京大東アジアセンターニュースレター 第 493 号
京都大学経済学研究科東アジア経済研究センター 2013 年 11 月 11 日
目次
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〇 自動車シンポジウムのお知らせ
〇 講演会のお知らせ
〇 中国経済研究会のお知らせ
○ 中国ニュース 11.4-11.10
〇 読後雑感 アジア編 : 2013年 第19回
〇 上海街角インタビュー ⑤
○ 【中国経済最新統計】
東アジア人材採用のための会社説明会
日時:2013 年 12 月 4 日(水) 11 時~15 時 会場:みずほホール(法経東館地下)
この度,京都大学東アジア経済研究センターでは,「東アジア人材」採用のための会社説明会を 2013 年 12 月 4 日、京都大学経済学部みずほホールにて開催することとなりました。「東アジア 人材」とは,近年急速に経済成長を果たしている東アジア地域において活躍できる人材となる可 能性のある学生(院生)を意味しております。こうした東アジア人材の採用を目的として,東アジ ア経済研究センター協力会の法人会員に会社説明を本学で行っていただきます。
1. 参加資格
①2014 年 3 月に大学(または大学院)を卒業(修了)見込みの方
②東アジア地域出身の留学生、または東アジア地域に強い関心があり、現地語を理解する能 力のある日本人等
2. 参加方法
①参加希望者は、下記の申込先に,事前に所属、氏名を連絡してください。ただし事前連絡 のない場合でも参加は可能です。
②希望する会社(複数可能)の説明会が始まる 5 分前までに会場横の廊下に集合ください。
③履歴書は、参加を希望する会社数分を御用意ください。
3. 募集要項
http://www.econ.kyoto-u.ac.jp/~shanghai/131204%20setsumeikai/131204%20setsumeikai.html
各社の募集要項は経済学部ホームページ内の「東アジア経済研究センター」に各社の募集要項 を掲示しています。
4. 申込先
京都大学大学院経済学研究付属東アジア経済研究センター ℡ 075-753-3469 E-mail [email protected]
1
2
月日 会社名
三井住友海上火災保険株式会社
プレミアファイナンシャルサービス株式会社 大和ハウス工業株式会社
株式会社エクセディ DMG 森精機株式会社
株式会社ワイ・デー・ケー SMBC 日興証券株式会社
京セラ株式会社
2013 年 12 月 4 日(水)
11 時~15 時
三社電機株式会社
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主催
京都大学東アジア経済研究センター
共催
東京大学ものづくり経営研究センター
後援
京都大学東アジア経済研究センター協力会
アジア自動車シンポジウム
黎明期のミャンマー自動車市場
—進出すべきか否か,その判断基準を考える—
■京都会場 2013 年 12 月 7 日(土) 13 時
京都大学百周年時計台記念館 2 階国際交流ホール■東京会場 2013 年 12 月 9 日(月) 13 時
京都大学東京オフィス(品川インターシティA棟 27 階)
総合司会 13:00-13:30
挨拶 京都大学大学院経済学研究科長 植田和弘 13:30-14:30
京都大学大学院経済学研究科 教授 塩地 洋 日系企業から見たミャンマー自動車産業(仮題 以下同)
14:30-15:00
鹿児島県立短期大学 講師 山本 肇 自動車産業-政策・発展史・今後の展望
15:15-15:45
事業創造大学院大学 教授 富山 栄子 輸入規制を受けている新車市場
3
15:45-16:15
住友商事 自動車リテイルファイナンス事業部 木村 将裕 金融事情と販売金融現況
16:15-16:45
慶應大学経済学部 准教授 三嶋 恒平 オートバイ流通の実態
16:55-17:00 閉会挨拶
17:15-18:45
懇親会 参加費 2000 円(協力会会員は無料)
司会 京都大学経済学部特任教授/東アジア経済研究センター協力会理事 宇野輝 開会挨拶 京都大学東アジア経済研究副センター長/京都大学経済学部准教授 矢野剛
閉会挨拶 京都大学東アジア経済研究センター協力会長/京都大学経済学部名誉フェロー 大森經徳
参加の御申込は,塩地[email protected]に会場名,氏名・所属,懇親会出欠を御連絡ください。
東京会場は定員100名,京都会場300名です。お早めにお申し込みください。
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講演会のお知らせ
主催:京都大学東アジア経済研究センター
『中国経済成長モデルとその転換への挑戦』
( ” 中国增 长 模式与 转 型挑 战" )
講師 中国人民大学経済学院教授 陶 然
司会:矢野剛(京都大学経済学研究科准教授)
日時:2013 年 12 月 3 日(火) PM 4:30-6:00 場所:京都大学法経五番教室
使用言語:中国語-日本語 逐次通訳(同時通訳ではありません)
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「中国経済研究会」のお知らせ
2013年度第5回(通算第37回)の中国経済研究会は下記の要領で開催することになりました。今回は中国復 旦大学日本研究センターの戴暁芙先生より、日本でも大いに注目されている中国の土地財政やシャドーバン キングの問題についてお話をしていただきますので、大勢の方のご参加をお待ちしております。
記
時 間: 2013年11月19日(火) 16:30-18:00
場 所: 京都大学吉田キャンパス・法経済学部東館・地下1階みずほホール 報告者: 戴暁芙(復旦大学日本研究センター副教授)
テーマ: 中国の 「土地財政」と地方政府の投融資プラットフォーム問題について
