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序章 「ロシアにおけるエネルギー・環境・近代化」

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序章 「ロシアにおけるエネルギー・環境・近代化」

序章 「ロシアにおけるエネルギー・環境・近代化」

-研究の意義と問題関心-

本報告書は、平成22年度から23年度にかけて「ロシアにおけるエネルギー・環境・近 代化」をテーマに日本国際問題研究所で開催されてきた研究会の最終報告書である。

本研究プロジェクトが立ち上がった当時、ロシアは未だリーマン・ショック以後の世界 金融危機の中にあり、辛うじて景気の底は打ったものの、そのダメージから抜け切れずに いた。ロシアは周知のように、石油・天然ガスをはじめ豊富な天然資源を抱える資源大国 である。そして2000年以降、世界的な石油価格高騰という追い風を受けて高度な経済成長 を遂げ、またヨーロッパやアジアへの資源輸出を武器に外交の舞台においても存在感を発 揮するようになって、再び世界の舞台で注目される国に返り咲いた。

しかし、今回の世界金融危機が物語っているように、資源産業に著しく偏ったロシア経 済は世界的な市況の変化に対して極めて脆弱である。そのため、近年著しい経済成長で注 目されてきたBRICs 4カ国のうち、ロシアの景気後退は最も深刻なものであった。リーマ ン・ショックの後、世界的不況により石油価格は急落し、ロシアの貿易黒字は縮小した。

また同時に急激なルーブル安が起こり、消費者心理の悪化と個人消費の減衰を招いた。急 速かつ大規模に海外への資本逃避が起こる一方で、海外からの資金に依存していたロシア 企業は資金繰りの悪化に悩まされるようになった。こうしてロシア経済の成長を支えてき た消費と投資はいずれも著しく冷え込み、経済危機を増幅させた。このように、豊富なエ ネルギー資源は、ロシアにとって最大の強みであると同時に、資源産業に偏重した産業構 造や、外的な条件に対する脆弱性といった弱みにもなっている。

こうした中、メドベージェフ大統領が2009年11月の大統領教書演説において打ち出し た方針が「近代化」政策である。メドベージェフは現在のロシアにとって、経済、社会、

政治と社会全般にわたる包括的な変化が死活問題であることを国民に訴えた。とりわけ資 源依存型の経済に対する危機感は強く、今後、医療・製薬や省エネルギー、原子力、宇宙・

通信、ITといった分野を軸に、資源産業に代わる新たな産業を創出し、経済の効率化と高 付加価値化を目指していくことを宣言した。その後、2012年5月にはプーチン首相が大統 領に復帰することが決定したが、プーチンも、あるいはタンデム政権の下で自らが敷いて きたとも言えるこの路線を、基本的には継承することになるだろう。

さて、エネルギーを基幹産業とし、またエネルギーを大量に消費する資源浪費型の経済 を持つロシアにとって、近代化政策の要諦の1つがエネルギーと環境の問題である。ロシ ア経済の効率化を考える上で、エネルギー効率の改善が不可欠であることは多くの論者が

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指摘するところである。石油採掘に伴う随伴ガスの処理や家庭における電力消費の効率化 など、近代化政策の一環としての省エネへの取り組みは、温室効果ガスの排出を削減させ ることで、低炭素型社会の実現を目指す世界的な環境政策の潮流にも合致するものとなり、

そこに国際協力の余地も発生する。また、グリーン・イノベーションのように、省エネと いう制約を新たな技術的イノベーションや産業振興につなげようとする動きが先進国を中 心に活発化しているが、エネルギー大国のロシアがこうした動きにどう反応するのかも注 目されるところである。

エネルギーと環境は経済的側面からだけでなく、21世紀の国際関係においても重要な要 素である。これは気候変動問題への取り組みが先進国から途上国まで巻き込んで利害の衝 突する舞台となっていることや、資源国における資源ナショナリズムの強まりといったこ れまでの経緯はもちろん、昨年の東日本大震災と福島原発事故を受けて、原子力を含むエ ネルギー戦略のあり方およびその再考が、各国にとっても、また国際社会にとっても、ま すます重要な課題となっていることによる。こうした中で、エネルギー大国であり、かつ 原子力産業にも力を入れるロシアの行動は、大いに注目されるところと言えよう。

環境技術に限らず、近代化はロシアの産業構造全体の高度化を要求している。ロシアが 目指すようなイノベーション型経済への移行は、短期的には外国からの資本と技術の導入 によって達成されるものとして描かれており、その点でも日本との関係を始め、国際協力 という観点から重要なポイントとなってくるだろう。

以上のような問題意識から、本研究会では、ロシアの近代化をめぐる政策動向や現状、

改革の展望に多面的に光を当てることを課題としている。とりわけその中でも重要な位置 を占めるエネルギーと環境に注目し、これらの要素が近代化政策にどのように貢献し、あ るいは制約となるのかを明らかにするよう努める。

