災害時におけるペット共棲住環境の QOL 改善を目的とした建築技術・システムに関する基礎的検討 ペット共棲,仮設住宅,東日本大震災,首都直下型地震 田島三嘉*1 ,田村雅紀*2 ,金巻とも子*3 ,内田友賀*4
1.はじめに
日本では犬 1,232 万頭,猫 1,002 万頭,計 2,234 万 頭(2009 年現在)がペットとして飼われている¹⁾。こ の数字は 15 歳未満の子供の 1,714 万人(2009 年現在)
を大きく上回っている。そして 2011 年 3 月 11 日に東 日本大震災が発生し,被害 が大きかった東北3県(犬 ) だけでも 33 万頭が飼われていたが未だに被害状況の 把握がされていない。さらに震災発生後,住宅に残さ れたペットの保護が問題になっている。特に福島第一 原子力発電所周辺ではペットが被ばくしている可能性 があるため簡単に保護して被災地の外へ連れ出すこと は困難であった。そして大きな問題とされているのは 仮設住宅でのペットの同伴入居である。避難指示が出 ている地域において「ペットを残して非難できない」
という理由から,飼い主が自宅に残ったり,毎日避難 所から立ち入り禁止区域の住宅に餌を与えに戻った。
また,ペットと非難できたものの避難所では飼育が困 難で泣く泣く ペットを手放 すという苦渋 の選択もでた。
仮設住宅では動物が苦手な人やアレルギーなどで一緒 に生活できな い人との距離 が密接環境下 で狭まるため, 共棲に困難な状況が起こり,問題とされている。本研 究では図1の流れに従い,災害時においてのペット共 生環境の QOL 改善を目的し研究を行う。
2.研究概要
図1および表1に実験概要を示す。研究1では建築 学会関東支部税量施工専門研究委員会・ユニバーサル デザイン建材 WG における調査研究,ペット共棲住環境 関連文献調査,研究2では福島県の仮設住宅実態調査,
研究3では東日本大震災と首都直下型地震発生時の人 口,世帯,ペット数,ペット共棲仮設住宅設置数の予 算推計を行った。
ペット共棲住環境実態調査(研究1) 災害時のペットと人との共棲住環境の問題の抽出
ペ ッ ト 共 棲 住 環 境 の 分 類 ペット共棲住環境文献調査(研究1)
福島県ペット共棲仮設住宅実態調査(研究2)
ペット被害量のシミュレーション(研究3) ペット被害量の推計
位置付,パターン化
QOL 改善を目的とした建築技術・システムに関する基礎的検討 図 1 研究概要図
表1 研究の概要(研究1,研究2,研究3)
研 究 内 容 研 究 方 法 内 容 及 び 詳 細
① 文 献 調 査
一 般 社 団 法 人 ペ ッ ト フ ー ド 協 会 , 緊 急 災 害 時 動 物 救 護 本 部 財 団 法 人 日 本 動 物 愛 護 協 会 , 朝 日 新 聞 ペ ッ ト 共 棲 環 境 関 連 記 事 工 学 院 大 学 松 本 光 2010 年 卒 業 論 文 他
研 究 1 ペ ッ ト 共 棲 住 環 境
ヒ ア リ ン グ 調 査
② 実 態 調 査 日 本 建 築 学 会 関 東 支 部 材 料 施 工 専 門 研 究 委 員 会 ・ ユ ニ バ ー サ ル デ ザ イ ン 建 材 WG に お け る 調 査 研 究 専 門 家 へ の ヒ ア リ ン グ 調 査
研 究 2
仮 設 住 宅 実 態 調 査 ① 実 態 調 査 福 島 県 緊 急 時 避 難 準 備 区 域 な
ら び に そ の 周 辺 自 治 体 に よ り ペ ッ ト 共 棲 が 認 め ら れ た 3 か 所 の 仮 設 住 宅 の 調 査 福 島 県 東 日 本 大 震 災
