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書 館 化学 生物

農業において食料を能率良く生産するためには,窒素肥料 の供給は不可欠であり,世界で年間約8,000万トンの空中窒 素 (N2) が,Haber‒Bosch法によってNH3へと固定され,さ らに化成肥料などの形に変換して使用されている.このため には,化学量論的に1,700万トンの水素 (H2) が必要であり,

これは4,000万トンの石油(組成CH2)と1億トン余りの水 

(H2O) との反応による「水蒸気改質法」によって生産され,

これに伴って1億2,600万トンのCO2が大気中に放出されて いる.一方,地球上での生物による空中窒素の固定の総量は 1億8,000万トン程度と推定されており,農業用地では,そ の半分(9,000万トン)が固定されている.そのうち,8,000 万トンはマメ科の作物と牧草によるものであり,非マメ科植 物による固定量は約1,000万トンである.生物窒素固定の能 力の向上は,化学肥料の節約,つまり石油の消費とCO2放出 の削減につながるので非常に重要である.

筆者らが窒素固定菌の研究を始めた直接のきっかけは,ユ ネスコ研究生の受け入れであった.1970年代に,大阪大学 の生物工学国際交流センターが主催するユネスコ微生物学国 際大学院研修講座 (UNESCO International Post Graduate  University Course in Microbiology) があった.この制度で は,開発途上国の若手大卒研究者を微生物学の分野で毎年 20人程度受け入れ,最初の2カ月間は集中的な講義を大阪で 行い,その後の10カ月間は各地の協力大学に配属して研究 指導を行っていた.当時,筆者が所属していた東京大学農学 部農芸化学科の醗酵学研究室(77年3月まで有馬 啓教授,

その後は別府輝彦教授)では,ユネスコ研究生を毎年1名受 け入れていた.筆者は,研究室の助手,後には助教授とし て,例年ユネスコ研究生に実質的な対応をしていた.この制 度で,1976年末に当研究室に派遣されてきたのが,インド からの留学生,Karri Lakshmi Narayana氏だった.この方 は,大学を卒業したあと窒素固定菌の研究で数年間の経験を 積んでいたが,この機会に遺伝子操作の技術を習得して窒素 固定菌の改良を行いたいという希望をもっていた.当研究室 では「すべて手作り」から始めて遺伝子組換え技術を確立済 であったので(1),10カ月間の研究テーマとして新たに開始 したのが,根粒菌のプラスミドの探索であった.窒素固定菌 で遺伝子操作を行うには,そのベクターとしてのプラスミド が必要と考えたからである.

  窒素固定菌のプラスミド

窒素固定菌は,空中窒素 (N2) を固定してアンモニアに変 換し,植物が窒素を同化できるようにするという,生態学的 に重要な働きをしている.農業分野で実用的な窒素固定菌と しては,当時はマメ科植物の根粒菌が主要なものであった.

根粒菌は,根粒から分離したのち試験管内で継代培養を長期 間繰り返すと,マメ科植物の根に感染して有効な根粒を形成 する能力を喪失することがしばしば経験されていた.鹿児島 大学理学部の東 四郎教授は,クローバ根粒菌 (

) のクローバに対する根粒形成能と窒素固定能が,プ ラスミド様の接合作用によってインゲンマメ根粒菌 (

) に移ることを1967年に世界で初めて報告し た(2).一方,根粒菌のプラスミドの物理的な検出について は,1975年にTshitengeらがカウピー (cowpea) の根粒菌 

( ) から塩化セシウム‒エチジウムブロマイ ド密度平衡超遠心によって,26×106ダルトン以上の大きい プラスミドを報告したのが最初である(3).また,Zurkowski ら は,ク ロ ー バ 根 粒 菌 ( ) に64×106ダ ル ト ン 

(Da) の巨大プラスミドが存在することを電子顕微鏡によっ て示した(4)

当時はまだDNAシークエンサーが発達していなかったの で,プラスミドの大きさは,原子質量単位Daで表示するの が普通であった.106 Da(メガダルトン,MDa)は,電子 顕微鏡で観察すると2.0 

μ

mの長さに,塩基対では,1.6 kbに 相当する.

