• Tidak ada hasil yang ditemukan

耐熱化酵素を好熱菌細胞内で創る - J-Stage

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2023

Membagikan "耐熱化酵素を好熱菌細胞内で創る - J-Stage"

Copied!
3
0
0

Teks penuh

(1)

今日の話題

428

化学と生物 Vol. 52, No. 7, 2014

耐熱化酵素を好熱菌細胞内で創る

好熱菌適応進化の使い道

筆者らは「耐熱性酵素を好熱菌細胞内で作る」研究を 行っているが(1)

,近年では「耐熱化酵素を好熱菌細胞内

で創る」ことにも興味をもっている.本稿では,好熱菌 を利用した耐熱化変異酵素の創出法について話題を提供 したい.

酵素はタンパク質性の触媒で,生命活動におけるさま ざまな化学反応を担う.これらは触媒条件が温和で,反 応選択性が高く,種類も豊富であることから,幅広い分 野で応用利用されており,その世界市場は四千億円以上 と言われる.しかしながら,酵素はタンパク質であるが ゆえに容易に変性し,その機能を失う.この不安定性と いう弱点は,酵素触媒の実用性を低める大きな原因にも なりうる.この点については,優れた物理化学的安定性 を示す高度(超)好熱菌由来の耐熱性酵素が有利である が,このような酵素は常温での活性が概して低く,化成 品生産や臨床検査など常温領域での酵素反応を必要とす る分野では利用しにくい.そこで期待されるのが「任意 酵素を適度に耐熱化し,常温高活性を維持したまま,常 温での保存性と触媒寿命を飛躍的に向上させる技術」と なる.

このような技術を考えるうえで,好熱菌を用いたカナ マイシンヌクレオチド転移酵素(KNT)の耐熱化研究 は興味深い.KNTは宿主にカナマイシン耐性を付与す る酵素で,pUB110(黄色ブドウ球菌プラスミド)由来

のKNTpUB110遺伝子は薬剤選択マーカーとして広く用い

られている.その細胞内機能温度は約55℃が上限であ る が,そ の 一 方 で 好 熱 菌 プ ラ ス ミ ドpTB19由 来 の

KNTpTB19遺伝子は,その発現産物の熱安定性を理由に

65℃でも機能する(2)

.KNT

pTB19はKNTpUB110のT130K アミノ酸置換体に相当し,その遺伝子は好熱菌に取り込 まれたKNTpUB110遺伝子から細胞内自発的変異により発 生したと想像できる.同様な現象は実験室内においても 再現されており,KNTpUB110遺伝子を有する好熱菌

 1174をカナマイシン存在下 で高温培養すると,耐熱化したKNTTK1(D80Y置換体,

機能温度上限63℃)とKNTTK101(D80Y/T130K二重置 換体,機能温度上限69℃)の遺伝子が得られる(3)

.ま

たKNTpUB110遺伝子の化学変異ライブラリを

CU21を宿主として構築し,カナマイシン 存 在 下 で 高 温 培 養 し た 場 合 も,類 似 の 耐 熱 化KNT

(D80Y置換体とT130K置換体)の遺伝子が得られる(4)

さらに高度好熱菌  HB27を宿主 としたKNTTK101遺伝子のランダム変異ライブラリから は,81℃でも機能する耐熱化KNTの遺伝子が得られて いる(5)

.以上の結果は,①アミノ酸一置換でも十分な酵

素耐熱化が起こりうること,②好熱菌は酵素耐熱化のス クリーニング宿主として有用であること,および③化学 変異原処理と同様に好熱菌細胞内の自発的変異もDNA 変異導入法として有用であること,を示している.

上記①〜③を動機に,筆者らは好熱菌を利用した耐熱 化変異酵素の創出法を研究している.本手法では,好熱 菌宿主に対象遺伝子を導入し,細胞内の自発的変異を利 用しながら変異遺伝子を発生させる(図

1

.その際,

対象遺伝子発現産物(酵素)の活性に依存した生育選択 圧をかけられれば,高温培養下でも活性を示す(すなわ ち耐熱化された)酵素ならびにその遺伝子を容易に選別 できる.つまりKNTTK101遺伝子の創出過程(上記参照)

を,進化工学として体系化しようという考えだ.宿主に は  HTA426を 使 用 し て い る.

本好熱菌はマリアナ海溝深海から単離された好気性のグ ラム陽性桿菌で,遺伝子組換えが可能であり(1, 6〜8)

,全

ゲノム配列も公開されている(9)

.42℃から74℃という

幅広い温度範囲で生育することから,中温から高温にか けての段階的な酵素耐熱化選択が可能だ.実際には DNA修復系遺伝子を破壊した高変異性株MK480を宿主 と し て 利 用 し て い る.MK480株 中 で は,そ の 親 株 MK242中よりも104倍ほど高い確率で自発的変異が起こ り,あらゆる塩基置換が起こりうる.

本手法を用いて,中温菌 由来の 遺伝子 ( ) の高温機能化を試みた.本遺伝子は ピリミジン塩基の生合成に必須で,MK242株とMK480 株は内在性 遺伝子を欠失しているためウラシル要 求性を示す. 遺伝子をMK242株に導入したとこ ろ,得られた株は65℃ではウラシル原栄養性を,70℃

ではウラシル要求性を示した.つまり 遺伝子の 細 胞 内 機 能 温 度 は65

℃が 上 限 と 言 え る.

