1 2018年度上智大学経済学部経営学科網倉ゼミナール
ナイトタイムエコノミ―は日本経済を救うか
A1542716
松岡美紗
2 目次
1章 はじめに
2章 現状のナイトタイムエコノミー ⅰ日本のナイトタイムエコノミー ⅱ海外のナイトタイムエコノミー
3章 仮説 ➀
劇場やスイーツ、テーマパークなど現在では夜間営業していない 産業の営業時間を伸ばすことによるナイトタイムの発展
② 東京の深夜交通普及によりナイトタイムエコノミーの発展
4章 検証
5章 結論
6章 おわりに
3 はじめに
2017年の訪日外国人による旅行消費額は総額4兆4,161億円となり、初めて4兆円を突破
した。2016年の3兆7,476億円から17.8%の増加である。一方で、訪日外国人旅行者1人
あたりの旅行支出は15万3,921円で前年比1.3%減となっている。これは消費総額の増加 は単純に訪日外国人の数が増えた結果である。観光立国を掲げ観光立国推進基本計画を制 定している日本政府の目標は2020年までに8兆円であり、現状では半分である。
あと2年で倍にするためには特にどこの分野に力を入れるべきであるのか。
下図は外国人観光客の消費支出割合である。
(出典:OECD Tourism Trends and Policies 2016、観光庁資料より引用)
上図をみると、フランスやアメリカなど観光大国に比べて日本の娯楽サービスの割合が少 ないことがわかる。逆を言えば娯楽・サービス部門は伸びしろがあることになる。
本論文では、残りの4兆円の消費の対象として「ナイトタイムエコノミー」を取り上げる。
そしてインバウンド消費だけではなく、「日本社会にナイトタイムエコノミーを振興させる ことができるか」という問題提起をする。
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1章 現状のナイトタイムエコノミー
ⅰナイトタイムエコノミーの定義
ナイトタイムエコノミーとは日が落ちた夕刻から翌朝までの間に行われる、様々な経済行 動の総称である。ナイトタイムエコノミーに含まれる産業は伝統的には電力、ガス、上下水 道、通信など人々の生活を24時間体制で支えるインフラ系業種、もしくは夜間医療や警察 消防など社会が昼夜問わず必要とする、公共サービスによって構成されるものである。
また、現代においてのナイトタイムエコノミーに含まれる産業は日が落ちた以降に消費者 によって直接消費がなされる物品やサービスを提供する直接的な産業と、消費者によって 直接消費されるのではなく、ナイトタイムエコノミーが発展するために間接的に消費がな される物品やサービスを提供する産業の二つに分けられる。
具体的に直接的な産業とは夜の活動場所を提供するレストラン、居酒屋、バーなど飲食サー ビス、音楽、ダンスなどのパフォーマンスや劇場なども挙げられる。間接的な具体例は酒類 やたばこ、音響機器や照明機器などナイトタイムエコノミーを回す上で必要となる昼の経 済でも夜と変わりなく活用される産業のことである。
ⅱ日本のナイトタイムエコノミー
日本のナイトタイムエコノミーについて3つの面から考察する。
1つ目として日本のナイトタイムエコノミーを回す日本人の生活スタイルを取り上げる。
日本では古来より農耕を中心として形成された文化であり。農作物にとって一番重要とな る「太陽」の存在は信仰対象であり、太陽とともに目覚め、太陽と共に眠る、という生活ス タイルが健康的で正しいとされてきた。
しかし現在の日本では農耕社会から工業化を経て、第三次産業であるサービス業を中心と する社会に変わりつつある。OECD 発表の統計によると日本の農業が国内総生産に占める 割合はすでに1%に過ぎず、労働人口においても農業従事者は日本国民全体の4%に過ぎ ない。下図は日本国民における各時間帯における起床者の数である。
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時刻 H18 H23 時刻 H18 H23
0:00-0:15 2,118 2,182 12:00-12:15 12,544 12,503 0:15-0:30 2,014 2,095 12:15-12:30 12,538 12,494 0:30-0:45 1,670 1,760 12:30-12:45 12,510 12,471 0:45-1:00 1,577 1,674 12:45-13:00 12,496 12,463 1:15-1:30 1,101 1,168 13:00-13:15 12,495 12,459 1:00-1:15 1,044 1,103 13:15-13:30 12,487 12,450
