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温 泉 の 開 発 ・ 熱 利 用 と 温 泉 モ ニ タ リ ン グ

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令和3年(2021 年)47日(水曜日)

(第3種郵便物認可)  (毎週水曜日発行)

  奥村

産業でもあります。 観光産業は地域を支える基幹 業の少ない過疎地において、 近な存在であります。また産 てもいい国であり、温泉は身 泉地があり、温泉大国といっ が国は、全国に約3千もの温 対策研究会」の奥村です。わ ます。私は、「温泉の温暖化 に紙上シンポジウムを開始し 用とモニタリング」をテーマ   「温泉の開発・熱利   環境省では、温泉の熱利用を通じて、温暖化対策に貢献するとの考えの下、その推進策を進めておられますが、温泉のコスト負担の低下、経営の活性化、温泉地の活性化等一石三鳥の効果が期待されています。

  さて、今、産業技術総合研究所の浅沼さんが全国十数カ所の温泉地で、温泉のモニタリングに関する研究を進めておられます。

  この研究を通じて、温泉地に温泉のモニタリングを定着させるとともにそのコストを削減し、全国の温泉地でも使って欲しいとのご構想をお持ちです。

  このモニタリング装置は、現在は100万円を超える費用がかかりますが、今後相当程度安くなることが期待されています。また、このモニタリング結果の解析で、気温や降雨等によって温泉のデータが大幅に変動していること、また、その解析によって、各種の外的要因によるデータの変動の寄与度を算出することができること、またこれにより、温泉掘削による温泉資源への影響を定量的に解明でき る可能性があること等を伺っています。  全国にこのようなモニタリングシステムが安価に普及していくことができれば、今、温泉地の現場でさまざまな議論を巻き起こしている温泉の掘削、開発の影響が科学的に解析され、さまざまなトラブルが科学的に評価され、合理的な解決に資することができるのではないかと思います。  本日は、このような点について話し合っていただき、今後の温泉行政の在り方、今後の温泉地での開発論議の論点整理、モニタリングの全国の温泉地への普及の進め方、モニタリングの適切な実施のマニュアルの整備の在り方等について、ご議論をいただければとシンポジウムを開催させていただいた次第です。

  最初に、産業技術総合研究 所の浅沼さんから、研究の狙い、進め方、今後の対応策の在り方等についてお願いします。  浅沼  基本的な考え方について、お話しします。私たちは、これまで、温泉がさまざまな時間スケールで変動することを経験的に知っていましたが、変動を把握するための十分な性能・信頼性を有する機器が存在しないことが最も重大な課題であると認識し、モニタリング装置の開発を開始しました。ここでは、源泉所有者の方が購入可能であり、できる限り容易にデータを閲覧できるように、小型かつインターネット接続可能な装置を目指しました。開発した装置は十数カ所の温泉地で試験し、泉質、給湯方法によらず連続的にデータを取得可能であることを示してきまし た。  また、温泉地での計測機器の長期使用で問題となることが多い、温度、湿度、硫化水素の影響も受けないことを確認しています。また、いくつかの源泉地においては、気温や降水量に対応した変化がみられることも明らかにしてきました。  現在、これらの成果をもとに、温泉変動の高度な解釈や温泉資源の適正利用を実現するためにAI(人工知能)システムの開発を行っています。  現時点では温泉モニタリング装置は市販の予備段階にあり、主として研究用途に使用されていますが、できる限り早い市販化やリース事業化を目指していきたいと考えています。量産効果が見込めるものなので、導入初期段階では 大規模な給湯系への導入や公的な枠組みの中で導入を行い、本装置の有効性を認知していただくことが重要であると考えています。  取得したデータはインターネット経由で源泉所有者がご覧になれるようにしており、源泉の日々の変動を知ることができます。これまでに、本システムを利用して、スケール清掃日の決定やポンプでの汲み上げ量の決定などが行われています。  今後、温泉に関わるさまざまなナーバスな問題の解決にも本システムは有効に利用できるものと考えていますが、そのためには中立的な立場

で、科学的に正確なデータ、解析結果を提示することが必要と認識しています。公的研究機関である産業技術総合研究所は将来的に温泉資源の適切かつ持続的な利用のための科学的データを提供できるようになりたいと考えています。

  私は地熱発電のための研究開発を行っている研究者ですが、温泉と地熱発電の共生、 さらには温泉資源の適正利用といった点を重要視しており、このためにモニタリング装置の開発を進めてきました。  これまで多くの方が、私どもが開発してきたモニタリング装置をご覧になり、ポジティブなご感想やご意見をいただいており、非常に励みになっています。  奥村  次に中央温泉研究所の甘露寺さんからご発言をお願いします。  甘露寺  源泉から湧出する温泉の温度は携帯型の計器を使用し、湧出量は計量バケツによる容積法、水位はロープ式水位計などを用いて観測員がその都度現地で測定を行っていましたが、近年は、水位は圧力式水位計(温度計内蔵型)、湧出量は配管に流量計(電磁流量計、超音波流量計等)を設置し、自記記録計を用いた連続観測も同時に行うことで、より多くのデータが得られ、細かな解析ができるようになっています。温泉の成分濃度に関しては、頻繁に測定を行う場合は、電気伝導率を測定することで、溶存成分総量の推定を行っています。温泉のガスは、源泉で採取し、その組成を分析し、モニタリングしているケースもありますが、頻繁に測定している事例は少ないと思います。  配湯施設においては、温泉の配湯所で配湯量や温度などのモニタリングが行われているほか、ポンプの電流値等機械関係の動作状況もモニターしています。浴槽では、事故防止のため硫化水素ガスの濃 度が測定されています。  温泉湧出の変動原因には、自然的要因(降雨、潮汐、地震、火山活動など)と人為的要因(温泉や地下水の過剰採取、井戸構造物やポンプ等の状態、土木工事、建設工事など)に分けられます。人為的要因については、原因を取り除くことにより、回復が可能です。モニタリングの結果は、源泉の維持管理、資源動向の確認や有効熱利用の計画、揚湯ポンプや配湯等の設備点検、土木工事による温泉への影響回避、事故や災害、環境影響等の防止に用いられています。  ここでは、図1で、温泉のモニタリング実施フローをあげます。モニタリングデータを集積して、適正採取量の検討がいくつかの温泉地で行われています。  温泉モニタリングが定着していない理由としては、次のようなことが考えられます。  第1に、重要性が十分に理解されていないことです。モニタリングを行う意味(メリット)や結果の活用方法が理解されにくいようです。モニタリングの目的は多種多様であり、目的や範囲等をはっきりさせることが重要と思われます。  第2に、人的、金銭的な余裕がないことです。小規模の温泉旅館では、時間的、金銭的余裕がないケースもあり、近年では、都道府県等で定期的に行っている実態調査の回数も減りつつあります。

