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層的コミュニケーション社会」と呼んでいます(資料1)。従来からあるマスメディアと直接対面のコミュニケーションに加えて、急速に膨張しているネットメディアによるオンラインコミュニケーションが、多層的・重層的に併存しているのです。
ニ セ 情 報 で イ ギ リ ス E U 離 脱
ネット上でSNSなどを通じて、情報がマスメディアよりも速く、さらに広く強く拡散するようになった結果、イギリス
情 報 に 隠 さ れ た 意 図 や 目 的
私は読売新聞社に入社以来、
19年間新聞記者を
務めてきました。新聞記 者とは情報をとる仕事、それもできる限り特ダネをとってきて書く仕事です。その情報は、人が持っています。ですから、どうすれば特ダネを話してもらえるかを考えるようになり、ひいては相手を理解すると同時に、自分をも理解してもらうコミュニケーションの大切さに意識が向かうようになりました。 ところで改めて、情報とは何でしょうか。個人情報、情報公開の対象となる情報、スパイの情報、SNS上に飛び交う膨大なニュース情報など、世の中にはさまざまな情報があります。けれども、あらゆる情報には一つ共通点があります。それは、情報とは必ず人が生み出す ものであるということ。 従って情報には必ず、それを生み出した人の目的や意図が投影されていて、なかには悪意が込められた情報や虚偽の情報もあります。
種 類 の あ る コ ミ ュニ ケ ー シ ョン
「コミュニケーション」
は非常に幅広い意味を含む言葉です。そのコミュニケーションのあり方が、デジタル化の進行によりとても複雑になっています。現代のコミュニケーションの構造を私は「多 などでは政治が「ポスト・トゥルース」の時代に入ったといわれています。「真実か否か」ではなく、「虚偽であっても感情に訴える情報」がしばしば強い影響力を持つ。そのため情緒や感情に訴える情報が、世論を形成し政治を動かしていく。こうした時代認識を背景に「ポスト・トゥルース」という言葉が2016年、イギリスのワード・オブ・ザ・イヤーに選ばれました。 この言葉に象徴される出来事が、2016年には二つ起こっています。一つはイギリス国民投票でのEU離脱派の勝利、もう一つはアメリカ大統領選でのトランプ氏の当選で、いずれも予想を覆す事件として世界に衝撃を与えました。 イギリスでは国民投票を前に、残留派と離脱派が宣伝活動を活発に行いました。残留派は、客観的なデータに基づく3000ページに及ぶ報告書を公表したものの、内容が難解で多くのイギリス国民には理解されませんでした。これに対して離脱派は、EUがイギリスに不利益をもたらしているというニセ情報を盛んに流しました。
その結果、真実に基づ いて国民を説得しようとした残留派が負け、ポスト・トゥルースの手法を使い虚偽の情報で感情に訴えかけた離脱派が勝ったのです。その後離脱派は、アピールしていた内容が誤っていたことを認めて、自分たちの主張を撤回しています。けれども、離脱派を支持した国民の多くは、自分たちが騙されていたとは未だに気づかないそうです。なぜなら、彼らの多くが情報源をSNSに頼っているからです。 SNSでは、自分と同じ意見を持つユーザーをフォローするから、自分とは異なる意見を目にしなくなります。これを「エコ・チェンバー」効果と 呼びます。そこに検索アルゴリズムにより自分が好む情報が選択的に優先表示される「フィルターバブル」効果が加わります。そのため情報源をSNSだけに頼っていると、真偽に関係なく自分の好みの情報ばかりに取り囲まれてしまうのです。
情 報 が 攻 撃 や 疑 心 暗 鬼 を 生 む
日本では幸いにしてポスト・トゥルースの政治は行われていません。けれども、真実を冷静に見つめることなく、感情に引きずられた情報の暴走 は起きています。つい最近あったのが、新型コロナウイルスの感染者に関する情報拡散です。 ある県で家族全員が感染したケースで、子どもが通う学校名が発表されました。これを機に情報が一気に拡散し、家族全員の実名が暴かれるばかりか、親の勤務先から住んでいる住所までもがSNS上で広まったのです。 人が恐怖を感じているときに、詳しすぎる情報を提供すると、人々は感情的・攻撃的になり差別や偏見につながりやすくなります。だからと言って情報が乏しいと人々は疑心暗鬼に陥り、不安をかきたてられます。
新型コロナウイルスのような感染症が流行したときに「人権の尊重」と「感染予防のための情報提供」をどのように両立させるのか。やるべきことは明らかであり、「温かい思いやりを広げて、攻 撃的な恐怖心を和らげる」のです。そのためにはどうすればよいのでしょうか。
話 す 書 く 力 は 聞 く 読 む で 伸 び る
