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マイクロバブルの農業・食品分野での利用の可能性 - J-Stage

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化学と生物 Vol. 50, No. 1, 2012 13

今日の話題

発現には大きな差異が観察されなかった.これに対し て,胚を低酸素から常酸素へ移行すると,IGF-I受容体 からMAPK経路へ流れるシグナが増加していた.同時 に,追いつき成長を示す胚では,常に常酸素状態で成育 している胚と同じ強度のシグナルがMAPK経路に流れ ても,より強く発育促進が起こる,言い換えれば,低酸 素から常酸素への移行により,胚発育におけるIGF-I受 容体‒MAPK経路の重要性が増すこともわかった(図1- 右).興味深いことに,この際,MAPK経路と異なり,

いずれの胚のPI3K経路にも同じ強度のIGFシグナルが 伝達されており,このシグナルは等しく発生速度の維持 に重要であった.酸素分圧の低い状態から常酸素条件に 移行する際に,具体的にどのような分子(群)を介した 機構で,MAPK経路特異的にIGFに対する応答性の増 強が起こり,追いつき成長が誘導されるのかは,今後の 課題である.

ここまで,IGFシステムを介した酸素分圧と胚成長速 度の連携機構について筆者らの知見を中心に紹介してき たが,酸素分圧の変化は,当然,他の機構を介して細胞 の代謝や応答に様々な影響を与えている.たとえば,低 酸素状態が長期間持続すると細胞のエネルギー状態は変 化し,細胞内の化学エネルギーの貯蔵分子であるATP やNADレベルの変動を介して,AMPキナーゼや脱ア セチル化酵素のSirtuinなどの量や活性が変動する.こ れらはヒストンなどのクロマチン関連分子の修飾をひき 起こすことも報告されていることから,酸素分圧の変化 は,細胞核内でクロマチンの構造も大きく変化させ,代 謝系酵素や成長因子の生理活性を仲介するタンパク質な どの遺伝子発現パターンに影響することは容易に予想で きる.また,低酸素から常酸素への移行による酸素分圧 の急激な上昇は活性酸素の産生を促進し,IGFを含む成 長因子の細胞内シグナル伝達や種々の代謝酵素活性を修 飾することも報告されている(5).このように,酸素分圧

の変化によってひき起こされる多くの細胞内変化は,ま だまだ明らかとなっていない分子機構で,IGFシステム のみならず広範な情報伝達系や遺伝子発現に影響を与え 代謝系を制御することによって,合目的的な胚発育の調 節が可能となると考えられる.

ヒトでは,低酸素や低栄養によりIUGRとなった胎児 が出生後追いつき成長を達成した際に,神経発達や代謝 系などに「目に見えにくい」生理機能の変化が起こり,

成人期・老齢期に生活習慣病発症のリスクが高まること が報告されている(6).このことは,酸素分圧の大きな変 化を経験するという履歴が,IGFシグナルの変化だけで なく,初期発生の過程以降にも影響するエピジェネ ティックな変化をもたらしている可能性を強く示してい る.ゼブラフィッシュをはじめ小型魚類の実験手技は現 在も進歩を続けており,これらの研究にも十分利用でき そうである.今後,この実験系と哺乳類の実験系を併用 しながら,酸素分圧をはじめ胚を取り巻く様々な後天的 な要因が,胚発育の『速度』だけでなく,将来の個体の 表現型を規定する胚の『質』を変化させる分子機構に 迫っていきたいと考えている.

  1)  S. Kajimura , K. Aida & C. Duan : , 102, 1240 (2005).

  2)  S.  Kajimura  ,  K.  Aida  &  C.  Duan : , 26,  1142 (2006).

  3)  M. D. Seferovic, R. Ali, H. Kamei, S. Liu, J. M. Khosravi,  S.  Nazarian,  V. K. M.  Han,  C.  Duan  &  M. B.  Gupta :  

150, 220 (2009).

  4)  H. Kamei, Y. Ding, S. Kajimura, M. Wells, P. Chiang & C. 