  第3に、温泉に使用できる 測定機器が少ないことです。温泉は、一般的な地下水と異なり、温度が高く、多様な成分を高濃度で含む特徴があります。温泉の温度が高いことや温泉に含まれる腐食成分や沈殿成分は、流量計や水位計等の測定機器の誤作動や故障の原因となります。多種多様な温泉の泉質に対応し得る測定機器は少なく、耐熱、防蝕加工、スケール対策が必要となり高額となってしまいます。  第4に、源泉が測定できる構造となっていない場合もあります。自然湧出泉では、測定口がなく湧出量の測定が困難な場合が多いからです。掘削泉においても古い源泉では、小口径であるため、水位計等の計測機器を入れるスペースがなく、測れないこともあります。エアリフトポンプを使用している場合は、流量計や水位計による測定が困難となります。  第5に、危険を伴うことがあります。蒸気を伴うような高温であったり、ガスを多く含む温泉では、事故等の危険があります。  奥村  次に、日本温泉協会の佐藤さんからご発言をお願いします。  佐藤  世界に冠たる「温泉大国」である日本は有史以来温泉を生活文化の糧として生活してきました。高度成長と共に温泉利用が拡大し、増掘に次ぐ増掘を繰り返した結果、温泉の乱開発につながり、温泉枯渇が各地にみられるようになりました。従来の湯治宿は影を潜め、収容人員が多いビル型の大型ホテルの乱立が現れ、本物温泉(自然湧出泉)が少なくなっていきました。  協会は温泉の保護と活用のため、温泉学術関係者や温泉施設の代表、温泉関係の行政機関が中心となり戦前から温泉の調査研究を行い、警鐘を

温泉の温暖化対策研究会・紙上シンポジウム

  日本に豊富にある温泉資源の開発や熱利用は、脱炭素社会の実現とともに地域活性化に貢献する取り組みとして期待されている。その際、温泉資源の適切な管理やモニタリングが、科学的な論議を進める上で重要な課題となっている。

そこで環境新聞では、温泉の温暖化対策研究会の協力を得て「温泉の開発・熱利用と温泉モニタリング」をテーマに紙上シンポジウムを開いた。温泉モニタリングの現状や必要性、メリット、課題を整理するとともに、国等の助成も含め

た今後の整備の在り方などについて話し合ってもらった。

奥   村 浅   沼 甘 露 寺 、効

【特集企画】

奥村 明雄

浅沼 宏

甘露寺 泰雄

出席者

コーディネーター 日本環境衛生センター会長

(温泉の温暖化対策研究会会長)

パネリスト 産業技術総合研究所 福島再生可能エネルギー研究所 再生可能エネルギー研究センター

総括研究主幹

中央温泉研究所顧問

日本温泉協会副会長

福島県温泉協会会長

環境省自然環境局自然環境整備課 温泉地保護利用推進室長

奥村 明雄

浅沼  宏 甘露寺 泰雄

佐藤 好億 遠藤 淳一

岡野 隆宏

図1 モニタリングによる 温泉利用の適正化

①モニタリングの計画

②モニタリングの実施

③記録の整理

④現況の把握、評価

⑤対策の実施

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環境新聞 『電子版』

配信中

研究会役職 氏名 所属

会長 奥村 明雄 一般財団法人日本環境衛生センター

会長

顧問(学識経験者) 甘露寺 泰雄 公益財団法人中央温泉研究所 顧問

常任幹事兼事務局長 吉田 可紀 特定非営利活動法人循環型社会推進センター 理事長

幹事 佐藤 好億 一般社団法人日本温泉協会

副会長

幹事 佐藤 幸世 一般財団法人日本環境衛生センター

理事・環境事業本部長

監事 田中 朝都 日立造船株式会社 環境事業本部

環境技術推進部 部長

役員および会員

 わが国は、全国に温泉が存在する温泉大国で、その熱エネルギーの活用は、温暖化の防 止と地球環境の保全に貢献するばかりでなく、温泉施設のコスト削減を通じ、温泉施設の経 営安定化と地域おこしに貢献する等一石三鳥の効果を上げることが期待されています。

 このため、学識経験者、温泉自治体、温泉団体、メーカー、コンサルタントが温泉の温暖化 対策研究会を設置し、調査、研究、普及啓発、各種要請活動等の活動を行っています。

 研究会は、次の団体企業、地方自治体で構成されています。

団体企業:公益財団法人中央温泉研究所、一般社団法人日本温泉協会、特定非営利活動法人循環型社会推進センター、

     一般財団法人休暇村協会、一般財団法人日本環境衛生センター、新那須温泉供給株式会社、

     日立造船株式会社 地方自治体:草津町、熱海市

所在地 〒210-0828  川崎市川崎区四谷上町11-15 一般財団法人日本環境衛生センター内 連絡先 TEL:044-288-4997  FAX:044-288-5011

