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ソルベンシー規制が生保会社の資産運用に及ぼす影響
---資産側デュレーションと金利感応度の関係を中心にして---
専修大学商学部 小藤康夫(こふじやすお)
1 生保危機の元凶と具体的対応策
(1)逆ざや問題の発生
わが国の生保業界は1990年代後半から2001年初頭にかけて未曾有の生保危機に 見舞われた。長期にわたる金利の下落から深刻な逆ざや問題が発生した。
<生保の破綻 合計8社>
1997年 4月・・・日産生命 1999年 6月・・・東邦生命 2000年 5月・・・第百生命 同年 8月・・・大正生命、
同年10月・・・千代田生命 同年10月・・・協栄生命 2001年 3月・・・東京生命 2008年10月・・・大和生命
(2)資産負債総合管理の必要性
逆ざやリスクを回避する手段としての資産負債総合管理(ALM=Asset Liability Management)
資産側と負債側のデュレーション(満期)のギャップ(差)を縮めることで、逆ざやの 発生をできるだけ抑える手法
本報告では生保危機を教訓にしながら、わが国生保が逆ざやを回避する手法としてAL Mを確実に実践しているかどうかをみていくことにしたい。
2 経済価値ベースの評価
(1)負債の時価会計
生保危機を契機に監督機関による生保へのソルベンシー規制が強められている。
わが国では1996年度決算において米国のRBC(Risk Based Capital)を参考にしな がらソルベンシー・マージン規制を導入している。
その後、修正を幾度か重ねながら2011年度決算ではリスク係数の見直しを中心とす る「短期的対応」と呼ばれる改定が実施された。
その内容はすでに金融庁の報告書(2007)の中で明記されたものであり、今後は経 済価値ベースの考え方に基づく「中期的対応」と呼ばれる改定が検討されている。
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こうしたソルベンシー規制の強化は国際的な流れである。なかでも経済価値ベースの評 価システムが確立しない限り、生保破綻を予知するのが難しい。
実際、破綻生保の決算はほとんどが黒字であり、まして債務超過が事前に報告されるこ とはなかった。それは決算そのものが簿価で表記されていたからであり、とりわけ負債側 の簿価表記は逆ざやリスクを見えなくする。
生保決算の欠陥を克服する試みが経済価値ベースの評価であり、資産側だけでなく負債 側も時価で捉えようとしている。
資産側の時価評価はすでに導入されているが、負債側は取得原価のままである。
(2)金利下落の影響
いま述べたことを生保の貸借対照表を用いて説明しよう。
図表1・・・金利が下落した場合の時価による資産と負債の動き
この図では金利の下落が資産と負債を同時に増大させ、純資産にどのような影響をもた らすかを示している。
両者の変動の相違は資産側と負債側のデュレーションの相違から説明できる。
図表1 金利下落が生保の資産と負債に及ぼす影響
資 産 負 債 資 産 負 債
有価証券 有価証券
国債 金利の下落 国債
地方債 責任準備金 地方債 責任準備金
社債 社債
国内株式 国内株式
外国株式 外国株式
外国債券 自己資本 外国債券
貸付金 貸付金
その他 純資産 その他
自己資本 純資産
3 デュレーション・ギャップとALM対策
(1)デュレーション・ギャップの定義
まず、生保の貸借対照表から自己資本に相当する純資産を求めると、次のようになる。
ただし、記号の意味は、E=純資産、A=資産、L=負債である。
3
E = A − L (1)
この(1)式を微分すると、
dE = dA − dL (2)
となる。
それぞれのデュレーションは市場価値で表記された資産および負債の利子率変化に対す る弾力性として示される。
その重要な性質を式で表すと、次のようになる。ただし、DA=資産側デュレーション、
DL=負債側デュレーション、r=利子率である。
dA/A = −DA・dr/r (3)
dL/L = −DL・dr/r (4)
