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直鎖状ポリユビキチン鎖生成酵素LUBACの阻害剤開発 - J-Stage

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化学と生物 Vol. 54, No. 2, 2016

直鎖状ポリユビキチン鎖生成酵素 LUBAC の阻害剤開発

疾患治療から LUBAC の新たな機能解明まで

ユビキチンはすべての真核生物に存在する76アミノ 酸から構成される小球状タンパク質であり,基質タンパ ク質に結合することでプロテアソーム依存的な分解に導 く因子として広く知られている.しかし,近年の研究に より,ユビキチンの機能はタンパク質の分解のみにとど まらず,多彩な様式でタンパク質の機能を調節する翻訳 後修飾系であると認識されている.多くの場合,ユビキ チンはポリマーであるポリユビキチン鎖としてタンパク 質に結合することでその機能を制御するが,細胞内には 多様な種類のユビキチン鎖が存在しており,その種類に よってタンパク質の制御様式が異なると考えられてい る.これまで,ユビキチン鎖はユビキチン分子内に7個 存在するリジン残基のいずれかの

ε

-アミノ基と,ほかの ユビキチンのC末端グリシン残基のカルボキシ基との結 合により形成されると考えられてきたが,本稿のトピッ クである「直鎖状ポリユビキチン鎖」は,ユビキチンの リジン残基ではなくN末端のメチオニン残基の

α

-アミノ 基を介して形成されるポリユビキチン鎖であり,HOIL- 1L (heme-oxidized  IRP2  ubiquitin  ligase  1L),  HOIP 

(HOIL-1L-interacting protein), SHARPIN (shank-asso- ciated RH domain-interacting protein)の3種のサブユ ニットから構成されるlinear ubiquitin chain assembly  complex (LUBAC)ユビキチンリガーゼにより特異的 に生成される(1, 2).LUBACによる直鎖状ポリユビキチ ン鎖生成は,免疫応答のみならず,過剰活性化が発がん に関与することが知られている転写因子NF-

κ

B (nucle- ar factor of 

κ

B)の活性化や,細胞死抑制に関与するこ とが示されている(2).加えて,LUBACの活性亢進はマ

ウス骨肉種の肺転移(3)やある種のヒトB細胞リンパ腫の 発症(4),汎用されている抗がん剤シスプラチンへの耐性 に関与すること(5)などが報告されており,LUBACは有 力な抗がん剤のターゲットであると考えられる.

上述のような背景を踏まえ,筆者らはLUBACの酵素 活 性 阻 害 剤 を 探 索 し た.LUBACの 酵 素 活 性 中 心 は HOIPのC末端領域に存在し,HOIL-1LとSHARPINは そ の 補 助 サ ブ ユ ニ ッ ト で あ る.LUBACは 分 子 量 約 600 kDaの大きな複合体であり,ハイスループットスク リーニングを施行するために十分な精製タンパク質を得 ることは困難であった.そこで,大腸菌発現系を用いて 大量に発現・精製が可能である直鎖状ポリユビキチン鎖 伸長活性をもつLUBACの部分配列を検索し,HOIPの C末端部分とHOIL-1LあるいはSHARPINのHOIP結合 領 域 か ら な るpetit-LUBAC, petit-SHARPINを 作 製 し た.それらを用いておよそ14万の小分子化合物のスク リーニングをした結果,LUBACの酵素活性を阻害する 化合物としてグリオトキシンを見いだした(6)(図1.同 化合物は,試験管内においてLUBACの酵素活性中心で あるHOIPのC末端領域に結合することが確認されてお り,petit-LUBAC, petit-SHARPINのみならず,LUBAC 全長の直鎖状ポリユビキチン鎖生成活性も阻害すること が示されている.さらに,グリオトキシンを添加するこ とでヒトT細胞株であるJurkat細胞のTNF-

α

刺激依存 的なNF-

κ

B活性化が抑制された.グリオトキシンはNF-

κ

B活性化阻害剤として以前より知られていたが,その 詳細なメカニズムや標的分子は不明であった.LUBAC による直鎖状ポリユビキチン鎖生成はIKK (I

κ

B kinase)

図1グリオトキシンはLUBACを阻害す ることによりNF-κBの活性化を抑制する

日本農芸化学会

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84 化学と生物 Vol. 54, No. 2, 2016

複合体の活性化を通じてNF-

κ

Bの活性化へと導くが,

筆者らはグリオトキシンがTNF-

α

刺激依存的なIKK複 合体の活性化を抑制することを示し,グリオトキシンは LUBACを阻害することでNF-

κ

B活性化を抑制すること を明らかにした.加えて,グリオトキシンを添加するこ とによりTNF-

α

やシスプラチン依存的な細胞死が亢進 することも観察しており,LUBAC阻害剤の創薬への応 用可能性が期待される.

グリオトキシンがLUBACの活性を阻害するという発 見は病理的にも意義深い.なぜなら,グリオトキシンは 臨床的によく見られる日和見感染症であるアスペルギー

ルス症の原因真菌 などが産生する

二次代謝産物であり,その病原性に深く関与する病原性 因子として知られているためである.NF-

κ

Bが免疫応 答においても中核的な役割を果たす転写因子であること を鑑みると,LUBACによる直鎖状ポリユビキチン化が などの真菌に対する感染防御時に おいても中心的な役割を果たしていることが予想され る.