このような状況で,筆者らは,当時の植物栄養学・肥料学 研究室(熊澤喜久雄教授)から分譲された根粒菌の保存菌株 を中心に,計41株の各種根粒菌を対象としてアガロースゲ ル電気泳動と塩化セシウム‒エチジウムブロマイド密度平衡 超遠心によって,プラスミドをスクリーニングした.その結 果,エンドウ根粒菌   1,303  株が 大型のプラスミドをもつことを発見した.電子顕微鏡観察と 各種制限酵素切断によってその分子量が 62.3 MDa (98 kb) 

であることを示し,pTA303と名づけた(5) (図

1

この菌株 (  1,303) をエンドウの根に接 種してみたが根粒の着生は見られず,根粒形成能は,20年

窒素固定菌の研究

魚住武司

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図1エンドウ根粒菌 のプラスミド pTA303 98 kb の電子顕微鏡写真(5)(魚住原図) 

A : 閉環状分子(covalently closed circular型),2本鎖の全長にわたって共有結合でつながっており,二重らせんの巻数の不足状態のひず みによってnegative supercoilとなり,非常にコンパクトになっている.B : 開環状分子(open circular型),2本の鎖の少なくとも一方の フォスフォジエステル結合の1カ所以上に切れ目が入り,二重らせんのひずみが消えて,自由にのびのびとした環状になっている.C : 対 照として加えた大腸菌の小型プラスミドpSC101 (9.1 kb).

(3)

以上に及ぶ試験管内での植え継ぎの間に失われてしまってい た.本菌株は,カナマイシン抵抗性 (12.5 

μ

g/mL) を示し た.アクリフラビン処理によりプラスミド除去を試みたが,

カナマイシン感受性株は得られなかった.したがって,

pTA303は根粒菌中で選択圧力なしに20年以上存在し続け る安定なプラスミドであるが,その生理的役割の不明なプラ スミド (cryptic plasmid) であった.

その後,フィリピンからのユネスコ研究生 W. L. Barra- quio 氏,台湾からの留学生の王 佩玲 (Pei-Ling Wang) 氏 らの努力によって窒素固定菌のプラスミドの検索を続け,ダ

イズ根粒菌   50菌株中19株,

 10菌株中10株,  4菌株中4株に,36 〜 320 MDaのプラスミドを検出した(6).このうち,

の155 MDaの プ ラ ス ミ ド は,Southern hybridizationに よ

り,  M5a1の窒素固定遺伝子

と強いホモロジーを示した.1980年代になると,巨大な  Symbiosis plasmid  上に,根粒形性能( 遺伝子)と窒素 固定能( 遺伝子)が載っている例が報告された(7)

  イネ科植物根圏の窒素固定菌

サトウキビやイネ科の牧草など非マメ科植物の根圏に窒素 固定菌が生息していて,窒素固定を行っていることは,1960 年代から注目されていたが,1976年にブラジルのDöberein- erらが,トウモロコシ,コムギ,キビ属の牧草 (

) などから,窒素固定菌   Bei- jerinckに属する菌株を数多く分離し(8),これらを再分類し

て,新たに 属を設け,

と の2種に分けることを提案した(9). 国立遺伝学研究所の広田幸敬部長らは,イネの保存品種 50種をポット栽培して開花期に至ったものをそのままデシ ケーター中に入れて窒素固定能(アセチレン還元能)を測定 した.窒素固定酵素は,N2を還元して2分子のアンモニアに 変えるが,この酵素は,アセチレンの三重結合を還元してエ チレンを生成する活性をもっているので,このアセチレン還 元能を測定して窒素固定活性の指標とするのが簡便な普通の 方法である.その結果,広田らは,イネの品種によってその 活性が大きく異なることを見いだした(10).この窒素固定能 の強いイネの根圏からは,数種の窒素固定菌が分離され,東 京大学応用微生物研究所の駒形和男教授らによって同定され たものの一つが,  NG13である(11).この 菌株は,indicaタイプのイネ  C5444の根圏から 得られたものであり,無菌栽培したC5444に接種すると,実 際に空中窒素を固定してイネの植物体と土壌中の窒素量が増 加することが,15N2を用いた実験によって証明されてい る(12)