URL;http://www.jesc.or.jp/ E-mail:jesc-onsen@jesc.or.jp

温泉の温暖化対策研究会のご案内

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7 令和3年(2021 年)47日(水曜日) (第3種郵便物認可)  (毎週水曜日発行)

鳴らしてきたと自負しています。

  かつての大規模旅行の増大による温泉掘削の乱開発問題に対し、温泉法の制定や各温泉地の条例制定など歯止めはかかってきましたが、再生可能エネルギー開発問題の再燃により再び、大深度掘削を国立公園内に斜坑掘で行う地熱開発が行われています。

  当協会は新たな大深度掘削による無秩序な地熱発電開発に反対し、地熱開発を行う場合の以下の条件を発表しました。

  第1は、地元(行政や温泉事業者等)の合意です。

  第2は、客観性が担保された相互の情報公開と第三者機関の創設です。

  第3は、過剰採取防止の規制です。

  第4は、継続的かつ広範囲にわたる環境モニタリングの徹底です。   第5は、被害を受けた温泉と温泉地の回復作業の明文化です。  協会では、地熱発電開発に対し、地元からの要望に伴い、助言、陳情、協議会への参加などの活動を行ってきました。当協会と、担当行政機関である経済産業省資源エネルギー庁、開発関係団体の石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の三者で協議機関を設置し意見交換を行うことで、反対のための反対をするのではなく地元における情報の開示と開発側のモニタリングの徹底、協議会の設置義務化と補償明文化を求めて協議を続けています。  産総研の事業として福島県内の4カ所(二岐、高湯、裏磐梯、柳津)にモニタリング装置を約6年にわたり設置して、温泉の湧出量、泉質、泉温の変化を測定しました。温泉データの見える化が図られ たものと思います。地熱開発で温泉データに変化が生じるかどうか検証するためにもモニタリングの義務化が必要だと思います。  現状では、日本の各地で、ごく少数のモニタリングが行われているにすぎず、秩序ある地熱開発を行うにはデータが少なすぎるのが現状であると思います。  温泉資源は

泉で、温度が 珍しい自然流下引湯源 と考えます。全国でも 質を色濃く有している とを求めます。で、当時の温泉(源泉)の性 補助を法令で明文化されること現在の分析表はほぼ同じ   装置を設置する際には費用の明治時代の分析表(写真1) で、温泉施設がモニタリングす。 千㍑以上の湯量となっていま費増はさらなる倒産を招くの のが現状です。これ以上の経泉9カ所で、トータル毎分3 業するところが後を絶たない酸塩泉(硫化水素型)で、源 弊が激しく、営業を休止、廃ルシウム・アルミニウム・硫   温泉地はコロナ禍により疲す。泉質は酸性‐含硫黄‐カ    り、江戸時代より続く温泉でます。 タリング装置の開発を期待しに位置し、標高750㍍にあ です。より小型で安価なモニ梯吾妻スカイラインの玄関口    わたるモニタリングが不可欠遠藤高湯温泉は福島県磐 水が循環しており、長期間にす。 30会の遠藤さんからお願いしま年以上前の雨    奥村次に、福島県温泉協 たいと思います。 進室に協議をお願いしていき り、担当の温泉地保護利用推 を行っていきます。差し当た め、補助予算を獲得する活動 グ装置の全国設置義務化を求 境省と協議し温泉モニタリン に加え、温泉の主管庁たる環 庁、JOGMECの三者協議   当協会と資源エネルギー

40℃~

ています。 融雪道路にも活用され 泉の廃湯は冬の無散水 ばなりません。高湯温 ケール掃除をしなけれ め、1週間に1回ス 給湯量が少なくなるた パイプ内部が狭くなり プの内側に付着すると というスケールがパイ 可能です。「湯ノ花」 加温加水せずとも使用 50℃位であることから   中です。 ・ pH・電気伝導率)を継続 リング実証試験(湯量・温度 より源泉湯花沢5番泉モニタ   数年前より産総研の要請に

がありました。 は感覚的に理解している自負 地震等影響を受けていること り、天候・季節・外気温度・ をデータで目にする機会もあ 査等で成分・湧出量・温度等 健所の年に数回の立ち入り検 10年に一度の温泉分析、保   しかし、産総研のデータは驚くものです。ある程度の一定量が穏やかな温度変化で湧出していると考えていたのが、実際は湧出量が短時間のうちに考えられない程の増減を示してみたり、2割位の大きな変動があること、温度も細やかに変化していることは予測もしていなかったことです。

  過酷な自然の中に機材を設置し管理するということは、悪天候、猛暑でも大雨でも大雪でもヘルメットをかぶり、長靴を履き防水カッパを着て黙々と山の中を往復することです。研究チームの研究データ取得に対する意識の高さがそうさせるのだと感じます。

  気象庁から吾妻山噴火レベル2に引き上げられた時、源泉に変化が見られた場合、連絡が欲しい旨を伝えられました。データが貴重なものであることを認識しました。

  高湯温泉の地下でどのような変化が起きているのか、なぜそのような変化が起こるのか、どのようなメカニズムで 湧出しているのか、高湯温泉の

ほどであります。 ご教示いただきたいことは山 も有効活用ができるのか等々 44℃位の低い温度の温泉で   奥村  次に、環境省の温泉地保護利用推進室長の岡野さんからお願いします。

  岡野  温泉法では、温泉の湧出量、温度または成分に影響を及ぼすと認めるときは、当該申請を不許可とすることができるとされております。この判断に当たっては、既存の温泉への影響を把握することが重要であり、定期的なモニタリングを行うことが重要です。また、源泉所有者にとっては源泉の状態把握や異常の有無等により、源泉の健全性の確認や井戸の適切な維持・管理が可能となります。

  環境省では、「温泉資源の保護に関するガイドライン」(

用すべきとしております。 距離規制の設定の見直しに活 削等の原則禁止区域の範囲や い、掘削等の許否の判断、掘 都道府県はモニタリングを行 20年3月更新)においても、