注:本研究会は原則として授業期間中の毎月第3火曜日に行います。2013年度における開催(予定)日は以下の通りです。
前期:4月23日(火)、 5月21日(火)、 6月18日(火)、7月23日(火) 後期:10月22日(火)、11月19日(火)、12月17(火)、1月21日(火)
(この件に関するお問い合わせは劉徳強([email protected])までお願いします。なお、研究会終了後、有志による懇 親会が予定されています。)
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中国ニュース 11 . 4-11 . 10
ヘッドライン
■ 三中全会:中国経済上向き論に一斉転換する国際資本
■ 経済:今後10年間の貧富の差、経済学者の見方分かれる
■ 留学:海外留学生の帰国ラッシュ迎える中国、背景にあるのは「家族愛」
■ 金融:中国初の民間銀行、2014年年初に誕生へ
■ エネルギー:中国の太陽光パネルメーカーの出荷量拡大
■ 通信:中国スマホ市場、アップルがトップ5に返り咲き
■ 企業:レノボ、世界最大のPCメーカーに
■ 環境:PM2.5で「防霧ビジネス」盛んに
■ カナダ紙:あなたが知らない中国ビジネス5カ条
■ 人口:中国の高齢者、2025年に3億人突破
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ニュース詳細
■ 三中全会:中国経済上向き論に一斉転換する国際資本
【11月8日 人民日報海外版】中国共産党は9日から、経済政策を軸に中長期の改革路線を示す第18期 中央委員会第3回総会(3中総会)を北京で開く。8日、海外の機関や関係者は中国経済悲観論を改め、次々 に中国経済は上向くとの見方を示し始めている。国際経済学者と政治アナリストを対象とした調査によると、
中国経済を国際社会がかなり楽観視していることは明らかだ。回答者の87%が中国共産党の第18期中央 委員会第3回全体会議(三中全会)後に実施される改革への信頼を表明。今後1、2年中国経済は7%以上 の成長を維持すると多くの国際大手銀行が予測している。また、中国経済の改革から外資はさらに多くのチ ャンスを得ると専門家は指摘する。
■ 経済:今後10年間の貧富の差、経済学者の見方分かれる
【11月6日 新京報】中国社会科学院工業経済研究所が今月4日に発表した、経済学者が高い関心を寄せ る問題についての調査報告書「中国経済学人熱点調研」(第二期)によると、今後10年間の中国の貧富の差 について、経済学者の間では見方が分かれている。今後10年間の貧富の差について、「悪化する」、「改善す る」、「現状維持」、「わからない」の4択で答えたもらったところ、回答はほぼ拮抗し、この問題について経 済学者に共通認識がないことが浮かび上がった。今後10年間の貧富の差について、経済学者の間で見方は 大きく分かれている。36%が今後10年で貧富の差は一層悪化すると答え、28%が貧富の差は改善され、
オリーブ型の中産階層を形成すると答え、19%が貧富の差は現在の情況を保つと答えた。このほか約2割
(17%)が「わからない」と答えた。4つの回答が均衡しており、この問題について、学者の間で見方が 大きく分かれていることがわかる。また、「来年に最も起こってほしくないことは何ですか」との質問に対し、
経済学者は36%が大規模な経済活性化政策を望まない、19%が生態環境の悪化を懸念、15%が不動産 価格の高騰・暴落を心配、12%が中国の政治地理的情況の不安定さが気にかかると答えた。
■ 留学:海外留学生の帰国ラッシュ迎える中国、背景にあるのは「家族愛」
【11月5日 南華早報】中国・グローバル化研究センターと社会科学文献出版社が共同編纂した「中国海 外帰国者発展報告2013」国際人材青書によると、海外から帰国する中国人留学生の数はここ10年間毎 年増加しており、2012年には帰国率は41.3%に達した。近い将来、この数字は50%を超えると予 想され、今後5年間で史上最大の帰国ラッシュになる見込み。帰国する留学生の半数が海外の大学における 1年間の修士課程修了者であり、博士号の取得者やこれに相当する研究や経験を有する高レベルの留学生の 帰国率は依然として低い。現在、中国人留学生の90%が自費留学で、文科系の学生が半数近くを占めてい る。約半数が帰国後、金融業に身を投じ、41.6%が北京での就職を選択している。こうした帰国者の多 くが体制外に属しているため、政治に参加する機会は非常に少ない。家族と一緒にいたいというのが帰国の 主な原因だ。実際に90.9%の留学生が「親と離れていたくない」という理由で帰国している。現在留学 中の若者の多くが80~90年代生まれの一人っ子。兄弟姉妹がいない彼らの両親への依存度は高く、家族 が一番だと思っているからだ。
■ 金融:中国初の民間銀行、2014年年初に誕生へ
【11月5日 中国証券報】民間資本による銀行設立の試行をめぐって、中国政府の各部門が関連事項につ いて合意に達しており、民間資本銀行試行プランの枠組みが出来上がった。これにより、2014年年初に 初の民間銀行が中国に誕生する見込みである。合意内容は次の通りである。民間資本の銀行に制限付きの営 業許可証を付与すること。その業務範囲、業務展開可能地域、預金者などの面で一定の制限を設けること。
5 銀行の登録資本金は5―10億元とすること。銀行の株主は民間人や民間企業でなければならないこと。現 在、関係部門は試行プランについて、更なる研究と討論を進めており、今後修正が加えられる可能性もある という。
■ エネルギー:中国の太陽光パネルメーカーの出荷量拡大、粗利益率も大幅増加