1:30-1:45 839 902 13:30-13:45 12,482 12,443
1:45-2:00 802 861 13:45-14:00 12,482 12,439
2:00-2:15 580 636 14:00-14:15 12,500 12,458
2:15-2:30 548 604 14:15-14:30 12,498 12,458
2:30-2:45 489 541 14:30-14:45 12,510 12,480
2:45-3:00 478 527 14:45-15:00 12,510 12,486
3:00-3:15 417 466 15:00-15:15 12,543 12,510
3:15-3:30 404 452 15:15-15:30 12,547 12,514
3:30-3:45 392 452 15:30-15:45 12,562 12,532
3:45-4:00 392 456 15:45-16:00 12,566 12,532
4:00-4:15 464 555 16:00-16:15 12,593 12,564
4:15-4:30 487 585 16:15-16:30 12,592 12,566
4:30-4:45 613 751 16:30-16:45 12,607 12,584
4:45-5:00 678 812 16:45-17:00 12,608 12,586
5:00-5:15 1,301 1,505 17:00-17:15 12,628 12,616 5:15-5:30 1,503 1,738 17:15-17:30 12,633 12,619 5:30-5:45 2,365 2,654 17:30-17:45 12,643 12,628 5:45-6:00 2,769 3,044 17:45-18:00 12,647 12,627 6:00-6:15 4,556 5,074 18:00-18:15 12,653 12,648 6:15-6:30 5,687 5,941 18:15-18:30 12,665 12,652 6:30-6:45 7,742 7,894 18:30-18:45 12,676 12,661 6:45-7:00 8.327 8,430 18:45-19:00 12,676 12,661 7:00-7:15 10,150 10,147 19:00-19:15 12,659: 12,646 7:15-7:30 10,545 10,491 19:15-19:30 12,652: 12,638 7:30-7:45 11,221 11,157 19:30-19:45 12,619: 12,602 7:45-8:00 11,354 11,290 19:45-20:00 12,605 12,587
8:00-8:15 11,745 20:00-20:15 12,461: 12,434
8:15-8:30 11,869: 11,801 20:15-20:30 12,427 12,403 8:30-8:45 12,022: 11,961 20:30-20:45 12,309 12,265
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8:45-9:00 12,045: 11,982 20:45-21:00 12,258: 12,204 9:00-9:15 12,225: 12,172 21:00-21:15 11,544 11,483 9:15-9:30 12,239 12,189 21:15-21:30 11,407: 11,349 9:30-9:45 12,300 12,251 21:30-21:45 10,922 10,814 9:45-10:00 12,308 12,260 21:45-22:00 10,785 10,657 10:00-10:15 12,406 12,348 22:00-22:15 9,115 9,233 10:15-10:30 12,417 12,354 22:15-22:30 9,358: 8,968 10:30-10:45 12,444 12,386 22:30-22:45 8,245 8,090 10:45-11:00 12,445 12,390 22:45-23:00 7,968: 7,809 11:00-11:15 12,492 12,448 23:00-23:15 5,973: 5,847 11:15-11:30 12,493 12,450 23:15-23:30 5,544: 5,438 11:30-11:45 12,514 12,464 23:30-23:45 4,380 4,298 11:45-12:00 12.513 12,467 23:45-24:00 3,714 3.762