私たちはポスト・トゥルースの時代を生きています。ネット上に不純な情報、悪意ある情報、無責任な情報が溢れかえっているうえに、フィルターバブルにもさらされている。そんな環境にいるからこそ、何より求められるのが「真偽を見極める力」と「正しく表現する力」です。
真偽を見極めるためには、何よりもまず詳しく知る必要があります。ある事柄について正しく知ろうと思うなら、ネットだけに頼らず、本や新聞などでたくさん情報を集めるのです。
一方で正しく表現するためには、受け手の受け止め方を考えながら表現する必要があります。相手を思う気持ちや心構えを身につけ、正しく表現する訓練が欠かせません。「話す力」「書く力」は「聞く力」「読む力」を磨くと身につきます。そして正しく表現するためには、あえて表現しない心構えも持ってほしい。
情報の真偽を見極めて、表現を含めて情報を使いこなす力を情報リテラシーといいます。ぜひ高い情報リテラシーを身につけてください。もう一点、皆さんに身につけてほしいのがアジェンダ設定能力です。アジェンダとは、課題や議題を意味します。すなわち情報リテラシーに基づいて、いま何が課題なのかを考える。正しくアジェンダを設定できる力を、ぜひ意識して養ってください。
ワークショップ REPORT EVENT2020.10.3
@ナガセ西新宿ビル
Learn with a Top Leader
リーダー トップ と 学ぶ
研究やビジネスの最前線を走る“現代の 偉人”を講師に迎える「トップリーダーと学 ぶワークショップ」。今回は読売新聞グルー プ本社で代表取締役社長を務める山口 寿一先生をお招きし、「情報、表現、コミュ ニケーション」をテーマに講演いただいた。
情報 に 溢 れ る現代 で 、 “ 真偽 を見極 め ” “ 正 し く 表 現 ” せ よ
講演タイトル
情 報 、表 現 、コ ミ ュニ ケ ー シ ョン
山口先生は読売新聞に入社して以来、記者として社会部で司法担当などを長く務めてこられました。インターネット、なかでもSNSの発達により多層的コミュニケーション社会となった今、私たちはどのような危機にさらされているのか。情報とコミュニケーションに絡む問題に対して、どのように対処すればよいのか。オンライン講演とワークショップの様子をお伝えします。
【ネットメディアの特徴】
UGM
参加 UGC UGC
UGC UGC
UGC PGC
PGC PGC PGC
PGC 動運
会社 的発 自
ユーザー:クリエイター
多様なメディアが相互作用・相互連携
→新しい意味の発生 オーディエンス
(発信者=受信者)
=
【従来のマスメディアの特徴】 【10 代のメディア利用時間の変化】
PGM
員動 会社
ユーザー:オーディエンス(受信者)
メディアマス メディアネット
メディア対面 メディアマス メディアネット
メディア対面
自発的社会運動 社会動員
共 振
動運 会社
幅増 の
ヴァイラル(パンデミック)化 世論形成 流行形成 集合知
分極化 過剰化
情報操作 集団的浅慮 沈黙の螺旋 情報拡散、情報漏洩
選挙 新 聞 テレビ インターネット
3時間59分 1時間27分
1時間43分
3時間16分 1時間36分 1時間49分
6秒 2分 22分
総務省(2003)『平成 15 年版情報通信白書』
総務省(2013)『平成 25 年版情報通信白書』
総務省(2020)『令和2年版情報通信白書』を基に作成
(出典)
P4:多層的コミュニケーション社会 2:全体像 P7:多層的コミュニケーション社会 5
【ネットメディアの特徴】
UGM
参加 UGC UGC
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UGC PGC
PGC PGC PGC
PGC 動運
会社 的発 自
ユーザー:クリエイター
多様なメディアが相互作用・相互連携
→新しい意味の発生 オーディエンス
(発信者=受信者)
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【従来のマスメディアの特徴】 【10 代のメディア利用時間の変化】
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員動 会社
ユーザー:オーディエンス(受信者)
メディアマス メディアネット
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メディアマス メディアネット
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自発的社会運動 社会動員
共 振
動運 会社
幅増 の
ヴァイラル(パンデミック)化 世論形成 流行形成 集合知
分極化 過剰化
情報操作 集団的浅慮
沈黙の螺旋 情報拡散、情報漏洩
選挙 新 聞 テレビ インターネット
