日本数学教育学会第1回春期研究大会「創成型課題研究」
国際比較調査「第三の波」と数学教育における価値研究
オーガナイザー: 馬場卓也(広島大学)
発表者: 木根主税(宮崎大学)
真野祐輔(大阪教育大学)
指定討論者: 植田敦三(広島大学)
島田功(日本体育大学)
研究題目と要約
題目:価値研究枠組みの説明及び広島県における価値調査データの分析 発表者:馬場卓也(広島大学)
要約:本課題研究では、近年数学教育研究で注目されつつある価値、価値観の側面を論 じる。国際比較調査「第三の波」はオーストラリア・モナッシュ大学Wee Tiong Seah 氏、香港中華大学Ngai Ying Wong氏の両名をリーダーとした11カ国の比較研究であ る。登壇者を含む日本の研究チームは、この調査の質問紙を用いて、広島県、宮崎県、
大阪府で、算数・数学学習における子どもの価値観について調査した。質問紙は四部構 成で、第一部は学習場面、活動などについて重要度を5段階のリカート・スケール法で、
第二部は対照的な二つの考え方を両側に置き自分の価値観を両者の間で位置づける方 法で、第三部は「頭がよくなる薬」の成分について記述させるオープンエンドな質問で 調査した。第四部は児童・生徒の属性についての問いである。今回の課題研究発表では、
国際比較の前に、第一部に関する3府県の調査結果を共有し、日本の国内の状況を明ら かにすることを目的とする。広島県における価値調査については、対象校は小学校2校、
中学校2校(内1校は附属学校)である。調査は2012年11月から12月に実施し、項 目の全体傾向と特徴ある項目を分析し、また小・中学校の学校種間の比較、学校間の比 較、項目別平均など、明らかにする。
題目:宮崎県における価値調査データの分析 発表者:木根主税(宮崎大学)
要約:宮崎県の価値調査では、小学校4校(都市部1校、地方2校、附属1校)、中学 校4校(都市部1校、地方2校、附属1校)の計8校を対象とし、国際比較調査「第 三の波」が開発した質問紙を用いて、2012年11月から12月にかけて質問紙調査を実 施した。本報告では、そのデータ分析の結果として、宮崎県の全体傾向や特徴ある項目、
校種間・都鄙間・学校間などの比較を通して見えてきた特徴を報告する。また他府県の 調査結果も踏まえ、宮崎県独自の特徴のさらなる析出や、3 府県全体として共有する、
日本の子どもの算数・数学学習に対する価値観の検討を試みる。
題目:大阪府における価値調査データの分析 発表者:真野祐輔(大阪教育大学)
要約:本研究では,国際比較調査「第三の波」の枠組みを用いて算数・数学に関わる児 童・生徒の価値,価値付けを量的に検討している。本稿では,2012年12月に大阪府で 実施した調査データについて報告する。具体的には,項目別平均を分析することで特徴 のある項目を同定し,小・中学校の学校種間や学級間での比較を通して学校種間や学級 間にみられる差異を明らかにすることを試みる。また,そうした分析を通して,先行研 究や「第三の波」の枠組みにおける価値のカテゴリー(数学,数学教育,教育)に関す る考察を行い,価値という側面から数学教育の研究課題の発掘に寄与したい。
指定討論者を含む全体討議
要約:全体討議では、それぞれの府県の特徴とその異同を明らかにすることで、数学教 育における価値に関する研究課題を発掘する場としたい。指定討論者には、価値の側面 に歴史的、実践的立場からアプローチしている研究者を招き、上記課題について批判的 に考察を深めることができる場にしたいと考える。