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亜臨界水抽出法を用いた食品 加工への応用の最近の進歩

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Academic year: 2023

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【解説】

亜臨界水抽出法を用いた食品 加工への応用の最近の進歩

衛藤英男

亜臨界水抽出法は,水に物質を入れてから,水温100度から 300度 の 範 囲 で,38 MPaの 圧 力 に す る と,反 応 容 器 内 は 液体状態になり,加水分解反応を起こし,また水が有機溶媒 の 性 質 を も ち,多 く の 成 分 を 抽 出 す る こ と が で き る.そ こ で,産業廃棄物や食品廃棄物などの処理後,微生物を加える ことによりメタノールやメタンガスなどに変換可能なので,

新たなエネルギーの生産技術として注目されている.また,

この抽出法は,食品中のタンパク質や多糖類の加水分解やア ミノ・カルボニル反応を起こすため,新しい食品が生まれる 可能性があり,新食品加工法として注目されている.最近の 食品加工への応用と現在開発中の緑茶の連続式亜臨界水抽出 について解説する.

亜臨界水抽出法とは

374.2度,22.1 MPa以上の高温・高圧状態では,液体 とも気体とも言えない超臨界状態となる.それよりやや 低温,低圧で液体状態にある水を「亜臨界水」という.

この状態では,図

1

2

に示したように「加水分解力が強 い」

「有機物を溶かす力が強い」といった通常とは異な

る性質をもち,その性質を利用して,有用成分の抽出

(分解反応を伴う抽出を含む)に用いられている(1, 2)

また,その性質は温度と圧力によって変わるので,抽出 法を制御することができる.すなわち,加水分解による 低分子化で有用成分を抽出できる.あるいは,熱分解・

New Food Technology with Sub-critical Water Extraction Hideo ETOH, 静岡大学

臨界点

図1水の状態図

水には,いろいろな状態が存在する.臨界点以上の温度圧力の水 を超臨界水と言い,臨界点以下の温度圧力の水を亜臨界水と呼ぶ.

(2)

酸化分解による物質変換で有用成分を得るなどといった 使い方ができる.つまり,酸,アルカリなどの触媒を使 わずに水と熱・圧力だけで処理できるので,亜臨界水は クリーンなエコの処理法である.作業時間も数秒から数 分といった短時間で抽出が進むので,連続処理が可能と なる.図

3

に実際に用いたバッチ式亜臨界水抽出装置の モデル図を示した.

亜臨界水抽出装置の現状

筆者らは,小型のバッチ式亜臨界水抽出装置を自作し て実験に使用してきた.その後,東西化学産業株式会社

がバッチ式亜臨界水抽出装置(アクアイリュージョン SG型,圧力容器最大容量2 L)を市販した.さらに,使 いやすい装置(図3)をSEIKO株式会社に作ってもら い,現在その装置を使用している.

食品加工への利用

食品加工には,製品の高品質化が必要で,新しい加工 技術が望まれている.現在までに,エクスルーダ加工技 術,凍結濃縮技術,超高圧技術などが利用され新しい食 品が生まれている.亜臨界水抽出法は,水の利用で,反 応は熱と圧力のみであるため,有機溶剤(ヘキサンな ど)や酵素,酸・塩基などの添加物が必要なく,抽出や 加水分解,アミノ・カルボニル反応の利用が可能で,従 来にない新しい食品加工技術として注目されている.

いまや,食品廃棄物や副産品から有効成分の抽出の研 究が多く見られる(3)

.加水分解を利用して,植物系食品

副産物を液化,糖化して単糖やオリゴ糖などとし,微生 物発酵の原料としたり,整腸効果などの機能性食品素材 に利用できる.その例として,稲わら・もみ殻のセル ロースを加水分解して低分子化・可溶化したものをバイ オエタノール発酵に利用したり(4)

,ビール粕を分解処理

後メタン発酵や肥料化の研究がある.また,食品副産物 は一般に水分が多いため乾燥処理は難しいが,亜臨界水 抽出による熱分解は水系で行うため,乾燥処理の必要が なく,容易に有用成分を抽出できる.そのほか,魚の残 渣からペプチドやアミノ酸を抽出する研究(5)  などが報 告されている.