グリオトキシンによるLUBAC活性の阻害がNF-

κ

B活 性化を抑制するとともに,細胞死を亢進させるという結 果は,がんなどの疾患への治療におけるLUBAC阻害剤 の有効性を強く示唆するものである.また,LUBACの 酵素活性はシスプラチンのみならず,ほかの汎用されて いる抗がん剤であるエトポシドやドキソルビシンへの抵 抗性にも関与することが示唆されているため,LUBAC 阻害剤の適用範囲がさらに拡大することが期待される.

し か し,高 濃 度 の グ リ オ ト キ シ ン を 添 加 す る と,

LUBAC以外にもさまざまなタンパク質と結合してそれ らの活性を阻害することが示されているため,LUBAC に高い選択性をもち,非特異的な阻害による副作用の少 ない薬剤を開発することが望まれる.

  1)  T. Kirisako, K. Kamei, S. Murata, M. Kato, H. Fukumoto,  H.  Kanie,  S.  Sano,  F.  Tokunaga,  K.  Tanaka  &  K.  Iwai: 

25, 4877 (2006).

  2)  F.  Tokunaga,  T.  Nakagawa,  M.  Nakahara,  Y.  Saeki,  M. 

Taniguchi,  S.  Sakata,  K.  Tanaka,  H.  Nakano  &  K.  Iwai: 

471, 633 (2011).

  3)  M. Tomonaga, N. Hashimoto, F. Tokunaga, M. Onishi, A. 

Myoui,  H.  Yoshizawa  &  K.  Iwai:  , 40,  409  (2012).

  4)  Y. Yang, R. Schmitz, J. Mitala, A. Whiting, W. Xiao, M. 

Ceribelli, G. W. Wright, H. Zhao, Y. Yang, W. Xu  :  , 4, 480 (2014).

  5)  C.  Mackay,  E.  Carroll,  A.  F.  Ibrahim,  A.  Garg,  G.  J.  In- man, R. T. Hay & A. F. Alpi:  , 74, 2246 (2014).

  6)  H. Sakamoto, S. Egashira, N. Saito, T. Kirisako, S. Miller,  Y. Sasaki, T. Matsumoto, M. Shimonishi, T. Komatsu, T. 

Terai  :  , 10, 675 (2015).

(坂本裕樹*1,岩井一宏*2,長野哲雄*3,*1 東京大学大 学院薬学系研究科,*2 京都大学大学院医学研究科,

*3 東京大学創薬オープンイノベーションセンター)

プロフィール

坂本 裕樹(Hiroki SAKAMOTO)

<略歴>2010年東京大学薬学部薬科学科 卒業/2015年同大学大学院薬学系研究科 博士課程修了/同年ライオン株式会社入 社,現在に至る<研究テーマと抱負>直鎖 状ポリユビキチン鎖生成酵素LUBACの阻 害剤探索およびgliotoxinによるNF-κB活 性化阻害機構の解明<趣味>バスケット ボール,読書

岩井 一宏(Kazuhiro IWAI)

<略歴>1985年京都大学医学部卒業,臨 床研究を経て1992年同大学大学院医学研 究科博士課程内科系専攻修了/2001年大 阪市立大学大学院医学研究科教授/2008 年大阪大学大学院生命機能研究科/医学系 研究科教授/2012年京都大学大学院医学 研究科教授<研究テーマと抱負>ユビキチ ン修飾系による生命機能制御機構,ユビキ チン系によるNF-κB活性化機構とその炎 症,疾患への関与,生体の鉄代謝調節メカ ニズムとその破綻による疾患に関する研究

<趣味>いろいろなことを深く考えること

<所属研究室ホームページ>http://mcp.

med.kyoto-u.ac.jp/

長野 哲雄(Tetsuo NAGANO)

<略歴>1977年東京大学大学院薬学系研 究科修了(薬博)/1996年同大学薬学部教 授/2008年日本薬学会会頭/2010年東京 大学大学院薬学系研究科研究科長・薬学部 長/2011年同大学創薬オープンイノベー ションセンター教授(兼任)/同年日本学 術会議会員(役員会幹事・現在第二部部 長)/2013年定年退職・東京大学名誉教 授/2015年創薬機構客員教授,現在に至 る/紫綬褒章・島津賞・上原章・日本薬学 会学会賞等を受賞<研究テーマと抱負>ケ ミカルバイオロジー,創薬化学<趣味>読 書,旅 行<所 属 研 究 室 ホ ー ム ペ ー ジ>

http://www.ddi.u-tokyo.ac.jp/

Copyright © 2016 公益社団法人日本農芸化学会 DOI: 10.1271/kagakutoseibutsu.54.83

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8, 2016 プロフィール 河岸 洋和(Hirokazu KAWAGISHI) <略歴>1979年北海道大学農学部農芸化 学科卒業/1985年同大学大学院農学研究 科博士課程修了/同年静岡大学農学部助 手/1989年同大学農学部助教授/1999年 同大学農学部教授/2006年同大学創造科 学技術大学院教授/2013年同大学グリー

プロフィール 津田 賢一 (つだ けんいち) 中国・華中農業大学・教授 略歴: 1999年 北海道大学理学部生物科学科卒業 2001年 北海道大学大学院地球環境科学研究科 修士課程卒業 2004年 北海道大学大学院地球環境科学研究科 博士課程卒業 2004年~2005年 北海道大学理学部 博士研究員 2005年~2011年