もし,今皆さんがいる場所が急に日差しが強くなり,水分がど んどん蒸発して,砂漠のような乾燥状態に半日でなってしまう としたらどうするであろうか.私なら即座に水の豊富な場所に 逃げるだろう.水はわれわれの生体中でさまざまな生体反応 を行う場所として重要であり,水の消失はすなわちわれわれの 死を連想させる.生物種によってもばらつきがあるが,少なく とも体重の6割以上は水が含まれ,半分を失うと生存が危うく なる.すなわち乾燥とは,われわれの最も身近にある極限環 境といえよう.しかしながらこのような状況下でも乾燥から逃 避しない生物が存在する.「カラカラに干からびても水戻しす れば蘇る」という乾燥無代謝休眠(アンヒドロビオシス)の能 力を発揮できる生物が,それである.カラカラに干からびた状 態では,水分がないので当然代謝はできないはずである.し かしながら水をかけると蘇生するので,死んでいるわけではな い.果たして彼らはどのようにして「生きてもいないし死んで もいない状態」を作り出しているのであろうか.本稿では,乾 燥無代謝休眠の能力をもつ最大の動物,ネムリユスリカを題 材に乾燥無代謝休眠のしくみについて最新の研究も紹介しな がらこれまでにわれわれが明らかにしてきたことを概説する.
ネムリユスリカの乾燥無代謝休眠
ネムリユスリカは,ナイジェリアなどのアフリカの半 乾燥地帯に生息している昆虫である.夏に日本でよく見 られるユスリカの幼虫(赤虫)が水中で生活するよう に,ネムリユスリカの幼虫も岩場のくぼみなどにできた 水たまりで水中生活している(1).半乾燥地帯では,雨季 と乾季がはっきり分かれており,乾季は何カ月もの間一 滴も雨が降らない.そのような状態では,たちまち水分 は蒸発し,カラカラに乾いた灼熱の状態が続く.ネムリ ユスリカの幼虫は,この水分蒸発に伴う体内のイオン濃 度変化という化学的な刺激を受容し,乾燥無代謝休眠の 状態に変化する(2)(図1).乾燥に伴いほかの生物が次々 と命を落としていくなか,ネムリユスリカはカラカラの 状態で雨季を待ち,再び水が張ると1時間程度で何事も なかったかのように蘇生する.彼らはこの乾燥と蘇生を 何度も繰り返すことができ,日常的に起こる突然の日照 りによる水環境の消失にも対応することができる.ま た,この乾燥無代謝休眠状態の幼虫は,水分の供給がな ければ半永久的に眠り続けることが可能で(論文記載上 の最長記録は17年間),90 Cの高温から270 Cの極低
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【解説】
Molecular Mechanisms Underpinning Anhydrobiosis in the Sleeping Chironomid: What Do We Know So Far?
Yoichiro SOGAME, Takahiro KIKAWADA, *1 農業資源生物研究 所,*2 東京大学大学院新領域創成科学研究科
ネムリユスリカの極限的な乾燥耐性のしくみ
なぜ干からびても死なないのか
十亀陽一郎 * 1 ,黄川田隆洋 * 1 , 2
温,アセトンのような有機溶剤,真空,7 kGyもの放射 線など乾燥以外のストレスに対しても驚異的な耐性を備 えており(3),宇宙空間に2年半もの間置いても地球に戻 り水をかければ蘇生する(4).ただし,ここでいう「耐 性」とは,それらの環境ストレスに乾燥状態で暴露させ た後,再水和させれば蘇生したということであり,通常 の状態で耐性を示すということではない.この点におい て,極限環境で生活している超高熱菌などとは区別され る.また,ネムリユスリカの幼虫が乾燥無代謝休眠能力 を有する乾燥状態になるためには,2日程度かけてゆっ くり乾燥させることが必要であり,急速な乾燥には対応 できない.さらにネムリユスリカの乾燥無代謝休眠の特 徴として,この驚異的な能力は幼虫期にしか見られない ことが挙げられる.おそらくこれは,幼虫の期間に比べ 卵や蛹,成虫の期間が非常に短いことに起因するのであ ろう.例えば,成虫に至っては生殖を行うのみで,口器 がないため何も口にすることなく1〜2日程度で死んで しまう(図1).