そこで、(2)式に(3)式と(4)式を代入すると、
dE = −DA・A・dr/r + DL・L・dr/r
= −A・(DA−DL・L/A)・dr/r (5)
(5)式は利子率の変化が純資産に対してどのような影響を与えるかを表している。
その効果を決定づける要因が(DA−DL・L/A)であり、「デュレーション・ギャップ」
と呼んでいる。
デュレーション・ギャップが正であれば、利子率の変化に対して純資産の市場価値は反 対方向に動き、逆に負であれば同じ方向に動いていく。また、それがゼロであれば、利子 率の変化に対して純資産は何も動かないことになる。
生保のALMはデュレーション・ギャップをゼロに近づける戦略である。
(2)図による説明
デュレーション・ギャップがゼロの状態(DA−DL・L/A=0)から、資産側デュレ ーションと負債比率の関係を求めると、次のようになる。
DA = DL ・L/A (6)
4
貸借対照表(L+E=A)から負債比率と自己資本比率の関係を求めると、
L/A + E/A = 1 (7)
この2本の式から資産側デュレーション、負債比率、そして自己資本比率の関係を描く と、図表2のようになる。
図表2 資産側デュレーションの長期化戦略
資産側デュレーション DA
DA = DL・L/A 直線L
DA* B点
デュレーション・ギャップ が負の領域
DA < DL・L/A A点
DL 負債比率
0 1 L/A
C点
L/A + E/A = 1
1
自己資本比率
E/A
(3)3種類のALM対策
図表2・・・資産側デュレーションの長期化戦略
図表3・・・負債側デュレーションの短期化戦略
図表4・・・自己資本比率の拡大戦略
5
図表3 負債側デュレーションの短期化戦略資産側デュレーション DA
DA = DL・L/A 直線L
直線Lʼ A点
負債比率
0 1 L/A
C点
L/A + E/A = 1
1
自己資本比率 E/A
図表4 自己資本比率の拡大戦略
資産側デュレーション DA
DA = DL・L/A 直線L
E点
A点
負債比率
0 1 L/A
C点
L/A + E/A = 1 D点
1
自己資本比率
E/A
4 資産側デュレーションの動き
(1)資産別構成割合の推移
図表5・・・生保を対象にした資産別構成割合(%)の推移
図表5 全生保を対象にした資産別構成割合(%)の推移
2000年度 2001年度 2002年度 2003年度 2004年度 2005年度 2006年度 2007年度 2008年度 2009年度 2010年度
有価証券 57.6 60.2 61.4 65.3 68.8 71.9 73.7 72.6 71.6 75.3 76.3
国債 16.6 17.8 19.4 19.3 21.9 21.3 22.1 23.2 26.4 27.8 30.5
地方債 3.9 3.9 4.1 3.4 3.1 2.7 2.5 2.5 2.6 2.7 2.5
社債 9.3 9.7 10.7 10.2 9.5 8.7 8.7 9.1 9.4 9.0 8.6
株式 15.4 13.4 9.6 11.6 11.5 14.7 14.7 11.2 7.6 8.6 7.2
外国証券 11.4 14.3 16.1 18.3 19.1 18.8 18.8 19.4 19.1 19.5 20.1
その他の証券 1.0 1.1 1.5 2.5 3.7 5.7 6.9 7.2 6.5 7.9 7.3
貸付金 26.1 25.5 24.7 22.6 20.0 17.5 15.9 16.0 16.0 14.1 13.1
その他 16.3 14.3 13.9 12.1 11.2 10.6 10.4 11.4 12.4 10.6 10.6
6
図表6・・・有価証券と貸付金の動き
0 20 40 60 80 100
2000年度 2001年度 2002年度 2003年度 2004年度 2005年度 2006年度 2007年度 2008年度 2009年度 2010年度
図表6 全生保を対象にした有価証券と貸付金の構成割合
(%)
有価証券
貸付金
図表7・・・国債、地方債、社債の動き
0 10 20 30 40