未利用資源の有効利用およびエネルギー化

未利用資源を亜臨界水処理で,短時間(5から10分)

で糖類,アミノ酸類,タンパク質の抽出,油の抽出,無 機物のフレーク状化,粉末にすることができる.国内で は,リマテック株式会社が,平成14年度から16年度に かけて,「有機塩素系廃溶剤廃油の亜臨界水反応による 脱塩アルコール化燃料化に関する研究」

「食品廃棄物の 亜臨界水処理による高速メタン発酵技術の開発」

「亜臨 界水前処理による食品残渣の高速メタン発酵システムの 実用化に関する調査研究」

「亜臨界水反応を用いた有機 塩素化合物を含んだ廃棄物のリサイクル技術の開発」を 行った.その結果,多くの化合物の低分子化および分離 回収を可能にした.有限会社アイジャパンは,食品残渣 を亜臨界水処理後,炭化処理を行い,炭を得ている.ま た,魚のアラは,250度,3 Mpaで5から10分の処理で,

図2水のイオン積および誘電率の変化

亜臨界水の領域では,水の比誘電率は常温常圧におけるメタノー ルやアセトンに等しく,イオン積も大きく酸または塩基触媒とし て作用する.

温度、撹拌、圧力の制御

図3バッチ式亜臨界水抽出装置

バッチ式の亜臨界水抽出装置で,反応槽に試料と水を入れ,窒素 ボンベで圧力をかけ,コントロールパネルにより熱と撹拌を制御 する.その反応過程をパソコンで記録する.

(3)

骨・鱗からカルシウム・リン酸を,油からDHA・EPA を,アミノ酸,タンパク質,乳酸などを得ることも報告 されている.米ぬか中のオリザノールから30%のフェ ルラ酸(抗酸化物質)を得る方法,蟹ガラから,キチン を純度高く得る方法なども報告されている.

最近の食品の亜臨界水抽出

筆者らはこの技術を,(1) 産業廃棄物の有効利用,

(2) 有効成分の抽出,(3) 食品の新加工法としての利用 の3つの観点から研究を行ってきた.(1) では,プラス チック廃材の処理によってできるポリプロピレンの溶液 が植物の生長を促進し,その成分はそれに含まれている 成分中の一つの紫外線吸収剤の分解によって生成してい ることを明らかにした.また,ユーカリの葉の有効利用 で行った結果は,葉に含まれているタンニンの分解物,

多糖からのフラン化合物,特異成分のG-ファクターか らの変化物質を得た(6)

(2)の有効成分の抽出では,ヘ マトコッカスからアスタキサンチンの抽出(7)  を,海洋 深層水に含まれているケイ藻から脂肪酸類の効率の良い 抽出ができた.さらに,(3)の研究では,大麦の処理で 麦茶用エキスの製造(8)  を,生コーヒー豆から,機能性 を有するコーヒーエキスを得た(9)

.さらに,緑茶から焙

じ茶用エキスを得た(10)

今回,緑茶への応用技術について詳しく説明する.

食生活の変化に伴い急須の使用の煩雑さや,苦渋味の 強い緑茶は好まれていないなどの理由で,緑茶消費量は 減少してきている.一方,労務コスト重視の外食産業で は,茶殻などの残渣が少ない粉末緑茶の採用が伸びてお り,今後もさらなる増加が期待される.このように,イ ンスタント茶は簡便であり,健康にも良く,美味しく飲 み続けられる新世代の機能性素材としての可能性をもっ ているため緑茶の消費拡大につながると思われる.従 来,緑茶から高濃度のカテキン含有緑茶エキスを得るた めには,高温熱水抽出やアルコールなどの溶媒抽出で あった.しかし,これらの抽出で得られた緑茶エキス は,非常に苦渋味が強く,飲みにくく,飲料や食品への 応用が困難なのが現状である.一方,亜臨界水抽出法を 用いれば,そのエキスが高濃度のカテキン含有でありな がら,苦渋味が抑制され飲みやすい飲料になることがわ かった.そこで,苦渋味抑制のメカニズムの解明と抑制 物質の探索を行った.また,実験室でのバッチ式亜臨界 水抽出法に変わる工場での製品化のための連続式亜臨界 水抽出装置の開発を試行している.

