第11条第1項。

(17) U.S. Department of the Treasury, “Treasury, European Governments Agree to Pursue Framework for Implementing FATCA”(2012年2月8日、http://www.treasury.gov/press-center/press-releases/Pages/tg1412.

aspx).

(18)FATCAの概要・問題点等については、伊藤剛志「米国の外国口座税務コンプライアンス(FATCA)

法で日本に負担?―日本の金融機関に重大な影響を与える米国FATCA法」『法と経済のジャーナ Asahi Judiciary―西村あさひのリーガル・アウトルック』(2011年9月21日、http://astand.asahi.

com/magazine/judiciary/outlook/2011090200009.html)、武井一浩・伊藤剛志・高添達也「(連載)米国

FATCA法が金融実務に与える影響」『金融法務事情』1927号(4ページ)、1931号(6ページ)、

1933号(27ページ)、1935号(11ページ)、1937号(29ページ)、1939号(6ページ)、1941号(4 ージ)、1943号(114ページ)、1945号(76ページ)を参照されたい。

(13)

2003年11月 2004年 日米租税条約

(改正)

2006年2月 2006年 日インド租税条約

(改正)

2006年2月 2006年 日英租税条約

(改正)

2006年12月 2008年 日フィリピン租税 条約(改正)

2007年1月 2007年 日仏租税条約

(改正)

2008年1月 2008年 日パキスタン租税 条約(改正)

2008年1月 2008年 日オーストラリア 租税条約(改正)

2008年12月 2009年 日カザフスタン租 税条約(新規)

2009年1月 2009年 日ブルネイ租税協 定(新規)

2010年1月 2011年 日ルクセンブルク 租税条約(改正)

2010年1月 未発効 日ベルギー租税条

   約(改正)

2010年2月 2010年 日シンガポール租

   税協定(改正)

2010年2月 2010年 日バミューダ租税 協定(新規)

発効 略称

署名 配当 利子 使用料 その他

補足資料:2003年日米租税条約の改正以後の租税条約の状況(2012年3月現在)

旧 条 約 :1 0 %( 持 株 割 合 10%以上)、15%(その他)

→新条約:持株割合50%

超の子会社配当は免税、

5%(持株割合10%以上)、

10%(その他)に。

15%→10%

旧 条 約 :1 0 %( 持 株 割 合 25%以上)、15%(その他)

→新条約:持株割合50%

以上の子会社配当は免税、

5%(持株割合10%以上)、

10%(その他)に。

25%→15%

旧条約:5%(日本源泉に ついては直接15%以上議 決権保有、フランス源泉 については直間15%以上 保有。一定の適格者は免 税)、15%(その他)→新条 約:日本源泉については 直接15%以上または直間 25%以上保有、フランス 源泉については直間15%

以上の株式保有の子会社 配 当 は 免 税 、5 %( 直 間 1 0 %以 上 の 株 式 保 有 )、

10%(その他)に。

10%は変わらず。た だし、政府機関等の ほか、金融機関等が 受け取る利子は免税 に。

10%(銀行)、15%(そ の他)→一律10%。

10%は変わらず。た だし、政府機関等の ほか、金融機関等が 受け取る利子は免税 に。

10%→免税。

20%→10%。

特典制限条項。条約濫 用に対する個別取引否 認規定。匿名組合に対 する課税取り扱い。ハ イブリッド事業体対応。

移転価格課税処分期間 制限。

みなし税額控除の廃止。

10%→免税。 特典制限条項。条約濫

用に対する個別取引否 認規定。匿名組合に対 する課税取り扱い。ハ イブリッド事業体対応。

移転価格課税処分期間 制限。

旧 条 約 : 公 社 債 等 10%、一般15%→新 条約:一律10%。

旧条約:映画フ ィルム等15%、

一般25%→新条 約:映画フィル ム等15%、一般 10%。

みなし税額控除につい て 、1 0年 間 の 供 与 期 限。

10%は変わらず。た だし、政府機関等の ほか、金融機関等が 受け取る利子は免税 に。

10%→免税。 特典制限条項。条約濫

用に対する個別取引否 認規定。匿名組合に対 する課税取り扱い。ハ イブリッド事業体対応。

旧条約:日本源泉につい ては公開会社が3分の1以 上 の 議 決 権 保 有 の 場 合 15%限度税率、パキスタ ン源泉については3分の1 以上の議決権保有の場合 6.25%の軽減→新条約:

限度税率が、5%(持株割 合50%以上)、7.5%(持 株割合25%以上)、10%(そ の他)に。

旧条約:30%(国債、

産業的事業の社債・

貸付金の利子は免税)

→新条約:限度税率 10%に。特定の政府 機関が受け取る利子 は免税。

旧条約:恒久的 施設を有しない 場合免税→新条 約 : 限 度 税 率 10%に。

事 業 利 得 を 帰 属 主 義 に。技術上の役務料金 に対する10%の限度税 率。譲渡収益条項の導 入。無差別待遇条項の 拡充。匿名組合に対す る課税取り扱い。みな し 外 国 税 額 控 除 の 廃 止。

