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ミクロ熱工学における古典分子動力学法の限界

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Academic year: 2025

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ミクロ熱工学における古典分子動力学法の限界

The Limit of the Classical Molecular Dynamics Method Applied to Micro Thermal Engineering

○正 丸山茂夫(東大工)

Shigeo MARUYAMA, The University of Tokyo, 7-3-1 Hongo, Bunkyo-ku, Tokyo

The limit of applications of the classical molecular dynamics method to the micro thermal engineering problems are discussed. The apparent violation of the basic assumption of the classical molecular dynamics method is made when electron and photon are incorporated as in metal, plasma, light-interaction, or the chemical reaction.

Furthermore, limited spatial and temporal scales of the simulation make it difficult to compare the result with macroscopic phenomena. Usually the more accurate treatment of the former results the more sever limitation on the latter.

Key Words: Molecular Scale, Micro Thermal Engineering, Molecular Dynamics Method

1.はじめに

 ミクロ熱工学の問題に分子動力学法を用いるアプローチ が近年急速に発展していると同時に,しばしばその適用限 界に関する考察が曖昧な場合も見受けられる.そこで,本 稿では古典分子動力学法を用いた研究の限界についての考 察を試みる.本来,分子動力学法は分子の量子効果が無視 できる範囲内では,波動方程式の正確な解を与えることが 期待できるが(1),実際にはどの程度妥当な近似としてポテン シャルを用いるかの問題と,取り扱える空間的・時間的制 約によるマクロな現象との比較の困難さの 2 つの大きな問 題を持つ.前者の問題の限界は比較的分かりやすい場合が 多く,金属中の自由電子やプラズマなどで,電子の運動を 考慮する必要があったり,レーザー光との干渉の問題で光 子について取り扱う場合,また,化学反応を伴いポテンシ

ャルが大きく変化する場合などでは,電子や光子を正しく 取り扱える量子分子動力学法へと発展する必要があるのは 明白である.しかしながら,基本的にファンデルワールス 力であったとしても固体中とガスの状態で,そのポテンシ ャルが微妙に異なると考えられ,相界面でどの程度の影響 があるかなどについてはあまり明らかでない.一方,空間 的・時間的な制約の問題に関しては取り扱うべき現象の特 性スケールが問題となり,より慎重な検討が必要であると 考えられる.

以下,著者らの 2 つの研究例を挙げて具体的にこれらの 問題を議論したい.

2.数値実験としての分子動力学法

 最初の例は,固体面上の濡れの問題を取り扱った一連の 分子動力学法シミュレーションであり,固体面上での液滴 の形状や動的挙動(2),これを通じての熱伝達(3)(Fig. 1),微小 な気泡核(4)などの問題を検討したものである.この研究は,

滴状凝縮の初期過程や沸騰の初期気泡核生成などを念頭に,

マクロな理論や実験では取り扱いの困難な初期凝縮核の挙 動や接触角といった現象のミクロスケールでの定性的理解 を目標として,ミクロな問題に対する数値実験という立場 からのアプローチである.

液体と周りの蒸気とをLennard-Jonesポテンシャルで表し

(物理的な理解のためにアルゴンと考える),壁面はバネマ ス系と仮定する.さらに,壁面分子と液体分子との間のポ

178.084 Å

77.560Å

76.764 Å

Periodic boundary 3 solid

layers

3 solid layers Liquid droplet Liquid droplet

} }

Fig. 1. A snapshot of the heat transfer between droplets on solid surfaces(3)

20 40

0

0 20 40 0 20 40

20 40

0

Fig. 2 Two dimensional density and potential distributions and fitted circles for the contact angle (1944 molecules in 133×126×145 Å box, T = 92K)(3).

(2)

テンシャルにもLennard-Jonesポテンシャルを仮定している.

