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コレステロールの腸管吸収機構とその制御 - J-Stage

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化学と生物 Vol. 54, No. 6, 2016

コレステロールの腸管吸収機構とその制御

NPC1L1 の発見と輸送を抑制するポリフェノール

コレステロールは腸管から受動輸送で吸収されると考 えられてきたが,2004年,小腸の管腔側膜上に局在す るコレステロールトランスポーターが発見された.本稿 ではコレステロールトランスポーターの発見とその輸送 特性,およびわれわれが見い出した食品成分による抑制 作用について紹介する.

コレステロールは生体にとって必要不可欠な成分であ るが,高コレステロール血症はアテローム性動脈硬化や 心筋梗塞などのリスクを高める.従来脂質異常症治療薬 としては,肝臓において,コレステロール合成経路の律 速酵素であるHMG-CoA還元酵素の阻害薬(スタチン系 薬剤)が中心的役割を担ってきた.近年新たな治療薬と してコレステロール吸収阻害をターゲットとした研究が 行われるようになり,エゼチミブが開発された.エゼチ ミブは高コレステロール食を負荷したモデル動物の血中 コレステロール濃度を有意に低下させたが,標的分子が 不明なまま臨床実験が開始され,この開発過程でコレス テロールトランスポーターの存在が示唆された.Alt- mannらは小腸の吸収側上皮にトランスポーターが存在 することを予想し,バイオインフォマティクスの手法を 用いて,コレステロール取り込みにかかわる遺伝子を探 索した(1).ラットの小腸のcDNAライブラリから得られ た 発 現 遺 伝 子 配 列 断 片(Expressed Sequence Tags; 

ESTs)を,マウスおよびヒトのESTsと関連づけ,こ れらのデータベースからコレステロールトランスポー ターの特性を備えていることが予測される全転写産物を 解析し,一つの候補を見いだした(1).この候補タンパク 質は,コレステロールがリソソーム内に蓄積するNie- mann‒Pick病C型の原因遺伝子産物であるNPC1とアミ ノ酸レベルで約50%の相同性を有することからNie- mann‒Pick C1 Like 1(NPC1L1)と命名された.ラッ ト,マ ウ ス お よ び ヒ ト 組 織 に お い て,NPC1L1の mRNAは 小 腸 で 最 も 高 発 現 し て い た.作 出 さ れ た NPC1L1ノックアウトマウスはコレステロールの吸収が 約70%抑制され,さらに野生型のマウスにエゼチミブ を与えるとNPC1L1ノックアウトマウスと同レベルまで コレステロール吸収が抑制された.ヒト型のNPC1L1は 1332アミノ酸からなる,13回膜貫通型のタンパク質で

ある(2). NPC1L1のコレステロール輸送については,コ レステロールを結合したままエンドサイトーシスで輸送 される機構が示唆されており(3),近年Liらによってより 詳細な機構が報告されている(4).コレステロールが結合 したNPC1L1はクラスリン型のエンドサイトーシスによ り細胞内に入り,複合体のままリサイクリングエンド ソームへと運ばれる.その後コレステロールはNPC1L1 から離れ小胞体へ,コレステロールを離したNPC1L1は 細胞膜へと戻され再利用される.なぜ生体はこのよう な,一見エネルギー効率の悪いエンドサイトーシスによ りコレステロールを細胞内へと取り込んでいるのか,

NPC1L1の吸収機構については議論が残されている.

Weinglassらは,イヌとマウスのNPC1L1においてエゼ チミブのアナログリガンドの結合親和性が異なることに 着目し,変異体を用いた検討により,エゼチミブの NPC1L1結合部位を予測した(5)(図1.エゼチミブのア ナログはイヌ型NPC1L1に高い親和性を示し,その親和 性の高さには細胞外第2ループのアミノ酸配列,特に Phe-532およびMet-543が重要であることが示された.

これらはヒト型においても保存されている.また近年 Takadaらにより,ビタミンKの腸管吸収がNPC1L1を 介して行われることが示され(6),NPC1L1は脂溶性ビタ ミンの吸収においても重要な働きを担っていることが明 らかにされた.

小腸に存在するコレステロールは,食事中コレステ ロール(約250〜500 mg/日)と食後腸管へと排出され る胆汁中コレステロール(約1,000 mg/日)の総和であ る.脂質異常症により体内コレステロール量が増加した 場合には,肝臓から腸管へ胆汁として排泄されたコレス テロールの再吸収を抑制することが体内コレステロール 量の減少につながり,エゼチミブのターゲットはここに ある.われわれは,食品成分の中からエゼチミブ様の活 性を有する成分を探索する目的で,34種のポリフェ ノールをスクリーニングした.その結果,数種のポリ フェノールがヒトの小腸吸収モデル細胞Caco-2におい てコレステロールの吸収を有意に阻害した(7).なかでも フラボンの1種であるケルセチンおよびルテオリンは,

コレステロール負荷食ラットにおいても血中コレステ

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ロール濃度の上昇を有意に抑制した(7).さらにトランス ポ ー タ ー の 発 現 が 少 な い と さ れ るHEK293T細 胞 に NPC1L1を強制発現させた系においても,エゼチミブと 同レベルまでコレステロールの吸収が抑制されたため,

これらのフラボンはNPC1L1を阻害すると推察された.

