• Tidak ada hasil yang ditemukan

民法189条1項の果実の意義(3・完) - 山口大学

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2025

Membagikan "民法189条1項の果実の意義(3・完) - 山口大学"

Copied!
7
0
0

Teks penuh

(1)

民法189条1項の果実の意義(3・完)

    一「使用利益」の問題を中心に一

油 納 健 一

【目次】

第1章はじめに

第2章 日本法の状況

  第1節 現行民法に至る経緯   第2節 民法成立後の判例・学説 第3章ドイツ法の状況

  第1節 BGB(ドイツ民法典)の構成

  第2節 BGBの起草過程における審議(以上49巻6号)

  第3節 BGB成立後の判例・学説   第1款判例(以上50巻1号)

  第2款 学説

  第4節 小括 第4章 むすび

  第1節 果実と「使用利益」の関係   第2節  「使用利益」の性質・範囲

第3章 ドイツ法の状況

第3節 BGB成立後の判例・学説 第2款 学説

 学説においては,BGB 100条は定義規定であって直接的に適用される規範 ではない51),と説明されたり,収益概念を規定しBGBの規定などを拘束す

(2)

84−(250)

第50巻 第2号

る52),と説明されたりしている。

 果実と「使用利益」の関係について学説は,判例の見解に則し,果実と

「使用利益」を収益という枠組の中で同等に扱う53)。

 また,「使用利益」の性質・範囲についても学説は,判例の見解に則した 議論を展開しており,まず「使用利益」を次のように限定的に捉える。

 すなわち,「使用利益」は占有物から発生した利益であり,消費や譲渡に よって得られる利益と理解されるべきではない54)。

 営業から生じる利益は,占有者の個人的な能力と給付の成果であってBGB 100条の収益ではなく55),占有者が自分で営業を設立した場合には,この営 業から生じた利益は収益ではない56)。ただし,占有者が自分で営業を設立し

たのではなく,営業から生じる利益が個人的能力・給付に基づくものでなけ れば,営業から生じる利益は収益に属する57)。

 火災保険金は,火災によって殿損した建物の「使用利益」ではない58),と。

 つぎに,占有物の使用可能性もBGB 100条の「使用利益」である59),とす

51)SoergelA>[Uhl, BGB,12Aufi.,1987,§100 Rdn。1。

52)LarenzバVolf, Allgemeiner Teil des Burgerlichen Rechts,8.AufL,1997, S.409 (Rdn.99);

 MUnchKomm/Holch,4.Aufl.,2001,§100 Rdn.1.

53)Enneccerus/Nipperdey, Allgemeiner Teil des Btirgerlichen Rechts,1959, S.820f;Soergel/

 MUhl, a a.0.,§100 Rdnユ;Staudinger/Dilcher, a.a.0.,§100 Rdn.1;LarenzrWolf, a.a.0.,

  S.409(Rdn.99),412(Rdn.116);Medicus, Allgemeiner Teil des BGB,7.AufL,1997,

  S.453(Rdn,1202);Erman/Michalski, BGB,10. Aufl.,2000,§100 Rdn.1;MUnchKomrn/

 Holch, a.a.O.,§100 Rdn.L

54)EnneccerusfNipperdey, a,a.O,, S.820f;BGB−RGRKIKregel,12. Aufl.,1982,§100 Rdn.4;

 Soergel/MUhl, a.a.0., § 100 Rdn.4,5; Staudinger/Dilcher, a.a.0., § 100 Rdn.1,3;

 Erman/Michalski, a.aO.,§100 Rdn.3;MUnchKommfHolch, a.a.0.,§100 R(ln.5.

  また,消費によって得られる利益のみを述べるものとして,LarenzバVolf, a.a O., S,

 412(Rdn.116),譲渡によって得られる利益のみを述べるものとして, Loewenheim,

 Anmerkung zu BGH,8.11.1965, NJW 1966,971,972がある。

55)Enneccerus/Nipperdey, a.a.O., S.820;SoergeYMUhl, a.a.O.,§99 Rdn.3;Erman/Michalski,

 a.a.O.,§100 Rdn.5;MUnchKomm/Holch, a.a.O.,§100 Rdn.12。

56)MUnchKommfHolch, a.a.0.,§100 Rdn.12。

57)M廿nchKomm/Holch, a.aO.,§100 Rdn.12.