  の窒素固定遺伝子

 M5a1は,も と も と2,3-butanediol を醗酵生産する菌株として知られていたものであるが,1965 年にその窒素固定能が報告された(13).DixonとPostgateは,

 M5a1株の窒素固定能が,接合によって大腸 菌  C-603株 に 移 る こ と を1972年 に 報 告 し た(14).その後,M5a1株の染色体上に存在する窒素固定遺伝 子群の構造と機能が,Dixonらをはじめ,欧米の複数のグ ループによって解明され,1985年までには,その大要が明 らかになった(15).M5a1株の窒素固定能は,染色体上の23  kbの範囲にまとまってコードされており,少なくとも17個 の窒素固定遺伝子群 ( ) からなり,7個のオペロンに分か れている.このうち, オペロンは,窒素固定酵素

(ニトロゲナーゼ)の本体のペプチドをコードしており,

オペロンは,培地中の窒素源の存在量に応じてほかの 遺伝子群の発現を制御している.NifAタンパク質は,ほ かの 遺伝子群の発現を活性化するが,利用可能な窒素源

(アンモニア,アミノ酸など)が,わずか10 〜 100 

μ

mでも 存在すると,NifLタンパク質がNifAタンパク質の働きを阻 害し,ほかの 遺伝子群の転写を抑制する.ニトロゲナー ゼの活性が発現して,N2を2分子のNH3へと変換するため には,16分子のATPと8個の水素原子 [H] に相当する還元 力が必要であり,うち2個の [H] は,同時に起こる副反応 によってH2となって失われる.

このように,窒素固定反応は多量のエネルギーを必要とす るので,多様な窒素固定菌において,培地中の窒素源が完全 に枯渇したときにのみ発現するように,厳密に制御されてい る.これは,進化の過程で合目的な変異株が生き残ってきた 結果であろう.

筆者らは,日本でイネ根圏から分離された    NG13の全窒素固定遺伝子群をクローン化し,大腸菌中で発 現させることにより,大腸菌を無窒素培地で生育させること に成功した(16).これは,韓国からのユネスコ研究生,Sang  Kyun Koh(高)氏,Kun-Sub Chung(鄭)氏と台湾からの 博士課程留学生,王 佩玲氏の数年にわたる努力の成果で あった.クローン化した   NG13の窒素固定遺伝子 群の構造は,数種の制限酵素による切断解析の結果,

 M5a1株のものとよく似ていたが,切断点の差 違の頻度から,両菌株の窒素固定遺伝子群の間での塩基配列 の差は4%程度と推定した(16)

次に,筆者らは窒素固定能の発現制御で中心的な役割を果 している, オペロンの塩基配列を決定した(17).当時 は,Sangerらのdideoxi法が普及していたが,その方法は,

アクリルアミドゲル電気泳動をガラス平板ゲルで行い,オー トラジオグラフィーのバンドを肉眼で読み取り記録するもの であった. 遺伝子の配列を決定したのは,ユネスコ研 究生のKyung-Joon Ahn(安)氏である.これを引き継い で, オペロン全体の配列を決定し, 転写翻訳

(4)

系を用いてNifAタンパク質を確認したのは,韓国からの大 学院留学生,金 英美 (Young-Mi Kim) 氏であった.

 NG13の 遺 伝 子 のORFは1572塩 基 か ら な り,

 M5a1の と比較すると34塩基の置換が あり,アミノ酸としては6個の置換があった. のプロ モーター領域の塩基配列の両菌株間のホモロジーは96%で あった.

