化学
一般入試前期 A 日程 1日目
■出題のねらい
化学平衡の基礎的な問題です。前半では,二酸化窒素の性質について問いました。いず れも高校で習った化学の基本的な事項です。
■採点講評
全体的に,特に前半は非常によくできていました。ただ,いくつか気になった点を以下 に記します。
(1)の一酸化窒素の酸化反応はほとんどの人が正解でしたが,誤答の中には一酸化炭素 の酸化反応を書いていたものが多くみられました。問題を正確に読み,解答しましょう。
(2)の銅と濃硝酸の反応もよくできていましたが,誤答の中には係数が間違っているも のがいくつかみられました。化学量論は化学の基礎です。
(6)の原理は「ルシャトリエの原理」です。平衡移動の原理ともいいます。誤答には,ヘ スの法則をはじめとしていろいろな法則の名称が登場していました。化学の基本法則には,
暗記しておくべきものが多くあります。名称とそれぞれの内容の正確な理解は化学の基本 の習得に大切です。
誤答といえば(4)の「不動態」も漢字の間違い,ひらがな表記による解答などが結構あり ました。内容の理解とともに正確に漢字で書けるようにしてください。
(7)は正答率が低かったです。内容は理解していても文字式に慣れていないことが原因 だったのかもしれません。大学の化学では正確に値を出すために,途中までは文字式で解 いて最後に値を代入します。大学入学後,使う文字式に苦手意識をもたずに勉強してくだ さい。
Ⅰ
■出題のねらい
日々の生活において馴染みがある油脂ならびにその誘導体であるセッケンの構造と性質 について,知っておくべき基本的な知識を確認する問題です。
■採点講評
(1)は油脂の化学構造についての問題です。油脂が脂肪酸とグリセリンのエステルであ ることは比較的よく知っているようでしたが,グリセリンの化学構造となると正答率はか なり低下しました。構造式を書く際には,水素の数の間違いなどのケアレスミスに特に気 をつけましょう。
(2)は油脂からセッケンを作るときの反応についての問題です。選択肢から選ぶためか 非常によくできていました。
(3)〜(5)はセッケンの物性についての問題です。セッケンは親水性の部分と疎水性の 部分を合わせもつ両親媒性化合物です。水中でミセルを形成して水に溶解すること,油を 乳化する能力をもつことに関してはよく理解できているようでした。
(6)は油脂を構成する脂肪酸の名称についての問題です。難易度を下げるために,高等 学校の教科書に出てくる一般的な有機酸を選択肢として与え,12個の選択肢の中から4つ を選ぶ問題としました。オレイン酸やリノール酸などは日常の生活においてもよく見聞き しますので高い正答率を予想していましたが,それほど高くありませんでした。解答ので き,不できに大きなバラつきがありました。このレベルの名称は一般常識として知ってお いてほしいところです。
(7)は不飽和油脂に水素を完全に付加させる問題ですが,油脂の化学構造と不飽和度の 知識が必要となります。大問Ⅱの中ではこの問題の正答率が最も低く,やや難問であった ようです。
(8)は硬水に関する問題ですが,硬水についての知識も常識として知っている人が多い ようで,比較的高い正答率でした。
(9)はセッケンの水溶液が弱アルカリ性を示すことを問う問題ですが,高い正答率でし た。全体的には比較的よくできていたと思います。
Ⅱ
■出題のねらい
14属に属する元素である炭素とケイ素を題材にした問題です。炭素の酸化物である一酸 化炭素,二酸化炭素および炭酸塩は入試で頻繁に取り上げられる題材です。それに対して,
ケイ素の酸化物が主成分であるガラスは,身近にありふれている物質であるのに,入試問 題に取り上げられることが少ない題材です。炭素とケイ素は同族であるためにケイ素化合 物の化学式がわからない場合でも,炭素化合物の化学式や反応式がわかれば類推できます。
■採点講評
概ねできていました。炭素とケイ素の原子番号と炭素の酸化物である一酸化炭素や二酸 化炭素の名称を答える問題はよくできていました。
それに対して,化学反応式を書く問題はあまりできていませんでした。アレーニウスの 酸の定義はH+を生じるものであることから,二酸化炭素の水溶液が酸性である理由を示 す化学反応式は,二酸化炭素と水が反応し,炭酸水素イオンと水素イオンが生じる反応式 を書く必要があります。炭酸水素イオンをHCO3と書いている解答が多くみられました。
このような物質は安定に存在しません。また,このような化学式を書いた場合には生成物 と反応物の電荷が不均衡なイオン反応式となってしまいます。
(5)水ガラスと(8)セラミックスを解答する問題は,予想よりできていました。ただし,
(8)の窯業製品の通称を答える問題については,「銑鉄,ジュラルミン,鋼,溶融塩電解,コー クス」などの誤答が散見されました。
化合物の名称で答えるべきところを化学式で,化学式で答えるべきところを論述で,番 号で答えるべきところを名称で解答している受験者がいました。このような間違いは,注 意力の散漫が原因となり起こってしまいます。工学においては,不注意から大事故につな がることが多いために普段からの心掛けが重要です。上記のような不注意をなくすために は,「問題をよく読む」や「求められている解答の形式が書かれている文章にアンダーライン を引く」などの作業を行うことで避けることができます。