58)Staudinger/Dilcher, a.a.O.,§100 Rdn.2;MUnchKomm/Holch, a.a.0.,§100 Rdn.5.

(3)

る。したがって,たとえば,店舗を利用して利益を得ることができなくても,

この店舗が使用可能であったのであれば,占有者は「使用利益」を取得して

いると考えられている6°)。

 また,「使用利益」の価値は,客観的価値(市場価格)に基づいて算定さ れるべきであり61>,約定された賃料に基づくのではない62),という。

第4節 小括

 起草者は,必ずしも根拠を明らかにしていないが,収益という枠組の中で 果実と「使用利益」を同等に扱っており,判例・学説もこのような起草者の 見解に従うものと思われる。

 また,「使用利益」の性質・範囲については,起草者は検討していなかっ たようであるが,とくに判例は一定の見解を明らかにしており,学説もこの 判例の見解に従うものといえる。

第4章 むすび

第1節 果実と「使用利益」の関係

 ドイツ法では,収益という枠組の中で果実と「使用利益」が同等に扱われ るという見解が確立しており,また,ドイツにおいてこれを批判するものは みあたらない。この根拠は必ずしも明らかではないが,果実と「使用利益」

を区別する理由がないことを当然視していたから,とくに根拠を明示してい ないように思われる。また,BGB99・100条やドイツ判例をみてみると,果 実・「使用利益」が区別されないのは,「占有物から生じる」という点で共通

しているからとも考えられる。さらに,ドイツ判例は,金銭(貸金)・権利

59)Soergel/MUhl, a.a.O.,§100 Rdn.3;Staudinger/Dilcher, a.a.0.,§100 Rdn.2;Erman/Michalski,

 a.a.0.,§100 Rdn、5;MUnchKomm/Holch, aa.0.,§100 Rdn.3,4.

60)Soergel/Mnh1, aa.0.,§100 Rdn.3;MnnchKomm/Holch, a.a.0.,§100 Rdn.4.

61)Staudinger/Dilcher, a.a.O.,§100 Rdn.5;Erman/Michalski, a、a.O。,§100 Rdn.5;M廿nch−

 Komm圧【01ch, a.a.0.,§100 Rdn.6,9,10.

62)Soerge…Uhl, a.a.O.,§100 Rdn.3,4;Staudinger/Dilcher, a.a.O.,§100 Rdn.5.

(4)

86−(252)

第50巻 第2号

(用益権)・土地・建物を問わず,あらゆる物や権利から生じた「使用利益」

を,収益という枠組の中で果実と同等に扱うものといえる。以上の検討から すると,ドイツ法は,日本法以上に果実と「使用利益」を区別しない傾向に あるといえよう。

 それでは,このようなドイツ法における議論を踏まえて,日本法において 果実・「使用利益」の関係はいかに捉えられるべきであろうか。

 まず,日本民法起草者は,天然果実は民法189条1項の果実に含まれるが,

法定果実はこれに含まれない,なぜなら,法定果実は占有物から生じるので は全くなく,その賃貸権から生じるのであるから,とする。また,「使用利 益」についても法定果実と同様に,民法189条1項の果実に含めなかったと 推測される。しかし,このような起草者の見解には,問題があるように思わ