【11月6日 毎日経済新聞網】調査会社のNPDソーラーバズの研究報告によると、中国主要太陽光パネ ル企業の第3四半期の出荷量、粗利益率は大幅に伸びた。同社シニアアナリストの廉鋭氏は「英利緑色エネ ルギー、阿特斯、ファーストソーラー、晶科、輝陽光はパネルの出荷量が過去最高となった」と述べた。第 3四半期、世界の太陽光パネル出荷上位10社のうち、中国の大手メーカーが7社を占めた。世界上位20 社の大型太陽光パネルの平均販売額はワットあたり0.74米ドルで、第2四半期の0.75米ドルから微 減した。これは、業者間の激しい競争で日本市場の価格が下がったことによるもの。中国大手メーカーの販 売価格はワットあたり0.63米ドルだった。コストの低下で、世界上位20社の粗利益率は増えており、
第2四半期の11.3%から第3四半期は12.5%に伸びた。中でも晶科能源と輝陽光のコストが最も低 く、中国メーカーには粗利益率が18%を超える見込みのところもある。
■ 通信:中国スマホ市場、アップルがトップ5に返り咲き
【11月7日 京華時報】米調査会社Canalysが発表した最新データによると、iPhone 5S とiPhone 5Cの発売により、アップルは今年第3四半期に中国スマホ市場のトップ5に返り咲いた。
同調査会社によると、9月末までの第3四半期において、iPhoneの中国出荷台数は前年同期比32%
増となり、市場シェアが約6%となった。第2四半期の同シェアは5%で、7位につけていた。iPhon eの出荷増は、9月に発売した新製品のiPhone 5SとiPhone 5Cによるものだ。同調査会 社のデータによると、サムスンの第3四半期のシェアが21%に達し、中国スマホ市場のトップを走り続け た。レノボは13%で2位、酷派(CoolPad)は11%で3位、華為(ファーウェイ)は9%で4位 となった。6位につけた小米科技(Xiaomi)は、スマホ出荷台数が前年同期比で2倍以上となった。
中興(ZTE)はシェアを5%に落とし7位になった。
■ 企業:レノボ、世界最大のPCメーカーに
【11月8日 光明日報】レノボ・グループは7日、2013-2014年度第2会計四半期報告書を発表 した。2013年9月30日までの第2会計四半期の営業額は前年同期比13%増の98億ドルに、純利益 は36%増の2億2000万ドルに達した。レノボは2四半期連続で世界最大のPC(パソコン)メーカー となり、世界市場シェアが2%ポイント上昇の17.7%で過去最高を記録した。同報告書によると、レノ ボは第2会計四半期に世界で2900万台の機器を販売した。そのうちPCは1410万台で、トップ5社 のうち成長率が最も高い企業となり、18四半期連続で業界全体の成長率を上回った。レノボの楊元慶董事 長兼CEOは、「未来の市場発展を楽観視している」と表明した。
■ 環境:PM2.5で「防霧ビジネス」盛んに
【11月7日 中国新聞網】6日、終わったばかりの10月には、中国の中部から東部にかけて濃い霧がし ばしば発生した。人々の間では霧を恐れる気持ちが徐々に高まっている。こうした感情面の変化だけでなく、
微小粒子状物資(PM2.5)の問題を逆手に取ったビジネスのチャンスがたびたび訪れ、マスクが霧対策 の必需品になったのに続き、最近では空気清浄機も新たな防御装置となっている。ある調査によれば、淘宝 や京東などの電子商取引(eコマース)プラットフォームではマスクの取扱量が激増し、スーパーやドラッ グストアでも売れ行きは好調だ。空気清浄機も人気があり、売り切れになった店もあるという。
■ カナダ紙:あなたが知らない中国ビジネス5カ条
【11月2日 環球時報】カナダの経済紙フィナンシャル・ポストはこのほど、「あなたが知らない中国ビジ ネス5カ条」と題した記事を掲載した。アジアでのビジネスが容易ではないことは周知の事実だ。いつまで も終わらない会議や、価格に対する強いこだわり、あいまいな態度、言葉と裏腹な心情、先延ばしされる回 答など、よく知られている。だが、最近の中国は違うようだ。1、どんなことでも10倍にしたがる。「50 席のレストラン?500席のほうがいいんじゃない?」「招待客500人?5000人ではだめなのか?」と いう具合に、中国市場は大きいのだ。2、変化のスピードが速すぎる。「北京の街並みがすぐ変わる。毎月地 図を発行して欲しいくらいだ。北京市民でさえ、その速さについていけない」とビジネスマンは嘆く。3、
頼りになる現地パートナーがいれば、何事もうまくいく。食事も商談も現地の人がいれば違った結果になる。
4、言葉で表現することが大切。行動は言葉に勝るというが、中国ではあなたのバックグラウンドが重要な のだ。あなたの肩書や業績、そして大切な学歴を人々に知られることが肝心だ。5、迅速な契約。価格はも はや神聖な問題ではなくなった。契約交渉もスピード達成可能だ。出会ってその場で即決もあるほどだ。
■ 人口:中国の高齢者、2025年に3億人突破
【11月4日 新華社】、4日、全国高齢者事業委員会の副委員長を務める中国民政部の李立国部長は、今月 2日に開催された「2013年中国高齢者事業発展トップフォーラム」において、「中国は、高齢者人口が世
6 界で最も多い国家であり、高齢者人口は今年2億人を突破し、2025年に3億人、2034年には4億人 をそれぞれ上回る見通しだ。この状況は、中国の高齢化対策事業に厳しい課題を突きつけている」と述べた。
中国国務院発展研究センターの李偉センター長はフォーラムにおいて、「中国の高齢化は加速の一途を辿って いる。中国が直面している高齢化情勢は、先進諸国よりもさらに厳しく、問題はより複雑であり、より多く の困難を伴っている」と指摘した。李偉センター長は、「未富先老(富かになる前に老いる)が、中国が直面 している最難関の問題といえよう。先進国が高齢化社会に突入した時点での国民一人当たりGNPは、大体 5000ドルから1万ドル(約49万円から98万円)もしくはそれ以上だった。中国が高齢化社会に入っ た2001年、一人当たりGNPはようやく1000ドル(約9万8000円)を超えたばかりで、201 2年にやっと6000ドル(約48万8000円)を上回った。高齢化に対応するための経済的基盤があま りにも軟弱だ」と語った。