ところで,休眠を行う多くの生物は,日長や気温の変 化などを脳で感知し,ホルモンを通じて冬の到来を各組 織に伝達しているが,ネムリユスリカの幼虫も同様に乾 燥の到来を感知し,神経系で休眠を調節しているのであ ろうか.このことを確かめるため,脳を含む頭部と胸部 の間を糸で縛り断頭した幼虫を乾燥処理した後に蘇生さ せる実験を行ったところ,脳がなくてもカラカラに乾燥 した状態から蘇生した(5).さらに幼虫体からわれわれの
肝臓に相当する組織である脂肪体を取り出し,培地上で ゆっくり乾燥させ,デシケーターで3カ月以上保存して 再度培地に戻したところ蘇生した(6).興味深いことにネ ムリユスリカの乾燥無代謝休眠は神経系とは無関係であ り,単細胞生物の無代謝休眠と同じように細胞レベルで 調節されているようである.
乾燥無代謝休眠とトレハロース
水分が消失し,生体からの脱水が進行してくると,細 胞内では過度な浸透圧変化やイオンの高濃度化が起こり 生命は危機的状況に陥る.さらに,タンパク質などの生 体の構成成分の表面に水素結合していた水が失われ,変 成すなわち不可逆的な凝集が起こり完全に生理活性が消 失する.はたしてネムリユスリカの幼虫はどのようにし てこの危機的状況を回避しているのであろうか.その鍵 を握る重要な因子の一つがトレハロースである.
トレハロースは糖の一種で,化学的に非常に安定で,
生体成分の表面に結合していた水と容易に置換し,水の 代わりに生体成分と水素結合を形成(水置換説)する.
同時に,水分が消失しアモルファス状態に変化したトレ ハロースは,そのなかの分子運動を極限まで遅くするこ とで,生体成分を物理的に安定化(ガラス化説)させ る.これらの機能により,トレハロースは生体成分の保 護機能を担っている(3).ネムリユスリカでは,乾燥時に はこのトレハロースを幼虫体内にほぼ均一に乾燥重量の 20%程度まで蓄積する(5).その結果,幼虫そのものがガ ラスのように変化する(7).蓄積されたトレハロースは細 胞膜のリン脂質の極性基に水素結合することで,細胞膜 の健常性を保持する(7).ネムリユスリカは乾燥に先駆け トレハロースを合成し,失われていく水と置換させた状 態でガラス化させることにより生体成分を保護している と考えられる.これを裏づけするように急速に乾燥させ たネムリユスリカは十分量のトレハロースを蓄積してお らず,再水和させても蘇生しない(7).
トレハロースはネムリユスリカ以外の生物でも乾燥ス トレス応答時に蓄積されることがわかっている.たとえ ば,近年乾燥耐性を示すことが報告された も ネムリユスリカと同様にトレハロースの合成が乾燥耐性 を獲得するために必要である(8).一方,極限環境耐性生 物でありながらトレハロースを蓄積しない生物も知られ ている.極限耐性生物として著名なクマムシがその一例 で,最大でも3%程度の蓄積しか行わないが,1〜数時 間程度の急速な乾燥にも耐性を示す(9).ヒルガタワムシ にいたっては,トレハロース合成酵素がゲノム上に存在 図1■ネムリユスリカのアンヒドロビオシスと生活環(文献3
より改変)
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しないため,トレハロースを全く蓄積できない(10). ネムリユスリカの場合,乾燥によってトレハロース合 成系が活性化し,脂肪体細胞内に大量に存在するグリ コーゲンの加リン酸分解を初発とする一連の反応により トレハロースが合成される(11).この合成系はセキツイ 動物を除く多くの真核生物に普遍的に存在するが,この 系が乾燥ストレスに応答する性質は,乾燥無代謝休眠を 行う生物特有である.乾燥過程で合成されたトレハロー スは,最終的に幼虫体全体に均一に存在している(7).し たがって,脂肪体から体液中にトレハロースを分泌する ためのしくみが必要である.その役割を担っているのが ト レ ハ ロ ー ス ト ラ ン ス ポ ー タ ー(PvTRET1) で あ る(12).PvTRET1は,脂肪体で特異的に発現しており,
カイコなどほかの昆虫に存在するトレハローストランス ポーターに比べ高濃度のトレハロースであっても輸送速 度が頭打ちになることがないことから,効率よく体内に トレハロースを行き渡らせることを実現させている.こ のことから,PvTRET1は乾燥無代謝休眠に大きく貢献 するトレハローストランスポーターといえる.