2000年度 2001年度 2002年度 2003年度 2004年度 2005年度 2006年度 2007年度 2008年度 2009年度 2010年度
図表7 全生保を対象にした主要な有価証券の構成割合(%)
(%)
国債
社債
地方債
(2)資産側デュレーションの計測
計算方法として心光(2009、2011)を参考にしながら、各生保が年度ごとに発 刊する「ディスクロージャー誌」から残存期間別の残高に注目し、その数値を利用するこ とでデュレーションを求めていく。
まず、残存期間の範囲に対応して以下のような年数を定め、その数値に保有資産の割合 からウエイト付けを課し、デュレーションの概算値を弾き出していく。
残存期間 1年以下 ・・・・・・ 0.5年 残存期間 1年超〜3年以下 ・・・・・・ 2年 残存期間 3年超〜5年以下 ・・・・・・ 4年 残存期間 5年超〜7年以下 ・・・・・・ 6年 残存期間 8年超〜10年以下 ・・・・・・ 2年 残存期間 8年超〜10年以下 ・・・・・・ 8.5年 残存期間 10年超 ・・・・・・ 15年
大手4社(日本生命、第一生命、明治安田生命、住友生命)を対象にしながら保有資産 別デュレーションの概算値を求め、その動きを描いたものが図表8である。
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図表8・・・大手4生保の保有資産別デュレーション(年)の推移
注目すべき特徴は各資産のデュレーションが生保危機が騒がれた1997年度から20 00年度を転換期としながら上昇傾向にある点である。
この場合も国債の動きが顕著であり、生保危機が発生した頃からデュレーションが確実 に上昇している。
これにより生保は逆ざや問題が原因となって破綻した苦い経験を踏まえ、デュレーショ ン・ギャップを縮小させるALM戦略を実行していることがわかる。
図表8 大手4生保の保有資産別デュレーション(年)の推移
2 4 6 8 10 12
国債
地方 債
貸付金 社債
生保危機 の発生
(年)
5 金利変動が生保の株価に及ぼす影響
(1)計測モデル
生保の株価変化率 = a + b・日経平均株価変化率
+ c1・国債流通利回り変化率(3期リード)
+ c2・国債流通利回り変化率(2期リード)
+ c3・国債流通利回り変化率(1期リード)
+ c4・国債流通利回り変化率
+ c5・国債流通利回り変化率(1期ラグ)
+ c6・国債流通利回り変化率(2期ラグ)
+ c7・国債流通利回り変化率(3期ラグ)
+ c8・国債流通利回り変化率(4期ラグ)
+ c9・国債流通利回り変化率(5期ラグ)
+ c10・国債流通利回り変化率(6期ラグ)
+ c11・国債流通利回り変化率(7期ラグ)
8
この回帰式で注目しなければならないのは金利変動の係数である。
つまり、係数 c1から係数 c11の係数が0の可能性を示唆できれば、生保のALM戦略が 成功していると言える。
以下では株式上場生保の代表として第一生命とT&Dホールディングスの2社を取り上 げ、株価変動と金利変動の関係を計測する。
株価変動と金利変動は、日次データによる株価対前営業日比(%)ならびに10年物国 債流通利回り対前営業日比(%)である。
(2)第一生命の計測結果
図表9・・・有価証券と貸付金のデュレーション
2 4 6 8 10 12
2003年度 2004年度 2005年度 2006年度 2007年度 2008年度 2009年度 2010年度 2011年度
図表9 第一生命が保有する有価証券と貸付金のデュレーション(年)の推移
(年)
貸付金
図表10・・・国債、地方債、社債のデュレーション
2 4 6 8 10 12 14
2003年度 2004年度 2005年度 2006年度 2007年度 2008年度 2009年度 2010年度 2011年度
図表10 第一生命が保有する主要な有価証券のデュレーション(年)の推移
国債
社債
地方債
図表11・・・回帰分析の計測期間
超長期国債を中心に買い続け、資産側デュレーションを高めることで、金利変動の影響 を受けにくい状態がようやく達成できたからだと解釈できる。