Duan : , 138, 777 (2011).

  5)  Y.  Li,  W.  Xu,  M. W.  McBurney  &  V. D.  Longo : , 8, 38 (2008).

  6)  P.  Saenger,  P.  Czernichow,  I.  Hughes  &  E. O. 

Reiter : , 28, 219 (2007).

(亀井宏泰

*

1, 2,梶村真吾

*

1Cunming Duan

*

1,高橋伸 一郎

*

2

*

1Department of Molecular, Cellular and Devel- opmental Biology, University of Michigan, 

*

2東京大学大 学院農学生命科学研究科)

マイクロバブルの農業・食品分野での利用の可能性

効率の良い殺菌や植物の生育促進に効果

工業分野で用いられてきたマイクロバブル (MB) が,

工業分野以外でも利用され始めている.MBとは,直径 が50

μ

m以下の微小な気泡のことであり,OHラジカル の発生,負の帯電特性などの様々な特殊な性質を有する

ことから,農業および食品分野においても,その利用が 注目されている.水槽などで日常見かける,エアーポン プなどの散気管を用いて発生させる気泡(ミリバブル 

(MM))の直径は2 〜 3 mmとMBよりも大きく,強い

(2)

化学と生物 Vol. 50, No. 1, 2012

14

今日の話題

浮力により瞬時に浮上するため水中への溶解濃度は低 い.一方,MBは水中をゆっくりと浮上していく間に縮 小し,気泡内の気体は完全に水中に溶解する.しかも,

MBは気体の溶解能力が非常にすぐれているため,短時 間に高効率で気体が水中に溶解する(1)

MBの発生方法は大きく2つのタイプ,すなわち加圧 溶解方式と二相流旋回方式に分けられる(図

1

.加圧 溶解方式は,一般的に3 〜4気圧の高圧で十分な量の気 体を水中に溶解させた後,その圧力を解放することで溶 解した気体の過飽和条件をつくり出す.これにより過剰 に溶解した気体は不安定な状態となり,過飽和の気体分 子は水から飛び出す.その結果,大量の気泡,すなわち MBを発生させる方法である.二相流旋回方式は,水流 を起こして渦を発生させ渦内に気体を巻き込み,この渦 を崩壊させたときに気泡をバラバラに細分化してMBを 発生させる方法である(2)

筆者らは,殺菌作用の高いオゾン (O3) をMB化し て,培養液中の植物病原菌を効率良く殺菌する方法を検 討し,土を使わず培養液のみで栽培する養液栽培で問題 となる根から侵入する萎凋病の原因菌の  f. 

sp.  や,軟 腐 病 の 原 因 と な る   subsp.  に対して,オゾンマイクロバブル 

(O3MB) はオゾンミリバブル (O3MM) よりも溶存オゾ ン濃度が低濃度でもきわめて高い殺菌効果を示すことを 明らかにした(3).さらに,加圧溶解方式で発生させた O3MBは,二相流旋回方式で発生させたO3MBよりも植 物病原菌に対して高い殺菌効果を有することも明らかに した(4).そこで,O3以外のガスをMBにした際にも殺 菌効果が得られるか否かを明らかにするために,O2お よびCO2をMB化して同様に殺菌効果を検討した.その

結果,O3MBは1.0 ppmの低濃度処理でも非常に高い殺 菌効果を発揮したが,飽和値である35.0 ppmのO2MB および1500.0 ppmのCO2MBでは殺菌効果は認められな かった(5).O3をMB化した場合,MBがO3の分解速度 を高め,OHラジカルの生成を促進する効果があると考 えられている(6, 7).OHラジカルは,細菌の細胞膜を破 壊することで殺菌効果を示す(8).したがって,植物病原 菌に対するO3MBのきわめて高い殺菌効果は,O3の酸 化力に加えてO3をMB化した際に多量に発生するOHラ ジカルによる相乗作用に基づくことが示唆された.

