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生命保険契約と国際私法

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Academic year: 2023

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生 命 保 険 契 約 と 国 際 私 法

- 外 国 人 を 保 険 契 約 者 等 と す る 生 命 保 険 契 約 に 対 す る 法 の 適 用 に 関 す る 通 則 法 の 適 用 関 係 を 中 心 に -

矢 野 慎 治 郎

■ ア ブ ス ト ラ ク ト

我 が 国 に お け る 外 国 人 の 増 加 に 伴 い 、 今 後 、 日 本 の 生 命 保 険 会 社 が 引 き 受 け る 生 命 保 険 契 約 に お い て 、 外 国 人 を 保 険 契 約 者 等 と す る 生 命 保 険 契 約 が 増 加 し て い く 可 能 性 が あ る 。 そ こ で 、 当 該 契 約 に か か る 法 律 関 係 に す べ か ら く 日 本 法 が 適 用 さ れ る の か 、 と い う こ と を 中 心 に 検 討 し た 。

法 の 適 用 に 関 す る 通 則 法 に 照 ら し て 、当 該 契 約 の 成 立 及 び 効 力 に つ い て は 、 通 常 、 日 本 法 が 適 用 さ れ る と 考 え ら れ る 。 一 方 で 、 生 命 保 険 契 約 の 約 款 上 、 そ の 成 立 及 び 効 力 の 準 拠 法 を 日 本 法 と す る 旨 の 条 項 を 手 当 て し た と し て も 、 一 定 の 場 合 に お け る 保 険 契 約 者 等 の 行 為 能 力 、 遺 言 に よ る 保 険 金 受 取 人 の 変 更 に か か る 遺 言 自 体 の 成 立 及 び 効 力 や 保 険 金 受 取 人 の 死 亡 に よ り 新 た に 保 険 金 受 取 人 と な る 「 相 続 人 」 概 念 等 、 当 該 契 約 に 密 接 に か か わ る い く つ か の 法 律 関 係 に お い て 、 日 本 法 が 適 用 さ れ な い 場 合 が あ る と 考 え ら れ る 。

ま た 、 民 事 訴 訟 法 上 の 国 際 裁 判 管 轄 ル ー ル に 照 ら し て 、 一 定 の 根 拠 に よ り 当 該 契 約 に つ い て 日 本 に 裁 判 管 轄 権 が 認 め ら れ る と 考 え ら れ る が 、 外 国 が 裁 判 管 轄 権 を 有 す る 場 合 も あ り 得 、 そ の 場 合 は 、 日 本 で 裁 判 が 行 わ れ る 場 合 と は 適 用 さ れ る 国 の 法 が 異 な り 得 る 。 当 該 契 約 が か か わ る 差 押 や 倒 産 手 続 き に つ い て も 同 様 の こ と が い え る 。

■ キ ー ワ ー ド

外 国 人 を 保 険 契 約 者 等 と す る 生 命 保 険 契 約 、 法 の 適 用 に 関 す る 通 則 法 、 国 際 裁 判 管 轄

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2 1 . は じ め に

日 本 の 生 命 保 険 会 社 ( 以 下 、 保 険 業 法 第 3 条 第 4 項 の 生 命 保 険 業 免 許 を 受 け た 会 社 を 念 頭 に 置 く 。) は 、 日 本 国 内 で 生 命 保 険 契 約 の 引 受 け を 行 う た め 、 大 半 の 保 険 契 約 者 は 日 本 人 で あ る が 、 日 本 に 定 住 す る 外 国 人 等 、 一 定 の 外 国 人 も 、保 険 契 約 者 、被 保 険 者 ま た は 保 険 金 受 取 人 と な る 場 合 が あ り 得 る1と こ ろ 、 外 国 人 労 働 者 の 受 け 入 れ を 拡 大 す べ く 新 た な 在 留 資 格 と し て 「 特 定 技 能 1 号 」( 日 本 へ の 在 留 期 間 は 最 長 5 年 ま で ) と 「 特 定 技 能 2 号 」( 更 新 す れ ば 在 留 期 間 の 上 限 な し )を 創 設 し た 改 正 出 入 国 管 理 及 び 難 民 認 定 法( 以 下 、「 改 正 入 管 法 」と い う 。)2が 、2 0 1 9 年 4 月 1 日 に 施 行 さ れ た こ と も 相 ま っ て 、 今 後 、 日 本 の 生 命 保 険 会 社 が 引 き 受 け る 生 命 保 険 契 約 に お い て 、 外 国 人 を 保 険 契 約 者 等 と す る 生 命 保 険 契 約 が 増 加 し て い く 可 能 性 が あ る と 考 え ら れ る 。 こ の よ う な 環 境 を 念 頭 に 置 く と 、 当 該 契 約 に か か る 法 律 関 係 に つ い て も 、 す べ か ら く 日 本 法 が 適 用 さ れ る ( 日 本 法 が 準 拠 法 と な る ) の か 、 そ う で な い と す れ ば 、 そ れ は ど の よ う な 場 合 に 、 ど の よ う な 関 係 に お い て 生 じ る の か 、 と い う こ と を 検 討 す る こ と に は 相 応 の 意 義 が あ る の で は な い か と 考 え ら れ る 。 そ こ で 、 本 稿 で は 、 主 と し て 、 準 拠 法 決 定 ル ー ル を 定 め る 日 本 の 国 際 私 法

( 法 の 適 用 に 関 す る 通 則 法 ) を 取 り 上 げ 、 外 国 人 を 保 険 契 約 者 等 と す る 生 命 保 険 契 約 に 対 す る 法 の 適 用 に 関 す る 通 則 法 の 適 用 関 係 を 中 心 に 検 討 す る こ と と す る 。 以 下 、 ま ず は 国 際 私 法 と は 何 か に つ い て 概 説 ( → 2 ) し た う え で 、 関 係 す る 日 本 の 国 際 私 法 上 の ル ー ル を 確 認 し な が ら 、 順 次 、 外 国 人 を 保 険 契 約 者 等 と す る 生 命 保 険 契 約 の 準 拠 法( → 3 )、そ の 他 当 該 契 約 に 密 接 に か か わ る 法 律 関 係 の 準 拠 法 ( → 4 ) を 検 討 し た 後 、 当 該 契 約 の 国 際 裁 判 管 轄 ( 当 該 契 約 に つ い て 日 本 に 裁 判 管 轄 権 が 認 め ら れ る か )に つ い て も 若 干 考 察( → 5 ) し 、 最 後 に 検 討 の ま と め ( → 6 ) を 行 う 。

1 例 え ば 、 住 友 生 命 で は 、 現 状 、 日 本 在 住 の 外 国 人 が 保 険 契 約 者 と な る ケ ー ス に つ い て は 、 重 要 事 項 や 契 約 内 容 等 を ご 理 解 い た だ け る 日 本 語 理 解 力 が あ り 、 保 険 契 約 期 間 に わ た り 日 本 に 在 留 さ れ る 見 込 み が 確 認 で き た 場 合 に 、 保 険 契 約 の 引 受 判 断 を 行 っ て い る ( 住 友 生 命 H P 「 平 成 2 9 年 定 時 総 代 会 質 疑 応 答 の 要 旨 」 参 照 )。

2 「 特 定 技 能 」 制 度 に つ い て は 、 山 中 政 法 ・ 佐 藤 義 一 ・ 福 山 和 昭 『 改 正 入 管 法 の ポ イ ン ト - 外 国 人 材 の 受 入 れ と 在 留 資 格 「 特 定 技 能 」』( 法 律 情 報 出 版 ・2 01 9) 等 参 照 。

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3 2 . 国 際 私 法 と は

法 律 関 係 の 当 事 者 の 国 籍 ・ 住 所 ・ 契 約 締 結 地 ・ 履 行 地 ・ 目 的 物 の 所 在 地 な ど 、 法 律 関 係 を 構 成 し て い る 諸 要 素 が 複 数 の 国 に 関 係 を も つ よ う な も の を 渉 外 的 法 律 関 係 と い う 。国 際 私 法 は 、国 際 社 会 に 異 な る 法 制 度 を 有 す る 国 等( 法 域 )が 併 存 す る こ と を 前 提 に 、渉 外 的 法 律 関 係 に つ い て 、法 律 関 係 の 類 型( 単 位 法 律 関 係 ) ご と に 、 適 用 さ れ る べ き 法 域 の 法 ( 準 拠 法 ) を 決 定 す る ル ー ル で あ る 。 国 際 私 法 は 、 一 部 の 例 外 を 除 き 、 各 国 で 内 容 が 異 な る 国 内 法 と し て 存 在 し て お り 、 日 本 の 国 際 私 法 の 基 本 法 典 は 、 法 の 適 用 に 関 す る 通 則 法 ( 2 0 0 7 年 1 月 1 日 施 行 。 以 下 、「 通 則 法 」 と い う 。) で あ る 。 通 則 法 は 、 従 前 の 日 本 の 国 際 私 法 で あ る 「 法 例 」 に つ い て 、 現 在 の 社 会 経 済 情 勢 に 適 合 し 国 際 的 に 調 和 の と れ た 内 容 と す べ く 、 取 引 関 係 の 規 定 を 中 心 に 内 容 を 改 め る と と も に 、 法 律 名 を 含 め て 全 体 を 現 代 語 化 し た も の で あ る3

通 則 法 の 条 文 は 、 単 位 法 律 関 係 の 部 分 と 、 連 結 点 に よ っ て 準 拠 法 を 指 定 す る 部 分 か ら で き て い る 。例 え ば 、通 則 法 第 3 6 条 で は 、「 相 続 は 、被 相 続 人 の 本 国 法 に よ る 。」と 定 め ら れ て お り 、「 相 続 」が 単 位 法 律 関 係 、「 被 相 続 人 の 本 国 」( = 国 籍 の 所 属 国 ) が 連 結 点 で 、「 被 相 続 人 の 本 国 法 」 が 準 拠 法 と な る 。 こ の 準 拠 法 の 決 定 が 国 際 私 法 の 役 割 で あ り 、 被 相 続 人 の 相 続 に か か わ る 具 体 的 な 権 利 義 務 関 係 は 、 準 拠 法 と し て 指 定 さ れ た 被 相 続 人 の 本 国 の 民 法 ( 相 続 法 ) で 規 律 さ れ る こ と に な る4