本研究は,地域の農水産物の加工技術の開発を目標に

しており,静岡商工会議所(当時:清水商工会議所)と 静岡大学農学部との連携により設置し,「亜臨界水抽出 装置」による種々の食品原料処理の研究に始まった.静 岡大学農学部が主研究機関となり,「大麦の亜臨界水処 理研究開発」を基礎とし,平成17 〜19年度の「都市エ リア産学官連携促進事業(発展型)」

,平成20年度「静

岡トライアングルリサーチクラスター研究開発助成事 業」へと発展し,その結果は特許(特許2007-201706)

となった(8)

.これらの成果のうえに,緑茶の亜臨界水抽

出の研究を進めてきた.平成23年度の静岡新産業クラ スター研究開発助成事業で「亜臨界水抽出装置による新 規嗜好性緑茶製品の製造に関する研究開発」として,高 濃度のカテキン含有でありながら苦渋味が少ない緑茶抽 出物を得ることに成功し,その製品化を目指している.

製品名は苦渋味抑制緑茶エキスパウダーで,高濃度の カテキン含有であってもカテキン特有の強い苦渋味が少 なく,香りも良く,機能性が高く,健康に良いもので,

一般品に比べて上級差別化商品である.また,飲料,健 康食品,菓子などの加工食品用素材や化粧品など新市場 への参入が期待できる.

亜臨界水抽出緑茶の人による官能評価について 筆者らは,苦渋味の少ない緑茶抽出物を得るため,従 来のインスタント茶の製造工程の一部を亜臨界水抽出に 変えて,その有用性を検討した.また, 味覚センサー 分析装置 や におい識別分析装置 を用いて,得られ た緑茶抽出物の味,香りに対する物質レベルの評価を 行った.

(1)各条件による苦渋味,飲みやすさおよび香りの比較 食品会社の味覚をチェックしている人15名に官能検 査をしてもらった(表

1

.その結果,亜臨界水抽出が

苦渋味を抑え,飲みやすくなることがわかった.

(2)味覚センサー分析による評価(官能比較)

4

に味覚センサーの結果を示した.その結果,亜臨 界水抽出で得られる緑茶抽物は従来の抽出方法に比べ,

渋味(先味,後味)の有意な減少が確認され,ヒトの官 能評価(表1)と相関性があることが実証された.

(3)におい成分の組成

香りの評価として用いたにおい識別分析の結果(図

5

,亜臨界水抽出で得られる緑茶抽出物は日常家庭で飲

用する急須抽出(熱水抽出)と類似した成分組成であ り,緑茶本来の香りであることがわかった.

以上の結果,亜臨界水抽出は従来の抽出方法である熱 水抽出や加圧抽出と同様の風味であり,緑茶抽出物は高

(4)

濃度のカテキン含有でありながらカテキン特有の強い苦 渋味は少なく,非常に飲みやすいことが官能的にも化学 的にも実証された.さらに,香りに関しても蒸れ臭など の嫌なにおい(硫化水素,硫黄系など)はなく,急須で

入れるような緑茶らしい香りがあり,とても良好であっ た(11)

緑茶に含まれるカテキンは世界からも注目されている 成分であり,多様な生理機能をもつ機能性の高い素材で ある.また,カテキンの多い緑茶は放射線(

γ

線)によ り発生するヒドロキシラジカルを消去する作用が強く,

間接的に発がん物質を抑制する抗酸化作用を有すること で注目されている.

亜臨界水抽出で得られる緑茶抽出物は,高濃度カテキ ンで,カテキン特有の強い苦渋味を抑制しているので,

一度に多く摂取することができる.洋風化や手軽さを求 める食生活の変化に伴って,消費者の緑茶消費も茶葉よ りの抽出飲料から粉末緑茶などに移行している.一方,

外食産業では給茶器から客のセルフによるシステムが定 着し,粉末茶の需要が急速に伸びている.これら業務用 は品質向上でさらなる拡大が見込まれる.

食品加工への応用の可能性

亜臨界水抽出は,エタノールなどの特殊な溶媒を使用 することもなく,水だけを使用して抽出する技術である ため,人体や環境に無害である.また,従来の抽出方法 に比べ,抽出時間が1/10程度短縮される.抽出液の色,

香りに良い効果を与える.また,抽出率を10%程度上 げることが可能で,コスト低減効果が大きい.本技術に よる製品は,従来の一般的抽出法による製品とは差別化 できるものと考えている.すなわち,味・香り・色(要 研究)

・成分機能の点で全く新しい食品であり,新しい

マーケットへの展開が可能になる.

