式の導出 0.平板−平板間の電気二重層を考える。
1.まず、片側の二重層のみを考える
拡散層中のイオンの濃度はボルツマン分布に従う
=
+ −
++
kT
e n z
n ψ
0
exp
(1)
=
−
−−
kT
e n z
n ψ
0
exp
n: 拡散層中のイオンの個数濃度 n0: バルク溶液中のイオンの個数濃度 z: イオンの価数
k: ボルツマン定数 T: 温度
ψ: 問題にしている点における電位
+,-: 陽イオン、陰イオンを表す
表面の電位:ψ0は電位決定イオンのバルク活量cによって、
0
0
ln
c c zF
= RT ψ
(2) R: 気体定数
c0: c at ψ0 = 0
拡散層内における電位は、Poissonの式
0 2
2 2 2 2 2
) (grad
div ε ε
ρ ψ
ψ ψ ψ
ψ
z
ry
x = −
∂ + ∂
∂ + ∂
∂
= ∂
=
∆
(3) を基礎にして求められる。
εr: 溶液の比誘電率 ε0: 真空の誘電率
ρ: 電荷密度
は、対称型電解質(
z
+= z
−= z , n
0+= n
0−= n
)に対して、
−
=
−
−
=
−
=
+ −kT nze ze
kT ze kT
nze ze n n ze
ψ
ψ ψ
ρ
sinh 2
exp exp
) (
(4) 従って、
平板電気二重層に対する、Poisson-Boltzmann式は、(3),(4)式からx方向だけを考えて
kT ze nze
dx d
r
ψ ε
ε
ψ 2 sinh
0 2
2
=
(5) (5)式を積分して、
) 4 exp(
4 tanh
tanh
0x
kT ze kT
ze ψ ψ κ
−
=
(6)
<< 1 kT
ze ψ
なら、(5)式は、ψ ψ κ
22 2
dx = d
(7)
ただし、
kT e nz
r 0 2 2
2
2
ε κ = ε
(8) 25℃水溶液では特に
c
9
z 10 3 . 3 ×
κ =
(9)このκは、Debye-Huckelパラメータと呼ばれる。
(7)式を解くと、
)
0
exp( κ x ψ
ψ = −
(10)一方、表面電荷密度σは電気性中性の原理から、
∫
∞−
=
−
=
00
σ
dρ dx
σ
(11)σd: 底面が単位面積の液体柱に含まれる拡散層の全電荷 (4)式を使うと、
0 0
0
=
−
=
x
r
dx
d ψ ε ε σ
(12) (10)、(12)から、
0 0
0
ε ε κψ
σ =
r (13)σ0の厳密解は、
=
kT kT ze
n
rsinh 2 ) 8
(
0 12 00
ε ψ ε σ
(14)
2. 次に平板電気二重層間の相互作用を考える
溶液中の2枚の平行平板(板間距離: h)に 作用する力Pは
O
E
P
P
P = +
(15)静電気成分 + 浸透圧成分
(電気力線により内側に引かれる力)+
(対イオンの浸透圧により外側へ押される力)
nkT kT
n n P
dx P d
O r E
2 ) (
2
2 0
− +
=
−
=
− +
ψ ε ε
(16)
POは常にPEよりも大きく、板は反発力を受ける 板の接近過程で表面の電位ψ0が変化しなければ、
PEの寄与を無視して、(1)と(16)のPOの式から、
板の受ける反発力PR(h)は単位面積あたり
(このときの考え方は、2つの平板の丁度中間の 面と無限遠の面を考え、中間の面上では、対称性 から電場は零、無限遠の平面でも電場は零である から、浸透圧成分のみを考えればよい、というこ とになる)
−
= 2 cosh 1
)
(
/2kT nkT ze
h
P
Rψ
h(17) ψ2/h: 板間の中央における電位
相互作用が弱ければ、ψh/2は単独の電気二重層の
電位ψs(h/2)の2倍と考えて、
kT ze
kT ze
kT
ze ψ / 4 << 1 then tanh( ψ / 4 ) ≅ ψ / 4
より、(6)式から、
(この近似は、後述するように、
ψ<20 mVのとき成立する)
−
= 8 exp 2
) 2 / (
h ze
kT
h
γ κ
ψ
(18)
=