(光文社 木曽崇「夜遊び」の経済学p8より)
青H23年の方が多い オレンジH18年の方が多い
この比較によると、23時45分から翌7時00分までの深夜帯、ナイトタイムエコノミーの 対象の時間帯において平成18年の結果よりも平成23年の調査結果の方が約122万人各時 間帯に起床している人が多いことがわかる。
これらのことからこの5年間の間で昼中心の生活から夜中心の生活へシフトした人々が約 122万人いることになる。
2つ目は日本人の「夜」に対するイメージである。
「夜」の経済活動に対する悪いイメージは払拭されていない。実際に朝家を出て、夕方帰る、
という昼の仕事に対し夜の産業は危なげなイメージや良いイメージを持たれず偏見の目で 見られることが多い。
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3つ目は日本のナイトタイムエコノミーの発展を取り巻く環境である。
➀ 深夜交通
下図は新宿発JRの終電表である。
路線名 終電時刻
埼京線・川越線 大宮・川越方面 23:55川越行
埼京線・川越線 渋谷・大崎方面 23:31大崎行
湘南新宿ライン 高崎・宇都宮方面 高崎方面23:33高崎行 宇都宮方面23:00小金井行
湘南新宿ライン 横浜・大船方面 22:58国府津行
中央線快速 八王子・大月方面 1:01三鷹行
中央線快速 東京方面 23:47
中央・総武線各駅停車 御茶ノ水・千葉方面 22:42千葉行 00:40東京行
山手線 外回り 1:00池袋行
山手線 内回り 1:00品川行
このように、最も遅い時間で中央線快速八王子大月方面三鷹行きの 1:01であり、ほとん どの路線が24時前には終電を迎えている。調査によると同じように私鉄、地下鉄共に1:
00前には終電を迎えている。
一方で、下図は新宿発の終バスである。
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路線名 終電時刻
橋本行き 0:55
八王子みなみ野行き 1:05
府中駅行き 0:55
国立行き 1:25
八王子高尾方面 1:10
戸塚平塚方面 0:50
町田海老名本厚木駅行き 0:55
東戸塚大船駅行き 0:55
千葉土気駅行き 0:30
終バスは終電に比べ遅いものの、電車との差は大きくないため、終電を僅差で逃した人が終 バスを使う、といった手段に使われることが多い。その他の交通手段としてはタクシーが挙 げられるが、東京近郊に住む人々にとっては料金も高く、推奨される交通手段にはなりづら いだろう。
これらのことから日本の中心である新宿近辺でナイトタイムエコノミーを発展させるとし てもナイトタイムを活用する人々にとっては24時には切り上げて帰るか、新宿近辺で夜を 明かすほかなくなるため交通網の面からみてナイトタイムエコノミーに適した環境が整っ ているとは言い難い。
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② 法律
ナイトタイムエコノミーが直接関係する時間帯、夜のお店の営業に関わる法律として風営 法が挙げられる。風営法とは、『「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」の略 称。清浄な風俗環境の保持および少年の健全育成に障害を及ぼす行為を防止するため、風俗 営業・風俗関連営業について営業の許可・届け出、営業時間の制限、警察官の立ち入り等を 定める。1948年(昭和23)「風俗営業取締法」として制定。84年大幅に改正され、現在の 名称となった。』【三省堂 大辞林】
「風俗営業」というと一般的に性風俗を思いうかべがちであるが、風営法の対象となってい るのはパチンコ店やゲームセンターなどの遊技場営業、ライブハウスなどの特定遊興飲食 店営業、更には一般的飲食店においても深夜 0 時以降に酒類を提供する営業者は深夜酒類 提供飲食店として届け出が必要である。また、一般飲食店では深夜以降の遊興行為の提供を 禁止しており、音楽をかけたダンス、ピアノの生演奏、スポーツ観戦なども禁止されている。
よって風営法は一般的なお店がナイトタイムに進出するための重要な鍵となるといえる。