研 究 3
シ ミ ュ レ ー シ ョ ン ① 推 計
東 京 都 首 都 直 下 型 地 震 人 口 , 世 帯 , ペ ッ ト 数 , ペ ッ ト 共 棲 仮 設 住 宅 設 置 予 算 他
表2ペット共棲住環境ヒアリング調査(研究1)
項 目 平 常 時 災 害 時
① 文 献 調 査 ¹⁾
・ 歴 史 的 に 犬 は , は っ き り し た 主 従 関 係 を 好 む , 家 族 の 一 員 と し て 扱 わ れ た
・ 日 本 で は 動 物 を 管 理 す る こ と に 慣 れ て い な い , 過 度 の 擬 人 化 を 起 こ し や す い
・ 犬 が 生 き て い く た め に は , 臭 い や 音 に よ る 情 報 収 集 が 重 要
・ ペ ッ ト 室 内 飼 育 の 場 合 ペ ッ ト の 臭 い , 音 , 抜 け 毛 が 課 題
・ 2011 年 4 月 22 日 , 福 島 第 一 原 発 発 電 所 の 警 戒 区 域 の 住 民 は 強 制 的 に 退 去
・ ペ ッ ト が 被 ば く し て い る 可 能 性 が あ る た め 警 戒 区 域 内 に 残 さ れ た
・ 人 が 定 期 的 に 警 戒 区 域 に 入 っ て 餌 を 与 え る が ペ ッ ト は 野 生 化 , 死 亡
・ 仮 設 住 宅 で は ペ ッ ト 飼 育 が 不 可 の 仮 設 住 宅 が 多 い
・ ペ ッ ト 同 伴 可 能 で あ る 場 合 で も 臭 い や 音 , 狭 さ , ス ト レ ス が 問 題
・ 犬 は 適 応 性 が あ る が , 飼 い 主 の ス ト レ ス を 犬 が 感 じ と る
・ 保 護 さ れ た 犬 は ペ ッ ト シ ェ ル タ ー に 一 時 保 管 , 飼 い 主 が 現 れ な い , 現 れ て も 飼 育 で き な い と い う 理 由 で 殺 処 分 さ れ る 場 合 が あ る 。
② ユ ニ バ ー サ ル 建 材 WG²⁾
・ 人 と 同 等 に 扱 う = 家 族 (子 供 )と 同 等 と す る 人 の 心 理 状 況 が あ る 。
⇔ 飼 い 主 が 管 理 , 保 護 義 務 の 放 棄 , 虐 待
・ 歴 史 的 に 犬 は 特 定 の 飼 い 主 が い ず , 放 し 飼 い に さ れ て い て , 日 本 人 は 動 物 を 管 理 す る こ と に 慣 れ て い な い
・「 ペ ッ ト 建 材 」や「 ペ ッ ト 共 生 住 宅 」と い う 考 え は 日 本 特 有 の も の
③ 専 門 家 へ の ヒ ア リ ン グ 調 査
・ 犬 は 20 頭 ほ ど で 群 れ を 作 っ て 生 活
・ 猫 は 弱 っ た 動 物 を 食 べ て 生 き 延 び る
・ 犬 よ り 猫 の 方 が 長 く 生 き な が ら え る 可 能 性 が 高 い
・ 動 物 殺 処 分 所 は 一 時 閉 鎖
・ 人 材 派 遣 ・ 物 資 提 供 ・ 資 金 供 与
・ 「 災 害 時 の 愛 玩 動 物 同 伴 可 能 の 避 難 所 の 確 保 と 増 加 及 び , 愛 玩 動 物 入 居 可 能 の 仮 設 住 宅 の 確 保 と 増 加 と 建 設 」 に 関 す る 環 境 省 宛 の 署 名 活 動
総合研究所・都市減災研究センター(UDM)研究報告書(平成23年度)
小課題番号
3.1-15
*
1
工 学 院 大 学 建 築 系 学 科 ・ 学 部 生 *2