  の窒素固定能の改良強化

イネ根圏から分離した  NG13は,無窒素培地で 培養すると十分に強い窒素固定能を発揮するが,培地中にア ンモニアを加えると,窒素固定能が完全に抑制された.イネ 根圏に本菌株を接種して有効な窒素固定を行わせて窒素肥料 を節約するためには,土壌中に存在する窒素源による抑制を 解除する必要がある.このために遺伝子標的変異を計画し,

染色体上の抑制遺伝子 を破壊し,活性化遺伝子 を 合成プロモーターで構成的に発現させる改良株R16を造成し た(18).この実験は,新設の分子育種学研究室において,日 高真誠博士(当時 助手,現 准教授)の助言のもとに,博士 課程学生であった金 英美氏が行ったものである.野生株 NG13は,15 

μ

mのアンモニアを含む培地で培養 すると窒素固定能の発現が完全に抑制されたが,改良株R16 では無窒素培地に比べて42%の活性が発現した.活性化タ ンパク質NifAが 遺伝子上流の転写活性化配列に実際に 結合することを の実験で確認した(19)

イネを無殺菌の自然土壌を用いてポット栽培し,改良株 R16を接種して,閉鎖系温室でイネの生育を観察するととも に,ポット中の自然土壌の微生物叢に与える影響をテストし た.この実験は,組換え体微生物が環境に与える影響を評価 するためのモデル実験を兼ねて,国立環境研究所の矢木修身 博士らのグループとの共同研究として行ったものである(20). その結果,イネの生育は全く正常であり,土壌中の自然の微 生物叢に対する特別の影響は認められなかった.ただし,

107/kgの濃度で土壌に接種したR16の生菌数は60日後には 100分の1以下に低下し,イネの生育を促進する効果は明確 には認められなかった.

窒素固定能を常に発現し続けるR16株は,そのためにエネ ルギーを消耗するので,窒素源を含む栄養十分な液体培地で 培養した場合,野生株NG13に比して90%程度の生育(濁度 上昇)しか示さない.したがって,自然土壌中では,野生株 との生存競争に負けることになり,消滅してしまうのは当然 である.当時,一部の人々の間で強かった「組換え体微生物 を自然環境に放つと危ない」という懸念は,多くの場合,杞 憂に過ぎないであろう.一方,窒素固定能改良株を実用に供 するには,野生株に勝る生存力を付与してやる必要がある が,これはなかなかたいへんで困難な仕事である.

  の窒素固定遺伝子

イネ根圏から分離された  FS株は,

微好気的な条件で窒素固定を行うが,酸素分圧が高いと窒素 固定能を示さない.ほかの菌においても,窒素固定酵素(ニ トロゲナーゼ)は一般的に酸素に弱いので,酸素分圧の高い 条件では,ニトロゲナーゼを合成しても,酸素による失活の ため無駄に終わることになる.したがって,高濃度の酸素の 存在下では,窒素固定遺伝子の転写自体が抑制されるとい う,合目的な制御が行われている例が多い.

筆者らは,  FS株の転写活性化遺伝子 を クローン化し,大腸菌中で発現させて窒素固定遺伝子 のプロモーターに対する活性化作用を 融合遺伝子 の転写による 

β

-ガラクトシダーゼ活性の発現で検定したと ころ,酸素分圧の高い好気的な条件では,NifAタンパク質 による転写の活性化作用が失われることが判明した.一方,

同時に行った実験で,  NG13のNifAタンパク質自 体は,酸素による影響を受けないことが判明した(21).そこ

で, の 遺伝子をプラスミドに載せて

 FS株に導入し,微好気的条件でアンモニアなどの 窒素源の存在下でも構成的に窒素固定能を発現する改良株 TA1を得た(22).これらは,当時大学院生として,さらに引 き続きNEDOのポスドクとして当研究室に合計7年間在籍し た重松 亨氏(現  新潟薬科大学准教授)の努力の成果であ

