二 〇 一 七 年 度 大 学 入 試 セ ン タ ー 試 験
解 説
︿ 古 典 ﹀
文
﹃ 木
き草
くさ物 語
﹄
﹄は
、江 戸時 代中 期の 女性 歌人 であ る宮みや
部べ 万まん
︵?
~一 七八 八︶ によ って 書か れた 長編 の擬 古物 語︵ 平安 時代 の物 語を 模し て書 かれ た物 語︶ で
・作 品と もに 知名 度は 高く なく
、受 験生 が文 学史 的に 知っ てお かな けれ ばな らな い作 家・ 作品 とい うわ けで はな い。 擬古 物語 と言 えば
、一 般的 代成 立の 作品 が多 いが
、こ れま でに 東進 の﹁ セン ター 試験 本番 レベ ル模 試﹂ でも 出題 され てき たよ うに
、本もと
居おり
宣のり
長なが
の﹃ 手た 枕まくら
﹄、 荒あら
木き 田だ 麗れい
女じよ
の諸 時代 の国 学者 や歌 人の 手に よる 作品 もい くつ かあ る。 宮部 万は
、高 崎藩
︵現 在の 群馬 県高 崎地 方︶ の藩 士浅 井直 方の 娘で
、同 藩士 で国 学者 で 義正 に嫁 した
。義 正が 幕府 の和 学所
﹇= 国学 研究 所﹈ に仕 える こと とな り︵ 将軍 家師 範と なる
︶、 万は 江戸 に同 行、 江戸 にて
、公
で 堂上
︵昇 てい るこ と︶ 歌壇 の中 心人 物で あっ た冷れい
泉ぜい
為ため
村むら
︵冷 泉家 中興 の歌 人。 門人 に小お 沢ざわ
廬ろ 庵あん
など がい る︶ や、 同じ く公
で
、幕 府で 国史 の進 講︵ 貴人 義︶ を務 めて いた 烏からす 丸まる
光みつ
胤たね
など に和 歌や 学問 を学 ぶよ うに なる
。歌 集に
﹃万 女詠 草﹄
、夫 義正 との 共詠 家集 に﹃ 相生 乃言 葉﹄ など があ り、 和歌 源氏 物語
﹄の 葵の 巻を 書き 写す など して いる
。 され たの は、 貴公 子︵ 菊君
︶が 美し い女 性︵ 若い 尼︶ を垣 間見 て恋 に落 ちる とい う場 面で ある が、 これ は古 典文 学で は典 型的 と言 える 恋の 始ま ある
。男 が送 った 手紙
︵和 歌︶ が相 手の 女や 女の 代理 人に よっ て一 度は 拒否 され ると いう のも 一つ のパ ター ンで ある
。こ のよ うな 擬古 物語 に見
﹂の 大も とは
﹃源 氏物 語﹄ であ ると 言え
、一 方、 作中 人物 が詠 んで いる 和歌
︵実 際に は作 者が 詠ん でい る︶ に不 自然 さが ない こと など を見 ると
、 は、 国学 や和 歌を 学び
、﹃ 源氏 物語
﹄を 書写 した 人で ある から こそ 書け た著 作で ある と言 えよ う。 ンタ ー試 験本 試験 の古 文の 問題 は、 昨年 度︵ 二〇 一六 年︶ の﹃ 今昔 物語 集﹄
︵説 話集
︶の よう な例 外も ある が、 多く は、 平安 時代 の物 語・ 鎌倉 物語
・江 戸時 代の 仮名 草子 など 物語
︵小 説︶ 類か らの 出題 であ り、 その 点で は今 年も その 傾向 から はず れな かっ たと 言え る。 なの
で、 主﹇
=蔵 人﹈ は﹁ 十分 なお もて なし もで きず
、畏 れ多 い︵ 菊君 の︶ お出 まし であ るよ
﹂と
、︵ こゆ るぎ の磯 の﹁ いそ
﹂で はな いが
︶急
いで
、酒 のさ かな を求 めて
、御 供の 人々 も︵ 菊君 を︶ もて なそ うと 騒ぐ が、 菊君 は﹁ 涼し いほ うに
﹂と 言っ て部 屋の 端近 くに 寄っ て横 にな り、 くつ ろい で いら っし ゃる
。そ の御 様子 は、 場所 がら もあ り、
︵普 段に も︶ まし てま たと ない ほど に素 晴ら しく 見え なさ る。 隣︵ の家
︶と 言っ ても たい そう 近く
、ち ょっ とし た透 垣な どを 設け 渡し てあ るの だが
、夕 顔の 花が 所狭 しと 咲い てい るの が、 見慣 れな さら ない けれ ども
、 美し いと 思っ て︵ 菊君 は︶ 御覧 にな る。 だん だん と日 が暮 れは じめ
︵夕 日の 明か りを たた えた 夕顔 の上 の︶ 露の 光︵ の輝 き︶ が︵ 夕闇 に︶ まぎ れる 様子 も ない ので
、︵ 菊君 は庭 に︶ 下り 立っ てこ の︵ 夕顔 の︶ 花を 一房 折り 取り なさ った が、 その 時に
、透 垣の 少し
︵隙 間が
︶空 いた とこ ろか ら︵ 隣を
︶覗 きな さ る。 する と、 尼の 住ま いと 思わ れて
、閼 伽棚 にち ょっ とし た草 の花 など を摘 んで 散ら して あっ たが
、五 十歳 くら いの 尼が 出て 来て
、水 で清 めた りし てい る。 花皿 に数 珠が 押し やら れて
、さ らさ らと 鳴っ てい るの もた いそ うし みじ みと する が、 また 奥の ほう から うっ すら とい ざり 出て 来る 人が いる
︵の が見 えた
︶。 年の ころ は、 二十 歳く らい と思 われ て、 たい そう 色白 で小 柄で ある が、 髪の 端が
、座 って いる
︵そ の人 の︶ 腰の あた りく らい にふ さふ さと 広が って いる の は、 これ も尼 であ ろう か、 たそ がれ 時で ぼん やり とし か見 えず
、は っき りと はお わか りに なら ない
。片 手に お経 を持 って いる が、 何で あろ うか
、こ ちら に いる 老い た尼 にさ さや いて 微笑 んで いる のも
、こ のよ うな 葎の 中﹇
=質 素な 住み か﹈ には 不釣 り合 いな ほど