工 学 院 大 学 建 築 学 部 ・ 准 教 授*
3
金 巻 ・ こ く ぼ 空 間 工 房 *4
一 般 社 団 法 人 ナ チ ュ ラ ル ド ッ グ ス タ イ ル2.1 ペット共棲住環境ヒアリング調査(研究1)
(1)平常時と災害時の違いについて
表2にペット共棲住環境ヒアリング調査の一部を示 す。平常時では日本人はペットへの擬人化を起こし,
ペットを家族の一員として扱う。避難所や仮設住宅で の他家族との生活が近接するため,非飼育家族にスト レスを与える可能性が高い。
(2)ペット共棲環境の分類
研究1のヒアリング調査から平常時と災害時の 仮設住宅の枠組を共棲>同伴>入居>非共生を前 提とし図2のように示すことができた。さらにペッ ト共棲環境に関する分類を様々な条件からパター ン化しペット共棲可能型,ペット入居可能型,ペ ッ ト同伴可能型,ペット同伴独立型,ペット非共生 型 に分類した。ペット共棲環境に関する分類を図3に 示す。
2.2 福島県ペット共棲仮設住宅実態調査(研究2) 表3にペット共棲仮設住宅(福島県)の実態調査 箇所を示す。東日本大震災における応急仮設住宅に おけるペットと共棲が可能な仮設住宅の分類と建 物特性の把握を目的とし,福島県内における福島第 一原子力発電所を起点とした警戒区域外であり,緊 急時避難準備区域ならびにその周辺において,自治 体によりペット共棲が認められた 3 か所の仮設住
平常時 災害時
定住促進住宅:空き家を市が借り受け、公的住宅として提供
仮設住宅:震災後政府によって賃与(2年以内)
避難所:行政指定の一時的避難場所(例:学校の体育館)
復興住宅:戸建・集合賃貸住宅 平常
平常
平常
平常 災害
災害
図2 平常時と災害時の仮設住宅の枠組
NO 殺処分
ペットの共棲環境に関する分類
通常時
同伴独立型 同伴可能型 入居可能型 共棲可能型 譲渡 or
一時預かり
シェルター 災害時
屋外飼育可能 共棲可能
同伴可能
入居可能
保健所 非共棲
自治体管理
里親
YES YES
YES
YES NO
YES YES
NO NO NO
NO
※飼い主が 見つからない場合
パターン1
パターン2 パターン3 パターン4 パターン5
図3 ペット共棲住環境に関する分類(平常時・災害時)
宅の調査を行った。なお田 村郡熊耳応急仮設住宅に 設 置 さ れ た ペ ッ ト 専 用 仮 設 ハ ウ ス の 実 態 調 査 も 行 った。調査の結果,研究1の仮設住宅の分類の想 定 の よ う に 仮 設 住 宅 を 5 つ の パ タ ー ン に 分 類 が 出 来 た。さらに仮設住宅の実態調査の際,使用材料な ら び に 施 工 方 法 を ヒ ア リ ン グ お よ び 観 察 よ り 整 理 し , 施工数量あたりの材料費,施工費ならびに施工負荷 の因子を調査した。これらの結果より,ペット共 棲 住 環 境 ご と に 費 用 面 の イ ン ベ ン ト リ が 大 き く 相 違 し,実際の費 用も特徴を有している。施 工費,環境 負 荷 量 に 関 し て も そ の 影 響 が 大 き く 反 映 さ れ る と 考えられることから,今後 は自治体の基本的な仮設 住宅の施工・維持保全方針の考え方の整理が重要に なる。仮設住宅のタイポロジーを表4に示す。パ タ ー ン 分 け か ら 平 常 時 と 災 害 時 の 位 置 付 け を 図 4 に 示す。平常時における「ペット配慮」, 「ペット対応」,