  また源泉所有者が自らモニタリングを行い、採取量の調整、管理を行い、自ら維持・管理を行うことが重要であることから、自主的に行うことができるよう「温泉モニタリングマニュアル」を

に策定しています。 15年3月

  また、

2010月 することを宣言しました。省 スの排出を全体としてゼロに 050年までに、温室効果ガ 偉総理の所信表明演説では2 26日の菅義

  当研究センター・地熱チームでは、2014年度から

17 年度にかけて、横河電機、地熱エンジニアリングと共同で新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)からの委託を受け「簡易遠隔温泉モニタリング装置」(写真2)の開発を行ってきました。本装置は温泉水が流通する温泉配管へ取り付け、温泉の温度、圧力、流量、電気伝導率に加え、外気温や温泉井の水位等を1分間に一度計測する能力を有しています。この装置の特徴の一つに、取得したデータを装置内部のメモリーに記録すると同時に、インターネットを介してサーバーへ転送・保存できるという点があります。これにより、源泉所有者をはじめとする関係者の方々が場所や時間を問わずに データを閲覧できるということを実現しました。このプロジェクトで製作したプロトタイプ器は、泉質・湯量や給湯方法等が異なる国内十数地点の温泉地域で試験を行い、腐食やスケール付着等の実用上の問題を解決してきました。また同時に、温泉配管へ取り付けた際における本装置の性能評価を行い、いわゆる「手ばかり測定」と同等以上の品質を有するデータを取得可能であることも示してきました。

  このプロジェクトを引き継ぐ形で

18年度から

研究開発を行っています。 本技術開発の4社で受託し、 地熱エンジニアリング、西日 技術総合研究所、横河電機、 NEDOプロジェクトを産業 タの解析・利用方法に関する けて、本装置で取得したデー 20年度にかに検出可能にする計画です。 源泉が有する性質をより正確 にすることを目指しており、 着等の影響も検出・除去可能 や、バルブ操作、スケール付 また、ポンプによる汲み上げ 明可能になると考えています。 降水等による温泉の変動を説 います。これにより、気温や 去可能にすることを目指して ル化し、その影響を抽出・除 の変動要因をAIによりモデ こでは取得した温泉データ中 温泉変動のモデル化です。こ 目的を有しています。第1は   このプロジェクトは2つの

  もう一つの目的は温泉資源の適正利用です。ここでは大規模な配管系を使用して温泉水を供給している地域を対象として、温泉モニタリング装置や他のセンサー類で取得したデータをクラウド上で運用 するAIにより処理し、源泉や給湯システムに異常が生じた場合の対応方法を提示したり、限られた温泉水を需要に応じて適正に配分可能にすることを目指しています。さらには余剰温泉水が生じた場合、発電や熱供給等、他の目的への使用法を提示可能にすることも計画しています。  私どもが実施してきた温泉モニタリング装置開発プロジェクトでは、装置が1千台以上の量販体制に入った時点で、源泉所有者の方が無理せずに購入できる価格とすることを目指しています。それまでの期間においては、自治体や給湯事業者等が管理する給湯システムでの導入や、公的資金の利用による導入例を増大させ、本システムの有効性を実証し、認知度を上げてい くことが重要であると考えています。  一方、温泉資源の適正管理という視点では、地熱発電所付近での温泉モニタリングも重要な意味を持ちます。この場合、地熱発電所ディベロッパーや政府・自治体関係機関が開発地近隣の源泉へモニタリング装置を設置し、源泉所有者の方の安心を確保することが重要であると考えています。地熱発電所付近の温泉モニタリングでは、万が一、地熱発電に関連した温泉の変化が生じた場合の対応に関する枠組みの整備や、保険制度と温泉モニタリングを組み合わせる等の方策も有効であると考えています。  我々が現在開発している温泉モニタリング装置や一連のソフトウェアは、できる限りユーザーフレンドリーなものにし、温泉の変動等に興味がある源泉所有者の方が自らデータの表示や基本的な解析を行えるようにしたいと考えています。その一方で、温泉変動の評価・分析や、AIによる資源の適正配分について は、ある程度高度な知識を有する方でないと対応困難な部分も存在します。我々は公的研究機関として、中立的立場でデータの解析を行い、温泉と地熱発電の関連や源泉間の干渉、あるいは資源の持続性といった比較的ナーバスな要素を含む問題に対して科学的に正確なデータを提供し、問題の解決に結びつくようにしていきたいと考えています。  一方、温泉資源の持続性といった視点から考えると、本モニタリング装置で取得したデータから、将来の変動を予測することも重要となります。これについては現在開発中のAIシステムで対応可能ですが、実用性を増すためには、今後、より多くの経験の蓄積が重要であると判断しています。  また、本モニタリングシステムを使用して、温泉の性質を保証すると同時に、さらに余剰となった温泉水を利用可能にすれば、温泉の新たな付加価値を創出し、温泉地の魅力を増すことも可能であると考えています。 エネルギーを徹底し、再生可能エネルギーを最大限導入する、これには温泉の熱利用ももちろん含まれます。温泉資源のポテンシャルを明らかにし、持続可能な形で利用の推進を図るため、継続的なモニタリング調査を実施することで、温泉熱発電等による多段階・多目的利用に向けた可能性を検討することができると考えています。  温泉モニタリングシステムの導入には、コスト面の課題、技術的な課題などが考えられます。また、導入した後の維持管理の問題もあるかと思います。温泉資源の保護と温泉熱の有効活用が進むよう、環境省としても引き続き取り組みを進めて参ります。 モニタリングは十分か  奥村

  国も、モニタリングを重視しておられるのがよく分かりました。さて、少し論点を絞って、踏み込んだご発言をお願いしたいと思います。

  1つ目は、モニタリングは十分行われているのか。2つ目は、モニタリングの結果をどう使っていくか。3つ目は、モニタリングを全国にどう普及させていくのかということです。