乾燥無代謝休眠とLEAタンパク質
植物は自ら移動することができないため,動物に比べ 環境変化に対するさまざまな耐性をもつ.特に種子では それが顕著で,大賀ハスのように遺跡から種子が発掘さ れ,2000年にも及ぶ時を超えて発芽したという例もあ る.このように植物の種子は乾燥環境などの不適切な環 境下で発芽しないように長期間の休眠状態を維持する能 力を有している.種子が休眠に入り水分が消失していく 後期胚発生時期に大量に合成されるタンパク質として LEAタンパク質(late embryogenesis abundant protein)
は1980年代に発見され,種子の乾燥耐性にかかわる因 子として研究されてきた(13).近年になり,このLEAタン パク質が植物だけでなく,同じように高い乾燥耐性を必 要とする動物にも存在することが明らかになった.2006 年に,動物としては2例目としてネムリユスリカからも LEAタンパク質が同定された(14).LEAタンパク質は天 然変性タンパク質であるため水和状態でランダム構造を とるが,乾燥状態になると可逆的に
α
-helical coiled-coil 構造に変化する特徴をもつ.また,高い親水性を示し,ほかのタンパク質同士の間に入り凝集を妨げる分子シー ルドとしての活性をもつ(13)(分子シールド効果,図2). ネムリユスリカにおいても,乾燥により誘発されるタン パク質の凝集を分子シールド効果によって防いでいると 考えられている(15).後で述べるが,LEAタンパク質もネ ムリユスリカの乾燥過程において特異的な発現の増加を 示すタンパク質である.このことからもネムリユスリカ の乾燥耐性においてLEAタンパク質も大きな役割を果た す因子であると推測することができる.
ネムリユスリカの乾燥無代謝休眠に関与する遺伝子群 これまでにトレハロースとLEAタンパク質がネムリ ユスリカの乾燥耐性獲得機構に重要であることを述べて きた.しかしながら,この2つの因子のみでは乾燥耐性 を発揮することは不可能である.これを裏付けするよう に,トレハロースとLEAタンパク質を導入したヒト肝 臓がん培養細胞は,ネムリユスリカの幼虫と同等の乾燥 耐性を発揮しなかった(16).この事実は,ネムリユスリ カの乾燥耐性獲得にはさらなる因子が存在していること を示唆している.
それらの因子を探索するため,異なる乾燥過程の幼虫 に発現する遺伝子を比較し乾燥特異的に発現誘導される 遺伝子群の解析を行った.乾燥処理していない幼虫,乾 燥処理後12時間,36時間の幼虫から遺伝子転写産物を 抽出してcDNAライブラリーを作成し,塩基配列を決 定後それぞれの乾燥時期で発現している遺伝子のEST データーベースを構築した.これをもとにそれぞれの乾 燥時期で特異的に発現する遺伝子の種類と量を比較解析 した(17).その結果,トレハロースの合成経路の律速段 階を占める2つの酵素(トレハロース-6-リン酸合成酵素 とトレハロースホスファターゼ)やPvTRET1などの乾 燥過程のトレハロース蓄積に必要な遺伝子,ストレスタ ンパク質のLEAタンパク質やヒートショックタンパク 質,抗酸化因子としてタンパク質や脂質の酸化を抑制す るチオレドキシンやグルタチオンに関連した酵素,さら 図2■LEAタンパク質の分子シールド効果
LEAタンパク質は生体膜やタンパク質などの生体高分子と結合 し,生体高分子同士の接触を防ぐことで,乾燥に伴う不可逆的な 凝集を阻止する.