「ペット至上」の位置づけから,災害時は平常時 と 比 較 し て , X : 建 材 に よ る 「 も の 」 の 付 与 程 度 (性 能 ・ 機 能 )と Y : ペ ッ ト 共 棲 の 習 熟 度 (こ と )に 対 し て制約が生じるといえる。従って,制約条件下に お ける「もの・こと」の自由度を分析することで,ペ ッ ト 共 棲 住 環 境 の 機 能 的 価 値 を グ レ ー デ ィ ン グ (S,
A,B,C)が可 能になり,平 常時と災害時の住環境状 態を概念的に体系化できる。
図4 ペット共棲住宅の位置付 表3 ペット共棲仮設住宅(福島県)の実態調査箇所
名 称 住 所
新 地 町 新 林 応 急 仮 設 住 宅 相 馬 郡 新 地 町 駒 ヶ 嶺 新 林 115-1 南 相 馬 市 千 倉 応 急 仮 設 住 宅 南 相 馬 市 鹿 島 区 鹿 島 北 千 倉 24-1
田 村 郡 熊 耳 応 急 仮 設 住 宅 田 村 郡 三 春 熊 耳 神 山 31-2
(福 島 県 ) 総 合 研 究 所 ・ 都 市 減 災 研 究 セ ン タ ー (
UDM) 研 究 報 告 書 ( 平 成 2 3 年 度 )
小 課 題 番 号
3.1-15
ペット対応型 ペット至上型
ものの付与程度
ペット配慮型
大 大
小 小
ペット共棲可能型 ペット同伴独立型
ペッ ト入居可能型
制約のあるものの付与程度
制約のある自由度の範囲 大
小 小
B A
C
ペットの習熟度 大
「施設型」
ペット至上
何もしない
S
ペッ ト同伴可能型 保健所・ シェルター
表4 ペット共棲仮設住宅のタイポロジー
分 類 概 要 主 な 資 材 ・ 施 工 方 法 予 算
田 村 郡 熊 耳 応 急 仮 設 住 宅 パ
タ ー ン 1
ペ ッ ト 共 棲 可 能 型
ペ ッ ト 居 住 状 態 : 屋 外 ・ 屋 内 観 察 : 同 一 町 内 住 民 が ま と ま り 仮 設 生 活 。顔 見 知 り の 関 係 よ り ,各 世 帯 そ れ ぞ れ が 自 由 に 飼 育 。 施 設 内 に 広 場 も あ り , 飼 い 主 と と も に 自 由 に ペ ッ ト が 休 息 ・ 共 棲 す る 様 子 が 確 認 。
1)設 置 例 :
・ 市 販 犬 小 屋
2)使 用 材 料 ( 1 戸 あ た り ):
・ 樹 脂 製 成 型 品
・ 木 製 成 型 品 3)施 工 方 法 :
・ 地 な ら し
・ 据 え 付 け
2)材 料 費 ( 1 戸 あ た り ):
・ 小 中 型 犬 用 樹 脂 品 : \10,000
・ 大 型 犬 用 樹 脂 品 : \20,000 3)施 工 費 :
・ 地 な ら し :
・ 据 え 付 け : 4)環 境 負 荷 :
・ 施 工 , 輸 送 時 に 排 出 さ れ る CO₂,NOx,SOx,PM な ど 南 相 馬 市 千 倉 応 急 仮 設 住 宅
パ タ ー ン 2
ペ ッ ト 入 居 可 能 型
ペ ッ ト 居 住 状 態 : 屋 内 が 中 心 観 察 : ペ ッ ト 飼 育 希 望 者 の み で 80 世 帯 300 人 が 生 活 。 す べ て の ペ ッ ト は 屋 内 で 入 居 飼 育 が 可 能 で あ り ,大 型 犬 は 玄 関 の 狭 い ス ペ ー ス で 飼 わ れ る こ と に な る 。
1)設 置 例 :
・ 仮 設 住 宅 内
2)使 用 材 料 ( 1 戸 あ た り ):
・ 不 要 3)施 工 方 法 :
・ 特 に な し
2)材 料 費 ( 1 戸 あ た り ):
・ 合 計 : ¥ 0 3)施 工 費 :
・ 合 計 : ¥ 0 4)環 境 負 荷 :
