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イネの形質転換効率向上方法の開発とその意義 - J-Stage

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化学と生物 Vol. 50, No. 9, 2012 629

今日の話題

イネの形質転換効率向上方法の開発とその意義

イネ効率的相同組換え系の確立にむけて

植物における形質転換においては,現在アグロバクテ リウムを介した遺伝子導入法が一般的な方法として用い られている(1).近年,培養手法の改良により形質転換効 率が向上したイネのモデル品種の日本晴ではポストイネ ゲノムにおける遺伝子機能解析研究の材料として大規模 な遺伝子の機能を破壊させたT-DNAの挿入ライブラ リーやイネ FOX (Full-length cDNA over-expression) 

ライブラリーが作出され,多くの植物研究者により利用 されている.さらに特定の遺伝子の機能解析に相同組換 えによる遺伝子ノックアウト手法が植物においても可能 になってきた(2).このような大規模形質転換系が利用さ れている植物はイネ,アラビドプシスなどのモデル植物 だけである.基礎的な遺伝子機能解析研究などではモデ ル植物やモデル品種で十分ではあるが,実用化研究にお いてはコシヒカリなどの実用品種に汎用的に利用でき る,効率の高い形質転換技術が望まれている.

植物のアグロバクテリウムによる形質転換において最 も重要な点は活発に増殖している培養細胞の利用と共存 培養時のアグロバクテリウムの過増殖の抑制である.わ れわれはアグロバクテリウムの増殖抑制により形質転換 効率を高めた,新規形質転換法(ろ紙法)を開発してい る(3).このアグロバクテリウムの増殖抑制法は他の植物 の形質転換体の作成にも応用が可能である.一般に液体 振とう培養細胞は細胞塊が小さく増殖が活発なことから 大規模形質転換に最適と考えられていたが,イネではそ のような形質転換系が確立されていなかった.今回,イ ネ振とう培養細胞を用いて,ろ紙法で形質転換すること により,従来法より数十倍程度,形質転換効率を高める ことができることを見いだした(4).形質転換効率を向上 させていくことにより,どのようなことが可能となるか 紹介したい.

図1-Aに示したのが日本晴由来のカルスを従来の固体 培地を用いる形質転換方法(2) により形質転換( , 

β

- グルクロニダーゼ (GUS) 遺伝子の導入)した後,選抜 培地に移し,1週間目のカルスをGUS染色したものであ る.この方法ではカルス10 g(約1,000 〜2,000個のカル ス)あたり,約103  の形質転換体を得ることが可能で あったが,その効率は安定していなかった.また日本晴

の1/10 〜 1/100程度の形質転換効率を示す実用品種は 多く,品種によっては形質転換イネをほとんど得られな いこともあった.また実用化研究で利用されているイネ 由来の変異型アセト乳酸合成酵素遺伝子 ( ) や亜硝 酸還元酵素遺伝子 ( )(コシヒカリ培養細胞にマー カー遺伝子として利用可能)の選抜効率は 遺伝子 などの抗生物質耐性マーカー遺伝子と比較し低く,形質 転換イネを再現性よく得ることは難しかった.筆者らも 実用化研究として,培養特性の低い北海道の実用品種 おぼろづき を用いイネ由来の1点変異型 遺伝子 を選抜マーカー遺伝子として形質転換体を作出したが,

約10 gのカルスから数個体の形質転換体しか得られな かった.

図1-Bに示したのが少量の液体培地をしみこませたろ 紙上でアグロバクテリウムとカルスの共存培養を行うろ 紙法で形質転換した後,選抜培地に移し,1週間目のカ ルスをGUS染色したものである(3).再現性よく,従来 法の約10倍程度の形質転換効率を示し,カルス10 gあ たり,約104  の形質転換体を得ることが可能であった.