こ の よ う に 、 国 際 私 法 は 、 民 法 や 商 法 の よ う に 権 利 義 務 や 法 律 関 係 を 直 接 に 規 律 す る 法 ( 実 質 法 ) で は な く 、 複 数 の 法 域 の 中 か ら い ず れ か の 法 域 の 実 質 法 を 指 定 す る 法 ( 牴 触 法 ) で あ る 。 ま た 、 国 際 私 法 は 、 そ の 準 拠 法 決 定 ル ー ル か ら 当 事 者 が 任 意 に 逸 脱 す る こ と を 認 め な い と い う 意 味 で 強 行 規 範 で あ る5

3 澤 木 敬 郎 ・ 道 垣 内 正 人 『 国 際 私 法 入 門 [ 第 8 版 ]』 1 ~5 頁 ・1 0頁 ( 有 斐 閣 双 書 ・ 2 0 1 8)、 小 出 邦 夫 編 著 『 一 問 一 答 新 し い 国 際 私 法 - 法 の 適 用 に 関 す る 通 則 法 の 解 説 - 』 1 5~1 7頁 ( 商 事 法 務 ・20 0 6) 参 照 。

4 松 岡 博 編 『 国 際 関 係 私 法 入 門 [ 第 4 版 ]』1 921 頁 [ 高 杉 直 ]( 有 斐 閣 ・2 0 1 9) 参 照 。

5 澤 木 ・ 道 垣 内 ・ 前 掲 ( 注 3 ) 7 ~ 8 頁 参 照 。

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通 則 法 の よ う な 準 拠 法 の 決 定 を 任 務 と す る 法 分 野 は 「 狭 義 の 国 際 私 法 」 と い わ れ る が 、い か な る 国 の 裁 判 所 で そ の 事 件 を 処 理 す べ き か( 国 際 裁 判 管 轄 )、

外 国 判 決 は 日 本 で ど の よ う な 効 力 が 認 め ら れ る か ( 外 国 判 決 の 承 認 ・ 執 行 )、

外 国 に も 資 産 が あ る よ う な 者 の 倒 産 処 理 を ど の よ う に 扱 う べ き か 、 と い っ た 問 題 の 解 決 を 任 務 と す る 法 分 野 は 国 際 民 事 手 続 法 ( 国 際 民 事 訴 訟 法 ) と 呼 ば れ 、両 者 を 併 せ て「 広 義 の 国 際 私 法 」と い う こ と が あ る6。国 際 民 事 手 続 に つ い て も 、 一 部 を 除 い て 、 各 国 の 国 内 法 で 規 律 さ れ て い る 。 日 本 の 国 内 法 と し て は 、 民 事 訴 訟 法 ( 第 3 条 の 2 ~ 第 3 条 の 1 2 ・ 第 3 3 条 ・ 第 1 0 8 条 ・ 第 1 1 8 条 ・ 第 1 8 4 条 等 )、 民 事 執 行 法 ( 第 2 2 条 ・ 第 2 4 条 )、 破 産 法 ( 第 3 条・第 4 条 )、外 国 倒 産 処 理 手 続 の 承 認 援 助 に 関 す る 法 律 等 が あ り 、国 際 裁 判 管 轄 の 問 題 に つ い て は 、 か つ て は 明 文 の 規 定 が な く 判 例 が 法 源 的 な 役 割 を 果 た し て き た が 、 2 0 1 1 年 の 民 事 訴 訟 法 改 正 に よ り 明 文 の 規 定 が 設 け ら れ た ( 民 事 訴 訟 法 第 3 条 の 2 ~ 第 3 条 の 1 2 )7

以 上 の よ う に 、 広 義 ・ 狭 義 と も 国 際 私 法 は 基 本 的 に 国 内 法 で あ る た め 、 民 事 訴 訟 法 上 の 国 際 裁 判 管 轄 ル ー ル や 通 則 法 は 、 実 際 上 は 、 日 本 で 訴 訟 が 提 起 さ れ た 場 合 に 適 用 さ れ 、外 国 で 訴 訟 が 提 起 さ れ た 場 合 に は 、当 該 外 国 の 広 義・

狭 義 の 国 際 私 法 が 適 用 さ れ る こ と に な る8

通 則 法 は 、制 定 時 に 実 質 改 正 が あ っ た 条 文 に つ い て は 、旧 法 主 義 を 採 用( 施 行 日 前 に 生 じ た も の に つ い て は 「 法 例 」 を 適 用 ) す る こ と と し て い る ( 通 則 法 附 則 第 3 条 ) が 、 本 稿 で は 、 外 国 人 を 保 険 契 約 者 等 と す る 生 命 保 険 契 約 の 今 後 の 増 加 の 可 能 性 を 念 頭 に 検 討 す る た め 、 以 下 で は 、 通 則 法 ・ 保 険 法 施 行 下 で 締 結 さ れ る 当 該 契 約 を 念 頭 に 検 討 を 進 め る こ と と す る9

6 澤 木 ・ 道 垣 内 ・ 前 掲 ( 注 3 ) 6 頁 ・2 5 7 頁 参 照 。

7 松 岡 編 ・ 前 掲 ( 注 4 ) 7 ~ 8 頁 [ 松 岡 博 ] 参 照 。

8 松 岡 編 ・ 前 掲 ( 注 4 ) 6 ~ 8 頁 [ 松 岡 博 ]、 阿 部 耕 一 『 国 際 私 法 と 銀 行 取 引 - 「 法 の 適 用 に 関 す る 通 則 法 」 と 銀 行 実 務 - 』( 経 済 法 令 研 究 会 ・2 00 91 1 頁 参 照 。

9 外 国 居 住 者 を 保 険 契 約 者 兼 被 保 険 者 と す る 生 命 保 険 契 約 の 準 拠 法 に つ い て 、 通 則 法 施 行 下 の み な ら ず 、 法 例 施 行 下 で 締 結 さ れ た 契 約 に つ い て も 検 討 す る も の と し て 、 吉 澤 卓 哉 「 外 国 居 住 者 を 保 険 契 約 者 兼 被 保 険 者 と す る 生 命 保 険 契 約 の 準 拠 法 - 東 京 地 判 平 成 2 5 5 3 1 日 を 素 材 と し て - 」 生 命 保 険 論 集 1 9 9 3 56 8 頁 (2 0 17 . 6)。

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3 . 外 国 人 を 保 険 契 約 者 等 と す る 生 命 保 険 契 約 の 準 拠 法

( 1 ) 生 命 保 険 契 約 の 成 立 及 び 効 力 の 準 拠 法

ⅰ ) 契 約 の 成 立 及 び 効 力 に 関 す る 通 則 法 上 の ル ー ル イ . 原 則 的 な ル ー ル

生 命 保 険 契 約 の よ う な 、 債 権 的 な 契 約 を 典 型 と す る 法 律 行 為 の 成 立 及 び 効 力 の 原 則 的 な 準 拠 法 決 定 ル ー ル は 、 通 則 法 第 7 条 及 び 第 8 条 に 規 定 さ れ て い る 。 具 体 的 に は 、 法 律 行 為 の 成 立 及 び 効 力 に つ い て は 、 当 事 者 が 法 律 行 為 の 当 時 に 選 択 し た 地 の 法 が 準 拠 法 と な り( 通 則 法 第 7 条 )、当 事 者 に よ る 準 拠 法 の 選 択 が な い 場 合 に は 、 法 律 行 為 の 当 時 に お け る 当 該 法 律 行 為 の 最 密 接 関 係 地 法 が 準 拠 法 と な る( 同 第 8 条 第 1 項 )。後 者 の 場 合 に 、特 徴 的 な 給 付 を 当 事 者 の 一 方 の み が 行 う 法 律 行 為 で あ れ ば 、 そ の 給 付 を 行 う 者 の 常 居 所 地 法 ( そ の 者 が 事 業 者 の 場 合 は 事 業 所 の 所 在 地 法 ) が 当 該 法 律 行 為 の 最 密 接 関 係 地 法 と 推 定 さ れ る ( 同 第 8 条 第 2 項 )。

こ こ に い う「 法 律 行 為 の 成 立 及 び 効 力 」に つ い て 、契 約 を 念 頭 に 置 く と 、

「 契 約 の 成 立 」 に は 、 申 込 み や 承 諾 の 意 思 表 示 に 瑕 疵 が な い か 、 い か な る 意 思 表 示 が 申 込 み や 承 諾 と な る か 、 意 思 表 示 の 効 力 発 生 時 は 発 信 時 か 到 達 時 か 等 、 契 約 が 有 効 に 成 立 す る た め に 必 要 と さ れ る 要 件 に 関 す る 問 題 が 含 ま れ 、「 契 約 の 効 力 」に は 、成 立 し た 契 約 か ら 生 じ る 具 体 的 な 権 利 義 務 の 内 容 、債 務 不 履 行 の 場 合 の 効 果 等 の 問 題 が 含 ま れ る1 0。よ っ て 、生 命 保 険 契 約 で あ れ ば 、 そ の 申 込 み や 承 諾 の ほ か 、 被 保 険 者 同 意 の 要 否 や 保 険 契 約 者 側 の 告 知 義 務 の よ う な 生 命 保 険 契 約 の 成 立 に 関 す る 問 題 と 、 生 命 保 険 契 約 上 の 具 体 的 な 権 利 義 務( 保 険 契 約 者 の 保 険 料 支 払 義 務・保 険 金 受 取 人 変 更 権・

解 約 権 、 保 険 金 受 取 人 の 死 亡 の 場 合 の 取 扱 い 、 保 険 金 受 取 人 の 介 入 権 、 保 険 会 社 の 保 険 給 付 義 務 と そ の 免 責 事 由 ・ 告 知 義 務 違 反 に よ る 解 除 権 等 ) の 内 容 や 債 務 不 履 行 の 場 合 の 効 果( 保 険 料 未 払 い に よ る 生 命 保 険 契 約 の 失 効・