・ 特 に な し
新 地 町 新 林 応 急 仮 設 住 宅
パ タ ー ン 3
ペ ッ ト 同 伴 可 能 型
ペ ッ ト 居 住 状 態 : 屋 外 が 中 心 観 察 : ペ ッ ト 飼 育 者 と 非 飼 育 者 が 生 活 す る た め ,ペ ッ ト を 同 伴 で き る が ,原 則 , 中 大 型 犬 は 敷 地 内 の ペ ッ ト 専 用 ス ペ ー ス で 生 活 。小 型 犬 は 屋 内 飼 育 で き る が ,ス ト レ ス が 生 じ や す い 状 態 。
1)設 置 例 :
・ 仮 設 材 使 用 専 用 ゲ ー ジ 2)使 用 材 料 ( 1 戸 あ た り ):
・ 杉 平 板 角 材 (1900×110×15mm,
数 量 16 枚 )
・杉 丸 木 杭 (φ 60×900mm,数 量 5.5 本 )
3)施 工 方 法 :
・ 地 な ら し
・ 仮 構 組 立 , 木 ね じ 締 付
2)材 料 費 ( 1 戸 あ た り ):
・ 杉 平 板 角 材 : @850×16 枚 =
¥ 13,600
・ 杉 丸 木 杭 : @250×5.5 本 =
¥ 1,375
・ 合 計 : ¥ 14,975 3)施 工 費 :
・ 地 な ら し :
・ 仮 構 組 立 , 木 ね じ 締 付 : 4)環 境 負 荷 :
・ 特 に な し 田 村 郡 三 春 町 熊 耳 字 神 山 31-2
( ペ ッ ト 専 用 仮 設 ハ ウ ス )
パ タ ー ン 4
ペ ッ ト 同 伴 独 立 型
ペ ッ ト 居 住 状 態: ハ ウ ス 内 限 定 観 察 : ペ ッ ト 飼 育 が 屋 内 外 で 困 難 な 場 合 ,ペ ッ ト を 同 伴 ・ 隔 離 し 生 活 さ せ る こ と が 可 能 。断 熱 パ ネ ル ,室 内 空 調 ,電 気 配 線 , パ ネ ル 間 仕 切 な ど 閉 鎖 型 処 理 が な さ れ る 。不 要 時 に は ト ラ ッ ク 輸 送 で 容 易 に 退 避 が 可 能 。
1)設 置 例 :
・ 軽 量 鉄 骨 製 組 立 構 造 ハ ウ ス 2)使 用 材 料 ( 連 結 5 戸 あ た り )
・組 立 構 造 材:軽 量 形 銅 & 亜 鉛 曲 銅 板・屋 根・壁 パ ネ ル:両 面 亜 鉛 エ ン ポ ス 銅 板 ( 高 圧 ウ レ タ ン 注 入 パ ネ ル )・ 扉 : ア ル ミ サ ッ シ ュ フ ラ ッ シ ュ ド ア ・床:耐 水 合 板 15t 耐 水 シ ー ト 貼 り 溝 排 水 構 造( ド レ ー ン 付 )・窓:アルミサッシュガ ラス引 違 戸 3 刷 ガラス・ 換 気 扇 :ウエザ ーカバー付 き ・ 照 明 器 具 : 20w 蛍 光 灯 /5 ヶ 所
3)施 工 方 法 :
・ 地 な ら し , 据 え 付 け
2)材 料 費 ( 連 結 5 戸 あ た り ):
・日 本 製 作 の 場 合 /¥ 1,280,000
・ 海 外 製 作 の 場 合 /¥ 900,000 3)施 工 費 :
・ 4t ト ラ ッ ク 輸 送 費 : 4)環 境 負 荷 :
・施 工 費 は 製 造 工 場 に よ る 環 境 負 荷 と し て 算 定 さ れ ,輸 送 時 に 排 出 さ れ る CO
₂,NOx,SOx,PM な ど 5)そ の 他
・供 用 時 に は 電 力 消 費 お よ び 供 用 時 の 環 境 負 荷 が 生 ず る
・耐 久 性 に 優 れ ,施 設 外 で の 目 的 外 使 用 が 可 能 で あ る 福 島 県 内 自 治 体 施 設