れる。

 すなわち,占有物を他人に貸すなどして法定果実が生じる場合,確かに法 定果実は占有物から直接的に生じるのではないかもしれないが,間接的に生

じるものと評価できるのではなかろうか。また,「使用利益」については,

占有者が自分で使用して得る利益であるから,「使用利益」は,占有物から 直接生じるものとして考えられよう。

 このように,法定果実・「使用利益」は,天然果実と同様に,占有物から 生じる利益であるから,天然果実と法定果実・「使用利益」が区別されるべ

き理由はないように思われる。

 つぎに,天然果実と法定果実・「使用利益」が区別されるべきではないと しても,果実と「使用利益」の関係についてはどうか。

 大正14年判決の上告理由にもあるように,果実と「使用利益」を区別すれ ば,占有物を他人に賃貸した者は民法189条1項の適用により保護されるの に,占有物を自ら使用した者は保護されないということになり,著しく不公 平な結果となろう。

 また,日本の判例・通説は,果実に「使用利益」を含めることを認めてお り,ドイツ法は,日本法以上に果実と「使用利益」を区別しない傾向にある

(5)

と思われることから,果実と「使用利益」を区別するよりも,むしろ同等に 扱うことの方が自然であるように思われる。

 したがって,果実と「使用利益」を区別する理由はないように思われるこ とから,民法189条1項の果実を拡張して解釈し,この果実に天然果実・法 定果実・「使用利益」を含めて考えるべきであろう63)。

第2節  「使用利益」の性質・範囲

 ドイツ判例は,BGB100条の「使用利益」が占有物から発生する利益であ ることを原則とし,次のような占有物から発生するのではない利益は,「使 用利益」に含まれないとする。すなわち,占有物自体の利益(占有物の消費・

譲渡などの行為によって得られる利益),個人的な能力・給付の成果によっ て得られる利益(営業から生じる利益など),保険金である。

 これらの検討からすると,ドイツ判例は,「使用利益」を「占有物を維持 した使用によって占有物から発生する利益」と捉えたと評価できよう。

 また,この「使用利益」は,占有者が実際に使用したことによって得る利 益だけでなく,占有物が使用可能であるという状況から生じる利益も含むも のと解し,この「使用利益」は客観的価値(市場価格)に基づいて算定され

るとする。

 さらに,ドイツ判例は,「使用利益」の発生源たる物や権利をとくに区別 しないものといえよう。

 それでは,このようなドイツ法における議論を踏まえて,日本法における

「使用利益」の性質・範囲はどのように考えられるべきであろうか。

 日本民法189条1項には「占有物ヨリ生スル果実」と規定されているので あるから,日本法においても,ドイツ法と同様に,「使用利益」を「占有物 を維持した使用によって占有物から発生する利益」と捉えるべきであろう。

また,このように「使用利益」を捉えることによって,占有物自体の利益,

個人的な能力・給付の成果によって得られる利益,保険金は,「使用利益」

63)拙稿・前掲注(1)198頁以下。

(6)

88−(254)

第50巻 第2号

に含まれないと考えるべきであろう。

 また,「占有物を維持した使用によって占有物から発生する利益」は,占 有者が実際に使用したことによって得られる必要はない。なぜなら,使用可 能性を有するということ自体が占有者にとって利益であるからである。さら

に,この利益は,客観的価値に基づいて算定されることになろう。

 ただし,金銭の「使用利益」は,民法189条1項において問題とならない ことに注意を要する。なぜなら,金銭所有権は占有者に帰属するのであるか ら,金銭の占有者は所有者であると解され,占有者の果実収取権を規定する 本規定はそもそも問題とならないと考えられるからである。

 最後に,残された課題について述べておきたい。

 本稿で検討したように,民法189条1項にいう 「果実」は「使用利益」を 含むものと解されることから,占有者が法律上の原因なく「使用利益」を取 得した場合であっても,本条の要件が充たされれば,占有者は「使用利益」

を取得できるようにみえる。しかし,拙稿「不当利得と善意占有者の果実収 取権一『使用利益』の問題を中心に一」64)で検討したように,民法189条1項 の適用は限定的に解されるべきと考えられ,その結果,民法703条の適用範 囲が拡大することになろう。それゆえ,民法703条に基づいて「使用利益」

の返還が認められるかぎり,この返還義務の具体的内容がどうなるかを明ら かにすることが必要である。拙稿「いわゆる『使用利益』返還義務の一考察一 無効な利用型契約における『使用利益』を中心に一」6J「/では,利用型契約が 無効である場合における本体的「使用利益」に限定して検討を行ったが,侵 害利得などの場合における付随的「使用利益」の返還義務についてはどうな