現在まではバッチ式の亜臨界水抽出装置にて研究開発 を行ってきたが,量産化には連続式の装置が必須であ る.しかも,量産化を行うためにはバッチ式の抽出装置 と同等以上の能力で連続的に稼働,抽出反応が行える加 熱部,冷却部ユニットの開発が必要である.また,安定 的に試料の挿入,圧力付加することが可能なポンプユ ニットおよび制御装置などの設備の構築も同時に必要で ある.これらを試験的に検討するための小中規模の連続 式亜臨界水抽出試験装置の開発(設計,設置)および動 作確認を行っていく.連続式亜臨界水抽出装置により抽 出された緑茶抽出物を化学的な成分分析・味覚評価によ り品質の同等性をバッチ式抽出機と比較確認していく.

今回の事業で成果が上がれば,本格的な実生産装置の導 入および販売活動を開始できる.本事業で得られた技 術・知識はほかの食品加工にも応用できる.たとえば,

紅茶,ウーロン茶,麦茶など各種のお茶やコーヒーなど 図4緑茶抽出物の味覚センサー分析結果

インテリジェントセンサーテクノロジー社製SA402B味覚セン サー装置を使い,苦味,渋味,旨味および酸味のセンサーを用い,

口に含んだ瞬間の味(先味)と飲み込んだ後に残る持続性のある 味(後味)も評価した.

図5緑茶抽出物のにおい識別分析結果

島津テクノロジー社製FF2020Sにおい識別分析装置を用いて,香 りの評価を行った.9種の基準ガスを測定し,センサー出力を表 現ソフトで評価した.

表1緑茶の熱水抽出,加圧抽出および亜臨界水抽出の官能試 験結果

熱水抽出 加圧抽出 亜臨界水抽出

温度 90℃ 120℃ 130℃

圧力 0.2 MPa 3.0 MPa

抽出時間 10分 15分 1分

苦渋味 強い 強い 弱い

飲みやすさ 普通 悪い 良い

香り 普通 悪い 良い

(5)

の飲料や各種調味料にも利用できる.まずは,本事業を 基に,静岡県産の茶葉を使用した高付加価値商品を世に 送り出し,国産初の亜臨界水抽出緑茶ブランドを確立さ せ売上拡大を目指す予定である.

連続式亜臨界水抽出装置(設計,設置)を図

6

に示し た.

文献

  1)  A.  Kruse  &  E.  Dinijus : , 39,  362 

(2007).

  2)  A.  Basile,  M.  M.  Jimenes-Carmona  &  A.  A.  Clifford : , 46, 5205 (1998).

  3)  R. S. Ayala & M. D. Luque de Castro : , 75,  109 (2001).

  4)  植田充美,近藤昭彦: エコバイオエネルギーの最前線 ,

シーエムシー出版,2005.

  5)  吉田弘之: 亜臨界水反応による廃棄物処理と資源・エネ

ルギー化 ,シーエムシー出版,2007.

  6)  A. Kulkarni, S. Suzuki & H. Etoh : , 54, 153 

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  7)  H.  Etoh,  Y.  Maejima,  Y.  Imaeda,  S.  Sugiyama,  S. 

Tokuyama, H. Kato, A. Kulkarni & T. Maoka :

, in press (2013).

  8)  A.  Kurkarni,  T.  Yokota,  S.  Suzuki  &  H.  Etoh : , 72, 236 (2008).

  9)  加藤久喜,衛藤英男: 日本農芸化学会2012年度大会(京

都),講演要旨集 ,2012, p. 439.

  10)  H.  Etoh,  N.  Ohtaki,  H.  Kato,  A.  Kulkarni  &  A. 

Morita : , 74, 858 (2010).

  11)  T. Miyashita & H. Etoh : , 19,  471 (2013).

プロフィル

衛藤 英男(Hideo ETOH)    

<略歴>1970年静岡大学農学部農芸化学 科卒業/1972年同大学大学院農学研究科 農芸化学専攻修士課程修了/同年名城大 学薬学部助手/1982年京都大学博士(農 学)/1988年静岡大学農学部助教授/1994 年同教授/2013年定年退職(名誉教授)/

同年静岡大学非常勤講師(農学部)<研究 テーマと抱負>食品加工のための連続式亜 臨界水抽出装置の開発を進め,新しい加工 食品を日本および世界に向けて発信する手 助けをすること<趣味>映画鑑賞,旅行

図6連続式亜臨界水抽出装置のモ デル図

まず第一に,容器に粉末茶葉と水を 入れ,調液を作り,モーノポンプで 3 MPa以上の圧力をかけ,ボイラー で昇温用熱交換器を反応温度に調整 し,そこで亜臨界水処理を行わせる.

その後,チラーで冷却し,窒素の圧 力差で緑茶抽出物を連続式に移動さ せる装置である.

Referensi

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