(保 健 所 シ ェ ル タ ー ) パ
タ ー ン 5
ペ ッ ト 非 共 棲 型
ペ ッ ト 居 住 状 態 : 施 設 内 限 定 観 察 : 飼 い 主 の 依 頼 に よ り ペ ッ ト と の 共 棲 が で き な い 場 合 の ペ ッ ト 一 時 収 容 施 設 。所 定 期 間 内 に 飼 い 主 が 生 じ な い 場 合 は 殺 処 分 さ れ る 。
1)設 置 例 :
・ ペ ッ ト シ ェ ル タ ー 2)使 用 材 :
・ ス チ ー ル ( エ ポ キ シ 粉 体 塗 装 ) 塩 化 ビ ニ ル 樹 脂 ,ポ リ プ ロ ピ レ ン 3)施 工 方 法 :
・ 特 に な し
2)材 料 費 (1 戸 あ た り ):
・合 計:・小 中 型 犬 用 樹 脂 品 :
\5,000
・ 大 型 犬 用 樹 脂 品 : \10,000 3)施 工 費 :
・ 合 計 : \0 4)環 境 負 荷 :
輸 送 時 に 排 出 さ れ る CO₂,NOx,SOxPM な ど
2.3 ペット被害量のシミュレーション(研究3) 表5に東日本大地震における福島県データと首都直 下型地震を想定したデータによる東京都のペット被害 量の推計を示す。東日本大震災では人間と同様にペッ トも大きな被害を受けており,福島第一原発の 20 キロ 圏内の警戒区域から住民退避をさせる際,政府指示に よりペット被ばくの危険性を踏まえ,ペットは警戒区 域内に取り残された。なお,避難したペット数や死亡 したペット数などは確認が困難なため正確に把握され ていないことから,本研究では人間の被害数などから 一定の条件のもとペットの被害数,仮設住宅の必要戸 数等の算出を行い,首都直下型地震が発生した際のこ
とを想定し,同様に算出を行った。結果より,首都直 下地震発生の際,471,586 戸の仮設住宅が必要とされ,
一世帯当たり一匹のペット飼育を仮定すると 31,596 戸のペット共棲可能仮設住宅が必要となる。2011 年時 点,東京で用地確保されているのは 71,500 戸であり , この場合 44%の仮設住宅をペット共棲可能の条件を与 える必要がある。すべての犬を仮設住宅の敷地内に同 伴させ,パターン1の「ペット共棲可能型」で使用さ れる樹脂製の犬小屋(小型犬用)とケージを予め準備す ると,\694,831,140 となり,およそ 7 億円程度の材料 費が必要となる。当該試算の精度を高め,今後のペッ ト共棲環境の整備を推進する必要がある。
総 合 研 究 所 ・ 都 市 減 災 研 究 セ ン タ ー (
UDM) 研 究 報 告 書 ( 平 成 2 3 年 度 )
小 課 題 番 号3.1-15
表5 東日本大地震における福島県データと首都直下型地震を想定したデータによる東京都のペット被害量の推計
地 区 項 目 x: 人 y: 世 帯 z: ペ ッ ト パ ラ メ ー タ 設 定 条 件
A)全 国 平 常 時 人 口 127,772,000 49,063,000 6,880,844 Ax,Ay:総務省統計局統計表³⁾,Az:厚生労働省都道府県別犬の登録数⁴⁾
a)震 災 前 当 数 2,024,089 707,000 118,072 ax,ay:総務省統計局統計表³⁾,az:厚生労働省都道府県別犬の登録数⁴⁾ b)警 戒 区 域 内 数 78,000 27,000 5,800 bx,by:朝 日 新 聞 2011.6.8⁵
⁾
,bz:朝 日 新 聞 2011.5.11⁵⁾