1 0 澤 木 ・ 道 垣 内 ・ 前 掲 ( 注 3 )1 7 81 7 9 頁 、 松 岡 編 ・ 前 掲 ( 注 4 )1 0 31 0 4 頁 [ 松 永 詩 乃 美 ]、 櫻 田 嘉 章 ・ 道 垣 内 正 人 編 『 注 釈 国 際 私 法 第 1 巻 - 法 の 適 用 に 関 す る 通 則 法 第 1 条 ~ 第 2 3 条 』(有 斐 閣 ・2 0 1 1 ) 18 5 頁 [ 中 西 康 ] 参 照 。

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解 除 、 保 険 給 付 の 履 行 期 徒 過 に よ る 遅 延 利 息 の 支 払 い ) 等 に 関 す る 問 題 に 適 用 さ れ る 原 則 的 な 準 拠 法 が 、 通 則 法 第 7 条 お よ び 第 8 条 で 決 定 さ れ る と 考 え ら れ る 。

通 則 法 第 7 条 に い う 当 事 者 に よ る 準 拠 法 の 選 択 に つ い て 、 例 え ば 、 当 事 者 が 契 約 書 に 「 本 契 約 の 準 拠 法 は A 国 法 と す る 」 と い う 条 項 を 置 い て い れ ば 、 当 事 者 が A 国 法 を 準 拠 法 に 選 択 し た こ と に な る が 、 そ の よ う な 明 示 的 な 条 項 が な く て も 、 黙 示 の 意 思 に よ る 準 拠 法 選 択 ( 黙 示 的 な 準 拠 法 選 択 の 合 意 や 、 各 当 事 者 の 内 心 の 意 図 に よ る 同 じ 法 の 選 択 ) も 認 め ら れ る と 解 さ れ て い る1 1。な お 、損 害 保 険 契 約 の 約 款 に お い て は 、準 拠 法 が 日 本 法 で あ る こ と を 定 め る 条 項 が 置 か れ て い る の が 通 例 で あ る が 、 生 命 保 険 契 約 の 約 款 に お い て は 、 準 拠 法 を 定 め る 条 項 が 置 か れ て い な い の が 通 例 で あ る1 2

ま た 、 通 則 法 第 8 条 第 2 項 に い う 「 特 徴 的 な 給 付 」 と は 、 契 約 上 、 そ の 契 約 を 特 徴 づ け る 給 付 を い い 、 そ の 給 付 を 行 う 当 事 者 は 、 保 険 契 約 で あ れ ば 保 険 者 が 該 当 す る と 考 え ら れ る1 3

ロ . 消 費 者 契 約 の 特 例

契 約 が 消 費 者 契 約1 4で あ る 場 合 に お け る そ の 成 立 及 び 効 力 の 特 例 が 、 通 則 法 第 1 1 条 に 規 定 さ れ て い る 。 具 体 的 に は 、 当 事 者 に よ る 準 拠 法 の 選 択 が あ る 場 合 に お い て 、 そ の 準 拠 法 が 消 費 者 の 常 居 所 地 法 以 外 の 法 で あ っ て も 、 消 費 者 が そ の 常 居 所 地 法 中 の 特 定 の 強 行 規 定 を 適 用 す べ き 旨 の 意 思 表 示 を 事 業 者 に し た と き は 、 消 費 者 契 約 の 成 立 及 び 効 力 に 関 し そ の 強 行 規 定 が 重 畳 適 用 さ れ( 同 第 1 1 条 第 1 項 )、当 事 者 に よ る 準 拠 法 の 選 択 が な い 場 合 に お い て は 、 同 第 8 条 に か か わ ら ず 、 消 費 者 契 約 の 成 立 及 び 効 力 の 準 拠

1 1 澤 木 ・ 道 垣 内 ・ 前 掲 ( 注 3 )1 7 4 頁 ・1 7 9 頁 。

1 2 山 下 友 信 『 保 険 法 ( 上 )』1 9 7 頁 ( 有 斐 閣 ・2 0 1 8)。

1 3 澤 木 ・ 道 垣 内 ・ 前 掲 ( 注 3 )1 8 3 頁 ~1 8 4 頁 。

1 4 消 費 者 ( 個 人 ( 事 業 と し て 又 は 事 業 の た め に 契 約 の 当 事 者 と な る 場 合 に お け る も の を 除 く ) と 事 業 者 ( 法 人 そ の 他 の 社 団 又 は 財 団 及 び 事 業 と し て 又 は 事 業 の た め に 契 約 の 当 事 者 と な る 場 合 に お け る 個 人 ) と の 間 で 締 結 さ れ る 契 約 ( 労 働 契 約 を 除 く ) を 指 す ( 通 則 法 第 1 1 条 第 1項 )。

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法 は 、消 費 者 の 常 居 所 地 法 と な る( 同 第 1 1 条 第 2 項 )。も っ と も 、事 業 者 の 事 業 所 が 消 費 者 の 常 居 所 地 と 法 を 異 に す る 地 に 所 在 し た 場 合 で あ っ て 、 消 費 者 自 ら が 事 業 所 の 所 在 地 に 赴 い て 消 費 者 契 約 を 締 結 し た と き や 、 消 費 者 が 事 業 所 の 所 在 地 に お い て 消 費 者 契 約 に 基 づ く 債 務 の 全 部 の 履 行 を 受 け る こ と と さ れ て い た と き は 、 事 業 者 が 消 費 者 の 常 居 所 地 で そ の 勧 誘 を し た 場 合 を 除 き 、 同 第 1 1 条 第 1 項 ・ 第 2 項 は 適 用 さ れ ず 、 原 則 ど お り 同 第 7 条 及 び 第 8 条 に よ っ て 準 拠 法 が 決 定 さ れ る こ と と な る ( 同 第 1 1 条 第 6 項 第 1 号 ・ 第 2 号 )。

こ こ に い う 「 常 居 所 」 と は 、 国 際 私 法 に お け る 準 拠 法 決 定 の た め に ハ ー グ 国 際 私 法 会 議 で 創 設 さ れ た habi tual r esidence と い う 概 念 の 日 本 語 訳 で あ り 、 そ の 定 義 は 同 会 議 や 通 則 法 で は 置 か れ て い な い が 、 単 な る 一 時 的 居 所 で は 不 十 分 で あ り 、 あ る 程 度 の 居 住 期 間 が 必 要 と さ れ る ほ か 、 居 住 期 間 の み で な く 、 居 住 目 的 や 居 住 状 況 な ど の 諸 要 素 を 総 合 的 に 考 慮 し て 判 断 す る こ と が 必 要 と さ れ て い る1 5。ま た 、戸 籍 事 務 の 取 扱 基 準 に 過 ぎ な い が 、 平 成 元 年 の 法 例 改 正 に 伴 う 法 務 省 民 事 局 長 通 達 ( 平 成 元 年 1 0 月 2 日 民 2 第 3900 号 通 達 と そ の 後 の 一 部 改 正 通 達 )の 常 居 所 認 定 基 準 で は 、外 国 人 で あ れ ば 、 そ の 在 留 資 格 に 応 じ て 、 永 住 目 的 ま た は こ れ に 類 す る 目 的 の 場 合 は 1 年 以 上 、 そ れ 以 外 の 滞 在 目 的 の 場 合 は 5 年 以 上 、 日 本 に 在 留 し て い る と き に は 、 日 本 に 常 居 所 が あ る も の と さ れ て お り 、 こ れ が 一 般 的 に 常 居 所 の 有 無 を 判 断 す る 際 に も 参 考 に な る と さ れ て い る1 6

通 則 法 第 1 1 条 第 1 項 に い う 「 強 行 規 定 」 と は 、 当 該 実 質 法 上 、 当 事 者 が そ の 意 思 に よ っ て 適 用 を 排 除 で き な い 規 範( い わ ゆ る 任 意 規 定 の 対 概 念 ) で あ り 、 日 本 法 で い え ば 、 保 険 法 上 の 片 面 的 強 行 規 定 の ほ か 、 消 費 者 契 約 法 の 規 定 や 、 金 融 商 品 の 販 売 等 に 関 す る 法 律 等 の い わ ゆ る 「 業 法 」 も 私 法 上 の 効 力 を も つ 限 り 、そ の 範 疇 に 入 る と さ れ て い る1 7。ま た 、同 項 に い う 強

1 5 澤 木 ・ 道 垣 内 ・ 前 掲 ( 注 3 )7 6 頁 、8 3頁 ~8 4 頁 。

1 6 澤 木 ・ 道 垣 内 ・ 前 掲 ( 注 3 )8 4 頁 ~8 5頁 、 道 垣 内 正 人 『 ポ イ ン ト 国 際 私 法 総 論

[ 第 2 版 ]』( 有 斐 閣 ・2 00 71 5 715 9 頁 。

1 7 櫻 田 ・ 道 垣 内 編 ・ 前 掲 ( 注 1 02 61頁 [ 西 谷 祐 子 ]、 山 下 ( 友 )・ 前 掲 ( 注 1 21 9 9

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行 規 定 適 用 の 意 思 表 示 は 、 契 約 締 結 時 で も 締 結 後 紛 争 が 生 じ て か ら で も よ く 、 裁 判 上 で も 裁 判 外 で も 、 ど の よ う な 伝 達 手 段 を 用 い て も 構 わ な い と さ れ て い る1 8

な お 、 通 則 法 第 1 1 条 第 6 項 に い う 「 勧 誘 」 と は 、 例 え ば 、 具 体 的 な 契 約 締 結 に 向 け て の 電 話 ・ ダ イ レ ク ト メ ー ル 等 の 個 別 的 な 勧 誘 や 、 特 定 の 外 国 の 消 費 者 を タ ー ゲ ッ ト と し た イ ン タ ー ネ ッ ト 上 の 広 告 等 、 事 業 者 に よ る 消 費 者 に 対 す る 具 体 的 か つ 積 極 的 な 働 き か け を 意 味 す る も の で あ り 、 イ ン タ ー ネ ッ ト 等 に よ る 事 業 者 の 一 般 的 な 広 告 は 該 当 し な い と さ れ て い る1 9