日本晴以外の多くの品種でも同様に形質転換効率は約 10倍向上した.この方法の開発により培養特性の低い コシヒカリ,おぼろづきなどの実用品種でも効率的に形 質転換イネを得ることが可能となった.また 遺伝 子, 遺伝子などの選抜効率の低いマーカー遺伝子を 用いても多数の形質転換イネを再現性よく得ることが可 能となった.

図1-Cはイネ液体振とう培養細胞をろ紙法により形質 転換した後,選抜培地に移し,1週間目のカルスをGUS 染色したものである(4).再現性よく従来法の約100倍程 度の形質転換効率を示し,カルス10 gあたり,約105の 形質転換体を得ることが可能であった.これはすなわち 少量のカルスを用いてこれまでに比べ大量の形質転換体 が容易に得られることを意味している.たとえばイネで はnegative/positive選抜法を用いた相同組換えによる 遺伝子ノックアウト作出技術が開発されている(2).しか しこの方法で相同組換え体を得るためには約105の形質 転換細胞を作出する必要があり,従来の形質転換法では 1個体の相同組換えイネを得るために約10,000個のカル

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今日の話題

ス(約50 g)をシャーレに並べてnegative/positive選 抜する必要があり,労力的な問題から普及していなかっ た.しかし液体培養細胞を用いた本形質転換法とnega- tive/positive選抜法を組み合せることにより,容易に相 同組換えによる遺伝子ノックアウトイネを作出すること が可能となった(5).その効率を調べたところ,1 gのカ ルスより約20個のnegative/positive選抜カルスが得ら れた.そして選抜カルスの約1.5%が相同組換えカルス だった.本遺伝子ノックアウト技法により,マウスなど と同様に高等植物のイネにおいても,遺伝子ノックアウ トの作出と遺伝子機能解析は一般的な手法として普及し ていくことが期待される.

実際にろ紙法による形質転換実験を行うにあたっての 注意点は,ろ紙に含ませる共存培地量の調整である.余 分な感染液の除去度合い,カルス量,培養室の湿度など によってろ紙中の培地量が変化するため,アグロバクテ リウムの増殖速度も変化してしまう.このためろ紙法の 利用にあたってはそれぞれの実験者が共存培地量を再検 討することが大切である.

今回筆者らは,汎用的に利用できる効率的な形質転換 技術を利用することにより,実用品種の低い形質転換効 率,選抜効率の低いマーカー遺伝子の利用,などの問題 を解決できることを示した.また,労力が必要で普及し なかった遺伝子ノックアウト手法も形質転換効率を向上 させることにより容易な手法となることを示した.今 後,さらに形質転換効率を向上させることにより,マー カー遺伝子を用いない形質転換法やアグロバクテリウム による一過的発現解析系などの新たな手法の開発が期待 される.

  1)  Y. Hiei, S. Ohta, T. Komari & T. Kumashiro : , 6,  271 (1994).

  2)  R.  Terada,  Y.  H.  Johzuka,  M.  Saitoh,  H.  Asao  &  S. 

Iida : , 144, 846 (2007).

  3)  K. Ozawa : , 176, 522 (2009).

  4)  K. Ozawa & F. Takaiwa : , 179, 333 (2010).

  5)  K.  Ozawa,  Y.  Wakasa,  Y.  Ogo,  K.  Matsuo,  H.  Kawa- higashi  &  F.  Takaiwa : , 53(4),  755 

(2012).

(小沢憲二郎,(独)農業生物資源研究所)

図1アグロバクテリウム法における共存培養条件によるイネ 形質転換効率の変化

形質転換( 遺伝子を導入)処理後,選抜培地にカルス を移し,1週間後にGUS染色を行った.A ; 固体培地で前培養した カルスを固体培地上で3日間共存培養後,選抜培地へ移した.B ; 固体培地で前培養したカルスを少量の液体培地を含むろ紙上で3 日間共存培養後,選抜培地へ移した.C ; 液体培地で前培養したカ ルスを少量の培地を含むろ紙上で3日間共存培養後,選抜培地へ 移した.bar ; 2 mm

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