、高 貴で かわ いら しい 様子 であ る。 たい そう 若 いの に、 どれ ほど の発 心を して この よう に俗 世を 捨て て出 家し てし まっ てい るの だろ うと
、︵ 菊君 は︶ つま らな いこ とに 御心 がと まる 癖が ある ので
、︵ この 若い 尼の こと を︶ たい そう しみ じみ と見 過ご しが たく お思 いに なる
。 主は
、御 果物 など を︵ 菊君 に差 し上 げる のに
︶ふ さわ しい 様子 にし て持 って 出て
、﹁ せめ てこ れを
﹂と
、準 備し て騒 ぐが
、︵ 菊君 はお 部屋 に︶ お入 りに なっ ても
︵果 物に は︶ 見向 きも なさ らな い。
︵菊 君は
︶﹁ たい そう しみ じみ と心 ひか れる 人を 見て しま った もの だよ
、︵ 俗人 と交 渉を 断っ てい る尼 であ るか ら無 理や り押 しか けて
$
う こと もで きな いが︶尼 でな かっ たら
、
$
わず にす ます こと はで きそ うに ない﹂と いう お気 持ち がし て、
︵周 囲に
︶人 がい ない す きに 御前 にお 仕え する 少年 にお 尋ね にな る。
﹁こ の家 の隣 に住 む人 はど のよ うな 人か
。知 って いる か﹂ と︵ 菊君 が︶ おっ しゃ ると
、︵ 少年 は︶
﹁主 のき ょう だい であ る尼 と申 しま す者 が、 数カ 月来 山里 に住 んで おり まし たが
、近 頃突 然こ ちら へ出 て来 て︵ おり まし て︶
、菊 君様 がこ のよ うに 急に おい でに なっ た 時に
、折 の悪 いこ とだ と、 主は たい そう わず らわ しい こと に思 って おり ます
﹂と 申し 上げ る。
﹁そ の尼 は、 歳は いく つぐ らい であ ろう か﹂ と、 さら に︵ 菊 君が
︶お 尋ね にな ると
、︵ 少年 は︶
﹁︵ その 人は
︶五 十歳 過ぎ にも なる でし ょう か。 娘で たい そう 若い 人も
、︵ 母親 と︶ 同様 に俗 世を 捨て て出 家し て、 とう か がい まし たの は、 本当 でし ょう か。 その 身の 上の わり には いや しげ なと ころ はな くて
、︵ 仏道 に対 して
︶こ の上 なく 気位 が高 い人 であ るた めに
、ほ とん ど この 世を 嫌に 思っ て︵ 出家 して
︶し まっ たと か言 うこ とで す。 本当 に仏 に仕 える 気位 の高 さは たい そう なも ので す﹂ と言 って 笑う
。﹁ しみ じみ とす るこ と であ るよ
。そ れほ ど悟 った とい う人 に、 無常 なこ の世 につ いて の話 も申 し上 げた い気 持ち がす るが
、突 然の とり とめ ない 話も 罪深 いけ れど
、︵ 彼女 は︶ ど のよ うに 言う だろ うか
、試 しに 手紙 を渡 して くれ ない か﹂ とお っし ゃっ て、 御畳 紙に
︵書 いた 和歌 は︶
、
﹁露 かか る…
=
(
涙の よう な︶ 露が 降り かか る心 もは かな くと りと めな い。 たそ がれ 時に ほの かに 見た 家に 咲く 花で ある 夕顔︵の よう な美 しい あな
た︶ よ﹂ 年は
︵菊 君の 真意 が︶ よく わか らず
、何 かわ けが ある のだ ろう と思 って
、︵ 手紙 を︶ 懐に 入れ て︵ 隣の 家へ
︶出 かけ た。
︵菊 君は
︶そ の後 もぼ んや りと 物思 いに ふけ って いら っし ゃる が、 人々 が、 御前 に参 上し
、主 も﹁ 退屈 でい らっ しゃ いま しょ う﹂ と言 って
、い ろい ろと 話な どを 申し 上げ るう ちに
、夜 もた いそ う更 けて いく ので
、菊 君は 例の
︵手 紙の
︶御 返事 がた いそ う見 たい が、 あい にく な人 の多 さを つら くお 思い にな ので
、眠 たそ うに 振る 舞い なさ って 部屋 の端 に寄 って 横に おな りに なる と、 人々 は、
︵菊 君の
︶御 前で
﹃さ あ、 早く お休 みく ださ い﹄ と言 って
、主 も部 の奥 へす べる よう にさ っと 入っ た。 やっ と︵ 隣へ 使い に行 った
︶少 年が 帰っ て参 りま した ので
、︵ 菊君 が︶
﹁ど うだ った か﹂ とお 尋ね にな ると
、︵ 少年 は︶
﹁﹃
︵こ こに は︶ まっ たく この よう な 手紙 をい ただ くは ずの 人も おり ませ ん。 場所 間違 えで はな いで しょ うか
﹄と
、あ の老 尼は
、思 いが けな いこ との よう に申 しま した
﹂と 言っ て、
︵さ らに
︶
﹁﹃ 世を そむ く…
=
(
我が 家は︶俗 世を 捨て て︵ 出家 した 者が 住ん で︶ いる 葎の 生い 茂っ た家 で粗 末な 家で ある のに
、ど のよ うな 夕顔 の花 を見 たと い うの です か。
︵あ なた が見 たと いう 女性 など ここ には おり ませ ん。
︶ のよ うに 申し 上げ てく ださ い﹄ と言 って
、︵ 老尼 が︶ 不審 がり まし たの で、 帰っ て参 りま した
﹂と 申し 上げ ると
、甲 斐の ない こと では ある けれ ども
、︵ 突 の手 紙で は︶ もっ とも なこ とだ とも
︵菊 君は
︶思 い返 しな さる が、 寝る こと がお でき にな らな い。 不思 議な こと に、
︵隣 家の 若い 尼の
︶か わい らし かっ 姿が
、夢 では ない
︵現 実と して
︶御 枕元 にじ っと 寄り 添っ てい るお 気持 ちが して
、﹁ 間近 けれ ども