ⅱ ) 生 命 保 険 契 約 の 成 立 及 び 効 力 の 準 拠 法

以 上 を 踏 ま え 、 外 国 人 を 保 険 契 約 者 等 と す る 生 命 保 険 契 約 の 成 立 及 び 効 力 に 関 す る 問 題 に 適 用 さ れ る 準 拠 法 に つ い て 検 討 す る 。

ま ず 、 通 則 法 上 の 原 則 的 な ル ー ル と の 関 係 で は 、 前 述 の と お り 、 通 常 、 生 命 保 険 契 約 の 約 款 に は 準 拠 法 条 項 が な い た め 、 日 本 法 を 準 拠 法 と す る 旨 の 黙 示 の 意 思 に よ る 準 拠 法 選 択 ( 同 第 7 条 ) が あ る か ど う か を 考 え る こ と に な る 。 こ の 点 、 契 約 当 事 者 が 用 い る 約 款 が 特 定 国 の 法 制 度 を 前 提 に そ の 国 の 官 庁 の 認 可 を 受 け て い る 場 合 に は 、 そ の 特 定 国 の 法 を 準 拠 法 と す る 旨 の 黙 示 の 意 思 に よ る 準 拠 法 選 択 が あ っ た と 解 す べ き と す る 見 解2 0が あ る 一 方 で 、 認 可 を 得 た こ と を も っ て 常 に 黙 示 の 意 思 に よ る 準 拠 法 選 択 が あ っ た と は い え ず 、 日 本 に 永 住 す る 外 国 人 で あ れ ば 日 本 法 を 準 拠 法 と す る 黙 示 の 意 思 が 認 め ら れ や す い が 、 少 な く と も 一 時 的 に 日 本 に 居 住 す る 外 国 人 の 場 合 に は 、 そ の よ う な 意 思 が あ る と 一 般 的 に は 断 言 で き な い と す る 見 解2 1が あ る 。 後 者 の 見 解 に よ れ ば 、 例 え ば 、 保 険 契 約 者 で あ る 外 国 人 が 、 日 本 に 永 住 す る 場 合 や 改 正 入 管 法 上 の「 特 定 技 能 2 号 」( 在 留 期 間 の 上 限 な し )と

2 0 0 頁 。

1 8 澤 木 ・ 道 垣 内 ・ 前 掲 ( 注 3 )2 0 2 頁 、 小 出 邦 夫 編 著 『 逐 条 解 説 法 の 適 用 に 関 す る 通 則 法 の 解 説 [ 増 補 版 ]』( 商 事 法 務 ・2 0 1 5)1 38頁 。

1 9 澤 木 ・ 道 垣 内 ・ 前 掲 ( 注 3 )2 0 5 頁 、 小 出 編 著 ・ 前 掲 ( 注 3 )7 67 7 頁 。

2 0 櫻 田 ・ 道 垣 内 編 ・ 前 掲 ( 注 1 01 94頁 [ 中 西 康 ]。

2 1吉 澤 ・ 前 掲 ( 注 9 )4 8~4 9 頁 。

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し て 長 年 日 本 に 滞 在 す る よ う な 場 合 に は 、 日 本 法 を 準 拠 法 と す る 旨 の 黙 示 の 意 思 に よ る 準 拠 法 選 択 ( 同 第 7 条 ) が 認 め ら れ る と 考 え ら れ る が 、 仮 に 保 険 契 約 者 で あ る 外 国 人 が 、改 正 入 管 法 上 の「 特 定 技 能 1 号 」( 日 本 へ の 在 留 は 最 長 5 年 ま で ) で あ る よ う な 場 合 に は 、 そ の よ う な 黙 示 の 意 思 が 認 め ら れ な い 場 合 も あ り 得 る よ う に 思 わ れ る 。

黙 示 の 意 思 に よ る 準 拠 法 選 択 ( 同 第 7 条 ) が 認 め ら れ な い 場 合 に は 、 通 則 法 第 8 条 の 最 密 接 関 係 地 法 が 準 拠 法 と な る が 、 そ の 場 合 は 、 通 則 法 に い う 「 特 徴 的 な 給 付 」 を 行 う 保 険 会 社 の 事 業 所 の 所 在 地 法 で あ る 日 本 法 が 準 拠 法 と し て 推 定 さ れ る ( 同 第 8 条 第 2 項 ) と 考 え ら れ る 。

次 に 、 通 則 法 上 の 消 費 者 契 約 の 特 例 と の 関 係 で は 、 前 述 の 戸 籍 事 務 上 の 常 居 所 認 定 基 準 に よ れ ば 、 日 本 に 永 住 す る 外 国 人 や 5 年 以 上 日 本 に 滞 在 す る 改 正 入 管 法 上 の 「 特 定 技 能 2 号 」 の 外 国 人 で あ れ ば 、 日 本 が 常 居 所 地 と な る た め 、 通 則 法 第 1 1 条 第 1 項 ・ 第 2 項 を 考 慮 す る ま で も な く 、 強 行 規 定 も 含 め 、 日 本 法 が 準 拠 法 と な る と 考 え ら れ る 。

一 方 、 改 正 入 管 法 上 の 「 特 定 技 能 1 号 」( 日 本 へ の 在 留 は 最 長 5 年 ま で ) の 外 国 人 は 、 前 述 の 認 定 基 準 に よ れ ば 、 日 本 が 常 居 所 地 と な ら な い が 、 仮 に そ の よ う な 外 国 人 で あ っ た と し て も 、 保 険 会 社 の 事 業 所 の 所 在 地 た る 日 本 で 、 保 険 募 集 を 受 け 生 命 保 険 契 約 を 締 結 す る と 考 え ら れ る 。 ま た 、 生 命 保 険 契 約 の 約 款 に は 、会 社 の 本 社 等 で 保 険 金 等 を 支 払 う 旨 を 定 め て い る( 日 本 で 債 務 の 全 部 の 履 行 を 受 け る こ と と さ れ て い る ) の が 通 例 で あ る 。 常 居 所 地 が 日 本 と 異 な る 外 国 人 が 、 そ の 常 居 所 地 で 日 本 で の 契 約 締 結 や 保 険 金 等 の 支 払 い に つ い て の 勧 誘 ( 具 体 的 か つ 積 極 的 な 働 き か け ) を 保 険 会 社 側 か ら 受 け て い た 場 合 や 、 そ の 常 居 所 地 で イ ン タ ー ネ ッ ト に よ り 非 対 面 で 生 命 保 険 契 約 の 締 結 を 完 結 し 、 保 険 金 等 の 支 払 い も そ の 常 居 所 地 で 受 け る こ と と さ れ て い た 場 合2 2に は 、 消 費 者 契 約 の 特 例 ( 同 第 1 1 条 第 1 項 ・ 第 2 項 ) が 適 用 さ れ る こ と に な る が 、 か か る 取 引 は 、 世 界 の 多 く の 国 々 で 免 許

2 2 小 出 編 著 ・ 前 掲 ( 注 3 )7 8頁 参 照 。

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制 や 海 外 直 接 付 保 規 制 に よ り 原 則 禁 止 さ れ る 保 険 の 越 境 取 引 に 該 当 す る 懸 念 が あ る た め 、想 定 し 難 い と 考 え ら れ る2 3。よ っ て 、日 本 が 常 居 所 地 で な い 外 国 人 を 保 険 契 約 者 と す る 生 命 保 険 契 約 で も 、 通 則 法 第 1 1 条 第 6 項 第 1 号 ・ 第 2 号 に よ り 消 費 者 契 約 の 特 例 ( 同 第 1 1 条 第 1 項 ・ 第 2 項 ) の 適 用 は 除 外 さ れ 、 原 則 ど お り 、 通 則 法 第 7 条 ま た は 第 8 条 に よ り 日 本 法 が 準 拠 法 と 認 め ら れ 、 ま た は 推 定 さ れ る と 考 え ら れ る 。

な お 、 生 命 保 険 契 約 は 、 一 般 的 に 長 期 間 継 続 す る 契 約 で あ る た め 、 例 え ば 、 日 本 に 永 住 す る 目 的 で あ っ た り 改 正 入 管 法 上 の 「 特 定 技 能 2 号 」 と し て 長 年 日 本 に 滞 在 す る 目 的 で あ る よ う な 外 国 人 が 、 保 険 契 約 期 間 に わ た り 日 本 に 在 留 す る 見 込 み で 、 日 本 で 生 命 保 険 契 約 を 締 結 し た 後 、 締 結 時 の 見 込 み と 異 な り 契 約 継 続 中 に 外 国 に 移 住 す る と い う 事 態 が 起 こ り 得 る 。仮 に 、 改 正 入 管 法 上 の「 特 定 技 能 1 号 」( 日 本 へ の 在 留 は 最 長 5 年 ま で )の 外 国 人 が 保 険 契 約 者 と な れ ば 、 そ の 契 約 継 続 中 に 帰 国 す る こ と は 当 然 の 事 態 と も い え る 。 そ の よ う な 事 態 が 、 生 命 保 険 契 約 の 効 力 に 関 す る 問 題 に 適 用 さ れ る 準 拠 法 に ど の よ う な 影 響 を 与 え る で あ ろ う か 。

通 則 法 上 、法 律 行 為 の 成 立 及 び 効 力 の 準 拠 法 の 決 定 に つ い て は 、「 法 律 行 為 の 当 時( 契 約 で あ れ ば 、契 約 締 結 の 当 時 )」を 基 準 と し て お り 、契 約 締 結 後 相 当 期 間 が 過 ぎ て 契 約 に 基 づ く 給 付 や 当 事 者 間 で の 紛 争 が 生 じ た 後 な ど は 、社 会 通 念 上 法 律 行 為 が 行 わ れ た 時 点 と 同 視 で き な い こ と か ら 、「 法 律 行 為 の 当 時 」に は 該 当 し な い と さ れ て い る2 4。も っ と も 、定 期 保 険 等 の 保 険 期 間 が 更 新 す る タ イ プ の 生 命 保 険 契 約 の 場 合 、 日 本 の 保 険 法 上 、 生 命 保 険 契

