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保険と金融

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Academic year: 2023

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(1)

保険と金融

- 価格決定原理の隔たりと交わり -

損保会館502会議室 2015年9月25日金曜日

報告者:河本淳孝

日本保険学会 関東部会

(2)

河本 淳孝(かわもと あつたか)

明治安田ライフプランセンター 市場調査部長 明治安田生活福祉研究所 主席研究員

◇明治安田での主な職歴

企画部、財務業務部、有価証券部、国際投資部等

◇明治安田以外での主な職務 中央大学 兼任講師(2008~)

日本保険学会 理事(2012~)および編集委員(2010~)

日本証券アナリスト協会 教育委員会委員(1996~1997)

一般社団法人 企業福祉・共済総合研究所 理事(2006~)

◇主な公職等

総務省「福利厚生施策の在り方に関する研究会」委員・座長代行(2008)

厚生労働省「社会保障審議会福祉部会」委員(2009)

◇主な資格・所属等

日本証券アナリスト協会 検定会員(CMA)

日本アクリュアリー会 研究会員

◇主な著作・論文等

(3)

グランド・サマリー

(4)

テーマ(論点の確認)

⑷が報告のテーマ

⑴保険2大機能のうち金融仲介機能に着目

⑵他金融業態と比較した保険業態の普遍性等

⑶代替的なリスク移転手法と保険との比較等

⑷金融ミクロ経済理論の一翼として近年発展した金 融の価格決定原理と、保険数学に基づいて発展し た保険の価格決定原理との比較

保険と金融

(5)

執筆の動機1

保険料の安全割増の決め方について

「金融の価格決定原理が備えているような科学的 な根拠を伴っていないのではないか。肝心なとこ ろは経験と勘に頼っているのではないか」(森平 2004)という批判がある。

➡ この批判は妥当か、検証してみたい。

※安全割増は破綻回避マージン。この批判は、戦後再出発20 生保のうち半数近くが実質破綻したことに対する批判ともとれる。

(6)

執筆の動機2

保険と金融の価格決定原理の隔たりと交わりを検 証することによって、

金融の価格決定原理では解を得ることができ

ない「保険に固有の価格決定原理に関する研

究領域が存在する」ことを明らかにしたい。ま

た、今後に保険と金融の交信による成果が期

待される領域とその成果に向けて克服すべき

課題とを抽出したい。

(7)

執筆動機を背景とした2つの仮説

1.保険料の安全割増について、金融の価格決定原理

(の科学的根拠)をもってしても解を得ることはできない

➡ 批判は妥当とは言えない

2.現下の保険の安全割増の決め方は、確かに科学的

な根拠が十分に備わっているとは言えず研究開発の余

地がある。とくに、保険料の安全割増の決定に需要者

の効用(リスク選好)を考慮する試みについては、金融

の研究成果を取り入れる形での交信が今後に期待され

る。

➡ 批判は妥当な部分もある

(8)

仮説検証の手段(接近法)

事実解明的分析( Positive Analysis ) 規範的分析( Normative Analysis )

数学的証明ではない

(9)

仮説検証の範囲と対象:

理論価格の科学的根拠の隔たりと交わり

保険 金融

市場価格 東証(兜町)取引価格

理論価格

(価格決定原理)

標準偏差原理 期待値原理

(事業費は除く)

平均・分散分析 CAPM 裁定価格理論

市場外価格 標準生命表(粗P・安割)

営業P(事業費P・安割) (注)

(注)金融にも市場外価格はある。ただし、本報告、本稿の射程外

(10)

報告・執筆の焦点は

安全割増 安全率係数

などの

「不確実性に対応する保険料」の

算出のあり方

(11)

ここからは

論文に沿って

(12)

導入部

2009 年『損保数理』に第7章新設

・『損保数理』はアクチュアリー資格試験教科書

・新設の第7章は「保険料算出原理」

・エッシャー原理、ワン原理など金融経済学あるいは数 理ファイナンスに関わりを持つ価格原理を学ぶ章

・保険と金融の交信がにわかに関心を集める契機(山 内、2009『生命保険数学の基礎』)

(13)

(注)エッシャー原理、ワン原理

⑴エッシャー原理(Esscher Principle)