旧条約:15%→新条約:

持株割合80%以上の子会 社配当は免税、5%(持株 割合10%以上)、10%(そ の他、ただし、不動産投 資信託からの配当に対す る限度税率は15%)に。

10%は変わらず。た だし、政府機関等の ほか、金融機関等が 受け取る利子は免税 に。

10%→5%。 特典制限条項。条約濫

用に対する個別取引否 認規定。匿名組合に対 する課税取り扱い。ハ イブリッド事業体対応。

移転価格課税処分期間 制限。

5%(持株割合10%以上)、

15%(その他)

10%、ただし、特定 の政府機関等が受け 取る利子は免税。

限度税率は、実 質的には5%。

5%(持株割合10%以上)、

10%(その他)

10%、ただし、特定 の政府機関等が受け 取る利子は免税。

限度税率10%。

利子免税の対象とな る機関名を改正。

情報交換規定を改正。

情報交換規定を改正。

情報交換規定を改正。

情報交換を主体とする もの。退職年金等の特 定の個人所得について の課税の免除を規定。

(14)

いとう・つよし 弁護士(西村あさひ法律事務所)

http://www.jurists.co.jp [email protected] 情報交換規定を改正。

2010年2月 未発効 日クウェート 租税条約(新規)

2010年5月 2011年 日スイス租税条約

(改正)

2010年8月 2011年 日オランダ租税条 約(改正)

2010年11月 2011年 日香港租税協定

(新規)

2010年11月 2011年 日サウジアラビア 租税条約(新規)

2011年1月 2011年 日バハマ租税協定

(新規)

2011年2月 2011年 日ケイマン租税協 定(新規)

2011年6月 2011年 日マン島租税情報 交換協定(新規) 2011年12月 未発効 日ジャージー租税

協定(新規)

2011年12月 未発効 日ガーンジー租税 協定(新規)

2011年12月 未発効 日ポルトガル租税 条約(新規)

(注) *は情報交換を主体とする租税条約

5%(持株割合10%以上)、

10%(その他)

旧 条 約 :1 0 %( 持 株 割 合 25%以上)、15%(その他)

→新条約:持株割合50%

以上の子会社配当は免税、

5%(持株割合10%以上)、

10%(その他)に

10%、ただし、特定 の政府機関等が受け 取る利子は免税。

10%は変わらず。た だし、政府機関等の ほか、金融機関等が 受け取る利子は免税 に。

限度税率10%。

10%→免税。 特典制限条項。条約濫

用に対する個別取引否 認規定。匿名組合に対 する課税取り扱い。ハ イブリッド事業体対応。

移転価格課税処分期間 制限。

旧 条 約 :5 %( 持 株 割 合 25%以上)、15%(その他)

→新条約:持株割合50%

以上の子会社配当は免税、

5%(持株割合10%以上)、

10%(その他)に

10%は変わらず。た だし、政府機関等の ほか、金融機関等が 受け取る利子は免税 に。

10%→免税。 特典制限条項。条約濫

用に対する個別取引否 認規定。匿名組合に対 する課税取り扱い。ハ イブリッド事業体対応。

移転価格課税処分期間 制限。仲裁手続導入。

5%(持株割合10%以上)、

10%(その他)

10%、ただし、特定 の政府機関等が受け 取る利子は免税。

限度税率5%。 条約濫用に対する個別 取引否認規定。匿名組 合に対する課税取り扱 い。ハイブリッド事業 体対応。移転価格課税 処分期間制限。仲裁手 続導入。

5%(持株割合10%以上)、

10%(その他)

10%、ただし、特定 の政府機関等が受け 取る利子は免税。

5 %( 設 備 の 使 用 )、1 0 %( そ の他)。

5%(持株割合10%以上)、

10%(その他)

特定の政府機関等が 受 け 取 る 利 子 は 免 税、銀行の受け取る 利子は5%、その他 は10%。

限度税率5%。

情報交換を主体とする もの。退職年金等の特 定の個人所得について の課税の免除を規定。

情報交換を主体とする もの。退職年金等の特 定の個人所得について の課税の免除を規定。

情報交換を主体とする もの。

情報交換を主体とする もの。退職年金等の特 定の個人所得について の課税の免除を規定。

情報交換を主体とする もの。学生等の特定の 個人所得についての課 税の免除を規定。

条約濫用に対する個別 取引否認規定。匿名組 合に対する課税取り扱 い。移転価格課税処分 期間制限。仲裁手続導 入。

2011年12月 日オマーン租税協定

(新規)

2012年3月 日リヒテンシュタイン租税 協定(新規)

略称

基本合意 配当 利子 使用料 その他

5%(持株割合10%以上)、

10%(その他)

10%、ただし、特定 の政府機関等が受け 取る利子は免税。

限度税率10%。

情報交換を主体とする もの。

2010年2月 2010年 日マレーシア租税

   協定(改正)

Referensi

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