2 3 吉 澤 ・ 前 掲 ( 注 9 )5 1~5 3頁 、 吉 澤 卓 哉 「 通 信 に よ る 保 険 の 越 境 取 引 に 関 す る 規 制 の 在 り 方 ( 2 完 )」 損 害 保 険 研 究 第 7 8巻 第 2 1 5~1 9頁 (2 0 1 6 . 8) 参 照 。 な お 、 保 険 契 約 の 締 結 を ネ ッ ト で 完 結 す る ラ イ フ ネ ッ ト 生 命 の H P ( よ く あ る ご 質 問 ) に は 、「 外 国 人 や 外 国 籍 で も 加 入 で き ま す か ? 」 と い う 質 問 に 対 し て 、「 外 国 籍 の 方 は 、 日 本 国 内 に 居 住 さ れ て い れ ば 、 お 申 し 込 み で き ま す 。 … 保 険 契 約 の 約 款 や 重 要 事 項 な ど の 表 記 、 コ ン タ ク ト セ ン タ ー と の 対 応 は 、 日 本 語 の み と な っ て い ま す 。 外 国 語 で の 対 応 は 取 扱 っ て お り ま せ ん 。 … 当 社 が 指 定 す る 本 人 確 認 書 類 を ご 提 出 し て い た だ き ま す 。」 と い う 回 答 が 記 載 さ れ て お り 、 越 境 取 引 を 想 定 し て い な い と 考 え ら れ る 。 ま た 、 同 社 の 生 命 保 険 契 約 の 約 款 に も 、 保 険 給 付 の 支 払 場 所 は 会 社 の 本 社 と す る 旨 が 規 定 さ れ て い る 。

2 4 小 出 編 著 ・ 前 掲 ( 注 3 )4 4頁 。

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約 の 更 新 は 契 約 の 締 結 と 同 視 で き る2 5た め 、 例 え ば 、 保 険 契 約 者 で あ る 外 国 人 が 、 生 命 保 険 契 約 の 更 新 時 に 外 国 に 居 住 し て い た 場 合 に つ い て は 、 別 途 検 討 が 必 要 と 考 え ら れ る 。

生 命 保 険 契 約 の 更 新 は 、 日 本 で 締 結 さ れ た 生 命 保 険 契 約 を 従 前 と 同 じ 内 容 で 継 続 す る も の で あ る ( な お 、 更 新 す る た め に 何 ら の ア ク シ ョ ン を 要 し な い 自 動 更 新 が 多 い ) た め 、 通 則 法 上 、 生 命 保 険 契 約 の 更 新 を 、 日 本 に お け る 生 命 保 険 契 約 の 締 結 と は 別 個 の 「 契 約 の 締 結 」 と い う 単 位 法 律 関 係 と と ら え る こ と 自 体 、 法 的 安 定 性 や 予 測 可 能 性 を 害 し か ね ず 、 妥 当 で な い と 考 え ら れ る 。 ま た 、 生 命 保 険 契 約 の 更 新 を 通 則 法 上 の 「 契 約 の 締 結 」 と と ら え る と す る と 、 前 述 の と お り 、 生 命 保 険 契 約 の 約 款 に は 、 会 社 の 本 社 等 で 保 険 金 等 を 支 払 う 旨 を 定 め て い る ( 日 本 で 債 務 の 全 部 の 履 行 を 受 け る こ と と さ れ て い る ) の が 通 例 で あ る た め 、 通 則 法 第 1 1 条 第 6 項 第 2 号 に よ り 、 消 費 者 契 約 の 特 例 ( 同 第 1 1 条 第 1 項 ・ 第 2 項 ) の 適 用 は 除 外 さ れ る と 考 え ら れ る 。 こ の 場 合 、 生 命 保 険 契 約 の 更 新 の 実 質 に 鑑 み る と 、 更 新 時 に 、 日 本 で 生 命 保 険 契 約 を 締 結 し た 際 の 準 拠 法 と 同 一 の 準 拠 法 に よ る こ と が 当 事 者 の 黙 示 の 意 思 に よ っ て 選 択 さ れ る ( 同 第 7 条 ) か 、 そ う で な い と す れ ば 、 日 本 で 生 命 保 険 契 約 を 締 結 し た 際 の 準 拠 法 が 最 密 接 関 係 地 法 と し て 適 用 さ れ る ( 同 第 8 条 ) こ と に な る と 考 え ら れ る2 6

よ っ て 、 生 命 保 険 契 約 締 結 後 の 居 住 地 国 の 変 更 は 、 通 則 法 上 、 生 命 保 険 契 約 の 効 力 に 関 す る 問 題 に 適 用 さ れ る 準 拠 法 の 決 定 に 影 響 を 及 ぼ さ な い

( 生 命 保 険 契 約 締 結 時 に 日 本 法 が 準 拠 法 と な れ ば 、 日 本 法 が 準 拠 法 と し て 適 用 さ れ 続 け る ) と 考 え ら れ る 。

以 上 を 踏 ま え る と 、 外 国 人 を 保 険 契 約 者 等 と す る 生 命 保 険 契 約 の 成 立 及 び 効 力 の 準 拠 法 は 、 通 常 、 日 本 法 に な る と 考 え ら れ る 。 も っ と も 、 黙 示 の 意 思 に よ る 準 拠 法 選 択 の 解 釈 の 不 確 定 性 や 、 黙 示 の 準 拠 法 選 択 が 認 め ら れ な い 場 合 に は 日 本 法 が 準 拠 法 と し て 「 推 定 」 さ れ る に 過 ぎ な い こ と を 勘 案

2 5 萩 本 修 編 著 『 一 問 一 答 保 険 法 』( 商 事 法 務 ・2 0 092 1 7 頁 。

2 6 小 出 編 著 ・ 前 掲 ( 注 3 )4 3頁 、 小 出 ・ 前 掲 ( 注 1 88 0 頁 参 照 。

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し 、 生 命 保 険 契 約 の 成 立 及 び 効 力 の 準 拠 法 を 日 本 法 と す る 旨 の 準 拠 法 条 項 を 約 款 に 手 当 て す る こ と を 検 討 す る 余 地 が あ る と 考 え ら れ る2 7

( 2 ) 生 命 保 険 契 約 に 基 づ く 各 法 律 行 為 の 準 拠 法

生 命 保 険 「 契 約 」 と い う 「 法 律 行 為 」 に つ い て 、 そ の 具 体 的 な 権 利 義 務 の 内 容 等 ( 効 力 ) の 準 拠 法 が 日 本 法 に な る と し て も 、 実 際 に そ の 権 利 を 行 使 す る ( 保 険 契 約 者 が 保 険 金 受 取 人 を 変 更 す る 、 保 険 契 約 者 が 生 命 保 険 契 約 を 解 約 す る 、 保 険 金 受 取 人 が 介 入 権 を 行 使 す る 、 保 険 会 社 が 告 知 義 務 違 反 に よ り 生 命 保 険 契 約 を 解 除 す る 等 ) こ と 自 体 も 「 法 律 行 為 」 で あ る 。 こ の よ う な 、 生 命 保 険 契 約 に 基 づ く 各 法 律 行 為 の 準 拠 法 は ど の よ う に 考 え れ ば よ い で あ ろ う か 。

こ の 点 、 契 約 等 の 大 き な 法 律 行 為 に よ り 構 築 さ れ た 法 律 関 係 の 中 で 行 わ れ る 解 除 の よ う な 小 さ な 法 律 行 為 は 、 通 則 法 上 の 「 法 律 行 為 」 に は 含 ま れ ず 、 契 約 の 解 除 等 は 契 約 の 効 力 の 準 拠 法 に よ る と の 考 え 方 が あ る2 8が 、 立 法 担 当 者 は 、 通 則 法 上 、 単 位 法 律 関 係 を 法 律 行 為 と し て い る こ と か ら 、 契 約 の 解 除 等 に つ い て も 、 そ れ 自 体 一 つ の 独 立 し た 通 則 法 上 の 「 法 律 行 為 」 に 該 当 す る

2 9と し て い る 。

も っ と も 、 後 者 の 考 え 方 も 、 契 約 の 解 除 等 は そ の 対 象 と な る 契 約 に よ っ て 生 じ た 法 律 関 係 の 存 在 を 前 提 と し て い る た め 、 契 約 の 解 除 等 の 単 独 行 為 で あ っ て も 、 そ の 相 手 方 も 通 則 法 に い う 「 法 律 行 為 」 の 「 当 事 者 」 に 該 当 す る と 解 し 、 解 除 等 の 対 象 と な る 契 約 の 準 拠 法 と 同 一 の 準 拠 法 に よ る こ と が 当 事 者 の 黙 示 の 意 思 に よ っ て 選 択 さ れ て い る と み る か 、 そ う で な く て も 、 通 則 法 第 8 条 に よ っ て 最 密 接 関 係 地 法 ( 契 約 の 準 拠 法 ) が 適 用 さ れ る こ と に な ろ う3 0

2 7 外 国 人 が 保 険 契 約 者 と な る 生 命 保 険 契 約 の 存 在 を 念 頭 に 、 生 命 保 険 契 約 の 約 款 に 準 拠 法 条 項 を 置 く 必 要 性 を 説 く も の と し て 、 吉 澤 ・ 前 掲 ( 注 9 )4 7 頁 ・6 3~6 5頁 。 ま た 、 銀 行 取 引 に つ い て 、 国 内 の 消 費 者 契 約 で 日 本 法 を 準 拠 法 と す る 旨 の 規 定 の 手 当 て の 必 要 性 を 説 く も の と し て 、 阿 部 ・ 前 掲 ( 注 8 )7 6 頁 。