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読後雑感 アジア編 : 2013年 第19回
06.NOV.13 中小企業家同友会アジア情報センター代表 東アジアセンター外部研究員(協力会副会長) 小島正憲
ミャンマー特集
1.「ビルマ・ハイウェイ」 2.「ミャンマー経済で儲ける5つの真実」 3.「ミャンマー 驚きの素顔」4.「ビルマのゼロ・ファイター」 5.「アジア『新・新興国』戦略」
1.「ビルマ・ハイウェイ」 タンミンウー著 秋元由紀訳 白水社 2013年9月10日
副題 : 「中国とインドをつなぐ十字路」 帯の言葉 : 「アジアの“裏口”ミャンマーを知るための必読書」
本書は、昨今巷にあふれているミャンマー紹介本とは一味違い、おもしろい本である。著者は、中国の秦や漢、清 の時代、インドのブッダやムガール帝国、イギリス統治の時代から現代に至るまでの歴史的関係を縦糸に、中国の雲 南やチベット、インドの東北部、バングラデシュなどのミャンマー周辺国との地理的関係を横糸に、一風変わった視点 からミャンマーを描き出しており、ミャンマーにかなり精通している者にも大いに参考になる。ただし、経済の解説本で も、ルポでも、小説でも、ドキュメンタリーでもなく、いささか冗長で焦点がさだまらない本であり、小さな活字で350ペ ージを越す本のため、読んでいて退屈するかもしれない。以下に、本書の特異な個所を抜き書きしておく。
・ビルマに諸国の交差点が含まれているとしても、それは単に国同士が出会う場所にはならないだろう。今日の国境 は歴史上のどんな国境とも異なる。いま、互いに引き寄せられようとしている中国とインドの地域は、両国内での最 たる遠隔地域である。そこにはほかでは見られないほど多様な民族や言語、忘れられた王国や孤立した高地社会 があり、つい最近までどちらの政府の支配も届いていなかった。そこはまた、最近の人口急増までは人口密度が低 い密林地帯でもあった。19 世紀半ばには、ビルマとビルマに接するインドと中国の州や省には合わせて1200万人 しか住んでいなかったと推定される。今日、同じ地域、つまりインドのアッサム州からビルマを通り中国の雲南省に かけての地域には、1 億 5 千万人が暮らす。そのとなりのバングラデシュとインドの西ベンガル州にはさらに 2 億30 00万人、反対隣の中国の四川盆地には8000万人、大都市重慶には3000万人がいる。間にあった森林は、かつ てほとんど通行不能だったが、今はほぼ消えてしまった。辺境とされた地域がこれまでにないほど互いに接近し、
新しい国が新しい隣国に出会うようになっている。
・植民地時代以前、インドと中国は地形と人口分布が原因で遠く離れていた。アジアの 2 大文明の間に広がる空間に は山やジャングルがあり、人はほとんど住んでいなかった。しかし20世紀になるころには状況が変わり始めていた。
人口が増え、以前はだれもいなかったところに人が住むようになった。そして科学技術の進歩により、かつて通行 不可能だった地域が征服されていった。
・コーカンというのは国境のビルマ側、瑞麗から東に数十キロのところにある小さな漢人居住地域である。コーカンの 住民は、国境の雲南側の住民と同様、数世紀をかけて少しずつ中国の他地域から入ってきた開拓者や盗賊の子 孫である。2009年8月に始まった戦闘は中国政府にとって晴天の霹靂だった。それは1990年初頭以来、ビルマ 軍が国境地域で行った最大の軍事作戦だった。全員漢人の難民約2万人が中国側に逃げ、中国の国境で起きた ものとしてはベトナム戦争の終わり以来最大の難民流入となった。不意をつかれた中国政府はひどく憤慨した。そ れまで中国は、コーカン地区を含めて、民族ごとの民兵団が支配する地域のことを便利な緩衝地帯だと思っていた。
しかしビルマ軍が場合によっては実力行使も辞さないということで、国境地域が中国政府が考えていたよりもずっと 不安定であることがわかった。ビルマ政府の行動が予測不可能であることもわかった。また、ビルマ政府への対応 をもう雲南政府に任せておくことわけにはいかないことも明らかになった。ビルマを通るパイプライン建設などに数 十億ドルが投資されている中、より積極的に対策を講じることが必要になっていた。こうしたことに加え、20年もの間
7 中国が好き勝手にできた状況がいつ変わってもおかしくないという感覚がじわじわと迫ってもいた。
・中国では貧しい省や「自治区」が西や南西にあるのに対し、インドでは貧しい州が東と北東にあった。そして中国とイ ンドの両方にとってビルマがあり、潜在的な交差点として、また将来の経済成長の要因として、国境のあたりに見え 隠れしていた。
・インドと中国の経済はある意味、互いに補完しあう関係にあった。中国の強みは製造とインフラで、インドのは情報技 術と金融サービスだった。インドの現環境相ジェイラム・ラメシュは、中国とインドが密に協力し互いの経済発展を強 化するという自身の構想を表す「チンディア」という造語まで考え出した。
・(インドの西ベンガル州に)隣に新しく生まれた独立国家で、カルカッタ同様に人口密度が高いバングラデシュから、
貧しい人々が多数流入してきた。カルカッタは電力不足や労働者による騒動に悩まされた。インド共産党マルクス 主義派が率いる「左翼戦線」が西ベンガル州の政権を取り、以来ずっと権力の座にあるので、カルカッタでは民主 的に選ばれた共産主義政府として世界でもっとも長く続いていることになる。
・毛沢東主義派という脅威もあった。同派は主として西ベンガル州よりも西にある諸州で活発なのだが、西ベンガル州 自体でもますます活発になってきている。
・インド世界の端にあるベンガルはその後数世紀にかけて仏教の大中心地となり、その影響はチベットから雲南やジ ャワまで、アジアの大部分に及んだ。仏教は非常に早い段階でベンガルに入ったと考えられている。ブッダが住み、