・保険需要者あるいは保険者のリスク選好(効用関数)を考 慮した保険の価格決定に道を開いた

・元々は、保険金支払分布の確率測度変換(distorted probability)手法として開発

・1990年代、Gerber H.U.等が数理ファイナンスとの関係を再 発見

・ブラック=ショールズ・モデルを簡単に計算できる

⑵ワン原理(Wang Principle)

・保険需要者あるいは保険者のリスク選好(効用関数)を考 慮した保険の価格決定を行うことができる

(14)

本稿の構成

Ⅰ はじめに(執筆動機と仮説)

Ⅱ 本稿の構成と言葉づかい

Ⅲ 保険と金融の論点(本稿が論じる範囲)

Ⅳ 価格決定原理とは何か

1 保険(「生保標準生命表2007」の作成過程)

2 金融(金融ミクロ経済学の一翼として)

Ⅴ 価格決定原理に影響を及ぼすもの 1 法令等

2 実用・実務

Ⅵ 価格決定原理の科学的根拠の隔たりと交わり 1 大数の法則(強法則と弱法則)

2 不確実性の尺度(破綻リスクと価格変動リスク)

3 エッシャー原理とワン原理

(15)

本稿の構成(仮説検証部分)

➡ 価格決定原理の科学的根拠の隔たりと交わりの検証

保険 金融

理論価格

(価格決定原理)

標準偏差原理 期待値原理

平均・分散分析 CAPM 裁定価格理論

法令等の要請 料率3原則

標準基礎率と商品基礎率

実用実務の要請 曖昧さと主観

異常損害リスクの平準化

一意刻々と客観 超越した前提条件の受容

大数の法則 大数の弱法則 大数の強法則

不確実性の尺度 破綻リスク 価格変動リスク

エッシャー原理 ワン原理

(16)

言葉づかい

⑴「金融」を多用

・本来は「金融経済学」「数理ファイナンス論」「資産価格論」「証券投資 論」「金融工学」などに置き換えるべきところを「金融」と短く表現(保険と 金融という対立軸を鮮明に)

⑵「保険料」は文脈に応じて「保険の価格」に

⑶保険料は2分法(純Pと付加P)ではなく3分法

・保険金の期待値に対応する保険料

・不確実性に対応する保険料

・事業費等に対応する保険料

(17)

保険と金融の価格決定原理

(18)

保険と金融の価格

保険 金融

市場価格 東証(兜町)取引価格

理論価格

(価格決定原理)

標準偏差原理 期待値原理

など

平均・分散分析 CAPM 裁定価格理論

市場外価格 標準生命表(粗P・安割)

営業P(事業費P・安割) (注)

(19)

保険の価格決定原理とは

保険の価格決定原理 「生保標準生命表2007」では

保険金の期待値に対応する保険料 レクシス均等式:P=ωZ

粗保険料

標本数:32社から約1億件

プーリング不足年齢:国民表の参照 トレンドリスク補整:マルチンゲールではない 不確実性に対応する保険料

期待値原理:P=(1+a)ωZ 標準偏差原理:P=(1+2σ)ωZ 安全率係数:R=(1-b)Rf

ローディング:P=(1+c)Pαβγ+C

効用水準:保険会社の主観的判断

安全割増(数学的危機論による補整)

標本数:800万件

全年齢:標準正規分布みなし 補整:2σ(破綻確率2.28%)

補整水準:ベイズ方法論的接近法

※平滑化補整、特徴維持補整あり 事業費等に対応する保険料

生保:αβγ方式

損保:定率方式・定額方式

(20)

金融の価格決定原理

(ミクロ経済学の系譜)

金融の価格決定原理 効用理論

伝統的ミクロ経済学 完全競争市場

見えざる手の導きで最適資源配分 消費者理論と生産者理論

リスク回避行動を考慮せず

「事業費に対応する保険料」は不完全競 争市場の価格分析が可能

資本資産価格モデル(CAPM)

完全市場

全市場ポート(シングル・ファクター)

大数の強法則 iβi・R(Rf =0

リスク回避行動を考慮

保険料の価格決定には使えない

裁定価格理論(APT)

完備市場

マルチ・ファクター化 大数の強法則

多様なリスク回避行動を考慮 保険料の価格決定には使えない

(21)

価格決定原理に影響を及ぼすもの

(22)