2 8 道 垣 内 正 人 『 ポ イ ン ト 国 際 私 法 各 論 [ 第 2 版 ]』( 有 斐 閣 ・2 0 1 42 2822 9 頁 。

2 9 小 出 編 著 ・ 前 掲 ( 注 3 )4 3頁 。

3 0 小 出 編 著 ・ 前 掲 ( 注 3 )4 3頁 、 小 出 ・ 前 掲 ( 注 1 88 0 頁 。

(13)

13 と し て い る 。

ま た 、通 則 法 上 の 消 費 者 契 約 の 特 例 は 、「 法 律 行 為 」で は な く 消 費 者「 契 約 」 を 単 位 法 律 関 係 と し て い る た め 、 契 約 の 解 除 等 の 契 約 に 基 づ く 各 法 律 行 為 は そ も そ も 念 頭 に 置 か れ て い な い と 考 え ら れ る 。

生 命 保 険 契 約 は 長 期 間 継 続 す る た め 、 外 国 人 が 保 険 契 約 者 等 で あ る 場 合 に は 、 生 命 保 険 契 約 の 解 約 や 告 知 義 務 違 反 に よ る 解 除 等 の 生 命 保 険 契 約 に 基 づ く 各 法 律 行 為 を 行 う 際 に 、 当 該 外 国 人 が 外 国 に 居 住 し て い る 場 合 が あ り 得 る が 、 そ の よ う な 場 合 に お い て も 、 以 上 よ り 、 通 則 法 上 、 生 命 保 険 契 約 の 成 立 及 び 効 力 の 準 拠 法 が 日 本 法 で あ れ ば 、 生 命 保 険 契 約 に 基 づ く 各 法 律 行 為 の 準 拠 法 も 日 本 法 と な る と 考 え ら れ る 。

4 . そ の 他 外 国 人 を 保 険 契 約 者 等 と す る 生 命 保 険 契 約 に 密 接 に か か わ る 法 律 関 係 の 準 拠 法

( 1 ) 保 険 契 約 者 等 の 行 為 能 力 の 準 拠 法

3 . の 検 討 を 踏 ま え 、 以 下 で は 、 外 国 人 を 保 険 契 約 者 等 と す る 生 命 保 険 契 約 の 成 立 及 び 効 力 な ら び に 当 該 契 約 に 基 づ く 各 法 律 行 為 の 準 拠 法 は 日 本 法 と い う 前 提 と す る が 、 生 命 保 険 契 約 を 有 効 に 締 結 す る た め 等 に 必 要 な 「 行 為 能 力 」 と い う 単 位 法 律 関 係 に つ い て は 、 通 則 法 上 、 別 途 、 準 拠 法 決 定 ル ー ル 等 が 定 め ら れ て い る 。

ⅰ ) 財 産 的 法 律 行 為 の 行 為 能 力 に 関 す る 通 則 法 上 の ル ー ル

ま ず 、 財 産 的 法 律 行 為 の 行 為 能 力 に つ い て は 、 原 則 と し て そ の 人 の 本 国 法 が 準 拠 法 と な る ( 同 第 4 条 第 1 項 ) が 、 本 国 法 に よ れ ば 制 限 行 為 能 力 者 と な る 場 合 で あ っ て も 、 行 為 地 法 に よ れ ば 行 為 能 力 者 と な る べ き と き は 、 法 律 行 為 の 当 時 す べ て の 当 事 者 が そ の 行 為 地 に 在 っ た 場 合 に 限 り 、 行 為 能 力 者 と み な さ れ る ( 同 第 4 条 第 2 項 )。

「 本 国 法 」 と は 、 い わ ゆ る 国 籍 国 法 の こ と で あ り 、 重 国 籍 者 、 無 国 籍 者 の 本 国 法 を い か に 決 定 す る か に つ い て は 、 通 則 法 第 3 8 条 に 定 め ら れ て い

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る 。 ま た 、 通 則 法 第 4 条 に い う 「 行 為 能 力 」 に は 、 成 年 年 齢 、 未 成 年 者 の 能 力 補 充( 法 定 代 理 人 の 同 意・追 認 )、未 成 年 者 の 瑕 疵 あ る 法 律 行 為 の 効 力 、 婚 姻 に よ る 成 年 擬 制 等 の 問 題 が 含 ま れ る3 1

成 年 被 後 見 人 ・ 被 保 佐 人 ・ 被 補 助 人( 以 下「 被 後 見 人 等 」と い う 。)に か か る ル ー ル は 、 別 途 、 通 則 法 第 5 条 ・ 第 3 5 条 に 規 定 さ れ て い る 。 具 体 的 に は 、 通 則 法 上 、 外 国 人 で あ っ て も 、 被 後 見 人 等 と な る べ き 者 が 日 本 に 住 所 又 は 居 所 を 有 す る と き に は 、 日 本 法 に よ り 後 見 開 始 の 審 判 等 を す る こ と が で き( 同 第 5 条 )、当 該 外 国 人 に 当 該 審 判 等 が あ っ た と き は 、後 見 人 ・ 保 佐 人 ・ 補 助 人( 以 下「 後 見 人 等 」と い う 。)の 選 任 に つ い て は 日 本 法 に よ る こ と に な る( 同 第 3 5 条 第 2 項 第 2 号 )。そ の 他 の 場 合 の 後 見 人 等 の 選 任 や 後 見 人 等 の 権 利 義 務 等 に つ い て は 原 則 と し て 被 後 見 人 等 の 本 国 法 に よ る こ と と な る ( 同 第 3 5 条 第 1 項 )3 2

ま た 、 日 本 に 住 所 又 は 居 所 を 有 し な い 外 国 人 に つ い て 、 外 国 の 裁 判 所 の 保 護 措 置 に よ り 後 見 人 等 が 選 任 さ れ た 場 合 に は 、 そ の 保 護 措 置 が 日 本 で 承 認 さ れ る 限 り に お い て 、 そ の 後 見 人 等 が 日 本 で 当 該 外 国 人 の 財 産 を 処 分 す る こ と は 可 能 と 考 え ら れ る3 3

な お 、 通 則 法 第 4 条 第 1 項 や 同 第 3 5 条 第 1 項 に 基 づ き 本 国 法 が 準 拠 法 と な る 場 合 に お い て も 、 そ の 本 国 の 国 際 私 法 に 従 え ば 日 本 法 に よ る べ き と き は 、 日 本 法 が 準 拠 法 に な る ( 同 第 4 1 条 本 文 。 こ れ を 「 反 致 」 と い う 。)

3 4

ⅱ ) 保 険 契 約 者 等 の 行 為 能 力 の 準 拠 法

外 国 人 を 保 険 契 約 者 と す る 生 命 保 険 契 約 は 、 前 述 の と お り 、 日 本 で 保 険 募 集 と 契 約 の 締 結 が 行 わ れ る と 考 え ら れ 、 外 国 人 が 日 本 以 外 の 国 か ら ア ク セ ス し て イ ン タ ー ネ ッ ト 等 で 生 命 保 険 契 約 の 締 結 を 完 結 す る ケ ー ス は 想 定

3 1 澤 木 ・ 道 垣 内 ・ 前 掲 ( 注 3 )1 5 41 5 5 頁 。

3 2 澤 木 ・ 道 垣 内 ・ 前 掲 ( 注 3 )1 5 7 頁 ・1 6 0~1 6 1 頁 参 照 。

3 3 小 出 編 著 ・ 前 掲 ( 注 3 )3 3頁 。

3 4 松 岡 編 ・ 前 掲 ( 注 4 )5 15 3 頁 [ 多 田 望 ]。

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し 難 い と 考 え ら れ る 。 よ っ て 、 保 険 契 約 者 が 外 国 人 で あ っ た と し て も 、 契 約 締 結 時 に す べ て の 契 約 当 事 者 が 日 本 に 在 る た め 、 そ の 保 険 契 約 者 が 行 為 地 法 で あ る 日 本 法 上 の 成 年 者 で あ れ ば 、 行 為 能 力 者 と し て 取 り 扱 え ば よ い と 考 え ら れ る( 同 第 4 条 第 2 項 )。一 方 、保 険 契 約 者 が 日 本 法 上 の 未 成 年 者 で あ れ ば 、 そ の 行 為 能 力 ( 成 年 者 か ど う か 、 未 成 年 者 で あ れ ば そ の 能 力 補 充 等 ) に つ い て は 、 そ の 者 の 本 国 法 に よ り 判 断 す る こ と と な ろ う ( 同 第 4 条 第 1 項 )。

外 国 人 を 被 保 険 者 と す る 生 命 保 険 契 約 の 場 合 、 被 保 険 者 同 意 ( 保 険 法 第 3 8 条 ) を す る た め に 必 要 な 能 力 の 準 拠 法 も 問 題 と な る 。

被 保 険 者 の 同 意 は 、 日 本 の 保 険 法 上 、 特 に 未 成 年 者 を 被 保 険 者 と す る 場 合 を 念 頭 に 置 い た と き に 、 身 分 上 の 行 為 、 財 産 上 の 行 為 の い ず れ と も 単 純 に は 言 い 難 い 性 格 が あ る3 5と さ れ て い る た め 、 難 し い 問 題 で あ る が 、 そ の 性 質 は 準 法 律 行 為 と さ れ て お り3 6、 生 命 保 険 契 約 の 締 結 と い う 財 産 的 法 律 行 為 に 密 接 に か か わ る も の で あ る た め 、 通 則 法 第 4 条 を 準 用 し て 判 断 す れ ば よ い と 考 え た い 。 そ う す る と 、 外 国 人 で あ る 被 保 険 者 も 日 本 で 同 意 を す る も の と 考 え ら れ る た め 、 被 保 険 者 同 意 に 必 要 な 能 力 に つ い て も 、 保 険 契 約 者 の 行 為 能 力 と 同 様 に 考 え る こ と と な ろ う 。

ま た 、 生 命 保 険 契 約 の 保 険 契 約 者 や 保 険 金 受 取 人 で あ る 外 国 人 の 心 身 機 能 が 、契 約 継 続 中 に 低 下 し て い き 、被 後 見 人 等 と な る こ と も 考 え ら れ る が 、 そ の 外 国 人 の 住 所 又 は 居 所 が 日 本 に あ る 限 り 、 日 本 法 に よ り 後 見 開 始 の 審 判 等 と 後 見 人 等 の 選 任 が な さ れ る た め ( 通 則 法 第 5 条 ・ 第 3 5 条 第 2 項 )、