  第1の論点から順次ご発言をお願いします。

  甘露寺  資源の点では、泉温、湧出量(揚湯量)、水位、化学成分の変化を監視し、その要因を把握します。これには、自然的要因と人為的要因があります。前者としては降雨、潮汐、地震、火山活動等、後者としては温泉の過剰採取、掘削井の構造やポンプ等の状態、土木建設工事等(地形の改変を伴う)です。源泉(掘削井戸)の状況や気象のデータ、周辺の工事等の状況も必要となります。温泉だけのモニタリングだけで済まされません。

  また、これによって、過剰採取や枯渇現象の進展度合いを把握することができ、温泉保護対策の重要な基礎資料となります。化学成分に関しては、温泉水中の可燃性天然ガスおよび硫化水素は安全管理に直接関係するので、含量の測定、経時変化の監視等が重要となります。

  施設の監視については源泉、貯湯槽、配管、保温、ポンプ等の保守、点検、漏湯、破損の有無などです。その手段として、温度、流量、圧等のモニタリング(出発時と中間点、到着時等)が欠かせません。

  なお、浴槽の面積、容積、形状、注湯量と注湯温度、浴槽水や浴室の気温等のデータ の把握、特に硫化水素を含む温泉では、浴槽大気中の硫化水素の濃度、浴槽水の衛生管理に必要な検査も欠かせません。  奥村  幅広い内容を考えると、現状で必ずしも十分とはいえないように思います。次に浅沼さんからお願いします。  浅沼  私は現状で温泉モニタリングが十分に行われているとは考えていません。実施している源泉数が少ないことはもちろんですが、連続データの取得が十分に行われていないため、短時間での変動が見逃されることが多く、これが地下の温泉帯水層の科学的理解の不足、ひいては温泉の持続的かつ適正な利用に結び付いていないのではないかと考えています。私は、温泉資源が低炭素熱資源としての役割を担っているという認識を強く持つようになっています。つまり、温泉資源を適切に利用せず、減衰や枯渇させることになれば、観光産業の衰退を招くことに加え、CO排出量削減効果も低下するのではないかと危惧しています。今後、広く国民が温泉の持つさまざまな機能とメリットを理解し、貴重な熱資源の利用法について考えていくことが必要だと思っています。  奥村  次に佐藤さんからお願いします。  佐藤  安心安全で健康増進につながる温泉を将来の人々に残すことに意義があります。現状では、全国で統一的なモニタリングでないので、データの利用解析が困難です。温泉は日本古来の浴用、飲用の利用法があり、天水や海水と地中内の成分が長期にわたり融合して湧出した有限で貴重な資源です。開発目的で掘削が進み、すでに原因不明とされる泉源の枯渇や湯量、蒸気の減衰、泉質の変化も起こっています。  将来の人々に温泉を残すためにも、統一的で誰でも利用閲覧可能なデータ作成のためにも、低廉で小型の温泉モニタリング装置の開発普及が必要不可欠と考えます。  奥村  それでは、遠藤さんからお願いします。  遠藤  温泉は次世代に引き継がなくてはならないものであり、枯渇させてしまうことのないようにしなければなりません。長期におけるモニタリングは温泉の状態把握には欠かすことができず、項目もできる限り多い方が望ましいと考えます。  モニタリングすることにより温泉湧出環境がどのように変わっているのか、どのような影響がどの程度起きている

【特集企画】

基 調 報 告 ◎ 温 泉 モ ニ タ リ ン グ の 現 状 と 展 望

産 業 技 術 総 合 研 究 所 福 島 再 生 可 能 エ ネ ル ギ ー 研 究 所 再 生 可 能 エ ネ ル ギ ー 研 究 セ ン タ ー 総 括 研 究 主 幹  

写真1 明治時代の温泉分析表

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令和3年(2021 年)47日(水曜日)

(第3種郵便物認可)  (毎週水曜日発行)

のかを判断するベースにし、影響を防止もしくは低下するためにできる対策を、検討することにつなげるものと考えます。

  モニタリングにおいては、各源泉の湧出メカニズム・貯留構造の調査が必要であり、このことにより対策等が立てやすくなるものと考えます。

  奥村  環境省ではどのようにお考えでしょうか。

  岡野  温泉資源の保護に関するガイドラインでは「すべての源泉において水位等のモニタリングを行うことを基本」とし、実施を促しておりますが、現状は十分とは言えないと考えております。環境省では、

があったのは ングを行っているという回答 ました。行政によるモニタリ に対してアンケートを実施し ンの改訂に当たり、都道府県 19年度にガイドライ て、 みが必要かとの設問に対し に都道府県に報告させる仕組 ニタリング等を行い、定期的 に当たり、源泉所有者等がモ た。また、掘削許可等の判断 18都道府県でし

であるのが現状です。 都道府県の方針づくりが必要 都道府県にとどまっており、 を定めている都道府県は、3 た、モニタリングの実施方法 念する回答もありました。ま 討を行う場がないこと等を懸 なることや、記録の整理・検 回答しました。負担が大きく 23都道府県が必要ありと

 モニタリングの結果をどう使っていくか

  奥村  行政の方でも、検討を進めておられるとの感触を聞かせていただき、大変意を強くしました。それでは、次のテーマに移りたいと思います。

  遠藤  取り出せたデータが力を発揮できるように扱わなくてはならないと考えます。源泉の状態を把握し維持管理するためにはモニタリングは必須です。

 