教えを行っていたマガダ王国はベンガルのすぐ西にあった。仏教はインドの他地域で消えかけても、ベンガルでは さらに数百年も続いただけでなく、教えについて新しい解釈を生み出すまでした。後々まで残るこの解釈は、ヴァジ ュラヤーナあるいはタントラ仏教と呼ばれ、秘技的な儀礼や慣習を特徴とする。タントラ仏教からもさまざまな宗派が 生まれ、ベンガルからビルマや雲南、中国まで極東全域に広がり、深く根を下ろすことになる。
・インド北東部は陸の孤島と言ってよい。1947年の分離独立で東パキスタンが誕生すると、この地域は海への自然な 通路を断たれ、ダッカやシレットなど、何世紀にもわたって貿易相手だった主要都市からも切り離されてしまった。
北東部をインド本土を結ぶのは「ニワトリの首」として知られる、ところによってはわずか幅が30キロもないほどの細 長い回廊である。インドでもっとも貧しく、おそらくもっとも無法で、周囲から取り残された地域である。インドからも外 国からも観光に来る人はほとんどいない。インド国民でも、北東部の一部地域に入るには特別な「奥地境界線」入 域許可証がいる。そして外国人のジャーナリストが入域をほとんど認められていないので、インド北東部のことが報 道されることもめったにない。
・アッサムとビルマという二つの中間王国は、ムガール帝国インドと清朝中国とが互いに遭遇するという歴史的な出来 事を良かれ悪しかれ防ぐことになった。
・(アッサムを併合したビルマは、やがてイギリスに降伏を余儀なくされ)、アッサムは拡大するイギリス帝国の一部にな った。初めのうち、イギリスは新しく手に入れたアッサムをどう統治するかはっきり決めていなかった。
・アッサムからビルマ北部を経て中国南部にかかる一帯は世界で唯一、茶が自生する地域である。このころ、イギリス ではすでに紅茶に人気があり、中国からの茶の輸入が東インド会社の財政に大きな負担となっていた。そこでアッ サムに広大な茶農園を造り、ベンガルなどインドから安い労働力を移入し、荒れ地が開墾された。1920年代には2 0万人ものベンガル人移民が一つの区域に住むほどになった。
・インド独立後の数十年はアッサムにとってあまり良い時代ではなかった。分離独立後1年間は、ニワトリの首を通る鉄 道さえも止められた。それからアッサムは長い間中央政府から放置されたあと、1962年には中国の侵略を受けた。
・バングラデシュとインドの間には自然な境界がないので、何百万もの人が、植民地時代と同様、機会を求めてインド に移住してきた。アッサムではそうした移入民の多くが選挙民に登録されたので、それらの人々の代表政府が民主 的に選ばれてしまった。その体制に異を唱えるアッサム住民によるアッサム統一解放機構(ULFA)が結成された。
ULFA の公然の目的は、彼らの言うインドによる「アッサムの植民地的占領」を終わらせ、「社会主義的独立国」を樹 立することだった。ULFA は1980年代に東方の反乱組織と接触するようになり、そのなかの一つ、ビルマのカチン 独立軍(KIA)は ULFA に武器を輸出し訓練を助けた。
・ULFA はまたインド東側の弱点を突きたがっていたパキスタンの諜報機関とも関係を持つようになっただけでなく、戦 線の起源がバングラデシュからの不法移入への反対だったことを考えれば皮肉なことに、バングラデシュとも関係 がつくられた。こうして ULFA はバングラデシュの国内やビルマ西部の森など政府の手の届かない地域に基地を設 けた。アッサムの北にあるヒマラヤの王国ブータンにも長年基地を置いていたが、2003年にブータン軍が行った
「一掃作戦」で、強制的に退去させられた。
・アッサムには、長年にわたる不満の蓄積に金儲けの機会が重なった結果、さまざまな規模の武装団体が数十も生ま れていた。武装組織の多くは、結成のもととなった不平の念がどんなに切実なものだったとしても、強盗集団と化す 傾向にあり、テロリスト戦術に訴えることも多い。何千人もの無関係の市民が暴力の犠牲になった。
・ULFA はビルマ国内の、マンダレーから北東に400キロほど離れたビルマ軍の支配が及ばない丘陵地帯にいくつか の基地を置いている。インド・ビルマ国境は千数百キロの長さに及ぶが、極めて脆弱で、警備らしい警備もされてい ない。中国人やワ人その他の武器密輸業者やブローカーからなる怪しげなネットワークが各地方の腐敗した役人と
8 共謀し、雲南や、ビルマ国内のワ州連合軍(UWSA)から武器を持ち込んでいる。
・ULFA は長年バングラデシュにも基地を持っていて、司令本部もそこにあった。しかし2008年12月にバングラデシ ュで総選挙が行われ、シェイク・ハシナと彼女が率いるアワミ連盟が権力を握ると事情が一変した。彼女はインドと の関係を改善する目的で、バングラデシュ国内で活動する ULFA の兵士をいっせいに取り締まった。ULFA の最高 司令官バレシュ・バルアはまだ捕まっておらず、ビルマ・雲南国境のどこかにいることはほぼ確実で、瑞麗にいる可 能性もある。
・今日、インド、バングラデシュ、ビルマそして中国の政府は、各国同士の「連結性」を改善する必要があるということを よく口にし、新しい道路や開かれた国境を約束するいろいろな協定に調印している。しかし暴力と犯罪行為による 別種の「連結性」がすでに存在し、今後も拡大する可能性がある。
・インド本土とアッサムとを結ぶ唯一の陸路は「ニワトリの首」だ。しかしアッサムより東にある丘陵地帯の諸州は、陸路 ではアッサムを経由するしかないので、いっそう孤立している。インドの中央政府も州政府もビルマが鍵になると見 ていた。ビルマは、陸に囲まれた雲南に海への出口を与えた。同様にインド北東部、とくにビルマにもっとも近いトリ プラ、ミゾラム、マニプル、そしてナガランドを海につなぐことができるかもしれない。2008年にビルマとインドの政府 は、ビルマ西海岸にあるシットウェーの古い港を再建し、そこを北東部につなぐ協定に調印した。
2.「ミャンマー経済で儲ける5つの真実」 小原祥嵩著 幻冬舎新書 2013年9月30日