3時間59分 1時間27分
1時間43分
3時間16分 1時間36分 1時間49分
6秒 2分 22分
総務省(2003)『平成 15 年版情報通信白書』
総務省(2013)『平成 25 年版情報通信白書』
総務省(2020)『令和2年版情報通信白書』を基に作成
(出典)
P4:多層的コミュニケーション社会 2:全体像 P7:多層的コミュニケーション社会 5
【ネットメディアの特徴】
UGM
参加 UGC UGC
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PGC 動運
会社 的発 自
ユーザー:クリエイター
多様なメディアが相互作用・相互連携
→新しい意味の発生 オーディエンス
(発信者=受信者)
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【従来のマスメディアの特徴】 【10 代のメディア利用時間の変化】
PGM
員動 会社
ユーザー:オーディエンス(受信者)
メディアマス メディアネット
メディア対面
メディアマス メディアネット
メディア対面
自発的社会運動 社会動員
共 振
動運 会社
幅増 の
ヴァイラル(パンデミック)化 世論形成 流行形成 集合知
分極化 過剰化
情報操作 集団的浅慮
沈黙の螺旋 情報拡散、情報漏洩
選挙 新 聞 テレビ インターネット
3時間59分 1時間27分
1時間43分
3時間16分 1時間36分 1時間49分
6秒 2分 22分
総務省(2003)『平成 15 年版情報通信白書』
総務省(2013)『平成 25 年版情報通信白書』
総務省(2020)『令和2年版情報通信白書』を基に作成
(出典)
P4:多層的コミュニケーション社会 2:全体像 P7:多層的コミュニケーション社会 5
[プロフィール]
早稲田大学政治経済学部を卒業し、79年に読売新聞 に入社。記者としては社会部で司法担当などを長く 務める。東京本社専務取締役などを経て、15年6月 に東京本社代表取締役社長、16年6月に読売新聞グ ループ本社代表取締役社長に就任し現在に至る。16 年、日本相撲協会の外部理事就任。18年7月、第8 代読売巨人球団オーナーに就任。19年、日本新聞協 会会長に就任。
読売新聞グループ本社代表取締役社長
山
やま口
ぐち寿
とし
一
かず先生資料1:(出典) 遠藤薫 (2018)『ソーシャルメ ディアと公共性 リス ク社会のソーシャル・
キャピタル』東京大学 出版会。多層的コミュ ニケーション社会
資料2:読売新聞 2020年10月2日 東京版、朝刊。
Toshikazu Yamaguchi
12
有名400社就職率、 全大学中4 位
(2020年 大学通信調べ)東京外国語大学・東京学芸大学・
東京農工大学・一橋大学・本学 トップ国立
5大学単位互換 主な就職先(7 名以上)
NTTドコモ ソニー キ ノン KDDI 富士通 凸版印刷 日立製作所 エヌ・ティ・ティ・コムウェア ソフトバンク 本田技研 村田製作所 (2020 年度卒業者 )
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近くに東進の校舎が無い高校生が対象です。
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2021年度生入学 先行受付中!
担任が親身に相談に乗ってくださり心の支えでした!
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高1から本格的に受験勉強をしたいと思い、友達が通う塾に入塾しました。文化祭準備 などもあり、数学で遅れをとり焦る中、両親から在宅受講コースの受講を勧められまし た。いつでも場所を選ばず受講でき空き時間をうまく活用できました。東大は受験科目 が多いので入学後も追加で現代文や古典、化学、物理と科目を増やし受講しました。ど の講座もレベルが高く、また、1.5倍速受講や、短期集中で毎日でも勉強できたのでと ても効率的でした。疲れているときは半分だけの受講をして無理せず自分のペースで取 り組めたことも東大現役合格へプラスになったと思います。
【坂倉くんの合格体験記より抜粋】
東進の自宅専門コース。 12月新年度スタート先行受付中!
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東京大学 理科Ⅱ類 現役合格 坂倉 智晴
くん(東京都 国立 筑波大学附属駒場高校卒)
■入学時期 :高1生の10月
■主な受講講座:
東大対策理系数学・難関生物・東大対策生物 東大対策化学・過去問演習講座東京大学(理科)
東大古文・答案練習講座:東大現代文 単元ジャンル別演習・単元集中受講
もっと知りたい!