特 段 の 問 題 は な い と 考 え ら れ る 。 そ の 住 所 又 は 居 所 が 外 国 に あ る よ う な 場 合 に は 、 外 国 の 裁 判 所 で 選 任 さ れ た 後 見 人 等 が 保 険 会 社 に 権 利 行 使 を 求 め て く る こ と が 考 え ら れ る が 、 そ の 場 合 に は 、 実 務 上 は 、 当 該 外 国 の 領 事 館 や 大 使 館 等 と 連 絡 を と り 、 そ の 信 ぴ ょ う 性 を 確 認 し た う え で 手 続 き に 応 じ

3 5 山 下 ( 友 )・ 前 掲 ( 注 1 23 3 9 頁 。

3 6 山 下 ( 友 )・ 前 掲 ( 注 1 23 3 7 頁 。

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16 る 等 の 対 応 が 必 要 に な る と 考 え ら れ る3 7

な お 、 本 国 法 が 準 拠 法 と な る 場 合 で あ っ て も 、 反 致 ( 同 第 4 1 条 本 文 ) が あ れ ば 日 本 法 が 準 拠 法 と な る た め 、 こ の 点 に つ い て も 留 意 が 必 要 と な る 場 合 が あ り 得 よ う 。

( 2 ) 遺 言 に よ る 保 険 金 受 取 人 の 変 更 に か か わ る 準 拠 法

遺 言 に よ る 保 険 金 受 取 人 の 変 更 権 は 、 生 命 保 険 契 約 か ら 生 じ る 具 体 的 な 権 利 の 内 容 ( 生 命 保 険 契 約 の 効 力 の 問 題 ) で あ り 、 実 際 に 行 わ れ る 遺 言 に よ る 保 険 金 受 取 人 の 変 更 は 、 生 命 保 険 契 約 に 基 づ く 法 律 行 為 で あ る た め 、 日 本 法 が 準 拠 法 と な り そ う で あ る 。 一 方 、 通 則 法 第 3 7 条 第 1 項 で は 、 遺 言 の 成 立 及 び 効 力 は 、 そ の 成 立 の 当 時 に お け る 遺 言 者 の 本 国 法 を 準 拠 法 と す る 旨 が 定 め ら れ て お り 、遺 言 の 方 式 の 準 拠 法 は 、別 途 、「 遺 言 の 方 式 の 準 拠 法 に 関 す る 法 律 」 に 定 め ら れ て い る た め 、 こ れ ら と の 関 係 を い か に 考 え れ ば よ い か が 問 題 と な る 。

ⅰ ) 遺 言 に 関 す る 通 則 法 上 の ル ー ル

こ の 点 、 遺 贈 や 遺 言 に よ る 認 知 等 の 遺 言 に よ る 法 律 行 為 に つ い て 、 意 思 表 示 と し て の 遺 言 そ の も の の 成 立 及 び 効 力 は 通 則 法 第 3 7 条 に 、 そ の 方 式 は 「 遺 言 の 方 式 の 準 拠 法 に 関 す る 法 律 」 に 定 め る 遺 言 の 準 拠 法 に よ る が 、 そ れ 以 外 の 点 は 、 遺 言 に よ る 各 法 律 行 為 の 準 拠 法 に よ る と 考 え ら れ て い る

3 8。具 体 的 に は 、通 則 法 第 3 7 条 第 1 項 に 定 め る「 遺 言 の 成 立 及 び 効 力 」と い う 単 位 法 律 関 係 は 、 遺 言 と い う 意 思 表 示 自 体 の 成 立 及 び 効 力 を 意 味 し 、 遺 言 能 力 、 意 思 表 示 の 瑕 疵 、 遺 言 の 効 力 発 生 時 期 等 の 問 題 が 含 ま れ る と さ れ 、 同 項 に い う 「 そ の 成 立 の 当 時 」 と は 遺 言 作 成 当 時 を 指 す と さ れ て い る

3 9。そ し て 、公 正 証 書・自 筆 証 書 等 、遺 言 と い う 意 思 表 示 が 有 効 に 成 立 す る

3 7 阿 部 ・ 前 掲 ( 注 8 )40 頁 参 照 。

3 8 櫻 田 ・ 道 垣 内 編 ・ 前 掲 ( 注 1 03 59頁 [ 神 前 禎 ]、 小 出 編 著 ・ 前 掲 ( 注 1 83 5 7 頁 。

3 9 澤 木 ・ 道 垣 内 ・ 前 掲 ( 注 3 )1 4 1 頁 、 櫻 田 嘉 章 ・ 道 垣 内 正 人 編 『 注 釈 国 際 私 法 第 2

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た め の 一 定 の 外 部 的 形 式 の 要 否 に つ い て は 、 通 則 法 の 特 別 法 で あ る 「 遺 言 の 方 式 の 準 拠 法 に 関 す る 法 律 」に よ る こ と と な り4 0、遺 言 の 方 式 が 、遺 言 者 の 行 為 地 法 ・ 遺 言 の 成 立 又 は 死 亡 当 時 の 遺 言 者 の 国 籍 国 法 ・ 住 所 地 法 ・ 常 居 所 地 法 の い ず れ か に 適 合 す れ ば 、方 式 に 関 し て は 有 効 と な る( 同 第 2 条 )。

そ れ 以 外 の 遺 言 に よ っ て 実 現 し よ う と す る 実 質 的 な 内 容 に つ い て は 、 例 え ば 遺 贈 で あ れ ば 相 続 に か か わ る 問 題 と し て 通 則 法 第 3 6 条 、 遺 言 に よ る 認 知 で あ れ ば 通 則 法 第 2 9 条 と い う よ う に 、 そ れ ぞ れ 通 則 法 上 別 途 設 け ら れ て い る 各 法 律 行 為 の 準 拠 法 に よ る こ と と な る4 1

ま た 、 遺 言 の 執 行 ( 遺 言 執 行 の 要 否 、 遺 言 執 行 者 の 選 任 の 要 否 、 そ の 職 務 、 権 限 、 解 任 の 可 否 等 ) は 、 遺 言 内 容 の 実 現 に 関 す る も の で あ る か ら 、 遺 言 に よ る 各 法 律 行 為 の 準 拠 法 に 従 っ て 判 断 さ れ る と す る の が 通 説 で あ り

4 2、 遺 言 に よ る 法 律 行 為 と 相 続 人 の 遺 留 分 と の 関 係 に つ い て は 、 相 続 の 準 拠 法 で あ る 通 則 法 第 3 6 条 ( 被 相 続 人 の 本 国 法 ) に よ り 判 断 さ れ る こ と と な る4 3

な お 、 通 則 法 上 、 本 国 法 が 準 拠 法 と な る 場 合 で あ っ て も 、 反 致 が あ れ ば 日 本 法 が 準 拠 法 と な る ( 同 第 4 1 条 本 文 ) 点 、 4 .( 1 ) と 同 様 で あ る 。

ⅱ ) 遺 言 に よ る 保 険 金 受 取 人 の 変 更 に か か わ る 準 拠 法

以 上 を 踏 ま え 、 遺 言 に よ る 保 険 金 受 取 人 の 変 更 に か か わ る 準 拠 法 に つ い て 検 討 す る 。

ま ず 、 外 国 人 を 保 険 契 約 者 と す る 生 命 保 険 契 約 の 遺 言 に よ る 保 険 金 受 取 人 の 変 更 の う ち 、 遺 言 と い う 意 思 表 示 そ の も の の 成 立 及 び 効 力 ・ 方 式 を 除 く 、 遺 言 に よ っ て 実 現 し よ う と す る 実 質 的 な 内 容 に 関 す る 問 題 ( 遺 言 に よ

巻 - 第 1 法 の 適 用 に 関 す る 通 則 法 2 4条 ~4 3 条 ・ 附 則 2 特 別 法 』( 有 斐 閣 ・2 0 1 1)2 1 5 頁 ・2 2 0 頁 [ 林 貴 美 ]。

4 0 澤 木 ・ 道 垣 内 ・ 前 掲 ( 注 3 )1 4 2 頁 、 松 岡 編 ・ 前 掲 ( 注 4 )2 5 125 2 頁 [ 北 坂 尚 洋 ]。

4 1 櫻 田 ・ 道 垣 内 編 ・ 前 掲 ( 注 3 92 13頁 [ 林 貴 美 ]。

4 2 櫻 田 ・ 道 垣 内 編 ・ 前 掲 ( 注 3 92 19頁 [ 林 貴 美 ]。

4 3 櫻 田 ・ 道 垣 内 編 ・ 前 掲 ( 注 1 03 59頁 [ 神 前 禎 ]。

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る 保 険 金 受 取 人 変 更 の 可 否 、 そ の 場 合 の 被 保 険 者 同 意 の 要 否 、 保 険 会 社 に 対 す る 対 抗 要 件 、 保 険 金 受 取 人 の 変 更 と 認 め ら れ る か ど う か の 解 釈 ) に つ い て は 、 生 命 保 険 契 約 の 効 力 ま た は 当 該 契 約 に 基 づ く 法 律 行 為 の 準 拠 法 に よ る こ と と な る た め 、 日 本 法 が 準 拠 法 と な る と 考 え ら れ る 。 ま た 、 保 険 法 上 、 遺 言 に よ る 保 険 金 受 取 人 変 更 の 対 抗 要 件 と し て の 通 知 は 、 遺 言 執 行 者 が 行 う こ と も 可 能 と さ れ て い る が4 4、 こ れ を 遺 言 の 執 行 と 捉 え て も 、 通 説 に よ れ ば 日 本 法 が 準 拠 法 と な る と 考 え ら れ る 。

