写真1 あくまき
中林ゼミナール活動報告
外国語学部 国際文化交流学科 准教授 中林 広一 外国語学部国際文化交流学科では
は研究対象を食文化に定めている。 れがいわゆる「ゼミ」に当たるが、筆者のゼミで 文化交流専門演習Ⅱという科目を設けている。こ
3
年次に国際 ゼミの目的は食文化に対する研究を通じて海外や日本の諸文化に対する理解を深めることにあるが、外部の人からは「美味しいものが毎回食べられるけしからんゼミ」とのイメージを抱かれることもままある。ただ、現実にはそううまい話ばかりが転がっているわけではなく、筆者が目新しいものを見つけてはゼミに持ち込むので、時には「災難」が生じることもある。クリスマスの時期のシュトーレ ン、新年早々のガレット・デ・ロアなどは好評を博したものの、鹿児島のあくまき(もち米を灰汁
で煮たお菓子で、きな粉をかけて食べる、写真
ろではあるが。 ハマる学生が一定数いたのは食文化の面白いとこ あったに違いない。もっとも、少数ながらそれに 多数いたので、本人たちにしてみれば「災難」で は独特の風味もあって心の底から嫌がるゼミ生が
1
) それはさておき、一口に食文化と言ってもそれが含める範囲は実に広い。食材・料理のみが研究対象というわけではなく、味覚・道具・歴史・地域振興・マナー・飲食店経営等々、食に関わるものは何でもテーマとして成り立ちうる。ただ、本ゼミでは食材や料理を並べ立て、「美味しい」・「まずい」といった評価を連ねるような「グルメレポート」は求めていないので、そこは注意が必要である。行っているのは研究であり、食にまつわるトピックについて疑問を抱き、その背景を追究していく、その一連の作業がゼミの中心となってくる。 研究テーマの絞り込みからゼミ論文の執筆に至るまで、
み(写真 の整理作業に取り組み個々の研究テーマの絞り込 休み期間中には合宿を行い、ゼミ生がアイディア 業はいずれもこの流れの中に位置づけられる。夏
1
年間を通じてゼミで実践するこれらの作 (味の素食の文化ライブラリー、写真2
)、また学外にある食文化専門の図書館できる。 ていくことが ハウを蓄積し に関するノウ 通じてゼミ生はアイディアの練りこみや調査方法 き資料の収集にも努めているが、これらの機会を
3
)に出向 こうした研鑽の結果生まれて来る成果は思いのほか興味深いものが多く、これまでも「日本人写真2 ゼミ合宿
第2部 学生の活動・ゼミナール活動 ●
80
はなぜ箸の持ち方に厳しいのか?」・「日本においてカレーライスが普及した理由」・「食物に対する嫌悪感の根源はどこに求められるのか?」といったテーマで卒業研究が制作された。いずれもアンケートやインタビューを実施したり、統計資料の分析などを通じて明確な根拠と説得力に富む論理性を背景とした理由が示されており、「日本」の「風土」や「伝統」、あるいは「日本人」の「好み」・「DNA」といったあやふやな概念には落とし込まない立論がなされている点に強い魅力を感じる。
食は私たちにとって身近過ぎるトピックであるため軽くみられるきらいもあるが、「たかが食、されど食」である。食にまつわる背景を探っていくと、社会や文化の特質が見えてくることが多く、研究対象としては実に有意な存在だと言える。社会や文化への関心でも良いし、自身の成長でも良い、本文章を目にしてこれらの点に興味を持った学生がいたら、ぜひ本ゼミにて学んでもらいたい。
写真3 食の文化ライブラリー
● 国際文化交流学科 中林ゼミナール活動報告
81