副題 : 「市場・資源・人材」 帯の言葉 : 「宝の山を見逃すな! ミャンマーが中国に取って代わる!」
この本を読んでも、「ミャンマー経済で儲ける」コツもタネも見つけ出せないだろう。本書に書かれているのは、すで に多くの識者によって語り尽くされてきたものであり、いわば常識の類である。ミャンマーにまったく知識のない人が読 むのならば、少しは参考にもなるのだろうが、「ミャンマー経済で儲けよう」と企む人にとっては、あえて買ってまで読む 価値はない。
なお、本文中には、少し疑問符が着くような記述が見られる。その一端を以下に書き出しておく。
「現に軍事政権時代には表出しなかった仏教徒・イスラム教徒の対立が民政移管以降激化し、タイ国境付近には住 まいを奪われた多くの人々が押し寄せ、難民キャンプには人が溢れていると言います」、「米国が経済制裁を科す中、
日本は経済制裁を行っていませんでした。しかし、ミャンマーとの取引があることでマイナスのイメージがつくことや、
米欧の取引先とのビジネスに支障がでることを恐れて、日本企業はほとんどミャンマーへの進出に二の足を踏んでき ました」、「中国はベンガル湾を囲む物流の要所を押さえることで、次の2点を目指しています。①米国や日本へのエ ネルギー供給路となる、シーレーンを押さえる。②東の南シナ海と西のインド洋から ASEAN 諸国を包囲する」。
3.「ミャンマー 驚きの素顔」 三橋貴明著 実業之日本社 2013年9月4日 副題 : 「アジア最後のフロンティア」 帯の言葉 : 「知られざる実像に迫る
巨大経済特区の建設が動き出す! 人件費は中国の6分の1。 2015年に向けてインフラ整備急ピッチ!」 この本には、「ミャンマーの驚くほどの素顔」は何も書かれていないし、書かれていることは「知られざる素顔」ではな くて、「誰でも知っている顔」である。上掲著と同じく、すでに一般常識となっているようなことが羅列してあるだけである。
もっともミャンマーについての初心者には、ガイド本として適当だろう。
三橋氏は、「新聞が煽る“ミャンマー・ブーム”に乗せられてミャンマーに投資したところで、損をするだけの話だ。そ うではなく、自分の目でミャンマーという国を確認し、さらに日本の相対的な立ち位置を把握した上で、投資の決断を した企業は成功するだろう」と書いているが、三橋氏自身は、「実は筆者がミャンマーを訪れるのは、2度目である」とも 書いている。「自分の目でミャンマーという国を確認せよ」と主張し、「ミャンマーの素顔」を紹介しようとするならば、少 なくとも数か月間現地に定住するか、二桁を超えるミャンマー訪問を経験した後が望ましい。2度の訪ミャンマーでは、
素顔を暴き出すことは不可能であり、この本は他人からの情報の受け売りになっている嫌いがある。
たとえば三橋氏は、「昼日中は常に大渋滞が発生している」と書いているが、バングラデシュのダッカやインドネシ アのジャカルタと比べた場合、ヤンゴンの交通事情は天国のようなものである。また「ヤンゴンに限らず、ミャンマーの 道路事情は極端に悪い。冗談でも何でもなく、一般道路は穴ぼこだらけである」とも書いているが、これまた相対的な ものであり、私は東南アジアの他国と比べてそれほど悪くはないと思っている。さらに「ネピドーまで6時間、あのコンク リート打ちっぱなしの高速道路を自動車で移動するのは、日本人の読者には想像がつかないだろうが、本当にきつ いのだ」と言い、車でのネピドー行きを断念したという。私はその高速道路をネピドーまで往復12時間、車で突っ走っ たが、別にきつくもなんともなかった。バングラデシュの道路と比べて、むしろ快適であり、運転手が居眠りしないかと 心配したほどだった。私は三橋氏に、何ごとも自ら体験することが大事だと忠告したい。
三橋氏は、日本政府のティラワ開発について、「果たして生産に必要な労働力を確保できるだろうか」と疑問を呈し ている。私はこの三橋氏の指摘は正しいと思う。しかし三橋氏は、「タイに近いダウェイ開発は日本企業にメリット大」と 書き、ダウェイ開発を持ち上げているが、この地はカレン族やモン族が多く、タイのバンコクにも近く、労働者の賃金は ヤンゴンの2倍ほどであり、すでに人手不足の現象が現れている。ティラワで労働力確保を問題視するならば、ダウェ
9 イではその上に民族問題が重なってくるわけで、さらに困難が増すと考えるべきである。
三橋氏は、「日系製造業の進出を阻むボトルネックは電力問題だ。電力供給というインフラが整備されない限り、労 働集約型の縫製業や軽工業以外が大々的にミャンマーに生産拠点を構えることは困難であろう」と書いている。たし かに電力不足はミャンマー全土に渡る大きな問題だが、そんなミャンマーの中でも停電がない地域もある。それをみ つけて紹介するのが、三橋氏の役目なのではないのだろうか。残念ながら三橋氏は、現在、ヤンゴン周辺では深刻な 労働力不足に陥っており、電力問題よりも、それが大きな問題となっていることや、それにつけ込んだ労働組合上部 団体の指導する労働争議が頻発していることに、一言も触れていない。この本はまさに、現場を知らない識者が、聞き かじりで書いた典型のようなものである。
4.「ビルマのゼロ・ファイター」 井本勝幸著 集広舎 2013年9月5日 副題: 「ミャンマー和平実現に駆ける一日本人の挑戦」
帯の言葉: 「愛車ゼロ・ファイター号とともに110万キロを駆けめぐった、一日本人の清々しいたたかいの記録」
ミャンマー著者の井本氏は、ミャンマーで、「統一民族連邦評議会」(UNFC)-11の主な少数民族勢力が加盟す る連合組織-の結成のために、タイとミャンマー間の山岳地帯を、愛車「ゼロ・ファイター」で疾駆したという。そのため 井本氏は、日本の友人たちの間では、「ミャンマーの坂本龍馬」と呼ばれているらしい。この本には、その東奔西走振 りが書き連ねてある。ただし、地元民との交流や山岳道路の険しさ、ミャンマー国軍との接触など、具体的な動きは詳 細に描き込まれているが、UNFC 結成への政治的背景や人間関係、その交渉過程などは、まったく描かれていない。