法令等の価格決定原理への影響

保険 金融

保険法 価格決定原理へ影響はないものと仮定

料率3原則

・合理的、妥当、不差別的の3原則

・算出方法書、数理概要書、算出の基礎の適合性審査基準(参 考純率、基準料率も)

・保険金期待値の最良推計の審査基準としては有益

・安全割増の審査基準としては以下の課題あり

・「不確実性に対応する保険料」の定義曖昧で総額把握できない

・保険料の十分性と支払能力や破綻確率との関係の検証ない

標準基礎率と 保険料基礎率

・標準責任準備金の予定死亡率と予定利率

・生保と長期第三分野損保が対象

・安全割増(標準生命表)と安全率係数

・標準利率と生保破綻

・価格決定原理の法定部分と見た場合、以下の課題あり

・標準基礎率と保険料基礎率との乖離リスクが把握されていない

・保守的な補整による破綻抑制効果が評価されていない

法規制と

・破綻確率と保険料はトレードオフの関係

・破綻確率ゼロは、保険料無限大

(23)

実用・実務の価格決定原理への要請

保険 金融

柔軟/強固

・柔軟で曖昧さを包含する

・多めの保険料を預かり出口で精算

・主な目的は、破綻リスクの抑制

・期待値と同額の保険料では、常に破綻リ スクの高い状態で保険事業を運営するこ とになる

・株式等の市場価格は一意に決まる

・瞬時に決まり刻々と公表される

・曖昧さを許さない強い価格決定原理

・不都合な現実を大胆に捨象

・現実離れした前提条件を甘受(大数の強 法則や完備市場など)

主観/客観

・「多めの保険料」について、価格決定モ デルだけでは答えがでない

・主観的判断、外生変数が必要

・「多めの保険料」とは、安全割増と安全 率係数

・柔軟で現実的な価格決定モデル

・価格決定モデルが答えを出す

・主観的判断、外生変数はない

・強い(超越的な)価格決定モデル

異常リスク 対応

・保険会社の存続を脅かすリスク 生保:予定利率ロックインリスク 損保:巨大災害リスク

・生損保ともに、不確実性に対応する保険 料の一定程度を平準的に保険料にロー ディングする必要

<不要の理由>

・超短期価格は負債も資本も考慮不要

・ファンド決算は赤字でもベンチマークに 勝てば評価される(相対評価)

・すべては価格に織込み済み(効率的市 場仮説)。あらためて破綻リスクを考慮す る必要なし

(24)

価格決定原理の隔たりと交わり

(25)

大数の法則

(科学的根拠の隔たりと交わり)

保険 金融

標本の確率分布

(母集団の推計)

大数の弱法則

(共有する部分)

価格の決定 大数の弱法則

(共有しない部分)

大数の強法則

(共有しない部分)

(26)

不確実性の尺度

(科学的根拠の隔たりと交わり)

保険 金融

不確実性の 代償

リスク負担に対する返報は必要

(共有する部分)

不確実性の

尺度 破綻リスク(注)

(共有しない部分)

価格変動リスク

(共有しない部分)

(27)

エッシャー原理等

(科学的根拠の隔たりと交わり)

保険 金融

市場外の 価格決定原理に 効用関数を考慮

リスク負担に対する返報は

需要者のリスク回避度を考慮すべき

(共有する部分)

効用関数の 測定方法

未解決

(共有しない部分)

市場価格

(共有しない部分)

リスク回避度 の尺度

破綻リスク

(共有しない部分)

価格変動リスク

(共有しない部分)

(28)

保険と金融の価格決定原理の交信について

・エッシャー原理等は保険と金融の交信の事始め

・実用化には、いくつかの課題

・最もタフな課題は、保険需要者の効用の把握

・保険需要者の効用の把握に向けた接近法は2つ

⑴ベイズ方法論またはベイズ確率論的接近法

⑵マクロ的な観測基準点の導入

・ベイズ確率論とは、理論も指針もない中で、主観から始めて選択と 学習を重ねることによって真の値に接近する方法論。損害保険の経 験料率算定では既にベイズ確率論が実用

・マクロ的な観測基準点については拙稿を準備中

(29)