﹇= 人知 れず 想い を寄 せる 人が 間近 にい るの に
$
う手 ても ない﹈﹂ と︵ 菊君 は︶ 一人 つぶ やき なさ る。 解
説﹈ 解釈 の問 題 重要 単語
・重 要文 法を 確認 し、 前書 きな どや 前後 の文 意も 踏ま えて 解答 した い。
&
標準
﹁に げな きま で﹂ の解 釈と して 最も 適当 なも のを 選べ
。
﹁に げな き/ まで
﹂と 単語 分け され る。
﹁ま で﹂ につ いて は、 すべ ての 選択 肢が
﹁ほ ど﹂ で共 通し てい る。
﹁に げな き﹂ は、
﹁釣 り合 わな い・ ふさ わし
くな い・ 似合 わな い﹂ など と訳 す形 容詞
﹁に げな し︵ 似げ なし
︶﹂ の連 体形 であ る。 よっ て、 正解 は3
﹁釣 り合 わな いほ ど﹂ しか ない
。 単純 な単 語の 意味 の問 題だ が、
﹁に げな し﹂ はや や難 しい レベ ルと 言え るか も知 れな い。 しか し、 直前 の﹁ かか る葎 の中 には
︵= この よう な質 素な 住み かに は︶
﹂と
、直 後の
﹁あ てに らう たげ なり
︵= 高貴 でか わい らし い様 子で ある
︶﹂ との つな がり 具合 から 考え ても
、最 もス ムー ズに 意味 が通 るの は3
であ る。
'
基礎
﹁聞 こえ まほ しき
﹂の 解釈 とし て最 も適 当な もの を選 べ。
﹁聞 こえ
/ま ほし き﹂ と単 語分 けさ れる
。﹁ まほ しき
﹂は
、希 望︵
~し たい
・~ して ほし い︶ の助 動詞
﹁ま ほし
﹂の 連体 形だ が、 これ に関 して はい ず れの 選択 肢に も誤 りは なく これ も単 純な 単語 一語 の意 味の 問題 であ る。
﹁聞 こえ
﹂は
、ヤ 行下 二段 活用 動詞
﹁聞 こゆ
﹂の 未然 形。
﹁聞 こゆ
﹂は
、一 般動 詞と して
﹁聞 こえ る・ Ûさ れる
・︵ 聞い て︶ わか る﹂
、謙 譲の 本動 詞と して
﹁申 し上 げる
﹂、 謙譲 の補 助動 詞と して
﹁お
~申 し上 げる
・お
~す る﹂ と訳 す動 詞。 これ だけ でも 正し いの は3
のみ であ る。
﹁聞 こゆ
﹂に は、
﹁聞 く﹂
︵2
︶や
﹁う かが う﹂
︵1
・﹃ 聞く
﹄の 謙譲 表現
︶や
﹁話 し合 う﹂
︵5
︶の 意 はな く、
﹁話 す﹂
︵4
︶な ら動 作的 には 間違 いは ない が謙 譲の 意が ない
。 よっ て、 正解 は3
であ る。
(
標準
﹁あ やし う﹂ の解 釈と して 最も 適当 なも のを 選べ
。
﹁あ やし う﹂ は、 形容 詞﹁ あや し﹂ の連 用形
﹁あ やし く﹂ の語 尾が ウ音 便化 した 状態
。﹁ あや し﹂ は、
﹁怪
︵奇
・異
︶し
﹂で あれ ば、 現代 語の
﹁あ や しい
﹂と 同様 に、
﹁不 思議 だ﹂
﹁疑 わし い・ 不審 だ﹂ とか
、﹁ 異常 だ・ 並々 でな い﹂
﹁け しか らぬ
・ふ つご うだ
﹂の 意味 も示 すが
、﹁ 賤し
﹂で あれ ば、
﹁み すぼ らし い・ 粗末 だ﹂
︵主 に物 に対 して 使う 場合
︶・
﹁身 分が 低い
・卑 しい
﹂︵ 主に 人物 に対 して 使う 場合
︶と いう 意味 も示 す形 容詞 であ る。 単語 の意 味 から 見る と5
以外 は大 きな 誤り がな く、 文意 に当 ては まる 訳を 考え なく ては なら ない こと にな る。 直後 を見 ると
﹁ら うた かり し面 影の
、夢 なら ぬ御 枕上 につ と添 ひた る御 心地 して
﹂と 書か れて いる
。﹁ あや しう
﹂が 直後 の﹁ らう たか りし
︵か わい らし かっ た︶
﹂に 係っ てい ると 見る と、 が4
﹁不 思 議な ほ) ど) に﹂ とな って いれ ば意 味が 通る がそ うは なっ てお らず
、選 択肢 の中 に意 味が 通る もの はな い。
﹁あ やし う﹂ は﹁ 夢な らぬ 御枕 上に つと 添ひ た
る御 心地 して
﹂に 係っ てい るの であ る。 そう 見る と、 意味 が通 るの は4
の﹁ 不思 議な こと に﹂ しか ない
。こ の部 分は
﹁︵ 隣家 の若 い尼 の︶ かわ いら し かっ た姿 が、 夢で はな い︵ 現実 とし て︶ 御枕 元に じっ と寄 り添 って いる お気 持ち がし て﹂ とい う意 味で ある から
、そ のよ うな こと があ るは ずも ない の にま ざま ざと その よう に思 われ るの が﹁ あや し︵ 不思 議だ
︶﹂ と言 って いる ので ある
。 よっ て、 正解 は4
であ る。 基礎 的単 語に 関す る問 題だ が、 前後 の文 意を 見て 判断 する 必要 があ る問 題で ある
。 正解
&
3
'
3
(
4
21
22
23
文法
︵助 動詞 の意 味︶ の問 題 基礎 波線 部
a
~
e
の助 動詞 を、 意味 によ って 三つ に分 ける と、 どの よう にな るか。そ の組 合せ とし て最 も適 当な もの を選 べ。 波線
部
a
~
e
のう ち、a
・c
・e
は﹁ぬ
﹂、
d
は﹁ね
﹂で ある が、 助動 詞で これ らの かた ちに なる のは 次の 通り
。
ぬ未然 形+ ぬ= 打消 の助 動詞
﹁ず
﹂の 連体 形 連用 形+ ぬ= 完了
︵強 意︶ の助 動詞
﹁ぬ
﹂の 終止 形
ね未然 形+ ね= 打消 の助 動詞
﹁ず
﹂の 已然 形 連用 形+ ね= 完了
︵強 意︶ の助 動詞
﹁ぬ
﹂の 命令 形
a
は、直 前の
﹁給 は﹂ が四 段活 用動 詞﹁ 給ふ