その意味では、「日本人の清々しいたたかいの記録」とは言い難い本である。
井本氏は、ミャンマーの少数民族問題に取り組もうとした動機について、この本では明確に記述していない。しかも 井本氏は、「僕は、この UNFC 設立に前後して、各地にちらばるすべての少数民族の代表者たちに会うことを決意し、
それから半年をかけて、ビルマ-タイの国境をあちこちとまたいでその目的を果たした。間を取り持っていくには、どこ かの少数民族の誰かでも、ビルマ族のだれかでもダメだった。日本人である僕は、直接の利害関係も何もない。ちょう ど都合のよい存在だったのだろう」と書き、カレン・モン・モーン・シャンなどの少数民族地域への潜入については詳述 しているが、他の少数民族地域(カチン・チン・ラカイン)のことはまったく記していない。
井本氏は本文中で、唐突に、「僕の念頭は、常にビルマの北側にあるチベットを見据えているので、ここに留まるつ もりはない」と書いているが、そのチベットで何をするつもりなのかは明らかにしていない。井本氏は、チベットに関する 記述を、「チベットからの支援」という項で、北インドのダラムサラを拠点にして活発な活動を続けている亡命チベット人 女性のミャンマー少数民族との接触について、3ページに渡って書いている。しかし、それを読む限り、井本氏がダラ ムサラでの亡命チベット人たちの豊かな生活を支えているのが、西側諸国からの多額の援助金であることは関知して いないようである。
また井本氏は僧侶であるが、自分の活動を支えた財政基盤については、「“四方僧伽”というネットワークによる支 援」と書いているだけで、その内容については詳述していない。この点を不思議に思いながら、読み進めて行くと、最 後に、「2012年10月18日、僕は UNFC の仲間たちと一緒に東京の日本財団に招かれた。アウン・ミン大臣との交渉 成立と時を同じくして日本財団の笹川陽平会長(当時、ミャンマー少数民族福祉向上大使)が即座に動かれ、日本財 団として300万ドル規模の緊急人道支援が打ち出され、反政府少数民族地域に米や衣料品が配給されることになっ た」との文章に出会った。この記述を読んで、私はやっとこの本の正体を知ることができた。
5.「アジア『新・新興国』戦略」 日本経済研究センター編 2013年3月 副題 : 「バングラデシュ・ミャンマー “次”の拠点と市場を拓く」
本書は、公益社団法人:日本経済研究センターによる日本経済新聞社からの受託研究報告書である。したがって 少し固い本であるが、新・新興国の現状を概観するには、好適な書である。ことにこの書では、前半でバングラデシュ、
後半でミャンマーを深く掘り下げて記述しており、企業進出のための良き参考書といえるだろう。
以上
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上海街角インタビュー ⑤
社団法人大阪能率協会アジア・中国事業支援室副室長(海外委員)
順利包装集団董事(在上海)
福喜多技術士事務所所長 福喜多俊夫
「上海人は瓶ビールが好き」
10 中国包装連合会の資料によれば、中国は世界最大のガラス瓶生産国であり消費国である。生産量は 1000 万トンを超えている。飲料、特に酒類包装はガラス瓶が主流である。中国のビール生産量および消費量はす でに400億リットルを超えているが、容器はガラス瓶が9割を占めている。中国は世界最大のビール瓶消費 国であり、毎年、500億個以上を生産しているという。
日本のスーパーではビールの棚は缶ビールが9割以上、わずかにガラス大瓶が隅のほうに並んでいるだけ である。今や日本の瓶ビールはレストラン等の業務用が主流で、一般家庭ではまず見られない。それでは中 国では本当に瓶ビールが好まれているのか? 古北カルフールでビール売り場を覗いて見ると確かに陳列棚 の半分を瓶ビールが占めている。
上海人は家でも瓶ビールを飲むのか。街の人に聞いてみた。
1.50歳代の男性:
家で飲むのは缶ビールと瓶ビールが半々くらいかな。缶ビールは買うより貰ったものを飲むのが多い。
好きなのはもちろん瓶ビールだな。
2.30歳代の女性
もちろん瓶ビールです。
3.30歳代の男性
瓶ビールが好きだけど、夏にシャワーのあと飲むのは缶ビールも多い。まあ、瓶と缶が半々かな。
4.20歳後半の男性
瓶ビールは持って帰るのが大変なので、家では缶が多いよ。僕はどちらでもこだわらない。
5.30歳代女性
銘柄によって瓶入りを買う。青島の黒ビールと、純生は瓶しか買わない。
6.40歳代後半の男性
中国人が瓶ビールを好きなのは、安いからというのも理由の一つ。同じ容量なら缶より瓶の方が安い。
缶ビールは容器の缶の生産コストが高い(製缶機も印刷機も高い)からどうしても瓶ビールより高くなる。
但し、贈答品は 100%缶ビールだ。瓶ビールは簡単に偽物が作れるが(ラベルなど簡単にニセラベルが印 刷出来る)、缶ビールは高度な技術が必要だから偽物が作れないというのが理由だ。僕はKTV(カラオケ)
では缶ビールしか飲まないよ。KTVのワインとか高級洋酒は偽物が多いから缶ビールが一番安全。
(詳しいので後で聞いたらアルミ缶メーカーの社員だった)
2011年~2015年、中国のガラス瓶生産量は年平均6%伸び、2015年には1550万トンに達すると予想さ れる。各種包装製品中、紙製品よりは少ないがプラスチックや金属よりは多い。カルフールで他の飲料や調 味料の棚をのぞいたが、日本にくらべて遥かにガラス容器が多いという印象を受けた。中国の人はプラスチ ックより瓶容器の方が好きなようだ。日常持ち歩く飲料水やお茶はPETボトルが全盛のように見えるが、よ く観察すると、まだまだマイボトル派(かっこ良いステンレス水筒もあるが、昔ながらのガラス水筒)も結 構多い。
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【中国経済最新統計】