参加した生 徒から
山口先 生へ 7 つの
インターネットに圧倒的に時間を奪い取られている 現状で、新聞を読んでもらうための時間を取り返すの は、なかなか難しい課題です。我々新聞関係者としては『読 売KODOMO新聞』や『読売中高生新聞』などを少しでも 若い世代に届けて、新聞に目を向けてもらうよう地道な努 力を重ねるしかないと思います。
本質はニュースですね。そしてニュースとは「世の中 に知らしむべき情報」です。それをどうやって選別す るのかは、ひと言で説明できませんが、メディアとして伝 えるべきなのが「確かであり、かつ世の中が知るべきこと」
であるのは間違いありません。
A
A
情報という概念は、目に見えません。そうした情報を 理解し、その特質を学べるのは、やはり中学生以上で しょう。それも選挙制度や民主主義、さらには三権分立の 原則などを理解したうえで、正しい情報を見極める力の重 要性を学ぶのが、自然な流れだと思います。
日本はデジタル化が遅れているため、社会全体でデジ タル化によりなじむ必要があるでしょう。とはいえデ ジタルの本質を知らずに、単にSNSの道具としてだけ使って いるのでは、デジタル化になじんでいるとはいえないと思い ます。おしゃべりの代わりにLINEを使うといったことではな く、もっと真面目な付き合い方を考えるべきだと思います。
A
A
優秀とひと口にいっても、さまざまなタイプがあり、備える能力も多様です。だから、一概にこういう能力 があれば、優秀であるとはいえないと思います。ただ、私は 怠け者でない人を優秀だと思っています。だから何ごとに対 しても一生懸命に取り組む能力が、質問の答えになると思い ます。
書かない決断を下すのは、かなり大変でした。ある汚 職事件があったときに、その情報を早くから知ってい たけれども、私は書きませんでした。事件として成立する かどうかが微妙だと考えていたからです。けれども、他社 は特ダネとして紙面のトップで扱いました。編集長から「な ぜ書かないのか」とプレッシャーをかけられましたが、誤 報は出せないと突っぱねたのです。結果的に、この一件は 事件として成立せず、特ダネとして掲載した他社は名誉毀 損で訴えられました。不確かなことを書かない、これを徹 底するのはなかなか大変でした。
A
A
攻撃や争いを完全になくすのは、相当に困難な課題で す。これを解消するためには、社会に不平や不満が蓄 積しないようにする必要があります。それには国全体とし ての経済力を高めると同時に、格差を広げない努力も求め られるでしょう。自由競争の中で収益を得れば、その成果 を社会保障政策によって還元し、極端な格差を是正する。
こうした循環が不可欠です。
A
新聞を読まない 若い世代に対して どのような対策が 考えられるでしょうか
Q
2
メディアが発信するべき 本質的な項目は何でしょうか
Q
5
情報教育は 何歳ぐらいから 始めるのが良いでしょうか
Q
3
今後、日本で デジタル化がさらに 進むとして、高校生はいま
何をすべきでしょうか
Q
6
記者時代の経験で 最も大変だったことを
教えてください
Q
4
優秀な人材には どのような能力が 求められるのでしょうか
Q
7
詳しすぎる情報は誹謗中傷や 差別につながるということですが
そもそもそうした攻撃や争いを どうすれば根絶できるのでしょうか
Q
1
講演を聞き、参加した高校生たちから山口先生に たくさんの質問があがりました。ここでは、山口先生と高校生との
質疑応答の一部を紹介します。
質問 Questions
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トップリーダーと学ぶ ワークショップ
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中学生の時に多面的に見る能力をつける。こ れを軸に据えたうえで、非常に広く目配りを して、まとまった意見になっていると思いま した。物事を多面的に見る能力とは、意見の 多様性を認める姿勢につながります。多様性 に対して寛容であることは、より良い社会を作 るうえで極めて重要だと思います。
【理想の情報流通とコミュニケーション】
~これからの情報社会における、望ましい情報流通の 仕組み、コミュニケーションのあり方とは~ワークショップテーマ
宇宙開発のこれから
「中学生からタブレット・新聞を活用した授業により ものごとを多面的に見る能力を養う」
優勝したチームのプレゼン内容
山口先生からのコメント
授業において時事ネタを扱い、ニュースに対して各自が自分の意見を考え て発表する。他の人の発表を聞くことで、多様な意見が存在するのを認識 できる。たとえ偏った情報であっても興味のあるニュースについて自分の 意見をまとめて発表する。その際に新聞・タブレットを活用してバイ・リ テラシーと、長い文章から情報を読み解く力を身につけます。
多様性を 受け入れる社会に
つながる