﹂の 未) 然) 形) であ るか ら、
打消 の助 動詞
﹁ず
﹂の 連体 形で ある
。
c
は、直 前の
﹁そ むき
﹂が 四段 活用 動詞
﹁そ むく
︵背 く︶
﹂の 連) 用) 形) であ るか ら、 完了 の助 動詞
﹁ぬ
﹂の 終止 形で ある
。下 に﹁ らむ
﹂が ある ので 強 意と 考え ても よい
。
d
は、直 前の
﹁給 ひ﹂ が四 段活 用動 詞﹁ 給ふ
﹂の 連) 用) 形) であ るか ら、
完了 の助 動詞
﹁ぬ
﹂の 命令 形で ある
。
e
は、直 前の
﹁な ら﹂ が断 定の 助動 詞﹁ なり
﹂の 未) 然) 形) であ るか ら、
打消 の助 動詞
﹁ず
﹂の 連体 形で ある
。
波線 部
b
は﹁ に﹂ であ るが、助 動詞 で﹁ に﹂ にな るの は次 の通 り。
﹁に
﹂↓
*
完 了の 助動 詞﹁ ぬ﹂ の連 用形。
※連 用形 に接 続す る。
※﹁
~に き・
~に けり
・~ にた り・
~に けむ
﹂の 形で 使わ れて いる こと が多 い。
*
断 定の 助動 詞﹁ なり﹂の 連用 形。
※体 言や 連体 形に 接続 する
。
※ほ ぼ次 の二 つの パタ ーン でし か使 われ ない
。
︵
+
︶ 後方 に﹁ あり
・侍 り・ おは す﹂ 等、 物や 人の 存在 を表 す動 詞を 伴い
、﹁ に﹂ 自体 が﹁ で﹂ と訳 せる 場合
。 例 そは
、わ が兄 にや あ) ら) む。
︵そ れは
、私 の兄 で) あろ うか
。︶
︵
,
︶﹁ にて
・に して
﹂の 状態 で使 われ てい て、 その 部分 が﹁ であ って
﹂と 訳せ る場 合。 例 そは 我が 兄に) て)
、太 郎と いふ 者な り。
︵そ れは 私の 兄で) あ) っ) て)
、太 郎と いう 者で ある
。︶
b
は、体) 言) に接 続し てお り、 存在 を示 す動 詞﹁ あ) ら)
﹂を 伴い
、﹁ 尼に) やあ らむ
﹂は
﹁尼 で) あろ うか
﹂と 訳せ るの で、 断定 の助 動詞
﹁な り﹂ の連 用形 であ る。 以上
から
、
a
とe
は打 消、b
は 断定、
c
とd
は完 了で ある。 よっ て、 正解 は5
であ る。 正解
5
24
内容 説明 の問 題 基礎 傍線 部
A
﹁御 心地
﹂と ある が、 その 説明 とし て最 も適 当な もの を選 べ。 傍線
部
A
の直 前に ある﹁い と/ あは れな る/ 人/ を/ 見/ つる
/か な、 尼/ なら
/ず
/は
、/ 見/ で/ は/ え/ やむ
/ま じき
﹂は
、﹁ たい そう しみ じみ とす る人 を見 てし まっ たも のだ よ、 尼で なか った ら、
$
わ ずに すま すこ とは でき そう にな い﹂ とい う意 味で ある。﹁ つる
﹂は
、完 了の 助動 詞﹁ つ﹂ の連 体形
。﹁ かな
﹂は
、詠 嘆の 終助 詞。
﹁な ら﹂ は、 断定 の助 動詞
﹁な り﹂ の未 然形
。﹁ ずは
﹂は
、打 消の 仮定 条件
︵も し~ ない なら ば︶ を表 す表 現。
﹁で
﹂は
、﹁
~し ない で・
~し なく て﹂ と訳 す打 消の 接続 助詞
。﹁ え﹂ は、 打消 表現
︵こ こで は﹁ まじ き﹂
︶と 呼応 して 不可 能︵
~で きな い︶ を表 す呼 応 の副 詞。
﹁や む︵ 止む
︶﹂ は、 現在 でも
﹁雨 がや む・ 痛み がや む﹂ など と使 う動 詞だ が、 古文 では
﹁そ のま まに する
・そ れき りに なる
﹂の 意で 使わ れる こと が多 い動 詞。
﹁ま じき
﹂は
、打 消推 量︵
~な いだ ろう
・~ しそ うに ない
︶の 助動 詞﹁ まじ
﹂の 連体 形で ある
。 ここ で言 って いる
﹁い とあ はれ なる 人﹂ とは
﹁見 つる
﹂の 対象 であ り、
﹁尼 なら ずは
﹂と いう 仮定 で述 べら れて いる 人で ある から
、実 際に は﹁ 尼﹂ であ る人
、つ まり
、菊 君が 透垣 越し に覗 き見 た、
﹁年 のほ ど、 二十 ばか りと 見え
﹂て
、﹁ これ も尼 にや あら む﹂ と見 た﹁ あて にら うた げ﹂ な若 い尼 であ る。 菊君 は、 この 若い 尼を
﹁い とあ はれ なる 人﹂ と思 い、
﹁見 では えや むま じき
︵=
$
わ ずに すま すこ とは でき そう にな い︶﹂と 思っ てい るの であ るか ら、 この 若い 尼に 心ひ かれ
、俗 人と 交渉 を断 って いる 尼で ある から 無理 やり 押し かけ て
$
うこ とも でき ない が、 尼で なか った ら、﹁
$
わず にす ます こ とは でき そう にな い﹂ と思 って いる ので ある。つ まり
、傍 線部
A
﹁ 御心 地﹂ は、 菊君 の、 若い 尼に 対す る恋 心を 言っ てい るの であ る。 よっ て、 正解 は2であ る。 そも そも
、﹁ 御心 地﹂ の﹁ 御﹂ は、 基本 的に 尊敬 の意 を示 す接 頭語 であ るが
、本 文冒 頭か ら敬 意が 払わ れて いる のは 菊君 だけ であ る。 つま り、
﹁御 心 地﹂ は菊 君の 心な ので ある
。蔵 人の 心と して 説明 して いる
・3
や4
、老 尼の 心と して 説明 して いる は5
、そ れだ けで 誤り であ る。 また
、貴 公子 が美 しい 女性 を垣 間見 ると いう のは
、物 語の 世界 では 典型 的な 恋の 発端 であ る。 第二 段落 で菊 君が 隣の 若い 尼を 覗き 見た 時点 で、 この 尼に 対す る恋 心が 菊 君に 芽生 えた のだ と見 るべ きで ある