50年のカーボンニュートラている温泉データの解析ソフ    浅沼現在、我々が開発し からお願いします。 うことですね。次に浅沼さん    奥村情報公開が大事とい 徹底すべきと考えます。 も、温泉データの情報公開を して利用していただくために 温泉利用者に今後永遠に継続 や活用のためにも、世界中の となります。温泉資源の保護 不十分となり地域紛争のもと 明を受ける機会が限定的で、 のための協議会や審議会で説 ですが、関係者の利害の調整 跨いで実施されることが多い 開発は、市町村や都道府県を 閲覧可能にすべきです。温泉 も、どこでも、わかりやすく」 用者も含め「誰でも、いつで 設、開発事業者、一般温泉利 結果は、国、自治体、温泉施    佐藤温泉モニタリングの 願いします。    奥村次に佐藤さんからお います。 素晴らしいのではないかと思 いて議論できるようになれば てもらい、同じテーブルにつ けるべく学習する機会を持って脱炭素化を進めていく上   一方、今後、わが国においのデータを理解できる力をつ の知識、また、それについて考えています。 向けてご尽力いただければと再生可能エネルギーについて   未来を担う子供たちにも、く協議を行う枠組みの実現へ せん。のような科学的データに基づ 協会等関係者の皆様には、こくベースにしなければなりま 作り、お互いの信頼関係を築が必要です。政府機関、温泉 の整備と関係者間の事前合意でも見ることができる環境を 取得したデータを速やかに誰いますが、そのためには制度 うということになると考えて容易になるはずです。また、 してのお互いのすり合わせがに、補償等に関する協議を行 我慢できるのか等、数値を介るという事象が生じた場合 の変動の間に関連性がみられできないのか・どこまでなら がおかしいのか・どこが譲歩地熱発電所操業データと泉質 る基準値以上の確からしさでどの状態が正常なのか・どこ   データの解釈ができれば、ています。つまり、今後、あ 必要だと考えます。で非常に重要であると認識し 地熱発電の共生を実現する上ジで行えるようにすることが 掘り下げた議論が同じステーできます。このことは温泉と という情報を取り出すことが機会を作り、データを介した タの理解を深められる学習のからしさで言い切れるのか、 温泉旅館・地元住民等)がデーようなことを、どの程度の確 変化が含まれている」というりません。素人(源泉所有者・ 合意・実行に至らなければな泉データに降水量に対応した まれています。例えば、「温理解し共有し、前向きな検討・ ルへ向け、誰しもがデータをトには統計学の概念が組み込

で、温泉熱資源の適正利用が重要であると考えていますが、そのためには地下の温泉システムの理解、利用時における泉質の変動把握および将来予測が必要です。これらもモニタリングシステムによる温泉泉質変動の連続的な把握なしには実現不可能と考えて います。  奥村  関係者の協議、社会システムの構築が重要だということでしょうね。甘露寺さんからお願いします。  甘露寺  第1に資源の保護と利用状態の把握に有効だと思います。環境省の資源と施設に関するデータを使ってまとめた結果が、全国的に見た資源と施設の推移の監視に有効である事例を紹介します。  第2に泉温、湧出量、水位等については、資源保護の観点から、モニタリング結果の解析が特に重要です。例えば、環境省による都道府県温泉利用状況一覧に掲載されているデータから、わが国の温泉資源の状況が明らかにされています。図2に示したように、資源は過剰採取の段階から、落ち着きを取り戻しつつあることが推定されています。資源のモニタリングが、都道府県、温泉地、個人単位で、温泉資源が現在どのような状態にあるのかを知り得る重要な手掛かりになっています。つまり、重要なのは、個々のデータの取りまとめです。  第3に、施設については、都道府県別利用状況から、施設数等について図3に示したような推移が判明しています。収容定員1名当たりの温 泉量(L/分)は、おおよそ1・9前後で、これもここ数年はほとんど変化なく安定しています。  新規の開発による既存資源への影響の把握については、温泉の開発と周辺地域における各種の工事等による影響の問題が対象となります。  奥村  ありがとうございました。多方面の活用が考えられるということです。岡野さんからお願いします。  岡野  実態の把握には長期間のモニタリングが重要です。モニタリングの実施主体は温泉事業者、給湯事業を行う温泉施設管理者、地方公共団体等とさまざまです。温泉事業者は定期的な測定を行い、結果を記録、解析することにより温泉の状態を把握できるだけではなく、設備の不具合に気づくこともできます。温泉施設管理者は、温泉の湧出状況が分かるよう計器等を設置し、常時記録と直ぐに確認ができるような体制の構築が望ましいです。そして地方公共団体はモニタリングデータを収集・整理し、積み重ねることにより、温泉掘削等の判断の基礎資料、掘削等の原則禁止区域の範囲や距離規制の設定の見直しに活用できますし、実際に水位の急激な低下や低下傾向の継続が見られた場合は、原因を究明し、必要に応じて、法に基づき温泉源の保護を図る必要があります。

  また地熱開発を含む温泉資源の適正な利用を進めるには、長期的な温泉モニタリング調査を行い、持続可能な範囲内での資源利用を行うことが不可欠です。温泉地ごとの特徴(温度、湧出量等)を的確に把握する ことで、温泉熱のポテンシャルが明らかとなり既存泉源の有効活用が促進されます。また、温泉熱、地熱開発による温泉資源への影響が監視できるため不安解消につながる可能性があります。 

モニタリングの 普及に向けて

  奥村

  それでは、3番目のテーマについて順次ご発言をお願いします。

  浅沼  私どもは普及時のイメージとして、クラウドを使用したデータの一元管理と中立的立場での解析という姿を描いています。これにより、源泉所有者の方は時刻や場所を問わずに自らの源泉データを確認し、グラフ化や将来予測等を行えます。また、大規模な温泉給湯系を管理・運用している事業者の方においてはAIによる最適システム運用、トラブル対応等が可能になり運用コストの削減に結び