<日本での事例>
・ROBOT RESTAURANT
新宿区歌舞伎町にあるショーレストラン。ロボットやダンサーによるエンターテインメン トを楽しめる。入場料は飲食代別で1人8,000円。開店は夜、ショーのスタート時間はもっ とも遅いもので21時45分であり、年間12万人もの人が訪れ、そのうちの8割以上が外国 人といわれている。ホームページも英語表記のものが完備されており、外国人観光客が情報 収集しやすく、海外のメディアからも多数取材を受け、日本旅行雑誌にも記載がある。
ⅲ 海外のナイトタイムエコノミー
近年、世界各国においてナイトタイムエコノミーが注目されはじめている。各国は「消費機 会」の拡大を狙い、国の経済活性化を促す施策を行っているからである。
本論文では海外のナイトタイムエコノミーの代表としてイギリスを取り上げる。
また、イギリスにおいても3つの面から考察する。
1つ目はイギリスの文化的背景からである。イギリスのナイトタイムエコノミーへの取り組 みはイギリスの都市圏に空洞化現象が起こり始めた1990年代から始まる。ショッピングセ ンターなどの開発により、自家用車浮遊率が高まり、多くの人々が都市中心部から郊外へと 拠点を移す。これにより、都市復興を目指しタウンゼントマネジメント協会が発足され、ナ イトタイムエコノミー振興事業は都市再開発の一環として取り組まれ始めたのである。
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2つ目はイギリス人の「夜」に対するイメージである。
日本より発展するナイトタイムエコノミー先進国であっても、ナイトタイムに属する産業 に対してはイメージが良いとは言えない。騒音、ゴミの放置、反社会組織の関与、アルコー ルトラブルなどマイナスである影響も大きく日本と同様、法において規制を受ける側の産 業であった。しかし、ナイトタイムエコノミーの活性化を専門に担当する「ナイトツァー」
と呼ばれる役職を新設した。これは他国では「ナイトメイヤー」と呼ばれることも多い、夜 の市長である。市内のナイトタイムエコノミー振興を推進するPR活動や自治体、店、警察 などと連携し、健全かつ安全、そして有意義なナイトタイムエコノミーの手助けを行う。
また、ナイトメイヤー選出ポイントは、ナイトタイムエコノミーに携わる人々との人脈を持 ち、産業界での信用もあり、世間的に敬意を払われている人である、ということである。
世間的、産業界での信頼があるからこそ、市民が多少のことには目をつぶり、ナイトタイム エコノミーを発展させる上での市民の協力を仰ぐことが出来るのである。
3つ目はイギリスを取り巻く環境についてである。
➀ 深夜交通
イギリスでは2016年、地下鉄の24時間運行を実現させた。「ナイト・チューブ(地下鉄の 夜間運行)はロンドンの夜間経済を支援、発展させ、すべてのロンドン市民に雇用と機会の 創出を行うという私の計画には絶対的に不可欠」と、市長は声明で述べた。ロンドン経済の 押上げ効果は3億6000万ポンド(570億円)相当であり、新たに創出される雇用は直 接雇用が265人、間接雇用が1700人、計1965人であるとされた。
また、混雑を極めていたナイトショーやスポーツイベント終了後の終夜運転は24時間運行 化により混雑は緩和された。これらを踏まえ、ロンドン市営地下鉄の終夜運行に要する費用 とそこから得られる便益を比較した便益費用比が1:2.7と収益を存分に挙げられているこ とを示している。
② 制度
イギリスでは英国タウンセンターマネジメント協会が主導する「パールフラッグ」とよばれ る制度がある。7点の評価基準によって構成される「安全・安心して夜の街を楽しめる地域」
の認定制度である。その7つとは1、犯罪及び反社会的行為を抑制2、アルコールと健康対 策3、多様性4、交通5、社会認知6、規模と価値評価7、顧客品質である。これらを総合 的に判断して認定されるパープルフラッグ制度は地元民のみならず、治安事情に疎い観光 客が夜を過ごす場所の「品質保証」をしている。このように安心してたのしめる場所を行政 側から認定し、また認定地を増やすことでナイトタイムエコノミーを活性化させているの である。
これらの施策により、イギリスではナイトタイムエコノミ―産業は非常に大きく成長し、
2015年6月、ナイトタイムエコノミーによる経済規模は年間約9兆5700億円であった。
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第 2 章 仮説