。恋 心以 外の 単な る好 奇心
︵1
︶で 見て いた ので はな い。 菊) 君) の) 心) であ り、 恋) 心) であ るの だか ら、
﹁菊 君の 恋心
﹂ と説 明し てい る2
が正 解で ある こと は、 傍線 部直 前の 意味 をと るま でも なく 明ら かで ある
。 正解
2
25
問
内容 説明 の問 題 標準 傍線 部
B
﹁眠 たげ にも てな い給 うて
﹂と ある が、 その 説明 とし て最 も適 当な もの を選 べ。
﹁眠 たげ に/ もて ない
/給 う/ て﹂ その もの は、
﹁眠 たそ うに 振る まい なさ って
﹂で ある が、 直前 部、
﹁君
/は
/か の/ 御返 し/ の/ いと
/ゆ かし き
/に
、/ あや にく なる
/人 しげ さ/ を/ わび しう
/思 せ/ ば、
﹂は
、﹁ 菊君 は例 の︵ 手紙 の︶ 御返 事が たい そう 見た いが
、あ いに くな 人の 多さ をつ らく お思 いに なる ので
﹂と いう 意味 で、 ここ が﹁
~の で﹂ と、 傍線 部
B
の理 由説 明に なっ てい る。 そし て、 続く 次の 段落 冒頭 の﹁ から うじ て/ 童/ の/ 帰 り/ 参り/た れ/ ば、
/﹃ いか に/ ぞ﹄
/と
/問 ひ/ 給ふ
/に
﹂に
、﹁ やっ と︵ 隣へ 使い に行 った
︶少 年が 帰っ て参 りま した ので
、︵ 菊君 が︶
﹃ど う だっ たか
﹄と お尋 ねに なる と﹂ とあ る。
﹁ゆ かし き﹂ は、
﹁~ した い・ 心ひ かれ る﹂ の意 の形 容詞
﹁ゆ かし
﹂の 連体 形。
﹁あ やに くな る﹂ は、
﹁あ いに くだ
・折 が悪 い・ 意地 が悪 い﹂ など と訳 す形 容動 詞﹁ あや にく なり
﹂の 連体 形。
﹁人 しげ さ﹂ は、 名詞
﹁人
﹂に
、﹁ 多い
・絶 え間 ない
・茂 って いる
﹂な どの 意の 形容 詞﹁ しげ し︵ 繁し
・茂 し︶
﹂ が名 詞化 した
﹁し げさ
﹂が 付い た語 で、
﹁人 の多 さ﹂ の意
。﹁ わび しう
﹂は
、﹁ つら い・ 苦し い・ 寂し い・ 興ざ めだ
﹂な どの 意の 形容 詞﹁ わび し﹂ の連 用形
﹁わ びし く﹂ の語 尾が ウ音 便化 した 状態
。﹁ 思せ
﹂は
、﹁ お思 いに なる
﹂の 意の 尊敬 語﹁ 思す
﹂の 已然 形。
﹁も てな い﹂ は、
﹁扱 う・ 振る 舞う
﹂の 意 の四 段活 用動 詞﹁ もて なす
﹂の 連用 形﹁ もて なし
﹂の 語尾 がイ 音便 化し た状 態。
﹁童
︵わ らは
︶﹂ は、 一般 に﹁ 子供
﹂の こと だが
、﹁ 召し 使い であ る子 供﹂ の意 であ るこ とも 多く
、こ こで もそ の意 であ る。 ちな みに
、年 齢に 関係 なく
﹁︵ 身分 の低 い︶ 召し 使い
﹂の 意で 使わ れる こと もあ る。 つま り、 菊君 は少 年に 命じ て隣 の家 に持 って 行か せ、 少年 が返 事を もら って くる のを 待っ てお り、 もら って きた らす ぐに でも 手紙 の返 事を 見た いの であ るが
、あ まり に周 りに 人が 多く ては ばか られ たの で、 人々 を去 らせ よう とし て、
﹁眠 たげ に﹂ して 見せ たの であ る。 よっ て、 正解 は2
であ る。 の1
﹁蔵 人た ちが そう した 菊君 の行 動を 警戒 して
﹂、 の3
﹁こ っそ り蔵 人の 屋敷 を抜 け出 して 娘の もと に忍 び込 もう と考 えた
﹂、 の4
﹁突 然や って 来た 自分 を接 待す るた めに 一所 懸命 なの だろ うと 察し
、早 く解 放し てあ げよ うと 気を 利か せて
﹂、 の5
﹁慣 れな い他 人の 家に いる こと で気 疲れ をし て いた
﹂・
﹁早 く眠 りに つき たい とい うこ とを 伝え よう とし た﹂ は、 いず れも 本文 にこ れら に相 当す る箇 所が ない
。 正解
2
26
和歌 の内 容説 明の 問題 標準
X
・Y
の 和歌 に関 する 説明 とし て最 も適 当な もの を選 べ。X
の和歌
﹁露
/か かる
/心
/も
/は かな
/た そか れ/ に/ ほの 見/ し/ 宿/ の/ 花/ の/ 夕顔
﹂は
、﹁
︵涙 のよ うな
︶露 が降 りか かる 心も はか なく と りと めな い。 たそ がれ 時に ほの かに 見た 家に 咲く 花で ある 夕顔
︵の よう な美 しい あな た︶ よ﹂ とい う意 味で ある
。﹁ 露﹂ は、
﹁命
・人 生﹂ など はか ない もの を象 徴す るこ とが 多い が、 涙の たと えと して 用い られ るこ とも ある
。﹁ はか な﹂ は、 形容 詞﹁ はか なし
﹂の 語幹
。語 幹だ けを 用い て強 調す る用 法 であ る。
﹁た そか れ﹂ は、
﹁夕 暮れ 時﹂ のこ と。
﹁ほ の見
﹂は
、﹁ ほの かに 見る
・ち らっ と見 る﹂ の意 の﹁ ほの 見る
﹂の 連用 形。
﹁し
﹂は
、過 去の 助動 詞
﹁き
﹂の 連体 形。
﹁宿
﹂は
、﹁ 家﹂ のこ とで ある
。 菊君 が﹁ たそ かれ にほ の見
﹂た のは 実際 には 若い 尼で ある から
、﹁ 夕顔
﹂の 花は 若い 尼の たと えで ある と考 える べき であ る。 とす れば
、﹁ 露か かる 心﹂ は、 はか なく 感じ られ る恋 心を 抱い て涙 がち であ る菊 君の 心を 言っ てい るこ とが わか るだ ろう
。 よっ て、
X