付きます。また、データを公開された手法を用いて中立的な立場で解析することにより、地熱発電所との共生にも結び付くものと期待しています。

  今後、温泉モニタリングシステムの有用性を多くの源泉所有者の方にご認識いただくためにはモニタリングの成果をさまざまな機会にPRしていくことも重要です。このために、これまでモニタリング装置開発においてご協力いただいてきた源泉所有者の皆様に、さらなるお力添えをいただきたいと考えています。一方、装置のコスト削減のためには大量生産が不可欠であり、このために自治体等が管理・運営する大規模な給湯系への導入を進めていくことも望まれます。

  奥村  公開された手法で、中立的な立場での解析が大事だということです。

  甘露寺  モニタリングに関しては、その場で、あるいは 短期間のモニタリングで目的を達成できる場合と、長期間のデータの集積が効果を発揮する場合があります。従って、モニタリングの実施に当たって、例えば源泉所有者、施設の技術担当者の対応で済む場合もありますが、一般的には、専門の業者なり、都道府県の機関に依頼して、データの取得だけでなく、長期にわたる解析によって目的が達成できる場合もあります。  他に重要な点として、国、都道府県、民間団体等による研修会の開催によって、新技術や解析、まとめ方、新しい機器類の紹介等も重要と考えます。  これまでの経緯を見ると、都道府県の温泉担当部門、衛生、環境研究所、独立行政法人や各県の温泉協会、温泉事業協同組合等の団体、民間の会社等が、モニタリングを実施してきたといってよいと思います。  理想的には、一括処理が可能な研究・調査機関の設立ということですが、現状では問題の対応、処理がかなり広範囲に及ぶので、例えば医療機関としての総合病院といった総合機関の設立は困難と思われます。  現実的には、新技術や機器類の展示、紹介、これまでの事例、結果の取りまとめ等を含む諸情報の普及と講習会の開催から手を付けたらよいのではないかと思います。  奥村  関係者の研修など何らかのシステムが必要ではないかということです。  佐藤  温泉施設は零細事業者が多く、設備設置の費用を負担することは困難であり、国の重要なエネルギーである温泉の計測は、国と開発事業者側で補填すべきと考えます。現在行われている一施設、一地域のデータ集積には限度があることから、国で統一的モニタリング政策を確立し、産総研でデータ集積を行い、 情報公開を行うことを永続的に行ってほしいと思います。今後の開発は、統一的で公開されたデータをもとに行い、万が一、温泉掘削開発行為により泉源の枯渇、湧出量の減少、蒸気量の減衰などが起こった場合の開発中止や温泉事業者への補償を保険で賄うシステムの策定が重要と考えます。ただし、いきなり全国規模で行うことは難しいので、現在行われている十数カ所のモニタリング計測を集積し、今後日本各地に普及させていくことが望ましいのではないかと思います。山の中の一軒宿でも設置可能な低廉で、小型の装置開発が急務ではないかと思います。  奥村  国による助成、統一的なデータ管理のシステム等が求められるのではないかということです。  遠藤  日本は火山大国で、その周辺に温泉が数多く点在しています。

19年3月末時点

で、全国には2986カ所の温泉地と2万7261もの源泉があることからも、モニタリングをしなくてはならない温泉地・源泉は多いと思います。

  温泉地では、入湯税という税金をお客様から徴収しています。入湯税は、地方税法に基づき、環境衛生施設、鉱泉源の保護管理施設および消防活動に必要な施設の整備並びに観光の振興(観光施設の整備を含む)に要する費用に充てるため、鉱泉浴場(温泉施設)の入湯客に対して課税する税金です。これを利用してモニタリング装置の普及を進め、維持管理費も支出できるように働きかけることも一案ではないかと考えます。

  温泉資源の保護において環境アセスメントはとても大切であり、着工前には丁寧に行われています。そして、稼働後の定期的な環境影響調査も必須であると考えます。自然体系が崩れてしまうと回復することが厳しいと言われていることからも、崩す前に、この調査結果が公の情報として共有されるべきであると考えます。

  奥村  次に、環境省の岡野さんからお願いします。

  岡野  温泉資源の保護に関するガイドラインや温泉モニタリングマニュアルにより、 モニタリングの重要性、手法等を示しておりますが、モニタリングは十分に行われておりません。改めて、都道府県や源泉管理者に対して、モニタリングの重要性や有効活用事例を伝えていく必要があると感じております。安価で小型のモニタリング装置の開発が進むことで、全国の温泉でモニタリングが行われようになることを期待しています。環境省としても何ができるか、しっかりと考えてまいりたいと思っております。   奥村  環境省としても、何ができるか考えていきたいということで、勇気づけられます。ぜひご支援をお願いしたいと思います。さて、どうしてもこれまで言い足りなかったことについてご発言をお願いします。  佐藤  このようなコロナ禍の現状で温泉旅館はどのように生き残っていくかが問われています。これ以上の経費増は負担できません。また日本の温泉の安心安全がなければ今後のインバウンド復興も考えられません。全国で温泉モニタリングができるようになることは日本の温泉を守り地域経済を発展させることにつながります。国、自治体、温泉施設、関連企業や団体が一丸になって取り組んでいく必要を痛感しています。  遠藤  我々に問われている問題は時間の余裕のあるものでないことを認識し、我々にとって(日本にとって世界にとって地球にとって)何が最善の方法なのかを現在のあらゆるデータを基に答えを出していかなければなりません。  データ収集がベースになり次の段階に進むわけでありますので、まずモニタリングデータを正確に数多く収集し浅沼先生のシステムAIに学習させなければ次の段階に進めることが難しいのではないかと考えます。モニタリング装置をいかに早く普及させる かが現在の憂慮するところであります。  温泉保護は環境省、地熱開発は資源エネルギー庁、火山活動は気象庁と縦割りの省庁で管轄されています。これを連携させ横のつながりを持ってデータの共有化・予算の集約化を行えるようになれば多面的に進捗していくことができるのではないでしょうか。国として

