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令和3年度 研究計画書

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九州大学大学院人文科学府 博士学位論文(要旨)

写真のリアリティ再考̶̶写真の観賞における「現実」の性質と位置付け̶̶

江本 紫織

本論文は、写真の観賞において意識される「現実」の性質とその位置付けを明らかにす ることで、写真のリアリティを再考することを目的とした。リアリティは写真の特異性の 一つとみなされ、写真の生成プロセスを論拠に説明されてきた。しかし、写真のデジタル 化によって生成プロセスを論拠とすることができなくなっただけでなく、写真と他のメデ ィアの境界が曖昧になり、写真の性質を問う機会自体も減少した。これまで写真の性質は 様々な二項対立の中で論じられてきたが、様々な表象やメディア、性質の間を揺れ動く写 真の包括的な理論化のためには、写真を取り巻く技術や環境はもちろん、時に写真それ自 体も変数として捉え得るような理論的枠組みが必要なのである。そこで、本論文は写真の 観賞においてどのような現実がどのように意識されるのかを明らかにすることで、写真の 性質の一端を理論化し直すことを試みた。

まず、第1部第1章では写真の観賞の多様性を便宜的に類型化し、それらの観賞を写真 の生成プロセスを論拠とする写真論によって説明することの有効性と限界を検討した。

写真の観賞を大きく3つに分けると、インデックス性やケンダル・ウォルトンによる「透 明性テーゼ」等、写真の生成プロセスを論拠とする従来の議論を適用できるものがあった。

一方で、従来の写真論では十分に説明できない観賞タイプや観賞タイプ同士の関係性の 問題が残った。そこで、撮影におけるコード化や観賞の際のコンテクストの作用、上述の 生成プロセスに基づく議論に対する批判的論考を精査すると、多くの議論において写真 と撮影された現実のつながりによっては説明し得ない例外的な性質が想定されていた。

このことから、撮影された現実とのつながりが重視される従来的な写真の性質と、「例外」

的な性質の双方を考慮しながら、写真の性質および写真を見るということを再検討する 必要があると考えられた。

そこで第2部では、写真が伝達する視覚情報がどのようにして「現実」とみなされるの か、その構造を検討した。まず第2章では、観賞において意識される「現実」について検 討するため、観賞において意識される時間性・空間性について整理した。すると、写真は 時間的・空間的部分をとどめるが、観賞によって意識される時間性、空間性は撮影された 時間や空間に限定されないと言えた。特に写真を通してあたかも対象を見ているかのよ うな経験が成立する場合には、通常の知覚にはない非現実的な時間­空間の関係性が成立 すると考えられた。

続く第3章では、写真の観賞によって形成される「イメージ」に注目し、その性質と構 造を検討した。その結果、観賞時にイメージされるものは、主題となる「核」に視覚情報

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やテクスト等の様々な情報を関連付けることで形成される「再構成された現実」であると 考えられた。この時「核」となり得るのは、写真の描写内容に限定されない。たとえばSNS 写真であれば、ハッシュタグや位置情報、撮影者や投稿者等、写真外の要素や対象を軸に

「再構成された現実」が形成されることもある。また第4章では、テクスト等の関連付け られる情報は、時間的部分として写真の内容を補完するだけでなく、写真の描写内容以外 の時間や空間の指示や表象を促す役割もあることを明らかにした。写真および関連する 情報が可能にする指示や表象は、撮影された現実だけでなく様々な時間、空間からなる現 実を意識させることにつながるのである。

一方で、このように多様な現実意識を可能にする「再構成された現実」による説明は、

写真だけでなく、あらゆる視覚表象に見られる観賞形態とみなすこともできるだろう。そ こで第3部第5章では、「再構成された現実」の形成に事実や虚構性がどのように関わる のか、その際、観者の想像力はどのように作用するのかを確認した。写真には撮影から観 賞までの様々な段階で虚構性が入り込む可能性があるが、観賞において意識される「現実」

が事実とみなされるか、虚構とみなされるかは、「再構成された現実」がどのように形成 されるか、その際に観者の想像力が如何に関与するかといった複合的な条件に左右され ると考えられた。

これらを踏まえ、第6章では通常単一の視覚イメージとして考察される写真を、様々な 写真行為やコンテクスト等で成り立つ一つのプロセスとして再検討した。すると、写真は 受動的に生産され受容されるばかりでなく、能動的に他に働きかける一要素として位置 付けられた。このような写真は、様々な写真行為や情報等の諸要素をつなぎ、そこから総 体としての「写真」を形作る。この時総体としての「写真」は、その構成要素のバランス によって客観性や真実性等の特定の性質を帯びると考えられた。たとえば、単一の視覚イ メージとしての写真は時に複数の要素の間を揺れ動くことを促し、時にそれらを固定す る役割を担う。それらの総体としての「写真」は、撮影された現実を含む物理的現実を指 し示すこともあれば、全く別の「現実」を意識させることもある。このような結節点とし の写真および「写真」が、構成要素のバランスや物理的現実や虚構的現実との関係の中で、

多様な「現実」を意識させるのである。

以上、本論文は写真のリアリティという写真の性質を、従来の写真論との接合点を探り ながら再考した。写真のリアリティを観賞において意識されるものの性質および位置付 けから再考すると、写真のリアリティとは写真が特定の時間や空間を指し示すことのみ にあるのではないことが明らかとなった。むしろ「写真」とは、写真プロセス全体を通し て撮影された現実から虚構的現実まで、多様な「現実」と関わるものである。そのプロセ スにおいて、「写真」は各「現実」の性質を減じたり高めたりすると考えられた。本論文 が示すのは、そのような一つのシステムとしての写真であり、写真のリアリティなのであ る。

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