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に乾燥ストレスにより細胞内に生じ脂質やタンパク質の 変性やDNAの損傷をきたす活性酸素を直接的に除外す るカタラーゼやスーパーオキシドジムターゼなどの発現 が乾燥依存的に誘導されることが明らかになった.この ようにネムリユスリカの乾燥耐性獲得のプロセスは,少 なくとも転写レベルでの多くの遺伝子の活性化を伴って いる.一方,クマムシの場合,乾燥前後の生体を用い,
トランスクリプトーム解析により発現遺伝子の比較解析 を行った結果,乾燥前後のクマムシ間において顕著な遺 伝子の発現変動は認められなかった(9).おそらく乾燥無 代謝休眠のメカニズムはいくつか存在するのであろう.
ネムリユスリカとクマムシの比較によりいえることは,
ネムリユスリカは乾燥無代謝休眠のために転写を伴う遺 伝子の発現調節が必要であるが,クマムシの場合は乾燥 課程で遺伝子の発現調節を行わないため,通常の活動状 態から乾燥に耐えられるようなしくみになっているとい うことである.これはネムリユスリカが乾燥無代謝休眠 を行うためにはある程度時間をかけて乾燥誘導される必 要があるが,クマムシは乾燥状態への移行時間が非常に 短くても良い事実とも矛盾しない.おそらくクマムシ は,ネムリユスリカの生息地よりもより頻繁に乾燥と給 水が繰り返されるコケの上という生活環境に順応したの であろう.
ゲノム解析
ネムリユスリカの乾燥無代謝休眠の過程においては,
多数の遺伝子が乾燥により発現誘導されることがEST データベースを用いた比較解析により明らかになった.
この事実を踏まえ,乾燥耐性を有する生物特有の遺伝子 やそれらの遺伝子が構築するゲノムの特徴を明らかにす るため,ネムリユスリカの全ゲノム配列を解読し,同属 の乾燥耐性能をもたないが非常に遺伝背景の近いユスリ
カ:ヤモンユスリカ( )との比較
ゲノム解析を行った(18).その結果,ネムリユスリカの ゲノムには,乾燥耐性獲得にかかわると思われる特徴的 な領域が見つかった.その領域には,LEAタンパク質 やシャペロンなど,乾燥ストレスから生体物質を保護す る役割をもつ遺伝子のパラログが連続して存在する多重 化領域が存在しており,筆者らはこれらの多重化領域を ARId(anhydrobiosis related gene island) と 命 名 し た.このARIdは,ネムリユスリカゲノム上に9カ所存 在しているが,ヤモンユスリカゲノム上にはない.たと えば,老化したタンパク質の機能回復に寄与する異性化 タンパク質修復酵素であるPIMT(Protein L-isoaspartyl methyltransferase)遺伝子は,ARIdを形成している遺 伝子のうちの一つであり,ネムリユスリカのARId中に は13コピーもパラログが存在するが,ヤモンユスリカ には1コピーしか存在しなかった.前述したLEAタン パク質遺伝子のARIdには27個のパラログが存在してい た.しかしながら,LEAタンパク質はネムリユスリカ 以外の昆虫では発見されていない.その一方,土壌に含 まれる硫黄細菌の一種 に存在するタン パク質は,ネムリユスリカのLEAタンパク質に似た配 列をもっていた.このことから,ネムリユスリカの LEAタンパク質遺伝子は,生息地の土壌細菌から水平 伝播によってネムリユスリカゲノムに取り込まれ,遺伝 子重複によって多重化したと考えられる.さらに,ネム リユスリカとヤモンユスリカでは,乾燥に対する遺伝子 応答に大きな違いがある.たとえば,乾燥過程で効率良 い脱水を実現させる水チャネル(アクアポリン)は,ネ ムリユスリカでは発現上昇するのに対し,ヤモンユスリ カは発現が変化しない.トレハロース合成系の酵素群も 同様である.すなわち,ネムリユスリカは,特殊な乾燥 応答遺伝子発現調節機構をもっていることを示してい る.以上のことから,おそらくネムリユスリカは,進化 の過程で乾燥耐性関連遺伝子を多重化させ,独自の乾燥 応答性の遺伝子発現機構を構築させることにより,乾燥 耐性を獲得したのであろう(図3参照).