c)死 亡 ,行 方 不 明 数 1,842 --- 106 cx:社 会 実 情 デ ー タ 図 録 ⁶⁾, cz = cx×①
d)仮 設 住 宅 数 45,837 15,806 2,687 dx =dy×③ , dy:朝 日 新 聞 2011.9(井 上 亮 他 )⁵
⁾
, dz = dy×② e)民 間 賃 貸 数 57,722 19,904 3,384 ex = ey×③ , ey:朝 日 新 聞 2011.9(井 上 亮 他 )⁵⁾
,ez = ey×② f)避 難 所 数 9,302 3,256 540 fx:朝 日 新 聞 2011.9(井 上 亮 他 )⁵⁾
,fy = fx×④ , fz = fx×① g)県 外 避 難 者 数 48,903 17,116 2,836 gx:朝 日 新 聞 2011.9(井 上 亮 他 )⁵⁾
, gy = gx×④ , gz = gx×① B)福 島h)震 災 後 当 数 1,999,740 --- 115,985 hx:J-CAST ニ ュ ー ス 2011.9.2, hz = hx×①
i)震 災 前 当 数 13,159,388 5,747,000 387,902 ix, iy: 総務省統計局統計表³⁾,iz:厚生労働省都道府県別犬の登録数⁴⁾
j)死 亡 数 11,000 --- 330 jx:地 震 調 査 研 究 推 進 本 部 ⁷⁾, 2011.8.12 発 表 , jz = jx×⑤ k)仮 設 住 宅 数 1,367,599 471,586 31,596 kx = ky×⑦ , ky:朝 日 新 聞 2011.10.31⁵
⁾
, kx = ky×⑥ , C)東 京l)震 災 後 当 数 13,001,475 --- 383,247 lx = is×⑧ , lz = iz ×⑧
( パ ラ メ ー タ 計 算 値 )
※ az/ax=0.058=① (A の 一 人 あ た り の ペ ッ ト 飼 育 頭 数 ) ※ az/ay=0.17=② ( A の 一 世 帯 当 た り の ペ ッ ト 飼 育 頭 数 )
※ ax/ay=2.9=③ (A の 一 世 帯 当 た り の 人 口 ) ※ ay/ax=0.35=④ (A の 一 人 当 た り の 世 帯 数 )
※ iz/ix=0.030=⑤ (C の 一 人 あ た り の ペ ッ ト 飼 育 頭 数 ) ※ iz/iy=0.067=⑥ (C 一 世 帯 当 た り の ペ ッ ト 飼 育 頭 数 )
※ ix/iy=2.3=⑦ (C の 一 世 帯 当 た り の 人 口 ) ※ hx/hx=0.988=⑧ (震 災 前 に 比 べ て の 震 災 後 の 割 合 )
( ア ン ケ ー ト の 概 要 ) 2011.12,関 東 近 郊 在 住 18~ 20 歳 、 105 名
B)仮 設 住 宅 数 ・ ペ ッ ト 数 の 推 計 結 果 例 (福 島 ) C)仮 設 住 宅 数 ・ ペ ッ ト 数 の 推 計 結 果 例 ( 東 京 )
犬 73%
猫 12%
その他 15%
a)ペ ッ ト の 種 類
9年 2%
10年
8% 11年
4%
12年 13%
13年 14%
14年 17%
15年 24%
16年 6%
17年 4%
18年 2%
19年 2%
20年 4%
b)ペ ッ ト の 寿 命
1~9万 17%
10万 25%
15万 20%
20万 11%
30万 10%
40万~50万 8%
それ以上 6%
いくらでも 3%
c)一年にどの程度費用を払えるか
幼少期 10%
幼稚園 11%
小学生 22%
中学生 18%