考えます。 おさらのことではないか、と トラルを目指すのであればな 50年カーボンニュー   研究者の方々の地道に講究している姿勢がうかがえたことは、自分のこれからに対する姿勢を考える機会を与えられたことと感謝する次第です。

  浅沼  今回、皆様からの貴重なご意見を伺うことができ、大変喜ばしく思っています。近年の各種技術の進歩により、一昔前には想像ができなかったような方法でデータを取得したり蓄積できるようになってきました。その一方で、データの解析においては、各温泉の性質や周囲の条件を十分把握しておくことが重要であることも分かってきました。私たちは今後も研究開発を行い、源泉所有者、関係者の皆様のさまざまなリクエストに応じたシステムをご提供できるよう頑張って参ります。

  私は地球温暖化が想定外に急速に進展していることについて大きな危惧を抱いており、温泉が有する膨大な熱エネルギーを脱炭素社会のためにうまく利用し、それとともに温泉地域での経済の発展と雇用の確保が実現することを願っています。関係者の皆様と意見交換しながら、温泉資源の利用について科学的・技術的側面からお役に立たせていただきたいと考えていますので、よろしくお願いします。

  甘露寺  これまでの議論に加え、熱利用の問題について 意見を追加して述べたいと思います。  温泉はわが国では浴用が大部分を占め、飲用は量的には大変少ないのが特徴です。環境省のデータ(

として、水道水の ㍑ですから、温泉量は平均値 道は1日、1名当たり300 日当たり2736㍑です。水 の温泉量は1・9㍑/分、1 011名で、定員1名当たり 施設の収容定員は132万3 およそ2519立方㍍/分、 わが国の温泉総湧出量は、お 18年度)では、

す。浴用では温度として んど流れてしまうのが現状で 温泉は人間に触れないでほと る温泉量はさらにわずかで、 も、浴用で、利用者が接触す い傾向にあるからです。しか 員が多い地域は温泉量が少な 施設が出てくるのは、収容定 なります。それでも足りない 10倍近くに なものといえます。 温泉は無駄使いの象徴なよう は捨てられている。つまり、 で、その付近以上、以下の熱 前後しか利用していないの 40

  温泉は必要な時に必要な場所に必要な量を供給するシステムが不可欠となり、例えば集中管理システムがそのよい例です。水道と同じような使い方を採用するということですが、集中管理でも、ただ流しっぱなしといった事例も多く、循環管網配管計量方式が進んでいません。排熱の再利用等は徐々に進展してきましたが、まだ無駄が多く、全体としては改良されていません。

  モニタリングの結果をどう使っていくかについては、とりあえず必要なのは、利用客1名当たりの温泉量、温泉熱量です。その施設の収容定員が決まれば、1日の、そして年間の必要量、熱量が積算され、さらに温泉地全体の必要量、熱量の算出となります。そして最も重要なのは、その温泉地全体の湧出温泉量と熱量の算出です。

  その温泉地の湧出量、熱量と、施設が必要とする温泉量、熱量との比較が最も重要です。私どもは、これを「バランス調査」と称し、資源量と必要量のバランスを確認し、資源量・熱量が施設の必要量・熱量より大きければ、適正な運転が可能であり、逆であれば、浴用施設の改善等を提案してきました。温泉の需給は時間によって変わりますので、例えば貯湯タンク、分湯槽による調節、給湯ラインの改良等も必要になります。

  奥村

案ではないかと思いました。 用を進めるべきだというご提 用を見直して、効率的な熱利 ともいうべき今の温泉の熱利   「無駄遣いの象徴」   ばと考えております。 向けて取り組んでいかなけれ もに、モニタリングの普及に ングの重要性を認識するとと    岡野改めて温泉モニタリ

たいと思います。 ざまな場面で発信をしていき 公開の必要性について、さま タリング結果の情報の共有・ モニタリングの重要性、モニ がモニタリングです。今後も、 ません。そこで重要になるの 続的に利用できなければなり エネルギーというからには継 てはいけませんし、再生可能 温泉という地域資源を損なっ につながると思います。また、 の理解を深め、結果的に促進 可能エネルギーに対する地域 に活用していくことが、再生 くことや、収益を地域づくり の資源として地産地消してい エネルギーの導入です。地域 と連携した秩序ある再生可能 切だと思っているのは、地域 取り組んでおります。私が大 向けて、スピード感を持って 再生可能エネルギーの導入に 社会の実現に向け、政府では 50年カーボンニュートラル   奥村  大変お時間も経過してきました。僭越ですが、コーディネーターの立場で、まとめをしたいと思います。

  まず、温泉のモニタリング施設は、なくてはならない施設ですが、これまで十分整備されていないのが現状であることが分かりました。

  そして、今後これを急速に整備していく上で、国や地方自治体による支援が必要ではないかとの意見も出されました。環境省でもこのことを踏まえて、ご対応をお願いしたいと思います。

  また、このデータをどう使っていくか、またどう情報公開していくか、中立的なデータ解析や運営等、社会システムについても考えなければならないとのご意見がありました。

  環境省では、

いかと考えます。 大きな役割を果たすのではな その際にこのモニタリングが に守りつつ対応していくか、 が、その際、温泉資源をいか いかれることになるわけです てあらゆる施策を総動員して ニュートラルの実現に向かっ 50年カーボン   活発なご議論をいただき、実り多いシンポジウムとなったのではないかと考えています。この論議をぜひ、行政にも生かしていただき、また現場での取り組みにも生かしていただければと思います。

  最後に、今厳しい状況にある温泉地ではありますが、温泉地の再生、復興を願って、この会を閉じたいと思います。ありがとうございました。

佐   藤 遠   藤 岡   野

佐藤 好億

遠藤 淳一

岡野 隆宏

写真2 産総研が開発した温泉モニタリング装置

温泉の温暖化対策研究会・紙上シンポジウム

図2 湧出形態別湧出量の推移

図3 施設数の推移

【特集企画】

Referensi

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