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図表11 第一生命の株価に対する利子率感応度
≪期間1≫ ≪期間2≫ ≪期間3≫
2010年度 2011年度 2012年度
(a)
定数項 ▲ 0.05 0.01 0.03
t値 ▲ 0.35 0.14 0.28
判定 [ ] [ ] [ ]
(b)
日経平均株価・変化率 0.85 1.63 1.52
t値 9.32 17.06 16.27
判定 [**] [**] [**]
(c1)
国債流通利回り・変化率(リード3) 0.05 0.10 ▲ 0.02
t値 1.24 1.62 ▲ 0.38
判定 [ ] [ ] [ ]
(c2)
国債流通利回り・変化率(リード2) 0.12 0.04 0.03
t値 2.85 0.71 0.43
判定 [**] [ ] [ ]
(c3)
国債流通利回り・変化率(リード1) 0.11 0.15 0.11
t値 2.68 2.47 1.95
判定 [**] [**] [ ]
(c4)
国債流通利回り・変化率 0.09 0.11 0.11
t値 2.15 1.70 1.83
判定 [* ] [ ] [ ]
(c5)
国債流通利回り・変化率(ラグ1) 0.05 0.12 0.02
t値 1.10 2.09 0.43
判定 [ ] [* ] [ ]
(c6)
国債流通利回り・変化率(ラグ2) 0.05 0.14 0.08
t値 1.26 2.41 1.36
判定 [ ] [* ] [ ]
(c7)
国債流通利回り・変化率(ラグ3) ▲ 0.02 0.01 ▲ 0.03
t値 ▲ 0.51 0.18 ▲ 0.53
判定 [ ] [ ] [ ]
(c8)
国債流通利回り・変化率(ラグ4) ▲ 0.01 ▲ 0.01 0.10
t値 ▲ 0.22 ▲ 0.21 1.76
判定 [ ] [ ] [ ]
(c9)
国債流通利回り・変化率(ラグ5) ▲ 0.01 0.02 0.05
t値 ▲ 0.26 0.27 0.89
判定 [ ] [ ] [ ]
(c10)
国債流通利回り・変化率(ラグ6) ▲ 0.09 ▲ 0.04 ▲ 0.00
t値 ▲ 1.64 ▲ 0.71 ▲ 0.03
判定 [ ] [ ] [ ]
(c11)
国債流通利回り・変化率(ラグ7) 0.04 0.05 0.06
t値 0.63 0.89 1.04
判定 [ ] [ ] [ ]
自由度修正済み決定係数(adj-R2) 0.32 0.63 0.60
F値 10.33 35.35 30.90
ダーヴィンワトソン比(DW) 2.18 2.03 1.92
件数(N) 244 246 238
(注)判定[**]:1%有意、判定[* ]:5%有意を意味する。▲はマイナスを意味する。
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(3)T&Dホールディングスの計測結果
図表12・・・有価証券と貸付金のデュレーション
2 4 6 8 10 12
2003年度 2004年度 2005年度 2006年度 2007年度 2008年度 2009年度 2010年度
(年)
図表12 T&Dが保有する有価証券と貸付金のデュレーション(年)の推移
有価証券
貸付金
図表13・・・国債、地方債、社債のデュレーション
0 2 4 6 8 10 12
2003年度 2004年度 2005年度 2006年度 2007年度 2008年度 2009年度 2010年度 2011年度
(年) 図表13 T&Dが保有する主要な有価証券のデュレーション(年)の推移
国債
社債
地方債
図表14・・・・・・回帰分析の計測期間
資産側デュレーションを上昇させることで、ALM戦略を推し進めている。
これにより金利変動による経営の不安定性を取り除いている。
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図表14 T&Dホールディングスの株価に対する利子率感応度
≪期間1≫ ≪期間2≫ ≪期間3≫ ≪期間4≫
