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「伊勢志摩サミットに向けた有識者会合」の開催について 要旨報告

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「伊勢志摩サミットに向けた有識者会合」の開催について 要旨報告

2016年5月23日

(公財)日本国際問題研究所

日本国際問題研究所は、外務省との共催で、「伊勢志摩サミットに向けた有識者会合」を5月 12日に都内で開催した。

本会合は、戦後の自由民主主義のルールに基づく世界秩序に対する内外からの挑戦へのG7の 対処のあり方について、サミット関係者への質の高い情報提供を目的として、日、米、英などの G7 諸国及び豪、シンガポール、イラン等の G7以外の国から 20名の有識者を招聘して行われ た。政治、安全保障、経済、インド・太平洋における地域秩序などの日本にとって身近な問題に 焦点をあてると共に、従来のG7会合で取り上げられた中東情勢や世界経済についても政策的意 味合いを探る議論を行った。

会合はチャタムハウスルールに則って開催されたため、発言者は非公開である。本要旨に示さ れた各論点について、当研究所や共催団体、参加者全体の意向を代表するものではない。

I. 国際秩序とアジアにおける安全保障課題

冷戦期の米ソ二極、冷戦後の米国への一極化を経て、現在は新興国が台頭する中で、自由民 主主義に基づく多国間制度、民主主義制度、法の秩序がG7以外の新興国やG7諸国の国内か ら様々な挑戦を受けている。本セッションでは、①国際秩序を構成する制度・価値に関するグ ローバルな課題及び②アジアにおける地域秩序をめぐる動向に関して、参加者から以下のよう な指摘がなされた。

1. 国際秩序とグローバルな課題

(1)既存の国際秩序が抱える諸問題

・既存の法に基づく国際秩序に対する中国、ロシアによる挑戦が増大。

・現状はパワーシフトというよりもパワー分散(diffusion)。各国においても自らの利益を求め る動きが内的な脅威として顕在化。G7諸国にも自信を喪失している国が見られる。

・国際連合、国際通貨基金(IMF)、世界銀行、世界貿易機関(WTO)などの多国間組織の一部 が、影響力のある参加国の多様化により、機能不全に陥り始めている(WTO ドーハ・ラウン ド等)。

(2)自由民主主義国における価値の変容と課題

・ソーシャルメディア(SNS)等を用いたポピュリズム、反グローバリゼーション運動や社会 的不満が高まっている国もあり、民主主義政治に対する国民の信頼を取り戻すことが必要。

・宗教・民族的価値やナショナリズムの高揚が国際秩序に影響を与える現状では、世界において 自由民主主義的価値観が当然視されないことに留意すべき。

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(3)権威主義体制における価値の変容と課題

・中国国内でも法治国家を望む声や国際情勢に知的関心を強く抱く世代が登場する中、パブリッ ク・ディプロマシーを通した将来世代への働きかけが重要。

・一方で、中国では伝統と現代が混交し、西洋的価値に対する反感も残るため注意を要する。

・中国国内体制の継続について、中国内の有識者でも20年続くと見做す者から、明日にでも崩 壊する懸念を抱く者までおり、先行きは不透明。冷戦終焉も予測困難であった。

(4)G7が拠るべき認識

・戦後、G7諸国が構築・維持してきた、自由で民主的なルールに基づく国際秩序から、世界各 国は長年にわたり利益を享受しており、今後も、多国間の制度、自由貿易、法の支配、航行の 自由や領域不可侵といった基本的な原則の維持が重要。各国内では民主主義国の市民にとって 代替可能な政治制度はないという認識の共有が必要(複数)。

2. 多極化時代のアジアにおける国際秩序への挑戦と課題

(1)国際秩序に対する中国の対応

・中国は南シナ海、東シナ海、台湾海峡、チベットに於ける領土的野心を見せ、既存の国際機関 と対抗する独自の機関を設立するなど、「修正主義」的な動きが目立つ(複数)。

・中国は既存の国際秩序の下で、経済成長を実現し、共産党の正当性を維持してきたことから、

現状維持を志向している。

・中国の多国間主義への関与を引き出すため、日米はアジアインフラ投資銀行(AIIB)の動き を注視しつつ、必要があれば、AIIBの資金調達手法・能力、ガバナンス向上に向けた協力を 提供することが望ましい。

(2)米国リバランス政策

・米国政府内で中国の行動に対する脅威 認識 が統一されていないため、航行の自由作戦

(FONOPS)を通じて発信するメッセージが不明瞭となっている。

・オバマ政権のFONOPSはアメリカの関与を強く望む豪州やASEANの一部からは不十分に見 えるが、中国や一部の域内国からは過剰な関与として捉えられる現状がある。