日本のナイトタイムエコノミーの現状とナイトタイムエコノミーの経済効果について取り 上げたが本章では「日本でナイトタイムエコノミーを発展させることが出来るか」という問 題提起に対して仮説を設定した。
仮説
1 劇場やスイーツ、テーマパークなど現在では夜間営業していない産業の営業時間を伸ばす
日本人の「夜」のイメージを覆すためには、「夜にする定番」を変える必要がある。
東京で夜を楽しむ、といえば一般的には飲み会をする、カラオケ、ダーツ、ナイトクラブ、
ホストクラブなど「夜遊び」の定番が多く、こういった店の多くがある夜の繁華街はあまり 良い印象を持たれない。特に女性だけで深夜のカラオケやナイトクラブに行くのは危険性 が高まる。よって夜遊びの定番に夜パフェなどのスイーツや美術館や劇場などの健全かつ ポップなイメージを持つものも取り入れることで日本人の夜のイメージを変え、偏見なく 外でナイトタイムをすべての人が楽しむことができるのではないかと考えた。
仮説
2 東京の深夜交通普及によりナイトタイムエコノミーの発展するそもそもナイトタイムエコノミーを振興させようとする店や劇場などの運営する側の心境 を考えると最も重要視するのは利益である。その利益をだすために客が来る、という算段が なくてはならい。その客が来るためには、ナイトタイムを手軽に楽しむことのできるような 交通網が必要であると考えた。
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第 3 章 検証
①「劇場やスイーツ、テーマパークなど現在では夜間営業していない産業の営業 時間を伸ばす」
この検証では2つの面からアプローチする。
1つ目は近年通常より終了時間を伸ばして営業を行う商業施設が増えている、という面で ある。
八王子にある近年入場者数を V 字回復させたサンリオピューロランドではハロウィン期間 において営業時間を一時間延長して営業することで人気を呼んでいる。また、昨年のハロウ ィンにおいてはオールナイトハロウィーンパーティ「SPOOKY PUMPKIN 2018 ~PURO ALL NIGHT HALLOWEEN PARTY~」が開催され、その名の通り、夜通しイベントが行 われた。開演 22:00 閉演 05:00開園である。23時50分からは、ハローキティの誕生日 を一緒にお祝いできる、カウントダウンの時間が用意され、さらに、AAAのメンバーとし ても活動し、ソロでもミュージックシーンを牽引する人気のラッパー・SKY-HIのライブで は、ハローキティとの共演もあった。
他にも、水族館では平均18時閉園であったところ、22時ごろまで営業する場所が増えてい る。池袋にあるサンシャイン水族館においては水族館の特性を活かし、視覚・聴覚で「恐怖」
を体験できるお化け屋敷『ホラー水族館』を2016年から毎秋に行い、約2万人が来園して いる。新江の島水族館では、2004年より「お泊りナイトツアー」を行ったりすることで来 場者数を着実に増やしている。2013年は130万人ほどに低迷していた新江の島水族館であ ったが、2014年に来場者数は 172万人になり、V 字回復しその勢いは衰えず、2015年は 183万人と過去最高を記録した。
これらの事例からピューロランド、水族館という開園30年を目前にコンテンツのパターン 化により業績が下がってしまう状況に対し、ナイトタイムを活用した営業は新たな客層や 違った目線でのコンテンツ活用となり、業績をV字回復させるカギとなることがわかる。
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② 「東京の深夜交通普及によりナイトタイムエコノミーの発展する」
深夜交通の発展により、どのようなナイトタイムエコノミー振興につながるか
。
ここでは、ナイトタイムエコノミー振興国であるニューヨークとの比較でアプローチした い。
下図は東京とニューヨークの劇団四季ミュージカルライオンキングの上演開始時間の比較 である。
日にち 3/20 3/21 3/22 3/23 3/24 3/25 3/26
曜日 月 火 水 木 金 土 日 東京 昼の部
夜の部
13:00 休演
18:30
13:30 3:30 13:30 17:00
13:00
NY 昼の部
夜の部
休演
19:00
14:00
19:00 19:00 20:30
14:00
18:00 15:00
(光文社 木曽崇「夜遊び」の経済学p89より)