ネムリユスリカ培養細胞の樹立
これまでに本稿では,図4に示すようにネムリユスリ カの幼虫体における乾燥無代謝休眠には,トレハロース やLEAタンパク質,乾燥誘導性遺伝子など,さまざま な因子がかかわることを述べてきた.しかしながら,本 種の場合,生物体を用いた遺伝子導入やRNAiなどの実 験系が確立できないため,多くの遺伝子群については遺 伝子の同定はできてもそれらの生体における機能の解析 図3■ARIdの形成とネムリユスリカのアンヒドロシオシス能
獲得の進化(文献18より改変)
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は不十分なままである.一方,幸運なことにネムリユス リカの乾燥無代謝休眠の場合,先に述べたように神経系 は関与しておらず,幼虫体を解剖して得られた組織は幼 虫体と同様に乾燥処理しても再水和させれば蘇生する.
これらの事実は,ネムリユスリカにおいては細胞レベル で通常の状態から乾燥無代謝休眠の状態に移行する能力 を備えているということを示している.すなわち,ネム リユスリカの培養細胞を樹立できれば,乾燥無代謝休眠 の分子機構を細胞レベルで解析することができる.そこ でわれわれは,ネムリユスリカの胚子から初代培養を行 うことにより培養細胞系を確立することを試みた.その 結果,われわれはネムリユスリカ培養細胞Pv11の樹立 に成功し(19)(図5),この細胞を乾燥処理しても再水和 させれば蘇生と増殖するということを証明できつつあ る.さらにこの細胞が蛍光タンパク質や酵素などの一般 的なタンパク質を発現させることが可能であるならば,
単なる乾燥無代謝休眠という現象解明のマテリアルとし てだけでなく,細胞,組織,生体などの乾燥常温保存技
術の開発など,さまざまな面で産業利用できることが期 待される.
おわりに
本稿では,ネムリユスリカの乾燥無代謝休眠について われわれが知る限りを紹介したが,ネムリユスリカが見 せる「カラカラに干からびた生物が単なる物質のような 状態から息を吹き返すしくみ」は,新しい知見が得られ るたびにさらなる不思議と興味が増す一方で,まだまだ 未解明の謎が多いことも痛感させられる.これらの謎の 解明は,科学の常識を覆すような未知への遭遇や組織や 細胞の乾燥常温保存といった大きな可能性をはらんでい る.そのうちスーパーで買った乾燥煮干しを水槽のなか に入れると動き出すという,現在ではありえないたとえ 話がわれわれの一般的認識になる未来がくるかもしれな い.
文献
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7) M. Sakurai, T. Furuki, K. Akao, D. Tanaka, Y. Nakahara, 図4■アンヒドロビオシス誘導に至るまでのネムリユスリカ体内で生じる主要イベント(文献3より改変)
(A)乾燥に伴って生じるROSの発生が引き金となり,アンヒドロビオシスに関連した遺伝子の発現が誘導される.(B)脱水が進行すると タンパク質や生体膜の凝集変性が起こるはずだが,LEAタンパク質やHSPがその凝集を阻害する.同時に,劣化したタンパク質をPIMT が修復する.脂肪体で大量に合成されるトレハロースは体内に拡散していく.抗酸化剤であるチオレドキシンの存在によりROSの蓄積は 抑制される.(C)ほとんどの自由水が体外に排出されると,トレハロースとLEAタンパク質はガラス化して,生体成分を物理的に保護す る.低分子量HSPもガラス化と抗凝集に貢献することで,最終的に完全に代謝を停止させて,アンヒドロビオシスの状態になる.
図5■乾燥耐性能を有する唯一の多細胞生物由来樹立培養細胞 Pv11(文献19より改変)
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プロフィール
十亀 陽一郎(Yoichiro SOGAME)
<略歴>2014年高知大学大学院博士課程 修了 博士(理学)/2013年から日本学術 振興会特別研究員<研究テーマと抱負>単 細胞生物,多細胞生物における無代謝休眠 の分子機構解明<趣味>フグ飼育
黄川田 隆洋(Takahiro KIKAWADA)
<略歴>1994年岩手大学大学院農業学研 究科修士課程修了/2009年東京工業大学 博士(工学)<研究テーマと抱負>乾燥耐性 生物学,世界中のあらゆる生物を乾燥した まま保存できる技術を作り出したい<趣 味>スポーツ観戦(サッカー,F1など), マンガ
Copyright © 2016 公益社団法人日本農芸化学会 DOI: 10.1271/kagakutoseibutsu.54.248
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