研究会では平成22年度から23年度にかけての2年間にわたり、政治、経済、外交、環 境、そしてビジネスの実務に携わる専門家による議論を積み重ねてきた。2 年間で、近代 化政策の背景や全体像から始まり、石油・天然ガスを中心としたエネルギー産業、そして 代替エネルギーとして賛否両論を巻き起こす原子力、製造業やハイテク産業部門における 近代化、環境政策への取り組み、地域経済政策へのインパクト、国内政治の動向および外 交政策の変化といった問題について、検討・議論を重ねることができた。また本研究プロ ジェクトのために平成22 年度、23年度にそれぞれ現地調査のチームを派遣しており、本 報告書はその成果も踏まえている。メンバー編成については、1 年目は外交分野の担当と して杏林大学の齋藤元秀教授にご参加いただいていたが、先生のやむを得ない事情により、

2年目からは小泉直美防衛大学校准教授に後任の委員をお願いしたことを付記しておく。

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序章 「ロシアにおけるエネルギー・環境・近代化」

日本でのロシア研究は政治あるいは経済のみに偏ったものになったり、またロシアの専 門家のみで構成されるケースも多いが、本プロジェクトにおいては、ロシアの各分野の専 門家に加え、環境問題の専門家にも加わっていただくなど、参加者が異分野からの視点を 交差させつつ議論を深める機会を持てたことが、研究全体にとって大きなプラスになった と考えている。

なお、研究会の参加委員の間では、全体的に近代化政策に対して辛い評価が多かったよ うに思われる。しかし、近代化政策がロシアを抜本的に変えることは難しいとしても、全 く変わらない保証もまたあるわけではない。重要なのは、変化してゆく世界の政治・経済 情勢の中で、ロシアにおいて何が変化し何が変化しないのか、またロシアがどのような方 向を目指し、何を必要としているのか、まずはそれを現実に即して正確に理解することで あろう。したがって、本報告書では、それぞれの領域からメドベージェフ政権下での動向 を客観的に分析し、近代化の現状や展望について現段階で可能な限りの評価を行うように 努めた。

報告書の構成

以下、報告書の構成を簡潔に紹介しよう。第1章から第4章はロシアにおける「近代化」

政策の全体像、およびそれを取り巻く政治や外交、国内の緒地域へのインパクトについて 考察したものである。まず第1章「近代化の背景と経済政策の行方」(溝端)では、ロシア 経済の抱える問題点と「近代化」政策の概要を整理し、メドベージェフ政権下で「近代化」

政策がどのように実施されてきたのか、今後の課題は何かを明らかにする。続く第2章「下 院選から大統領教書、そして改革へ?」(上野)では、昨年秋頃からロシアで見られたプー チンの復帰に対する抗議行動や、2011 年12 月の下院選挙の結果を踏まえ、ロシア社会で 生じている変化について検討する。第3章「プーチン外交とメドベージェフの『近代化』

政策」(小泉)では、メドベージェフ大統領による「近代化」政策が外交政策にどのような 変化をもたらしているのか、前任のプーチン外交との比較を通じて分析し、「近代化」外交 が行き詰まった経緯や今後の展望についても考察を加える。第4章「ロシアにおける近代 化政策と地域経済」(横川)では、「近代化」政策が地域政策という観点からはどのように 捉えられるのかを整理し、政策の方向性と地域経済の実情を踏まえた可能性について考察 する。

続いて、第5 章から第 8 章では近代化政策の下でのエネルギー・産業に焦点を当てる。

第5章「ロシアにおける石油・天然ガス開発の現状と展望」(本村)では、ロシア経済と外 交を支える最も重要な要素であり、また日本のエネルギー政策にとっても重要な意味を持

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序章 「ロシアにおけるエネルギー・環境・近代化」

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つロシアの石油・天然ガスの開発の現状を分析し、今後の展望について考察する。第6章

「福島第一原発事故後のロシアの原子力エネルギー政策」(岡田)では、ロシアが近代化で 重視する部門の1つである原子力産業について、とくに福島原発事故後のロシア政府の政 策方針に注目する。第7章「ロシアの自動車産業の近代化」(坂口)では、ロシアのアキレ ス腱とも言える製造業においてどのような近代化に向けた取り組みがなされているのかを 自動車産業を例に分析し、その効果について考察する。第8章「ロシアにおける軍需産業 の近代化とグローバル化」(伏田)では、近代化政策が重視するハイテク産業の育成の事例 として、航空機産業における外国との共同開発について分析した。

第9章および第 10章は環境問題を扱った章である。第 9章「環境面から見たロシア経 済近代化の成果と課題」(徳永)は、プーチン時代と比べ、メドベージェフ政権下でロシア の気候変動問題への取り組み方はより積極的なものになり、国際社会への同調性が見られ るようになったと主張する。第10章「ロシアにとっての低炭素経済化のメリット」(諸富)

は、今や世界的な潮流となっている低炭素経済化について検討し、ロシア経済と「近代化」

政策へのインプリケーションを提示する。

最後に、終章(溝端)では、以上の各分野における分析を踏まえて、近代化を進めるロ シアに対し、日本の政治、経済、社会がどのような協力関係を構築していくことができる のかを検討し、日露関係の新たな地平を探る。

なお、本報告書では必ずしも委員全員の見解が一致した問題ばかりではなく、内容に対 する責任は各委員に帰属するものとする。本報告書が日露関係の発展のためにささやかで も貢献することがあれば望外の喜びである。

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