kT ze tanh 4 ψ
0γ
(19)
(17)式で
2 2 / 2
/
/ kT 1 then P ( h ) nkT { ze / kT }
ze ψ
h<<
R≅ ψ
hより、これに(18)式を代入して、
(この近似は、κh>1、つまり、hが電気二重層の厚さ よりも長いところで成り立つ
近似には cosh y ≅ 1 + y2 を使用した)
すると、
) exp(
64 )
( h nkT
2h
P
R= γ − κ
(20)従って、平板間の電気二重層の相互作用エネルギーは
) 64 exp(
) ( )
( nkT
2h
dh h P h
V
R h Rγ κ
κ −
=
−
= ∫∞ (21)
3. Derjaguin近似から球形粒子の相互作用力へ
Derjaguin近似:
半径a1とa2の球形粒子の最近接距離Hのとき
(H<<a1,a2)
) ( 2
) (
2 1
2
1
V H
a a
a H a
P
R
R
= π +
(22) (21)と(22)よりa1=a2=aのとき、
) 64 exp(
)
( ankT
2h
H
P
Rγ κ
κ
π −
=
(23) 従って、半径aの球形粒子の相互作用エネルギーは
) 64 exp(
) ( )
(
2
2
h
ankT dH H P H
V
R H Rκ κ γ
π −
=
−
= ∫∞
(24) いま、
kT ze
kT ze
kT
ze ψ
0/ 4 << 1 then tanh( ψ
0/ 4 ) ≅ ψ
0/ 4
のとき、(23),(24)式は
(zeψ0=4kTは、1:1電解質で25℃で、
ψ0=103 mVのとき成立、
ψ0=20 mV以上では、zeψ0/4kTとtanh{ zeψ0/4kT}に、
1%以上のずれが生じる
ので、20mV以下でこの近似は成り立つとしてよい)
) exp(
2 )
( H a
0 02h
P
R= π ε
rε κψ − κ
(25)) exp(
2 )
( H a
0 02h
V
R= π ε
rε ψ − κ
(26)(13)式を使うと、
) 2 exp(
) (
0 2
a H H
P
r
R
κ
ε κε
σ
π −
=
(27)
) 2 exp(
) (
0 2
2
a H H
V
r
R
κ
ε ε κ
σ
π −
=
(28)
3. 全相互作用力、ポテンシャル
これらと、van der Waals力の近似式
12
2)
( H
H aA P
A= −
(29)
H H aA
V
A) 12 ( = −
(30)
AはHamaker定数
をそれぞれ足しあわせると、全相互作用力、ポテンシャルとして、
2 0
2
) 12 2 exp(
)
( H
H aA H a
P
r
T
= − κ −
ε κε
σ π
(31)
H H aA H a
V
r
T
2 exp( ) 12
) (
0 2
2
−
−
= κ
ε ε κ
σ π
(32)
が得られる。
あるいは、
H h aA a
H
V
T r) 12 exp(
2 )
( = π ε ε
0ψ
02− κ −
(33)であり、通常は、これらの式を使用する。
4. 式の意味を考えよう!
(33)式の第1項は、静電的反発力による反発エネルギー、第2項は引き合うエネルギーであ り、両者の関係による最終的に、粒子同士が反発するかどうかが決まる。
第1項を支配するのは、exp内のκである。この数値によって、反発エネルギーの粒子間距 離依存性が決まる。κは
kT e nz
r 0 2 2
2
2
ε κ = ε
と書けるので、
イオン濃度 nが増加すると、κは増加する イオンの価数 zが増加すると、κは増加する ことがわかり、結局、
イオン濃度 nが増加すると、同じ距離で比較した場合の反発エネルギーは減少する イオンの価数 zが増加すると、同じ距離で比較した場合の反発エネルギーは減少する
ζ ζ
ζ電位は減少する ψ0
スリップ面
距離
図の赤い矢印方向に拡散二重層は圧縮する。つまり、スリップ面の電位=ζ電位も減少す る。ということは、実際にはある距離の電位が低くなることから、粒子は接近しやすくな ることを意味している。