上記より、比較的 NYより東京の上演開始時間の方が早い。日本の最も遅い時間、18:30 で鑑賞する場合、忙しい日本の社会人では間に合わない場合も多く、顧客のターゲットとし て平日の昼間に行きやすいファミリー層が中心となってしまう。一方で、全体の上演時間が 約3時間であることからNYで最も遅い20:30開始だと終演は24時近くになってしまう。
日本だと帰る場所によっては終電はなくなってしまうのに対し、24 時間運行の地下鉄によ って終了後にバーやレストランで感想なども言い合うこともできるのだ。このスケジュー ルであれば子供連れのファミリー層だけでなく、30 代前後の働き盛りのデートスポットと してや、会社終わりの女子会の一環として候補に挙がるようになるのではないか。
これらの例によって電車の24時間運行、24時間と言わないまでも終電時刻を深夜2時な どさらに遅くすることで就業後の過ごし方の可能性が大きく広がるだろう。深夜交通網を 発達させることで劇団四季のような大きく、また今までのアルコールを飲むことを前提と した飲食店や娯楽施設ではない商業施設が営業時間を拡大し、その周辺の飲食店の営業時 間も拡大され、経済効果が見込まれるのではないか。
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第 4 章 結論
以下の仮説と検証結果からナイトタイムエコノミーは日本社会に浸透することが出来ると 考える。
➀ 深夜交通網を整備する
② 劇場や美術館などの文化的な施設の営業時間を伸ばす
まず、ナイトタイムエコノミーを日本社会に浸透させるには、まず産業を行う側が利益を得 られる、と確信する必要があると考えた。そのためには、人々が足を運べる環境づくりが大 切である。そこで第一に交通である。一度夜訪れたら朝まで帰れないのではなく、会社が終 わってもそのあとに休日のような楽しみを味わうには深夜3時であっても帰宅出来ること が必要であると思う。海外からの観光客であれば、市街地の宿泊先であっても気軽に遊び、
安全に帰ることが可能であるだろう。
そして、深夜交通網が発達するとともに、現在ナイトタイムに営業を行う業種以外の劇団四 季のようなミュージカルや美術館、また〆パフェを提供するようなカフェが深夜に営業を 行うことでナイトタイムの暗く、危ないイメージを払拭し、健全かつ安全に夜を楽しめるナ イトタイムエコノミーを提供することが出来る。また、世界的に治安が良く、夜も比較的安 全である日本においてナイトタイムが「死に時間」になってしまっているのはもったいなく、
今後のナイトタイムエコノミー発展に期待したい。
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第5章 おわりに
今回のテーマを決めるにあたり好きなもので挑戦したい、と思い最初に「〆パフェ」をとり あげましたが、なかなかうまくいかずそれから関連したトピックにしましたが、なかなか上 手くは行きませんでした。
早い段階で先生のところへ相談に行かなかったことをとても反省しております。卒業論文 のみならず網倉先生にはたくさんご迷惑をかけましたが、ゼミの内容は振り返るととても 楽しく、普段考えることはないことを論理的に考える良い機会でした。今後の人生において 参考にし、生きていく上で「何が面白いか」考えながら頑張っていこうと思います。
2年間本当にありがとうございました。
16 参考文献
・木曽崇『「夜遊び」の経済学』光文社新書
・過去最高! 新江ノ島水族館がV字回復したワケ
http://www.itmedia.co.jp/business/articles/1609/28/news036.html
・訪日外国人旅行者による消費金額が初めて 4 兆円を突破!今後のインバウンド消費拡大 に欠かせない視点は?
https://www.marketingbank.jp/special/cat18/620.php
・ナイトタイムエコノミー活性化のカギは? 「夜の経済」の行方 https://www.projectdesign.jp/201805/tokyo-2020/004864.php
・サンリオピューロランドでオールナイトハロウィーンパーティ!
https://trilltrill.jp/articles/1068389
・【その経済効果 80 兆円】インバウンドにおいて手付かずの成長市場である「ナイトタイ ムエコノミー関連市場」とは
https://honichi.com/news/2017/09/20/nighttimeeconomy/
・JR 時刻表
https://www.jreast-timetable.jp/