定性的な数値実験と割り切ることによって,ポテンシャル の問題や古典分子動力学法適用の問題は考えないものの,

空間的・時間的スケールの問題は生じてしまう.ミクロな 現象を直接にマクロな問題と比較しようとして,例えばシ ミュレーションで得られた接触角(Fig. 2)をマクロな液滴や 気泡の場合と比較しようとすれば,液滴や気泡の空間的な 大きさが問題となるのは明らかである.ヤングの式を検証 しようとすると,界面エネルギーがこのようなスケールで 定義できるか否かも問題となると考えられる.このような 乱暴な比較はさておき,ミクロな状態に限ってもスケール の制約は問題となってくる.体積・分子数・エネルギーが 一定の状態での計算では,統計力学的なアンサンブルが異 なるため,広い空間内での液滴や気泡核が示す臨界径など の特色は全く異なった形で現れてしまう.温度や圧力が一 定の熱浴をエレガントにシミュレートするのは相当に困難 であるといえる.また,蒸発や凝縮などの非平衡過程をシ ミュレートしようとするとその時間的スケールの制約によ り極限的な高い熱流束を与えることになる.

3.思考実験としてのシミュレーション

 もう一つの例として,C60などのフラーレン構造が生成す る過程のシミュレーションを挙げる(5-7).炭素棒のアーク放 電等によって一旦蒸発した炭素原子が自立的にフラーレン 構造を作る現象は,マクロな加熱・冷却の条件のもとで,

個々の炭素原子の挙動が問題となる極めて興味深いもので あるが,この場合はさらに化学反応が介入し,古典分子動 力学法を適用するには多くの困難を内包する.炭素原子に 対して用いた Tersoff 型の経験的多体ポテンシャルは,実に 巧妙ではあるものの Fig. 3 に示した計算結果のようにクラ スター構造の成長とともに変化する炭素原子の結合状態を π電子の影響まで表現することはとうてい望めない.さら に,実際のクラスター成長に要する時間は少なくとも数十 μs と考えられるが,現在のところ分子動力学法でこれほど の時間を計算するのは現実的でなく,この場合には密度を 圧縮し,その分冷却を急激に行うという方法を用いている.

このために各中間体は十分なアニールをされないままに次 の衝突・反応へと駒を進めることになる.アニールの効果

について最終段階のみ考察したのがFig. 4 であり,計算で 現れた炭素原子60個のほぼケージ型のクラスターを非常に 長時間に渡って一定温度に保った結果,完全なサッカーボ ール型のC60が自立的に生成された.それにしても,実際に はクラスター成長過程のどの時点でアニーリングが最も重 要であるか,本来の成長プロセスをどう考えるかの定性的 なことに関してさえ,シミュレーションのみから結論する ことは困難である.

4.おわりに

古典分子動力学法の第一の問題を解決する方法として,

電子や光との相互作用を取り扱うべく量子分子動力学法の 研究が進みつつあるが,皮肉なことにその計算負荷のため に恐らく第二の問題である空間的・時間的な制限はますま す厳しくなってしまうであろう.計算機の能力向上も焼け 石に水で,当分は綱渡り的な状態での研究を進める必要が あると考えられる.だからこそ,チャレンジングではある のだが.

参考文献

(1) 小竹,分子熱流体,(1990), 丸善.

(2) S. Matsumoto et al., ASME・JSME Joint Conf., (1995), 557.

(3)丸山ら,第34回伝熱シンポ,677 (1997).

(4)丸山ら,第34回伝熱シンポ,675 (1997).

(5) S. Maruyama et al., Therm. Sci. & Engng., 3-3 (1995), 105.

(6)山口ら,機論,B63-611 (1997).

(7)丸山ら,機論,B63-611(1997).

(1) 35.5 ns

7 7

8 7

7 7

Initial

(3) 36.8 ns (2) 36.7 ns

(4) 41.8 ns

(7) 52.3 ns (perfect C60)

(5) 45.1 ns (6) 50.6 ns

Fig.4 Annealing to the perfect C60(7) 10

8

2500

1000 1500 2000

500

time (ps) 49 60

28 26

12 15

8

33 0

20

40

60 70

53

8

cluster size

Fig. 3 Growing process of fullerene(7)

Referensi

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