る.一方, では,アンモニアの存在

による転写の抑制のほかに,転写翻訳後のニトロゲナーゼの 酵素活性自体が,可逆的なADP-リボシル化によって調節さ れる(23).すなわち,窒素欠乏条件下でニトロナーゼ活性が 認められる培養液に,0.1 mm程度の微量のアンモニアを添 加すると,ニトロゲナーゼのサブユニットであるdinitroge- nase reductaseがDRAT (dinitrogenase reductase ADP-ribo- syltransferase) によってADP-リボシル化され,窒素固定能 が直ちに失われる.しかし,添加されたアンモニアが菌に よって消費されてしまうと,DRAG (dinitrogenase reduc- tase-activating glycohydrolase) がADP-リボシル基を除去 することにより,ニトロゲナーゼが再び活性型になり,窒素 固定が再開する.このような酵素活性レベルでの制御が存在 する.筆者らは,  FS株から オペロンを クローン化し,これを  NG13に導入することによ り, がDRAT-DRAGシステムによるADP-リボシ ル化を伴う可逆的なニトロゲナーゼ活性の制御を獲得するこ と を 示 し た(24).一 方,上 記 の よ う に  NG13の 遺伝子を  FS株に導入して,アンモニア存 在下でも窒素固定能を強制的に発現させるようにした改良株 TA1では,DRATによる制御が脱感作されており,さらに アンモニアあるいはアミノ酸を添加しても,窒素固定活性は 阻害されなかった(22).これらは,当時,大学院生ならびに NEDOのポスドクとして当研究室に合計6年間在籍した井上 暁夫氏の努力の成果である.

(5)

  窒素固定能改良株のイネへの接種テスト

2リットル容のガラスシリンダー中で,200 gのバーミ キュライトと200 mLの無窒素水耕液を用いて無菌栽培した indica種のイネC5444に,上記2種の窒素固定能改良株 

 R16と  TA1を混合して接種し,天然光 型人工気象機中で3カ月間培養したところ,対照とした無接 種のものと比べて植物体の生育は約2倍(乾燥重量0.5 g)と なったが,硝酸アンモニウムを1 mm添加した場合に比べる と生育は約半分であった(22).実際の自然土壌を用いた実験 は行っていないが,自然状態では野生菌株との競合があるの で,その効果については予断できない.

  その他の窒素固定菌

筆者は,1999年3月に東京大学を定年退職し,同年4月か ら明治大学農学部に再就職した.新しい研究室で,当初は農 学科,後には生命科学科の学生たちとイネ科植物の窒素固定 菌のスクリーニングを始めたところ, 属の菌 株がいくつか得られた.そのうちの一つBr1株は,静岡県富 士市のイネの切り株の根の内部から修士課程の学生・長谷川 高央氏が分離したものであり,形態学的テスト,生理学的テ ストならびに16S rRNA遺伝子の塩基配列(当時の既知菌株 とのホモロジー97%以下)から,新種と判断し,

 sp. nov. Br1を提案した(25).また,静岡県の安 倍川の土手のススキの根の内部から卒論学生の村松友紀子氏 が分離し,修士課程の学生・橋本拓哉氏が同定したMG1株

も同様に新種と考えられたので,  

sp. nov. MG1を提案した.これらの菌株は,2つの菌株保存 機 関 DSMZ (Deutsche Sammlung von Mikroorganismen  und Zellkulturen GmbH)とNBRC(NITE Biolgical Resource  Center) に寄託した.また,両菌株の ,  ,  など の窒素固定遺伝子の塩基配列は,修士課程学生の柴山瑠衣子 氏が決定した.これらの配列は,16S rRNA遺伝子の配列と ともに,国立遺伝学研究所のデータベースDDBJに登録し た.

神奈川県逗子市のススキの根圏土壌から修士課程の学生・

菊池直仁氏が分離した  sp. Mis2株は,微生物 学的な諸性質と,修士課程の学生・竹内 均氏と卒論学生・

安田朋准氏が決定した16S rRNA遺伝子の塩基配列 (Acces- sion No. AB247329, AB480885)  か ら,

にごく近縁であった.また,川崎市で採集したイネ科 植物ミゾイチゴツナギの根内から修士課程の学生・長嶋哲哉 氏が分離したIM2-2株は,16S rRNA塩基配列 (AB428571) 

などによって同定した結果 に一致し

た.