・米国は中国の「センシティビティ」に対して過度に「センシティブ」。

(3)インド太平洋における変化

・インド太平洋という地域概念は、価値外交や対中国封じ込め政策の体現ではなく、長期的な各 国の経済利益の実現を目的としている。

・南シナ海問題について、ハーグの常設仲裁裁判所判決に対して ASEAN 諸国が主体的に一体 となった行動を取れるかが問われる。

・インドは伝統的な非同盟主義を維持しつつも、米国との戦略的関係の重要性を認識しつつある。

・法に基づく秩序は中小国にとって利益が大きいという認識を持つべき(複数)。

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3 II. 中東における構造的変化

2011 年に中東諸国の抱える構造的な問題――表現の自由や人権の欠如、若年層人口膨張

(Youth Bulge)への無策、統治組織の機能不全、汚職、不平等、教育制度の欠陥等――への 不満から市民によるアラブ革命が起きたが、シリア、リビア、イエメンは内戦に陥り、「イス ラーム国」(IS)等、非国家主体が台頭し、中東は混迷を深めている。米露の対立や域内大国 の覇権争いが危機への対応を遅らせ、さらには大局的な中東の将来像を欠いたまま、軍事的解 決に傾注してきた国際社会の外交政策の失敗がISを増長させ、事態を深刻化させたとの認識 が示された。これら諸問題に対するG7の対応、短期、中長期的な解決案、その実現に向けた 未来志向かつ現実的な国際協調のあり方について、参加者より以下の指摘がなされた。

1.シリア問題の解決に向けて

・G7は、国連主導のジュネーブ声明に沿った和平交渉の取り組みを支援すべき。

・緊急課題は、①敵対行為の停止、②人道支援、③難民及び国内避難民保護。

・中期的には、国家の一体性を維持しつつ、暫定政権の成立を後押しすべき。

・シリア国内の当事者(local actor)の紛争解決に向けた自助努力を支援し、地域固有のシステ ムに根差した平和構築を促進することが望ましい。

2.ISを含むテロ組織への断固たる対応

・ISの軍事力・支配領域・財源の能力削減のために、G7主導で国際社会が軍事作戦、国境管理、

資金及び武器流入の阻止、テロ情報共有などで一層の緊密な協力が必要。

・過激派テロ組織によるリクルートや宣伝活動に対抗するため、イスラーム諸国の協力を得つつ、

脱過激化政策(de-radicalization)の強化、中長期的な若者支援や経済支援の拡充が必要。

3.中東地域安定化に向けた取り組み

・地域の安定については悲観的な見通し。

・政治的解決よりも、軍事的対応に流れやすいことから、国ごとの状況に応じて安全保障や経済 支援など重点を区別して地域の安定につなげていくことが肝要。

・サウジとイランの緊張緩和のために、G7諸国、特に日本に対話促進に向けた効果的な役割を 期待。

・イランへの政治的・経済的な関与を通じて、イラン核合意体制を後押しすべき。

・チュニジアの民主化やシリア難民受入国の支援を継続すべき。

・現在国際社会の関心が相対的に低下しているが、イスラエル・パレスチナ紛争は“アラブ・

ストリート”には依然影響があり、二国家解決案の支持と、イスラエルによる占領地地域に おける入植活動停止への働きかけが必要。

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4 III. 世界経済の諸問題とG7の対応

先進国経済の長期停滞(Secular stagnation)、新興国経済の成長減速により、世界経済の見通 しが不透明である中、G7がどのような対処すべきかについて議論がなされた。具体的論点とし て、インフラ投資の仕組みのあり方、原油価格の低迷と世界経済への影響、中国の為替メカニズ ムとアジア諸国通貨への影響、ファイナンス技術の発展、財政および税制の改革等の問題につい て議論が交わされ、参加者より以下の指摘がなされた。

1. 経済停滞に対処する経済政策

・金融政策・財政政策・成長戦略のうち、短期的な経済政策として、金融政策が積極的に推進さ れてきたが、潜在成長率を底上げする効果は乏しく、金融政策の限界が見えてきている。

・次の施策として財政政策への期待が高まるが、先進諸国の政府債務は膨らんでおり、この局面 において、財政支出を拡大させるか、緊縮財政の方向に向かうか判断をしなければならない。

・財政政策の手法として、世代間格差の解消など緊要な課題も念頭においた新しいタイプの財政 政策が望まれる。

・デフレに直面する先進諸国が、画期的かつ効果的な財政政策を推進することによって、課題解 決の先例を示すことができるのではないか。

2. 新しい成長分野の開発

・新しい成長分野は将来的に巨大市場へと発展する可能性がある。なかでも、グリーンエネルギー、

電気自動車の開発等においては、G7の主導的な役割が期待される。

・インフラ投資については、新しいファイナンスの仕組みの開発を推進して、経済収益性の高いプロ ジェクトを増やすべきである。PPP(Public-Private Partnership)による民間資本の活性化にも繋 がる。

3. 経済と政治が相互に及ぼす影響

・経済が政治にもたらす結果を念頭において、G7の枠組みにおいても今後取り組むべき経済課題を 明確にしていくことが必要。

Referensi

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