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生命保険契約・自殺免責にかかる法制と解釈

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Academic year: 2023

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【平成29年度大会】

自由論題(法律系)

報告要旨:土岐 孝宏

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生命保険契約・自殺免責にかかる法制と解釈

―ドイツ法制、フランス法制からの示唆―

中京大学 土岐 孝宏

1.はじめに

わが国の保険法51条1号は、死亡保険契約の保険者は、「被保険者が自殺をしたとき」

には、保険給付を行う責任を負わない、と規定している(全期間免責)。なお、生命保険約 款は、これを変更し、責任開始(復活)日から1年ないし3年以内の自殺に限って死亡保険 金を支払わない旨、規定している(免責期間の設定)。死亡保険における自殺免責の問題は、

現に生じ、また、将来においても定型的に発生する問題であるが、これにかかわるわが国の 法制・法律規定(保険法51条1号)は、非常にシンプルである(例外なき全期間免責)。

この点、ドイツ、フランスといった、わが国の法律と親和性の高い大陸法系国家の保険法 をみれば、その自殺免責にかかる法律規定は、わが国のものより規定事項が多く、その分、

充実した規定となっている。また、わが国の法制が永年その形を変えていないのに対して、

それらの国では、2000年前後、比較的近年に法改正を経験し、とくにフランスでは、頻繁に 改正を重ね、その法状況は、刻々と変化している。確かに、わが国の保険法改正の際に指摘 されたように、法律が詳細を決めないことには、メリットもある。しかし、規律内容を詳細 に詰め、また、その内容についても(国によっては頻繁な)法改正により適宜見直しを行っ ている他国の状況に遭遇するとき、旧来の例外なき全期間免責(シンプルな規律)をベース に置き、これを任意法規としてあとはすべて私的自治(自由)に委ねるという、今のわが国 の法律の姿勢には、疑問も生じるところである。もちろん、わが国の現状として、保険実務

(約款)や法解釈により、一定程度、法理の展開が図られていることは踏まえなければなら ないが、それでも、根本において法律規定を整備し、安定的に、また、時宜に適して、自殺 とその保険保護とにかかる諸問題・諸利益を、規律づけていく、という視点は重要である。

そのように、上記のような他国の法制・法状況は、自殺とその保険保護にかかる諸問題に ついて、将来におけるわが国の立法論に示唆ないし視座を与えるうる可能性を秘めている。

また、それだけでなく、そこに存在しているきめ細かい法律規定の内容ないしその規定の上 での解釈・運用の在り方が、(それが不在であるがゆえに、すべて解釈という形で展開され ている)わが国の解釈論を詰める上で、有意義な視点を提供することもありうると考えられ る。本報告は、ドイツおよびフランスの自殺免責法制を手掛かりに、わが国における自殺免

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責法制のあるべき姿(立法論)を模索するとともに、現行法制下における解釈論の一層の進 展をも、試みようとするものである。

2.ドイツ法制(保険契約法161条)、フランス法制(保険法典L.132-7条)

ドイツの自殺免責法制には、①わが国の保険法には存在しない自殺免責期間(3年)が法 律上の制度として存在し(161条1項1文)、また、②当該3年の期間は、さらに延長でき るものの、それには、個別合意 が必要とされる仕組み(=約款で一律に延長はできない。同 2項)が採用され(以上、2007年の法改正による)、また、③精神障害中の自殺の問題に関 連して、免責期間内における自殺ではあるも、精神活動の病気的障害により自由な意思決定

(Die freie Willensbestimmung)が排除されて当該自殺が行われた場合の例外則(保険者有責 の法理)が、法律上の制度として定められ(同1項2文)、さらに、④上記の規律(161 条)が片面的強行規定とされ(171条)、自殺免責法制に関連する契約自由に広く法が介入 している、という諸々の特徴(規律の充実)が認められる。また、フランスの自殺免責法制 にも、やはり、わが国と異なって、①自殺免責期間(1年)が法律上の制度として存在し

(L.132-7条1項。1981年の法改正<全期間免責から2年の期間免責へ>を経て、さらに 1998年の法改正による)、これは、ドイツの法制と比べても短期である上、ドイツとは異な り、②当該1年の免責期間は、契約をもって一切延長できないものとされ(=2年目以後の 自殺の保障が義務化。同2項(2001年の法改正による))、また、わが国にもドイツにも存 在しない規律があり、③金融機関が申し込む団体(信用)保険の分野では、まず、一般的な 規律(一般法=同3項)として、1年内自殺免責規定(L.132-7条1項)の適用がないものと され(1項の1年内補償禁止が解かれるので、契約自由となり、約款において、1年内の自 殺を有責と合意することも、また、やはり免責と合意することも可能。1998年の法改正によ る)、また、その延長にある特殊な規律(特別法=同4項)として、住宅ローンにかかり金 融機関が申し込む団体(信用)保険の場合に限っては、12万ユーロの範囲内で、自殺免責は、

一切主張できず、契約日から直ちに、保険者は自殺危険を保障しなければならない(契約自 由はなく、1年内の自殺も、その範囲では例外なく有責。2001年の法改正による)とする規 律が置かれ、さらに、④上記の規律(L.132-7条)は、すべて強行法規とされ(L.111-2 条)、

自殺免責法制に関連する契約自由に、強く法が介入している、という諸々の特徴(規律の充 実)が認められる。いずれの法制も、(片面的)強行規定にまで高められた法律上の制度

(保険金受取人が法律上有し、奪われない権利)として、自殺に対する保険保護を一定範囲 で確保するものであり、すでにそのレベルにおいて、わが国よりも、保険金受取人の保護に 厚い法制である。なお、自殺免責規定の中に置かれた「自由な意思決定(Die freie

Willensbestimmung)」という法律上の概念とともに展開されている、ドイツの精神障害中の

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自殺にかかる議論は、(法律上の根拠がないままに)同じく「自由な意思決定」という概念 を用いながら論じられている、わが国の同議論に、法解釈上、有意義な視点を与える。

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