の 和歌 に関 する 説明 では 大き な誤 りが ある 選択 肢は ない こと にな る。Y
の 和歌﹁世
/を
/そ むく
/葎
/の
/宿
/の
/あ やし き/ に/ 見/ し/ や/ いか なる
/花
/の
/夕 顔﹂ は、
﹁︵ 我が 家は
︶俗 世を 捨て て︵ 出家 した 者 が住 んで
︶い る葎 の生 い茂 った 家で 粗末 な家 であ るの にど のよ うな 夕顔 の花 を見 たと いう ので すか
﹂と いう 意味 であ る。
﹁世 をそ むく
︵世 を背 く︶
﹂は
、
﹁俗 世を 捨て て出 家す る﹂ の意
。﹁ 世を 捨つ
・世 を逃 る・ 世を 厭う
︵い とう
︶・ 世を 出づ
﹂な ども 同意 であ るの で覚 えて おき たい
。﹁ 葎︵ むぐ ら︶
﹂は
、
︵注
︶に ある とお り、 つる 草の 一種 で、 隣家 がつ る草 が生 い茂 るよ うな 質素 な住 まい であ るこ とを 表し てい る。
﹁あ やし き﹂ は、 問
(
で も見 たよ うに、 物に 対し て使 う時 には
﹁み すぼ らし い・ 粗末 だ﹂ 人物 に対 して 使う 時に は﹁ 身分 が低 い・ 卑し い﹂
、気 分や 様子 に対 して 使う 時に は﹁ 不思 議だ
﹂と 訳 す形 容詞
﹁あ やし
﹂の 連体 形だ が、 ここ は﹁ 宿﹂
︵家
︶に つい て言 って いる ので ある から
﹁み すぼ らし い・ 粗末 だ﹂ の意
。﹁ し﹂ は、 過去 の助 動詞
﹁き
﹂の 連体 形。
﹁や
﹂は
、疑 問の 係助 詞で ある
。﹁ 見し やい かな る花 の夕 顔﹂ は、
﹁見 たか どん な花 の夕 顔を
﹂と 直訳 され る箇 所で ある が、 目的 語と 述 語の 倒置 を戻 すと
﹁ど んな 夕顔 の花 を見 たの か﹂ と言 って いる こと にな る。 要は
、﹁ 粗末 な家 なの にあ なた はど んな 夕顔 の花 を見 たの か、 そん な華 や かな 花は どこ にも ない
﹂と 言っ てい るの であ り、
﹁夕 顔﹂ が若 い尼 のた とえ であ るこ とを 考え ると
、﹁ あな たが 見た とい う女 性な どこ こに はい ない
﹂と 言っ てい るこ とに なる
。 よっ て、
Y
の 和歌 に関 する 説明 が正 しい のは で4ある
。4
以外 の選 択肢 の
Y
の和 歌に 関す る説 明は 和歌 の表 現に 照ら し合 わせ て見 ると 合致 しな い もの ばか りで ある。5
の﹁ いっ たい 誰の こと を指 して いる のか 分か らな い﹂ は誤 りで はな いが
、5
は﹁ この 家に は若 い女 性は 何人 かい る﹂ が和 歌の
内容 に合 致し ない
。 以上 から
、正 解は で4
ある
。 正解
4
27
問登場 人物 に関 する 説明 問題 標準 この 文章 の登 場人 物に 関す る説 明と して 最も 適当 なも のを 選べ
。
﹁登 場人 物に 関す る説 明﹂ とい う設 問は 新形 式で ある が、 実質 的に は例 年の 問 同様
、本 文全 体を 見渡 す合 致問 題で ある
。 正解 であ る1
は、 傍線 部
A
の直 後﹁ 人な きひ まに 御前 にさ ぶら ふ童 に問 ひ給 ふ﹂ から、
X
の和 歌の 次の 行に ある﹁童 は心 も得 ず、 ある やう あら む と思 ひて
、懐 に入 れて 行き ぬ﹂ に相 当し てい て誤 りが ない
。選 択肢 の﹁ きょ うだ い﹂ は本 文中 の﹁ はら から
﹂︵
ペー ジ 行目
︶、
﹁気 位が 高い
﹂は 30 13
﹁思 ひ上 がり たる
﹂︵ 同 行目
︶、
﹁真 意を はか りか ねた
﹂は
﹁心 も得 ず﹂
︵ ペー ジ
-
行目︶、
﹁何 かわ け﹂ は﹁ ある やう
﹂︵ 同
-
行目︶に 相当 する
。 16
31 は2
、後 半の
﹁出 家し た女 性を 恋い 慕う こと に対 して 罪の 意識 を強 く感 じた
~そ れも 許さ れる だろ うと 考え て﹂ が本 文に ない
。 は3
、﹁ 連絡 もな くや って 来た こと には 不満 を感 じて いた
﹂と
﹁食 事に 手も 付け ない 菊君 の態 度を 目に して ます ます 不快 に思 った
~菊 君を あわ れだ と思 った
﹂が 本文 にな い。
ペー ジ 行目 で召 し使 いの 少年 が﹁ 君の かく には かに 渡ら せ給 ひた る、 折悪 しと て、 主は いみ じう むつ かり 侍る
﹂と 言っ 30 14 てい るが
、こ れは
﹁菊 君様 がこ のよ うに 急に おい でに なっ た時 に、
︵老 尼親 子が やっ て来 てい るこ とは
︶折 の悪 いこ とだ と、 主は たい そう わず らわ し いこ とに 思っ てお りま す﹂ とい う意 味で あり
、蔵 人が 菊君 の訪 問を 不快 に思 って いる とい うこ とで はな い。 蔵人 は菊 君の 訪問 をひ たす ら﹁ かた じけ な き御 座︵ 畏れ 多い お出 まし
︶﹂
︵ ペー ジ
+
行目︶と 思い
、従 者た ちと とも に懸 命に 菊君 をも てな そう とし てい るの であ る。 30 は4
、最 後の
﹁菊 君に 娘の 姿を 見ら れて しま った ので
、蔵 人に 間の 悪さ を責 めら れた
﹂が 誤り
。本 文に は、 で3
も見 たと おり
﹁君 のか くに はか に 渡ら せ給 ひた る、 折悪 しと て、 主は いみ じう むつ かり 侍る
﹂︵
ペー ジ 行目
︶と ある だけ であ る。 娘を 見ら れた 後に