2004年度〜2009年度 2010年度 2011年度 2012年度 (a)
定数項 ▲ 0.01 0.03 ▲ 0.22 0.02
t値 ▲ 0.20 0.24 ▲ 1.01 0.24
判定 [ ] [ ] [ ] [ ]
(b)
日経平均株価・変化率 1.15 1.00 1.46 1.32
t値 27.38 14.40 6.84 15.61
判定 [**] [**] [**] [**]
(c1)
国債流通利回り・変化率(リード3) ▲ 0.02 0.03 0.13 ▲ 0.01
t値 ▲ 0.50 1.14 0.99 ▲ 0.15
判定 [ ] [ ] [ ] [ ]
(c2)
国債流通利回り・変化率(リード2) 0.02 0.05 0.12 0.02
t値 0.60 1.54 0.90 0.35
判定 [ ] [ ] [ ] [ ]
(c3)
国債流通利回り・変化率(リード1) 0.09 0.13 ▲ 0.01 0.08
t値 2.51 3.89 ▲ 0.10 1.62
判定 [**] [**] [ ] [ ]
(c4)
国債流通利回り・変化率 0.05 0.04 ▲ 0.06 0.10
t値 1.41 1.21 ▲ 0.40 1.84
判定 [ ] [ ] [ ] [ ]
(c5)
国債流通利回り・変化率(ラグ1) ▲ 0.02 0.03 0.03 ▲ 0.01
t値 ▲ 0.47 1.01 0.19 ▲ 0.26
判定 [ ] [ ] [ ] [ ]
(c6)
国債流通利回り・変化率(ラグ2) ▲ 0.02 0.06 ▲ 0.07 0.02
t値 ▲ 0.65 1.99 ▲ 0.53 0.31
判定 [ ] [* ] [ ] [ ]
(c7)
国債流通利回り・変化率(ラグ3) 0.08 0.03 0.02 0.02
t値 2.31 0.95 0.15 0.36
判定 [* ] [ ] [ ] [ ]
(c8)
国債流通利回り・変化率(ラグ4) 0.01 0.01 0.24 ▲ 0.01
t値 0.35 0.25 1.83 ▲ 0.14
判定 [ ] [ ] [ ] [ ]
(c9)
国債流通利回り・変化率(ラグ5) 0.03 ▲ 0.03 0.18 0.07
t値 0.92 ▲ 0.86 1.32 1.37
判定 [ ] [ ] [ ] [ ]
(c10)
国債流通利回り・変化率(ラグ6) 0.03 ▲ 0.08 ▲ 0.09 ▲ 0.02
t値 0.78 ▲ 2.33 ▲ 0.71 ▲ 0.40
判定 [ ] [* ] [ ] [ ]
(c11)
国債流通利回り・変化率(ラグ7) 0.00 ▲ 0.04 ▲ 0.07 0.05
t値 0.15 ▲ 1.00 ▲ 0.57 0.93
判定 [ ] [ ] [ ] [ ]
自由度修正済み決定係数(adj-R2) 0.38 0.51 0.18 0.58
F値 77.03 22.31 5.57 28.02
ダーヴィンワトソン比(DW) 2.09 2.20 2.00 2.18
件数(N) 1,467 245 246 238
(注)判定[**]:1%有意、判定[* ]:5%有意を意味する。▲はマイナスを意味する。
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6 今後の研究課題
生保危機を契機にしながら主要生保は資産側デュレーションを確実に高める傾向にある。
超長期国債を積極的に購入することでデュレーション・ギャップを縮小しつつある。まさ にALM戦略を実践している。
ALM戦略として資産側デュレーションだけに注目しながら分析を進めてきたが、その ほかに負債側デュレーションの短期化戦略もあれば、自己資本比率の拡大戦略もある。
今日の生保は3種類の戦略をうまく組み合わせながら純資産の変動を和らげていると思 われる。負債側デュレーションならびに自己資本比率についても最近の動きを追わない限 り、資産側デュレーションだけが純資産の変動を抑えているとは主張できない。
今後の研究テーマとして負債側デュレーションや自己資本比率の動きについても正確な 分析を繰り広げていく必要がある。(終)