一方ラットを用いた検討において,腸管上皮に発現する NPC1L1のmRNA発現量を測定したところ,コレステ ロール食群で上昇傾向を示し,ケルセチン群で有意な減 少,ルテオリン群で低下傾向を示した.Caco-2細胞に おいても,ルテオリンおよびケルセチンによりNPC1L1 のmRNA発現量は低下した.NPC1L1の転写調節につ いては,転写因子SREBP2‒HNF4

α

経路およびPPAR

α

‒ RXR

α

経路が報告されており(8),現在われわれは,ケル セチンおよびルテオリンがこれらの転写調節に与える影 響を解析している.本研究によりポリフェノールの高コ レステロール血症改善・予防効果の一つとして,腸管に おけるコレステロールトランスポーター阻害という新た な可能性を示すことができた.ポリフェノールは腸管吸 収性が低いものも多いが,経口摂取された際,消化管へ は高濃度で到達するため,われわれは,生体における機 能発現の場として腸管は重要な臓器の一つであると考え ている.今後は および 両方の系において さらに詳細なメカニズムを解析し,生体におけるこれら フラボンの作用を明らかにしたい.

エゼチミブに関しては,39カ国の急性冠症候群患者1 万8,000人超を平均約6年追跡したIMPROVE-IT試験が 実施されている.この試験では,エゼチミブとシンバス

タチンとの併用により,シンバスタチン単独と比較して LDLコレステロール(LDL-C)値のさらなる低下ととも に,心血管イベントリスクが有意に減少することが明ら かとなった(9).一方,血中コレステロールに関しては,

薬物によるLDL-C低下に否定的な意見や,食事などの外 因性コレステロール,スタチン,およびエゼチミブに対 する感受性には個人差があることも知られている.これ らの感受性の差と遺伝子多型との関連性についての解析 も進められており,今後のこの分野の発展を期待したい.

  1)  S. W. Altmann, H. R. Davis Jr., L. J. Zhu, X. Yao, L. M. 

Hoos, G. Tetzloff, S. P. Iyer, M. Maguire, A. Golovko, M. 

Zeng  :  , 303, 1201 (2004).

  2)  J. L. Betters & L. Yu:  , 584, 2740 (2010).

  3)  H. R. Davis Jr. & S. W. Altmann:  ,  1791, 679 (2009).

  4)  P. S. Li, Z. Y. Fu, Y. Y. Zhang, J. H. Zhang, C. Q. Xu, Y. 

T. Ma, B. L. Li & B. L. Song:  , 20, 80 (2014).

  5)  A. B. Weinglass, M. Kohler, U. Schulte, J. Liu, E. O. Nke- tiah,  A.  Thomas,  W.  Schmalhofer,  B.  Williams,  W.  Bildl, 

D. R. McMasters  :  , 105

11140 (2008).

  6)  T. Takada, Y. Yamanashi, K. Konishi, T. Yamamoto, Y. 

Toyoda,  Y.  Masuo,  H.  Yamamoto  &  H.  Suzuki: 

275, 275ra23 (2015).

  7)  M.  Nekohashi,  M.  Ogawa,  T.  Ogihara,  K.  Nakazawa,  H. 

Kato, T. Misaka, K. Abe & S. Kobayashi:  , 9,  e97901 (2014).

  8)  Y. Iwayanagi, T. Takada, F. Tomura, Y. Yamanashi, T. 

Terada, K. Inui & H. Suzuki:  , 28, 405 (2011).

  9)  C. P. Cannon, M. A. Blazing, R. P. Giugliano, A. McCagg, J. 

A. White, P. Theroux, H. Darius, B. S. Lewis, T. O. Ophuis,  J. W. Jukema  :  , 372, 2387 (2015).

(小林彰子,東京大学大学院農学生命科学研究科)

図1NPC1L1の種差別の細胞外第2ループ 配列と,ヒト型NPC1L12Dモデル 図中×で示したPhe-532およびMet-543がエゼ チミブとの高親和性に重要なアミノ酸と考えら れている.PM: Plasma Membrane, SSD: Sterol- Sensing Domain.文献5, Fig. 4Aおよび5より 一部改変.

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化学と生物 Vol. 54, No. 6, 2016 プロフィール

小林 彰子(Shoko KOBAYASHI)

<略歴>2001年大阪市立大学大学院生活 科学研究科食品栄養科学専攻後期博士課程 単位取得退学後,博士(学術)取得/同年 高崎健康福祉大学研究員/2002年同大学 講師/2004年同大学准教授(助教授),東 京大学大学院農学生命科学研究科,博士

(農学)取得/2010年東京大学大学院農学 生命科学研究科准教授,現在に至る<研究 テーマと抱負>ポリフェノール等のファイ トケミカルがどの様にして生体内で機能を 発揮し得るかについて明らかにしたい<趣 味>娘と全力で遊ぶこと,観劇

Copyright © 2016 公益社団法人日本農芸化学会 DOI: 10.1271/kagakutoseibutsu.54.379

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