、蔵 人が 老尼 を責 めた とは 書か 30 14 れて いな い。 は5
、ま ず﹁ 落ち ぶれ たこ とに よっ て﹂ が本 文に ない
。ま た、
﹁蔵 人の 屋敷 で﹂ は本 文と 合致 しな い。 老尼 と娘 がい るの は蔵 人の 家の 隣の 家で ある
。 さら に、
﹁老 尼の 娘﹂ が﹁ 歌を 贈ら れた こと で心 を乱 し、 眠れ なく なっ た﹂ も誤 り。 菊君 の
X
の和 歌を 見た 老尼 がY
の和 歌で﹁こ こに はあ なた の思 う
女性 はい ない
﹂と 返歌 して いる ので あり
、菊 君の 歌は 娘に は届 いて いな いの であ る。 また
、﹁ 寝ら れ給 はず
﹂︵
ペー ジ
~ 行目
︶と はあ るが
、こ の 31
12 13 主体 は菊 君で あっ て老 尼の 娘で はな い。 正解
1
28
問 漢 文
新
あら井
い白
はく石
せき﹃ 白
はく石
せき先
せん生
せい遺
い文
ぶん﹄
書き 下し 文﹈ 雷らい
霆てい
を 百ひやく 里り の外そと
に聴き けば
、盆ぼん
を鼓こ する がご とく
、江かう 河が を千せん
里り の間かん
に望のぞ
めば
、帯おび
を
縈
まとふが ごと きは
、其そ の相あ ひ去さ るの 遠とほ
きを 以もつ
てな り。 故ゆゑ
に千せん
載ざい
の下もと
に居を りて 之これ
を千せん
載ざい
の上うへ
に求もと むる に、 相あ ひ去さ るの 遠とほ
きを 以もつ
て其そ の変へん
有あ るを 知し らざ れば
、 則すなは ち猶な ほ舟ふね
に刻きざ
みて 剣けん
を求もと
むる がご とし
。今いま
の求もと
むる 所ところ は、 往わう
者しや
の 失うしな ふ 所ところ に非あら ざる も、 其そ の刻きざ
みし は此ここ
に在あ り、 是こ れ従よ りて 堕お つる 所ところ なり と謂おも
へり
。豈あ に惑まど
ひな らず や。 今いま
夫そ れ江え 戸ど は、 世よ の 称しよう する 所ところ の名めい 都と 大だい
邑いふ
、 冠くわん 蓋がい
の集あつ
まる 所ところ
、舟しう
車しや
の湊あつ まる 所ところ にし て、 実じつ
に天てん
下か の大だい
都と 会くわい たる なり
。而しか
れど も其そ の地ち の名な たる
、之これ を 古にし
にへ
訪たづ
ぬる も、 未いま
だ之これ
を聞き かず
。豈あ に古こ 今こん
相あ ひ去さ るこ と日ひび
に遠とほ
く、 事じ 物ぶつ
の変へん
も亦ま た其そ の間かん
に在あ るに 非あら
ずや
。蓋けだ
し知し る、 後のち
の今いま
に於お ける も、 世よ の相あ ひ去さ る こと
¤いよい
遠よとほ
く、 事こと
の相あ ひ変へん
ずる こと
¤いよい
多よおほ
く、 其そ の聞き かん と欲ほつ
する 所ところ を求もと
むる も得う べか らざ るこ と、 亦ま た猶な ほ今いま
の 古いにし
にへ
於お ける がご とき を。 吾われ
窃ひそか に焉これ
に感かん
ずる 有あ り。
﹃遺ゐ 聞ぶん
﹄の 書しよ
、由よ りて 作つく
る所ところ
なり
。 通
釈﹈ 雷鳴 も百 里も 離れ たと ころ で聞 くと
、盆 を叩 いて いる くら い︵ の小 さな 音︶ に聞 こえ
、︵ 長江 や黄 河の よう な︶ 大き な川 も千 里も 隔て たと ころ で眺 める と、 身に まと って いる 帯く らい
︵の 長さ や幅
︶に 見え るの は、 遠く 離れ たと ころ から 見聞 きし てい るか らで ある
。そ れゆ え︵ それ は距 離だ けで なく 時間 に つい ても 同様 で︶
、現 在の 時点 から 遠い 過去 のこ とを 知ろ うと して も、 長い 時間 がた って いる ため に︵ その 間に 事物 が︶ 変化 して いる こと を知 らな いと
、 あた かも
﹁舟 に刻 みて 剣を 求む
﹂︵ とい う故 事︶ のよ うな こと にな る。 今︵ 剣を
︶探 して いる とこ ろは
、︵ 舟は すで に動 いて いる のだ から
︶先 刻︵ 剣を
︶な くし たと ころ では ない のに
、舟 べり に刻 んだ 目め 印しるし はこ こな のだ から
、こ こが
︵剣 が︶ 落ち たと ころ だと 思っ てい る。
︵そ れと 同じ で、 現在 から 過去 を知 ろ うと して も、 長い 時間 の隔 たり の中 で、 わか らな くな って いる こと が多 い。 それ に気 づか ない のは
︶な んと 愚か なこ とで はな いだ ろう か。 今、 そも そも 江戸 は、 世に 称たた
える とこ ろの 有名 な大 きな 都市 で、 身分 の高 い人 々が 集ま ると ころ で、 水陸 の交 通の 要衝 であ って
、ま こと に天 下の 大都 会 であ る。 しか し、
︵今 はこ れだ けの 大都 市も
︶そ の︵ 江戸 とい う︶ 土地 の名 を、 古い 記録 や書 物の 中に 探し ても
、見 つか らな い。
︵つ まり
、江 戸は 昔か ら繁 華だ った わけ では ない ので あっ て、 それ は︶ なん と昔 から 今に 至る まで に長 い時 間が 流れ
、そ の間 にま た事 物も
︵大 きく
︶変 化し てい ると いう こと では な かろ うか
。そ う考 える と、 未来 と現 在に つい ても
︵同 じこ とが 言え るで あろ うか ら︶
、時 間は いっ そう 遠く 隔た り、
︵そ の間 の︶ 事物 の変 化も いっ そう 多く なっ て、
︵未 来か らふ り返 って 現在 のこ とを