高校生 9%
20代 19%
40代/50代 4%
老後 7%
d)何歳の時にペットと過ごした いか
4.まとめ
本研究により以下の知見がみられた。
1) 研究1のペット共棲住環境に関する分類から 5 つ のパターンに分類することができ,実態調査結果もそ れに準じる結果となった。
2) 災害時は平常時と比較して,X:制 約のある自由度 の範囲Y:制 約のあるものの付与程度を分析すること ができた。
3)首都直下型地震発生時のペット被害想定数の推刑に より,およそ3万戸のペット共棲可能仮設住宅が必要 であるとわかった。さらにパターン1の「ペット共棲 可能型」で使用される設備をおよそ7億円程度の材料 費が必要となる。今後のペット共棲住環境の設備を推 進する必要性があると考察した。
参 考 文 献
1)磯 川 光 他 ペ ッ ト 共 棲 住 宅 QOL 改 善 を 目 的 と し た 内 装 建 材 性 状 の 評 価 , 日 本 建 築 仕 上 学 会 2011 年 学 術 講 義 学 会 研 究 発 表 論 文 集 pp.145-148, 2011.10
2)ペ ッ ト と 暮 ら す 居 住 空 間 へ の 新 た な 提 案 , 日 本 建 築 学 関 東 支 部 材 料 施 工 専 門 研 究 委 員 会 ,ユ ニ バ ー サ ル デ ザ イ ン WG 報 告 書 ,2011.9 3)総 務 省 統 計 局 統 計 表
4)厚 生 労 働 省 都 道 府 県 別 犬 の 登 録 (http://www.mhlw.go.jp/
参 照 2012.1.12)
5)朝 日 新 聞 , ペ ッ ト 共 棲 住 環 境 関 連 記 事 , 2011.9~ 10
6)社 会 実 情 デ ー タ 図 録 (http://www2.ttcn.ne.jp/参 照 2012.1.12) 7)地 震 調 査 研 究 推 進 本 部 文 部 科 学 省 (http://www.jishin.go.jp/
参 照 2012.1.12)
8)田 村 雅 紀 , 田 島 三 嘉 他 ペ ッ ト 共 棲 住 環 境 の QOL 改 善 を 目 的 と し た 建 築 技 術 ・ シ ス テ ム に 関 す る 基 礎 的 検 討 そ の 1 , そ の 2 社 会 貢 献 学 会 pp.81-92, 2011.12
謝辞 本研究は実施にあたり福島県仮設住宅在住,寺島和加子氏,日本 建築学会関東支部材料施工専門部会ユニバーサルデザイン建材 WG に助 力を得た,本研究は工学院大学 UDM・PJ 研究の一部による。
471,586
71,500
117,896
31,596 0 330
100,000 200,000 300,000 400,000 500,000
ky)仮設住宅必要戸数 現在の用地確保状態 仮設住宅の25% kz)ペット被災数 jz)ペット死亡数
仮 設 住 宅 戸 数
・ ペ ッ ト 数
15,806
3,851
2,687
106 0
5,000 10,000 15,000 20,000
dy)仮設住宅必要戸数 仮設住宅の25% dz)ペット被災数 cz)ペット死亡数
仮 設 住 宅 戸 数
・ ペ ッ ト 数
※ た だ し 仮 設 住 宅 に 制 限 な く ペ ッ ト が 入 居 で き た 場 合
※ た だ し 仮 設 住 宅 に 制 限 な く ペ ッ ト が 入 居 で き た 場 合
総 合 研 究 所 ・ 都 市 減 災 研 究 セ ン タ ー (UDM) 研 究 報 告 書 ( 平 成 2 3 年 度 ) 小 課 題 番 号
3.1-15