と こ ろ が

(2)

今日の話題

429

化学と生物 Vol. 52, No. 7, 2014

遺伝子を有するMK480株を,ウラシルを含まな い最少培地中70℃で培養すると,二日後に生育してき た.得られた細胞が有する 遺伝子を解析したと ころ,C497T変異(A166 Vアミノ酸変異)が見いださ れた.本変異遺伝子 ( ) をMK242株に再導入 しても,得られた株は70℃でウラシル原栄養性を示し た.組換えタンパク質を用いた実験からも,BSpyrFe1 酵素はBSpyrF酵素よりも熱安定であることが確認でき た.KNTTK101遺伝子が 細胞内で 発生したように,どうやら 細胞内でも 耐熱化酵素遺伝子が発生するようだ.なおMK242株中 で は 遺 伝 子 が 発 生 し な か っ た こ と か ら,

MK480株はMK242株よりも変異遺伝子の発生に有用と 考えられる.

さらに同手法によって, 由来チ

オストレプトン耐性遺伝子 ( ) と

由来クロラムフェニコール耐性遺伝子 ( )  から,各々の変異遺伝子 (C772T変異,H258P コドン変異)と (G412A変異,A138Tコドン 変異)を取得した.これら変異遺伝子をMK242株に再 導入して細胞内機能温度を調べたところ, 遺 伝子は 遺伝子よりも上限温度が5℃ほど高かっ た. 遺伝子と 遺伝子の上限温度は同等 であったものの, 遺伝子は 遺伝子より も高温領域での機能性に優れていた.これら両変異遺伝 子の発現産物(酵素)は,試験管内での熱安定性も向上 していた.以上の結果は,本手法が耐熱化変異酵素遺伝 子の創出に有用であることを示唆している.

上述したモデル実験における酵素耐熱化は決して大幅 なものではなかったが,見いだされた変異を飽和変異法

などにより追及すればさらなる耐熱化も可能であろう.

また,これら変異酵素の耐熱化は酵素活性に基づく生育 選択圧を 細胞にかけることで容易に選 別できたが,多くの酵素については作業が煩雑な試験管 内スクリーニングによって耐熱化変異を選別する必要が ある.この課題については,対象酵素とレポーター酵素 を融合させることで対象酵素の熱変性を評価する手法が 提案されているほか(10)

,筆者らも新たな耐熱化スク

リーニング手法を検討している.このような方法が確立 されれば,好熱菌を用いた「耐熱化変異酵素の創出法」

は,さまざまな有用酵素を産業界に導出できる技術へ発 展すると期待している.

謝辞:本稿で紹介した研究は,生研センターイノベーション創出事業の 支援を受けて行った.

  1) H. Suzuki, K. Yoshida & T. Ohshima : , 79, 5151 (2013).

  2) T. Imanaka, M. Fujii, I. Aramori & S. Aiba : ,  149, 824 (1982).

  3) H. Liao, T. McKenzie & R. Hageman : , 83, 576 (1986).

  4) M.  Matsumura  &  S.  Aiba : , 260,  15298 

(1985).

  5) J.  Hoseki,  T.  Yano,  Y.  Koyama,  S.  Kuramitsu  &  H. 

Kagamiyama : , 126, 951 (1999).

  6) H.  Suzuki  &  K.  Yoshida : , 22,  1279 (2012).

  7) H.  Suzuki,  A.  Murakami  &  K.  Yoshida : , 78, 7376 (2012).

  8) H. Suzuki, K. Wada, M. Furukawa, K. Doi & T. Ohshima :   , 77, 2316 (2013).

  9) H. Takami, Y. Takaki, G. J. Chee, S. Nishi, S. Shimamura,  H. Suzuki, S. Matsui & I. Uchiyama : ,  32, 6292 (2004).

10) H. Chautard, E. Blas-Galindo, T. Menguy, L. GrandʼMour- sel, F. Cava, J. Berenguer & M. Delcourt : ,  4, 919 (2007).

(鈴木宏和,小林淳平,九州大学大学院農学研究院)

図1好熱菌を利用した耐熱化変異酵素の創出

好熱菌に対象遺伝子を導入し,変異遺伝子ライブラリを発生させる.その中から耐熱化変異酵素の遺伝子を,酵素活性に基づいた生育選択 圧もしくは活性スクリーニングにより選別する.培養温度が高温であるため,耐熱化していない酵素は熱変性により活性を示さない.

(3)

今日の話題

430

化学と生物 Vol. 52, No. 7, 2014

プロフィル

鈴木 宏和(Hirokazu SUZUKI)    

<略歴>1999年東北大学工学部生物化学 工学科卒業/2004年同大学大学院工学研 究科生物工学専攻博士課程修了,博士(工 学)/同年東京大学大学院農学研究科博士 研究員/2007年理化学研究所基礎科学特 別研究員/2008年神戸大学自然科学系先 端融合研究環特命助教/2011年九州大学 大学院農学研究院客員准教授/2014年鳥 取大学大学院工学研究科准教授<興味を もっていること>有用微生物群の遺伝子改 変技術をいかに迅速に確立するか<趣味>

温泉,逍遥

小林 淳平(Jyumpei KOBAYASHI)  

<略歴>2006年日本大学生産工学部応用 分子化学科卒業/2012年同大学生産工学 研究科応用分子化学専攻博士後期課程修 了/同年九州大学農学研究院学術研究員/

2014年鳥取大学大学院工学研究科プロ ジェクト研究員<研究テーマと抱負>有用 な酵素を創出し,バイオマスのエネルギー 変換や医療へ応用したい<趣味>読書,猫 の世話

Referensi

Dokumen terkait

(長田年弘,大鵬薬品工業株式会社第二研究所,久留米 大学先端癌治療研究センター) プロフィール 長田 年弘(Toshihiro OSADA) <略歴>2005年慶應義塾大学理工学部応 用化学科卒業/2007年同大学大学院理工 学研究科修士課程修了/2007年大鵬薬品 工業(株)第二研究所研究員/2014年久留 米大学先端癌治療研究センター特別研究生