① 実 質 GDP 増加率 (%)
② 工 業 付 加 価 値 増 加 率 (%)
③ 消費財 小売総 額 増 加 率(%)
④ 消費者 物価指 数 上 昇 率(%)
⑤ 都 市 固 定 資 産 投 資 増 加 率 (%)
⑥ 貿 易 収 支 (億㌦)
⑦ 輸 出 増 加 率 (%)
⑧ 輸 入 増 加 率 (%)
⑨ 外国直 接投資 件 数 の 増加率 (%)
⑩ 外 国 直 接 投 資 金 額 増 加率 (%)
⑪ 貨 幣 供 給 量 増 加 率 M2(%)
⑫ 人 民 元 貸 出 残 高 増 加 率(%) 2005年 10.4 12.9 1.8 27.2 1020 28.4 17.6 0.8 ▲0.5 17.6 9.3 2006年 11.6 13.7 1.5 24.3 1775 27.2 19.9 ▲5.7 4.5 15.7 15.7 2007年 13.0 18.5 16.8 4.8 25.8 2618 25.7 20.8 ▲8.7 18.7 16.7 16.1 2008年 9.0 12.9 21.6 5.9 26.1 2955 17.2 18.5 ▲27.4 23.6 17.8 15.9 2009年 9.1 11.0 15.5 1.9 31.0 1961 ▲15.9 ▲11.3 ▲14.9 ▲16.9 27.6 31.7 2010年 10.3 15.7 18.4 3.3 24.5 1831 31.3 38.7 16.9 17.4 19.7 19.8 2011年 9.2
6月 9.5 15.1 17.7 6.4 11.8 223 17.9 19.0 6.6 2.8 15.9 15.2
11
7月 14.0 17.2 6.5 27.7 315 20.3 23.0 2.7 19.8 14.7 15.0 8月 13.5 17.0 6.2 33.4 178 24.4 30.4 6.4 11.1 13.6 14.8 9月 9.1 13.8 17.7 6.1 27.3 145 17.0 21.1 -3.5 7.9 13.1 14.3 10月 13.2 17.2 5.5 34.1 170 15.8 29.1 -0.6 8.7 16.7 14.1 11月 12.4 17.3 4.2 21.4 145 13.8 22.6 -12.9 -9.8 16.2 14.0 12月 8.9 12.8 18.1 4.1 5.7 165 13.3 12.1 -15.4 -12.7 17.3 14.3 2012年
1月 4.5 25.3 273 -0.5 -15.0 4.6 10.8 16.6 14.8 2月 21.3 3.2 - -315 18.3 40.3 38.7 -0.9 17.8 15.0 3月 8.1 11.9 15.2 3.6 21.1 53 8.8 5.4 -6.5 -6.1 18.1 15.7 4月 9.3 14.1 3.4 19.2 184 4.9 0.4 -26.1 -0.7 17,5 15.4 5月 9.6 13.8 3.0 21.0 187 15.3 12.7 -6.1 0.0 17.9 15.7 6月 7.6 9.5 13.7 2.2 21.8 317 11.3 6.3 -16.3 -6.9 18.5 16.0 7月 9.2 13.1 1.8 20.6 251 1.0 5.7 -7.8 -8.6 18.9 16.0 8月 8.9 13.2 2.0 19.4 267 2.7 -2.7 -12.7 -1.4 18.4 16.1 9月 7.4 9.2 14.2 1.9 23.1 277 9.8 2.3 -6.4 -6.8 19.8 16.2 10月 9.6 14.5 1.7 22.4 320 11.5 2.2 1.8 -0.2 14.6 15.9 11月 10.1 14.9 2.0 20.0 196 2.8 -0.1 -8.7 -5.4 14.5 15.7 12月 7.9 10.3 15.2 2.5 18.8 316 14.0 6.0 -7.8 -4.5 14.4 15.0 2013年
1月 2.0 20.8 291 25.0 29.0 -12.4 -3.4 15.9 15.4 2月 3.2 153 21.7 -14.9 -35.6 6.3 15.2 15.1 3月 7.7 8.9 12.6 2.1 21.5 -9 10.0 14.2 -19.7 5.7 15.7 14.9 4月 9.3 12.8 2.4 19.8 182 14.6 16.6 13.9 0.4 16.1 14.9 5月 9.2 12.9 2.1 19.7 204 0.9 -0.1 -14.4 0.3 15.8 14.5 6月 7.5 8.9 13.3 2.7 19.9 271 -3.3 -0.9 -17.3 20.1 14.0 14.1 7月 9.7 13.2 2.7 20.2 178 5.1 10.8 1.2 24.1 14.5 14.3 8月 10.4 13.4 2.6 21.4 285 7.1 7.1 -11.7 0.6 14.7 14.1 9月 7.8 10.2 13.3 3.1 19.6 152 -0.4 7.4 -16.8 4.9 14.2 14.3 注:1.①「実質 GDP 増加率」は前年同期(四半期)比、その他の増加率はいずれも前年同月比である。
2.中国では、旧正月休みは年によって月が変わるため、1月と 2 月の前年同月比は比較できない場合があるので注意 されたい。また、( )内の数字は 1 月から当該月までの合計の前年同期に対する増加率を示している。
3. ③「消費財小売総額」は中国における「社会消費財小売総額」、④「消費者物価指数」は「住民消費価格指数」に対応 している。⑤「都市固定資産投資」は全国総投資額の 86%(2007 年)を占めている。⑥―⑧はいずれもモノの貿易であ る。⑨と⑩は実施ベースである。
出所:①―⑤は国家統計局統計、⑥⑦⑧は海関統計、⑨⑩は商務部統計、⑪⑫は中国人民銀行統計による。