かつて 属に分類されていた な

どの窒素固定菌は,新しく創設された 属に移

され(26),現在では 属の中に数十の種名が報告 さ れ て い る.ま た,最 近, のtype  strain ATCC842Tは,植物の成長を促進する菌として,そ のゲノムのドラフト配列が発表された(27).非マメ科植物の 根圏に共生し成長を促進する微生物としては,ほかにも

,  など各種の菌株の報告がある

が,生育促進のメカニズムはいろいろであろう.窒素固定能 のほかに,植物ホルモンの生産による成長促進効果もありう る.これらの成長促進メカニズムについては,個々の菌株に ついて詳しい実験によって解明する必要がある.今後,植物 の根圏から分離された有用菌株を組み合わせて接種すること により,窒素固定能を強めて窒素肥料を節約できれば,持続 可能な省エネルギー農業への貢献が期待できるであろう.

  あとがき

筆者が東大農芸化学科の学部学生であったとき,当時の山 田浩一教授が微生物利用学の講義の中で,「研究を始めたら,

そのテーマを10年間は継続しなさい.そうすれば,専門家 になる」と言われたことを思い出す.1976年末に窒素固定 菌の研究を始めて以来,2009年3月に明治大学を定年退職す るまで,32年間あまり細々と研究を続けたことになる.こ の間,多くの方々のお世話になった.研究室の一員として,

研究をさせていただいた,醗酵学研究室の恩師・有馬 啓教 授と別府輝彦教授には,いろいろな面でたいへんお世話に なった.プロジェクト研究に参加させていただいた国立遺伝 学研究所の広田幸敬部長と三重大学生物資源学部の渡辺 巌 教授,植物微生物研究会の創設者である鹿児島大学理学部の 東 四郎教授,東京大学の分子育種学研究室で研究に参加し ていただいた日高真誠助手(現 准教授)には,窒素固定研 究では特にお世話になった.

研究のきっかけとなったユネスコ研究生K. Lakshminara- yana氏は,インドに帰国後,HisarのHaryana農科大学の教 授になり,フィリッピンに帰国したW. L. Barraquio氏は フィリッピン大学の教授になった.お二人とは,その後も研 究で交流を続け,現地でのシンポジウムに招待され,窒素固 定研究の現場を見学するなどの機会を得た.大阪大学生物工 学国際交流センターの室岡義勝教授には,東南アジア諸国の 窒素固定研究者との共同研究プロジェクトに参加させていた だいて,タイやインドネシアでのシンポジウムや現地見学会 に参加する機会を与えられた.

博士課程の留学生の王 佩玲氏は台湾へ帰国後,東呉大学 微生物系の副教授に就任した.同じく金 英美氏は,韓国へ 帰国後,農村振興庁に就職した.明治大学で,窒素固定菌の 分離同定などの研究で頑張ってくれた,修士課程の学生,学 部学生の諸君は,卒業後,進学あるいは就職し,国内の企業 や公立の機関などで活躍している.これまでの,研究生活で お世話になった共同研究者のすべての皆様に心から御礼を申 し上げたい.

研究をやっている間は夢中で月日が過ぎていったが,振り

(6)

返ってみると,ほかにもいろいろな方々のお世話になったと 思う.遺伝子の研究には,各種の変異株など多数の菌株が必 要であるが,既報の菌株は,世界中の研究者から気前よく分 譲していただいた.1989年に文部省の長期派遣で英国の John Innes研究所に滞在したときには,直接のテーマはコム ギのプロトプラストを用いたウイルスベクターの開発研究で あったが,根粒菌研究で有名なA. Johnston教授,当時,

Sussex大学からこの研究所へ移転予定になっていた窒素固 定研究グループのR. A. Dixon教授らとシンポジウムなどで 親しく議論する機会を得た.科学技術の進歩には,世界中の 研究者との協力と切磋琢磨がたいへん重要である.筆者はこ の英国滞在以前には外国留学の経験がなかったが,若い研究 者の方々には,早い機会に海外へ留学することをお勧めした い.留学先で得られる多くの人々との交流は,その後の研究 人生にとって長く有益な効果を相互に与えると思われるから である.

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Referensi

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―x― るのか,学生がどのように感じる大学をつくろうとしているのかが大事ではないか, という,問題提起を繰り返していた。そのへんの思いは,当時(今から26年前)の 駿台予備学校が出していた『駿台新聞』に,「大学は今」と題した拙文を書いている ので,少し再録したい。 この文は,駿台予備学校の受験生に語りかけるものとなっていて,まず,大学に