一 方 で 、 遺 言 と い う 意 思 表 示 自 体 の 成 立 及 び 効 力 や 遺 言 に よ る 保 険 金 受 取 人 の 変 更 と 遺 留 分 と の 関 係 に つ い て は 遺 言 者 ・ 被 相 続 人 た る 保 険 契 約 者 の 本 国 法 が 準 拠 法 と な り 、 遺 言 の 方 式 に つ い て は 、 遺 言 者 た る 保 険 契 約 者 の 行 為 地 法 ・ 国 籍 国 法 ・ 住 所 地 法 ・ 常 居 所 地 法 の い ず れ か の 方 式 を 満 た せ ば 有 効 と な る た め 、 実 務 上 も 、 そ の 前 提 で 種 々 の 確 認 を 行 う 必 要 が あ る と 考 え ら れ る 。 そ う す る と 、 生 命 保 険 契 約 の 約 款 上 、 遺 言 に よ る 保 険 金 受 取 人 の 変 更 は 、「 法 律 上 有 効 な 遺 言 に よ り 」行 う こ と が で き る 旨 を 定 め て い る の が 通 例 で あ る と こ ろ 、外 国 人 の 保 険 契 約 者 を 念 頭 に 置 く と 、「 法 律 上 有 効 な 遺 言 」と は 、「 遺 言 と い う 意 思 表 示 自 体 の 成 立 及 び 効 力 に つ い て は 当 該 外 国 人 の 本 国 法 上 、 遺 言 の 方 式 に つ い て は 「 遺 言 の 方 式 の 準 拠 法 に 関 す る 法 律 」 に 定 め る 準 拠 法 上 、 有 効 と さ れ る 遺 言 」 と 解 釈 す る こ と に な る と 考 え ら れ る 。

な お 、 遺 言 の 成 立 及 び 効 力 の 準 拠 法 を 遺 言 者 の 本 国 法 と し て い る の は 、 遺 言 は 実 質 的 に 相 続 と 密 接 に 関 連 す る た め 、 相 続 の 準 拠 法 と で き る 限 り 一 致 さ せ る べ き と の 考 え 方 に よ る も の で あ る が 、 こ の 考 え 方 に 対 し て は 、 遺 言 に よ る 後 見 人 の 指 定 や 寄 付 行 為 等 の 相 続 に か か わ ら な い 遺 言 事 項 に 関 す る 意 思 表 示 に つ い て ま で 相 続 の 準 拠 法 に よ る の は 妥 当 で な い 、 と の 批 判 も あ る4 5。遺 言 に よ る 保 険 金 受 取 人 の 変 更 に つ い て も 、保 険 金 請 求 権 は 、基 本 的 に 、 遺 言 者 の 相 続 財 産 か ら 切 り 離 さ れ た 保 険 金 受 取 人 の 固 有 財 産 で あ る

4 4 萩 本 編 著 ・ 前 掲 ( 注 2 5)1 8 6 頁 。

4 5 小 出 編 著 ・ 前 掲 ( 注 1 8)3 5 53 5 7 頁 。

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4 6た め 、同 様 の 批 判 が 当 て は ま る 面 が あ る と 思 わ れ る 。ま た 、日 本 に 長 く 居 住 す る 外 国 人 で あ れ ば 、 日 本 法 に よ る 遺 言 に な じ み が あ る か 、 少 な く と も 日 本 法 に よ る 遺 言 の 方 が 専 門 家 等 の ア ド バ イ ス を 受 け や す い と 考 え ら れ る た め 、 遺 言 自 体 の 成 立 及 び 効 力 や 遺 言 の 方 式 に つ い て も 日 本 法 に 準 拠 し た い と い う ニ ー ズ が あ る の で は な い か と も 思 わ れ る 。 し か し な が ら 、 通 則 法 第 3 7 条 と 「 遺 言 の 方 式 の 準 拠 法 に 関 す る 法 律 」 は 強 行 規 範 で あ る た め 、 例 え ば 、 外 国 人 の 保 険 契 約 者 を 念 頭 に 、 生 命 保 険 契 約 の 約 款 に お い て 、 遺 言 に よ る 保 険 金 受 取 人 の 変 更 は 「 日 本 法 上 有 効 な 」 遺 言 に よ り 行 う 旨 を 規 定 す る こ と は で き な い と 考 え ら れ る 。

も っ と も 、 遺 言 自 体 の 成 立 及 び 効 力 や 遺 留 分 と の 関 係 に つ い て は 、 反 致 が あ れ ば 日 本 法 が 準 拠 法 と な る と 考 え ら れ る た め 、 実 務 に お い て は こ の 点 の 確 認 も 必 要 で あ ろ う 。

( 3 ) 保 険 契 約 者 の 死 亡 及 び 保 険 金 受 取 人 の 死 亡 の 場 合 に お け る 「 相 続 人 」 の 準 拠 法

ⅰ ) 相 続 に か か わ る 通 則 法 上 の ル ー ル

2 . で 既 述 の と お り 、 通 則 法 第 3 6 条 で は 、 相 続 は 、 被 相 続 人 の 本 国 法 に よ る と 定 め ら れ て お り 、 通 説 で は 、 そ の 基 準 時 は 被 相 続 人 の 死 亡 時 で あ る と さ れ て い る4 7。相 続 と は 、死 者 の 所 有 し て い た 財 産 が 、そ の 者 と 一 定 の 身 分 関 係 を 有 し て い た 者 に よ っ て 承 継 さ れ る 制 度 で あ り 、 ど の よ う な 財 産 が 相 続 財 産 を 構 成 す る か と い う 問 題 の ほ か 、 相 続 人 の 範 囲 、 相 続 順 位 等 、 誰 が 相 続 人 に な る か と い う 問 題 も 、 通 則 法 第 3 6 条 の 相 続 の 準 拠 法 に よ る

4 8と さ れ て い る 。

4 6 山 下 友 信 ・ 米 山 高 生 編 『 保 険 法 解 説 - 生 命 保 険 ・ 傷 害 疾 病 定 額 保 険 』( 有 斐 閣 ・ 2 0 1 0)2 9 4 頁 [ 山 野 嘉 朗 ]。

4 7 松 岡 編 ・ 前 掲 ( 注 4 )24 2 頁 [ 北 坂 尚 洋 ]。

4 8 澤 木 ・ 道 垣 内 ・ 前 掲 ( 注 3 )1 3 31 3 4 頁 。

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ⅱ ) 保 険 契 約 者 の 死 亡 及 び 保 険 金 受 取 人 の 死 亡 の 場 合 に お け る 「 相 続 人 」 の 準 拠 法

ま ず 、 保 険 契 約 者 の 死 亡 の 場 合 に 関 し 、 保 険 契 約 者 と 被 保 険 者 が 異 な る 生 命 保 険 契 約 に つ い て 保 険 契 約 者 が 死 亡 す れ ば 、 保 険 契 約 者 の 地 位 は そ の 相 続 人 に 承 継 さ れ る が 、 外 国 人 が 保 険 契 約 者 で あ る 場 合 に は 、 通 則 法 第 3 6 条 に 基 づ き 、 そ の 本 国 法 に よ り 決 定 さ れ る 相 続 人 に 承 継 さ れ る こ と に な る と 考 え ら れ る 。

次 に 、 保 険 金 受 取 人 の 死 亡 に 関 し 、 日 本 の 保 険 法 上 、 生 命 保 険 契 約 の 保 険 金 受 取 人 が 被 保 険 者 の 死 亡 前 に 死 亡 し た と き は 、 そ の 相 続 人 の 全 員 が 保 険 金 受 取 人 と な る 旨 が 規 定 さ れ て お り( 同 第 4 6 条 )、生 命 保 険 契 約 の 約 款 上 、「 被 保 険 者 の 死 亡 前 」を「 被 保 険 者 の 死 亡 時 以 前 」と す る 他 は 、保 険 法 と 同 様 の 内 容 を 定 め て い る の が 通 例 で あ る 。 被 保 険 者 の 死 亡 ( 時 以 ) 前 に 保 険 金 受 取 人 が 死 亡 し た と き は 、 そ の 相 続 人 全 員 が 保 険 金 受 取 人 に な る と い う の は 、 生 命 保 険 契 約 の 効 力 の 問 題 で あ り 、 そ の 準 拠 法 た る 日 本 法 に よ る も の で あ る が 、 こ の う ち 、 外 国 人 で あ る 保 険 金 受 取 人 が 死 亡 し た 場 合 に 新 た に 保 険 金 受 取 人 と な る 「 相 続 人 」 が 誰 な の か と い う こ と に つ い て は 、 通 則 法 第 3 6 条 に よ り 、 死 亡 し た 保 険 金 受 取 人 の 本 国 法 に よ り 決 定 さ れ る こ と に な る と 考 え ら れ る 。

な お 、 同 時 死 亡 の 問 題 も 、 相 続 と の 関 係 で 問 題 と な る 限 り 相 続 の 準 拠 法 に よ る と さ れ て お り4 9、 日 本 の よ う に 死 亡 者 間 で 相 続 が 生 じ な い 旨 の 規 定 を 有 す る 国 ( 例 え ば 、 フ ラ ン ス ・ ド イ ツ ・ イ タ リ ア 等 ) も あ れ ば 、 原 則 と し て そ の 中 の 年 少 者 が 長 く 生 存 し て い た と 推 定 す る 国 ( 例 え ば 、 イ ギ リ ス 等 )も あ る5 0。外 国 人 を 保 険 関 係 者 と す る 生 命 保 険 契 約 を 念 頭 に 置 く と 、被 保 険 者 と 保 険 金 受 取 人 に つ い て 、 一 方 が 外 国 人 で 他 方 が 日 本 人 、 双 方 が 外 国 人 で 本 国 法 も 同 一 、 双 方 が 外 国 人 で そ れ ぞ れ 本 国 法 が 異 な る 、 と い う パ タ ー ン が あ り 得 、 同 時 死 亡 の 場 合 に 被 保 険 者 の 本 国 法 と 保 険 金 受 取 人 の 本

4 9 澤 木 ・ 道 垣 内 ・ 前 掲 ( 注 3 )1 3 4 頁 。

5 0 櫻 田 ・ 道 垣 内 編 ・ 前 掲 ( 注 3 91 94頁 [ 林 貴 美 ]。

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