︶知 りた いと 思う こと をさ ぐっ ても わか らな くな って いる であ ろう こと は、 ちょ うど 現在 と過 去︵ つま り、 今、 昔の こと がわ から なく なっ てい るの
︶と 同じ であ ろう
。
私は 内心 この こと に感 ずる とこ ろが あっ て、
︵後 世の 人々 のた めに
、今 の江 戸の 姿を 記し とど めて おき たい と思 い︶ この
﹃江 関遺 聞﹄ の書 を作 った ので る。 解
説﹈ 語の 読み の問 題
&
基礎
'
基礎 波線 部&
﹁蓋
﹂、
'
﹁¤﹂ のこ こで の読 み方 とし て最 も適 当な もの を、 それ ぞれ 一つ ずつ 選べ
。 読み の問 題は
、二
〇一 五年 度に
、﹁ 将﹂ と同 じ読 み方 をす る﹁ 且﹂
、﹁ 自﹂ と同 じ読 み方 をす る﹁ 従﹂ を選 ぶと いう 形で 出て いる が、 二カ 所の 読み 方 をそ れぞ れの 選択 肢か ら選 ぶと いう 形は
、二
〇〇 八年 度以 来、 久し ぶり の出 題で ある
。
&
﹁蓋
﹂は
、﹁ けだ し﹂ で、
﹁思 うに
~。 考え るに
~﹂ の意 であ る。
1
の﹁ 盍﹂
︵再 読文 字﹁ なん ぞ… ざる
﹂︶ と間 違い やす いの で注 意し たい
。
﹁1
なん ぞ﹂ は、
﹁盍
﹂も そう であ るが
、ふ つう に疑 問詞 なら ば、
﹁何
・胡
・曷
・庸
・奚
﹂な ど。
﹁2
はた して
﹂は
、﹁ 果﹂
。
﹁3
まさ に﹂ は、
﹁方
・正
・適
﹂。 ある いは
、再 読文 字﹁ 将・ 且・ 当・ 応﹂ の一 度め の読 み。
﹁4
すな はち
﹂は
、﹁ 則・ 乃・ 即・ 便・ 輒﹂
。例 は少 ない が﹁ 曾・ 而・ 載・ 逎・ 就﹂ など も﹁ すな はち
﹂と 読む こと があ る。
'
﹁ þ﹂ は、﹁い よい よ﹂ で、
﹁い っそ う。 ます ます
﹂の 意。
﹁逾
・兪
・弥
﹂も 同じ であ る。
﹁1
しば しば
﹂は
、﹁ 数・ 屢﹂
。﹁ いよ いよ
﹂や
﹁し ばし ば﹂ のよ うな 読み 方を する 語を
﹁畳じよう 語ご
﹂と いい
、﹁ おの おの
︵各
︶﹂
﹁ま すま す︵ 益︶
﹂も そ うで ある が、
﹁た また ま︵ 偶・ 会・ 適︶
﹂﹁ そも そも
︵抑
︶﹂
﹁こ もご も︵ 交・ 更︶
﹂な どは 覚え てお きた い。
﹁3
かへ つて
﹂は
、﹁ 却・ 反﹂
。
﹁4
はな はだ
﹂は
、﹁ 甚・ 苦・ 太・ 已・ 孔﹂
。
﹁5
すこ ぶる
﹂は
、﹁ 頗﹂
。 正解
&
5
'
2
29
30
問
語句 の意 味の 問題
⑴
標準⑵
標準 傍線 部⑴
﹁千 載 之 上﹂
・
⑵
﹁舟 車 之 所㆑
湊﹂ のこ こで の意 味と して 最も 適当 なも のを
、そ れぞ れ一 つず つ選 べ。
⑴
﹁ 千 載 之 上﹂ は、﹁千 載﹂ が﹁ 遠い 年月
﹂の こと を表 す語 であ ると いう 知識 があ れば
、2
の﹁ 遠い 過去
﹂か
、5
の﹁ はる かな 未来
﹂、 つま り、 時間 を表 して いる 選択 肢に 絞る こと がで きる
。そ うで なく ても
、1
﹁地 位﹂
、3
﹁積 み荷
﹂、
﹁4
書籍
﹂の よう な語 でな いこ とは
、文 脈上 わか るで あ ろう
。
﹁千) 載) の) 下) に居 りて
、之 を千) 載) の) 上) に求 むる に﹂ とい う対 比が ある
。﹁ 上・ 下﹂ が何 を言 って いる のか であ るが
、﹁ 下に 居) り) て)
﹂と 言う 以上
、﹁ 千載 の 下)
﹂は
、遠 い年 月が 上か ら下 へ流 れつ いて
、今
﹁い る﹂ 所、 つま り﹁ 現在
﹂を 言っ てい るで あろ う。 とす ると
、﹁ 千載 の上)
﹂は
、遠 い年 月を さか の ぼっ た﹁ 過去
﹂の こと であ る。 この あと の﹁ 舟に 刻み て剣 を求 む﹂ の故 事が
、﹁ 往者
︵過 去︶
﹂に 落と した 剣を
、す でに 舟が 進ん でし まっ た﹁ 今﹂ 求め てい ると いう 話で ある こと から も、
﹁現 在﹂ の時 点か ら﹁ 過去
﹂の こと を…
…と 見な けれ ばな らな い。
⑵
﹁ 舟 車 之 所㆑湊﹂ も、
﹁舟 車﹂ が﹁ 水陸 の交 通機 関﹂ であ ると いう 知識 があ れば
、あ るい は類 推が でき れば
、そ れが
﹁湊あつ
まる 所﹂ なの であ るか ら、 の3
﹁水 陸の 交通 の要よう
衝しよう
﹂に たど りつ ける であ ろう
。 これ も、
﹁1
軍勢
﹂、
﹁2
港﹂
︵﹁ 湊﹂ は﹁ みな と﹂ とも 読む が、 ここ では 動詞
﹁あ つま る﹂ であ る︶
、4
﹁事 故﹂
﹁難 所﹂
、5
﹁居 住区
﹂な どを 不適 切な 選択 肢と して 消去 する こと は容 易で ある
。 正解
⑴
2
⑵
3
31
32
問傍線 部の 内容 説明 の問 題 標準 傍線 部
A
﹇聴
㆓雷 霆 於 百 里 之 外㆒
者、 如㆑
鼓㆑
盆、 望㆓
江 河 於 千 里 之 間㆒
者、 如㆑
縈
㆑帯、 以㆓
其 相 去 之 遠㆒
也﹂ とあ るが
、そ れは どう い うこ とか
。そ の説 明と して 最も 適当 なも のを 一つ 選べ
。 内容 説明 であ るか ら、 まず は、 傍線 部そ のも のの 解釈 がで きる こと が大 切で ある
。
﹁雷らい 霆てい
を百 里の 外に 聴け ば、 盆ぼん
を鼓こ する がご とく
﹂ 雷鳴
︵注 ︶ のよ うに 大き くと どろ くよ うな 音で も、 百里 も遠 く離 れた とこ ろで 聞く と、 盆︵ 注
…酒 など を入 れる 容器
…円 形で 浅い 瓦器
…日 本で