また,筆者らは,湛液型養液栽培における培養液への 空気供給にMBを用い,効率的な野菜生産のためのMB の適切な利用方法の確立を目的として,MBがホウレン ソウの生育に及ぼす影響を検討した.培養液へのMB処 理は,植物の生育が旺盛となり,根の呼吸量が増加し て,培養液中の溶存酸素量 (DO) が低下する生育中期 において,培養液中に浮遊するMBの培養液中への酸素 供給効果によりDOが高く維持され,MM区に比べてホ ウレンソウの生育は促進された.したがって,ホウレン ソウの湛液型養液栽培の空気供給法として,MBの利用 が有効であると判断された.

さらに筆者らは,O3MBを用いた青果物に残留した有 機リン系殺虫剤(フェニトロチオン)除去について検討 した.フェニトロチオンを十分に浸透させたレタス,ミ ニトマトおよびイチゴをO3MB水に浸漬し,フェニトロ チオン残留率を検討した結果,O3MBは青果物に残留し た農薬の除去効果を高めることが判明した.しかも,加 圧溶解方式で発生させたO3MBの青果物中の残留農薬除 去効果は,二相流旋回方式により発生させたO3MBより も高いこともわかった(9, 10).これは,前者の方式が後者 の方式よりも泡の径が小さく,より多くのMBが発生す ることに起因していることが示唆された(2)

近年,生産性向上や環境負荷低減への要求が高まるに 伴い,養液栽培における新しい作物生産技術の開発が急 がれており,MBの利用価値は大きい.MBは,農業・

食品分野において,従来技術よりも効率の良い技術であ り,ここに紹介した成果が,養液栽培におけるMBを利 用した新しい作物生産システムの一助になることが期待 される.

  1)  M.  Takahashi  : , 111,  1343 

(2007).

  2)  高橋正好:マテリアル インテグレーション,22,  2 

図1加圧溶解方式(左),二相流旋回方式(右)

(3)

化学と生物 Vol. 50, No. 1, 2012 15

今日の話題

(2009).

  3)  F. Kobayashi  : , 30, 1514 (2011).

  4)  F. Kobayashi  : , 

18, in press (2011).

  5)  F. Kobayashi  : , 

18, in press (2011).

  6)  L. B. Chu  : , 72, 205 (2008).

  7)  M.  Takahashi  : , 111,  11443 

(2007).

  8)  柘植秀樹ほか:化学工学論文集,35, 548 (2009).

  9)  H. Ikeura  : , 103, 345 (2011).

  10)  H. Ikeura  : , 186, 956 (2011).

(玉置雅彦,明治大学農学部)

Duan Cunming <略歴>現在,米国ミシ ガン大学Department of Molecular, Cellu- lar & Developmental Biology教授 板谷 光泰(Mitsuhiro Itaya) <略歴>

1976年東京大学理学部生物化学科卒業/

1983年同大学大学院理学系研究科博士課 程修了(理博)/1986年(株)三菱化学生命 科学研究所研究員,同主任研究員,研究主 幹を経て,2006年慶應義塾大学環境情報 学部・同大学先端生命科学研究所教授,現 在 に い た る.こ の 間,1983 〜 86年 米 国 National Institutes of Health (NIH) 博士 研究員<研究テーマと抱負>ゲノムデザイ ン学の全面的展開<趣味>休むふりして考 えること

岡  村   均(Hitoshi Okamura)  歴>1979年京都府立医科大学医学部卒業 後,国立岡山病院小児医療センター研修医 を経て,1981年京都府立医科大学助手/

1987年同講師/ 1990年同助教授/ 1995年 神戸大学医学部教授/ 2007年京都大学大 学院薬学研究科教授,現在にいたる.この 間,1987 〜 89年 フ ラ ン ス 国 立 医 学 研 究 所・同科学研究所留学<研究テーマと抱 負>生体リズムの分子機構を基盤とした医 学薬学研究

小 埜 栄 一 郎(Eiichiro Ono) 略 歴1998年岡山大学農学部総合農業科学科卒 業/ 2000年奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス研究科博士前期課程修 了/同年サントリー(株)基礎研究所研究 員,現在,同社価値フロンティアセンター 植物科学研究所主任研究員.2006年バイ オサイエンス博(奈良先端科学技術大学院