結論1

仮説1:保険の安全割増について、金融の価格決定原理

(の科学的根拠)をもってしても解を得ることはできない

⑴保険と金融の価格決定原理には科学的な根拠を共有す る部分(交わり)と共有しない部分(隔たり)とがあり安全割 増は後者に属する

⑵保険の安全割増について、金融の価格決定原理(の科 学的根拠)では解を得ることができない

⑶両者の価格決定原理の隔たりを象徴するものは、大数 の法則(弱法則と強法則)と不確実性の尺度(破綻リスクと 価格変動リスク)

(30)

結論2

仮説2:現下の保険の安全割増の決め方は、確かに科学 的な根拠が十分に備わっているとは言えず研究開発の余 地がある

⑴現下の保険の安全割増の決め方は、確かに科学的な 根拠が十分に備わっているとは言えず研究開発の余地が ある

⑵とくに、価格の決定に需要者の効用(リスク選好)を導入 する試みについては、金融の研究成果を取り入れる形で の交信が今後に期待される

(31)

副次的な結論1

保険に固有の研究領域の存在

保険事業の破綻リスクに係わる安全割増等の

「不確実性に対応する保険料」の決定原理は保

険に固有の研究領域であり、もっぱら保険にお

いて成果が期待される(金融においては成果が

期待しづらい)。

(32)

ある主張に対する「NO」の回答

保険固有のものは無くなった。という主張

オプション契約を利用すれば、保険と代替的な効 果を有する金融商品をつくることができる。した がって、保険業を他の金融業務と異なるかたちで 取り扱うという縦割り型の金融制度の本質的な意 義は今やなくなったということができる(鹿野、

2001)

(33)

副次的な結論2

保険と金融の交信による成果が今後に期待され る研究領域がある

保険事業の破綻リスクに係わる安全割増等の

「不確実性に対応する保険料」の決定に効用の

概念を導入する試みは、保険の研究領域にお

いて金融の研究成果を取り入れるかたちでの

交信が期待される。

(34)

まとめ

(35)

おわりに 1

• 保険と金融の価格決定原理の隔たりと交わりに関する2つの仮 説を検証した。

• 検証の結果、保険料の安全割増の決定、金融の価格決定原理 の科学的な根拠を用いても解を得ることができないことが分

かった

• また、保険料の安全割増の決定に効用の概念を導入する新た な試みについては、現下の保険の方法論だけでは課題解決の 筋道が不透明であり、金融の方法論を取り入れる方向での両 者の交信が期待されることを併せて確認した。

• この検証を通じて、保険と金融の価格決定原理の科学的根拠 について、共有する部分と共有しない部分とが明らかになり、同 時に、交信可能な領域も明らかになった。

(36)

おわりに 2

• 保険と金融の価格決定原理の隔たりを象徴するものの1つに大 数の法則がある。

• 保険は大数の弱法則を金融は大数の強法則を用いて価格を決 定する。

• 保険は入り口ではコストが確定しないため曖昧さや恣意性を受 容する柔軟な価格モデルが求められる。一方、金融は取引の効 率性を維持するために一意の価格を瞬時に算定できる強い価 格モデルが求められる。

• もうひとつ、保険と金融の価格決定原理の隔たりを象徴するも のがある。

• それは不確実性の尺度である。

• 保険は破綻リスクを、金融は価格変動リスクを不確実性の尺度

(37)

おわりに 3

• 保険を規制する目的は、英国保険監督者FSAが述べていると おり、市場効率を改善するための競争原理と競争の結果として 生じる破綻コストとのバランスを取ることであり、いずれか一方 に偏向することではない。

• わが国の長期保険契約の価格には、保険契約者等を保護する ための法定の安全割増と安全率係数とがある。もちろん保険会 社の任意の安全割増もある。

• 契約者保護が目的だからと言って無制限に安全割増を上乗せ するのは保険需要者の効用を損ねる可能性がある。

• また、付加保険料の低料競争に紛れて安全割増を不適正に削 減すれば破綻リスクが高まりやはり保険需要者の効用を損ねる 可能性がある。

(38)

おわりに 4

• 保険の価格決定原理に残された主な課題は、保険需要者の効 用に配慮して、安全割増(不確実性に対応する保険料)と破綻コ ストとの最適バランスを実現する価格決定モデルを開発すること にある。

• 今後の保険と金融の交信ならびに生保数理と損保数理の交信 による新しい研究成果に期待が高まる。

(39)

ご清聴

ありがとうございました。

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