るのか。また,本稿で行った「使用利益」の性質・範囲についての検討は,

主に民法189条1項の「使用利益」にとどまっていたが,民法703条で問題と なる「使用利益」についても,あらためて検討する必要があるように思われ

る。

64)拙稿・前掲注(1)118頁以下。

65)拙稿・前掲注(11)675頁以下。

(7)

 これらについては今後の検討課題としたい。

[後記]本稿は,平成13年度山口大学経済学部学術振興基金研究助成による 研究成果の一部である。

Referensi

Dokumen terkait

海の問題の解決を促す発言は、その後も続いている。しかし、条約を批准していないアメ リカの発言がどこまで説得力、現実性をもつかは疑問である(44)。国際法、国連海洋法条約規 定と一致しない行動をとる国―中国はそのひとつ―に対して法に従うよう要求するこ とは、条約締約国になってはじめて正統性をもつようになる。南沙諸島、西沙諸島がどこ

発生主義だけで当期の実現収益に対応す るすべての費用を認識することはできない。 未費用の製品原価 ■原価計算と利益計算 費用の発生 (原材料の使用) 当期の 発生費用 売上原価 (P/L) 棚卸資産 (B/S) 対応 利 益 原因発生主義 ■価値減少の原因事実の発生をもって費用を 認識します。 製品保証引当金,貸倒引当金等

特 集 2020 年度 外国語科完全実施までの準備 教科として外国語科(英語)が小学校に導入される 大きな転換を翌年度に控え,教材の工夫という指導 内容にかかわる課題への対応と,教える側である指 導者自身の意識改革が求められています。大きな変化 への対応に頭がいっぱいになり,浮き足立ちそうにな りますが,そんな時こそ,目の前の児童のことをもっ

1つは、当該コモンズの所有権ないし利用権を確定し、その権利を持っている 主体にのみコモンズの利用を認めることである。入会地の利用の例がこの場合に 当たる。村落共同体は、そのメンバーに関して、いつ、誰が、どのように入会地 を利用するか権利の行使の仕方を定めていた。メンバーが限られており、権利の 行使について管理・監視の費用が小さい場合、このような方法が可能になる。水

岡山県立大学の競争的資金等にかかる内部監査実施要領 (趣 旨) 第1 この要領は、岡山県立大学における研究費の不正使用防止等に関する規程(以下「規程 」という。)に基づき、公立大学法人岡山県立大学(以下「本法人」という。)における競 争的資金等に関する業務及び会計について、本法人が自ら行う内部監査に関し必要な事項を 定めるものとする。 (目 的) 第2

差表色系を用いることで,品種,時期的なわずかな果実 色調の差も表現しうるものと考える.そしてさらにその 表色が人の色感と良く一致し,主観に支配されず科学 的,客観的な数値として得られることも明らかとなった このことから加工用トマト果実の着色,とくに果皮の 色調比較において,等色差表色系による測色,表示法が 非常に有用であると考える.そして今後トマト果実の色

その一方で,学業への意欲に関する自己評価 は高くない。アルバイトの目的・動機は,生活 費のため,経験のためと考えるのが通常であり, 調査結果からはこの点が裏付けられる。ただし 結果的に,学業への意欲の高まりをアルバイト の成果にあげる学生は一定数いる。しかしなが ら他の項目に比べると得点は低く,学業への意 欲の観点からはアルバイトの効果は低いと言 わざるを得ない。

る。 この魅力とはなんだったのだろうか。それは、ピグミーが4000年以上前からずっと中部アフ リカの熱帯雨林で現在と同じように暮らしているという観念だろう。太古の姿をそのまま残し ている原始的な存在としてのピグミーである。北西(2011,2012)では、ピグミーは19世紀後 半に発見された当初から人類の起源と関連付けられていたことを示した。それにぴたりと一・致