大学)<研究テーマと抱負>実用植物の二 次代謝,酵素遺伝子の分子進化<趣味>

アート,自然散策,植物とタナゴの世話 賀来 華江(Hanae Kaku) <略歴>大 阪市立大学大学院生活科学研究科後期博士 課程修了(学術博)後,米国ミシガン大学 医学部博士研究員,文部省科学技術庁特別 研究員,(独)農業生物資源研究所主任研究 官を経て,2005年明治大学農学部生命科 学科准教授/ 2011年同教授,現在にいた る<研究テーマと抱負>オリゴキチンエリ シターを介する植物免疫系のメカニズムを 解明し,この基礎研究に基づいて世界規模 に起こる食糧問題の解決に貢献したい<趣 味>美しい風景・空間・絵・建築物を鑑賞 すること.さらに,物語が感じられる美し い石を集めること

梶 村  真 吾(Shingo Kajimura)  歴>現在,米国カリフォルニア大学サンフ ラ ン シ ス コ 校 (UCSF), UCSF Diabetes  Center, Center of Regeneration Medicine  プリンシパル・インベスティゲーター 片 山  高 嶺(Takane Katayama)  歴>1994年京都大学農学部食品工学科卒 業/ 1999年同大学大学院農学研究科食品 科学専攻博士後期課程修了(農博)/同年 同研究科リサーチアソシエイト/ 2002年 同大学院生命科学研究科助手/ 2005年石 川県立大学生物資源研究所講師/ 2008年 同准教授,現在にいたる<研究テーマと抱 負>腸内細菌とヒトの共生を支える分子基 盤の解明,芳香族アミノ酸の高度利用に向 けた技術開発<趣味>ゴルフ(のはず)

亀井 宏泰(Hiroyasu Kamei) <略歴>

2000年宇都宮大学農学部生物生産科学科 卒業/ 2005年東京大学大学院農学生命科 学研究科水圏生物科学専攻博士課程修了

(農博)/ 2011年同研究科特任研究員(応 用動物科学専攻・応用生命化学専攻動物細 胞制御学研究室),現在にいたる.この間,

2005 〜 2010年米国ミシガン大学Depart- ment of Molecular, Cellular & Develop- mental Biologyポスドク<研究テーマと抱 負>発生初期におけるインスリン・IGFシ グナリング関連分子の働きと胚の品質管理 に関わる分子機構の解明

清 田  洋 正(Hiromasa Kiyota)  歴>1989年東京大学農学部農芸化学科卒 業/ 1991年同大学大学院修士課程修了/

同年同大学農学部助手/ 1994年東北大学 農学部助手/ 2002年同大学大学院農学研 究科准教授,現在にいたる.この間,2001 年英国ケンブリッジ大学化学科在外研究員

<研究テーマと抱負>天然有機化合物の全 合成・探索研究<趣味>テニス,卓球,バ ドミントン,映画鑑賞,将棋駒製作 斉藤 昌之(Masayuki Saito) <略歴>

1970年大阪大学大学院理学研究科生物化 学専攻博士後期課程修了後,同大学蛋白質 研究所研究生,愛媛大学医学部助教授,北 海道大学獣医学部教授を経て,2006年同 大学名誉教授,現在,天使大学大学院看護 栄養学研究科教授<研究テーマと抱負>エ ネルギー代謝と肥満に関して,特にヒトの 褐色脂肪組織に焦点を当てて研究している

<趣味>山菜やキノコ狩り,家庭菜園,コ ンサドーレ札幌

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盈進の後輩へのメッセージ 現在東京で行っているダンスの仕事の中で、高校でもダ ンスのクラスを受け持っています。そこでいつも感じる のは、どんな生徒も無限の可能性に溢れているというこ と。高校時代はその可能性を夢中で探していい時期だと 思います。それがどんなに遠い夢でも、チャンスは意外 と世の中に溢れていて、それが見えるようになるまで努