特 集
集 な る
石綿健康被害救済制度をめぐる 喫緊の課題と展望について
お ら
とし
環境省大臣 環境保健部環境保健 理課 石 健康
1 に の
石綿は、 で変化しにくい 維であり、
安価でありつつ、 、 、酸 アルカ リに いことから、建材や自動 をはじめ、
日常の多 にわたる製品に用いられてき た。
しかし、石綿に発が 性が められたこ とから、政府は 和50年に使用の 分的規 制を開始し、 を経て平成24年には新た な石綿製品の製造・使用等を全面 止する に り、かつて「 の 物」と れた 石綿は、 い期間を経て重 な病状を発症 することから、やがて「静かな時 」 と れるようになる。
こうした時流の変化のなか、平成17年 月に(株)クボタが 県 市の 工場 住民が中 に していること を公表したことを 機とする一連の「クボ タショック」により、石綿による健康被害 が社会問題となった。
上記の社会問題に対処すべく、平成17年 7月 、政府において 回にわたり関 係 会合(「アスベスト問題に関する関 係 による会合」)が開催され、 年12 月に「アスベスト問題に係る総合対策」が 取りまとめられた。これにより、 の法
( 災制度等)で救済されない被害者を 間なく救済すべく、環境省 生 省の連携のもと、平成18年に「石綿による 健康被害の救済に関する法 」(平成18年 法 第4 )が公 ・施行された。
一 的に、健康被害に関しては、原因者 が被害者に対して 害 を行い、民事上 の解決が られるべきである。
しかし、「石綿への く から発症まで の 期間が30~40年と 常に 期にわた ること」「石綿は建築物や自動 など め て な分野で用いられてきたこと」から、
① 被害者の石綿への く に係る事実の確
、 病と石綿の 散との個別の因 関 係を立 することは めて困難である。
また、
② 石綿への く による 病は重 であり 予後が く、発症から大体1~2年で
する ースがほと どである。
上記2点に み、民事法による解決に委 ねるのではなく、「石綿の使用による を 受してきた社会全体で、被害者の経済的 負担を 減する」という で国が制度を 整備し、( く 経 を特 することなく)
石綿の 入による指 病に していれ の対 とし、( を るのではなく)
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見 的な支給を行うことにより、 い 被害者の な救済を ったのである。
本年をもって、石綿健康被害救済制度の 施行から15年が経つ。時の経 とともに、
制度も変わり続けてきた。
和に入り、石綿健康被害救済制度を取 り巻く状況に、二つの大きな変化が生じて いる。一方は、 ンデミックを き こし 現 も を振るう新型コロナウイルス感 染症であり、他方は、建設アスベスト に係る最 所の 決である。
これまで、石綿健康被害救済制度につい ては、創設時の制度解説1)や10年史2)等 は されてきたが、管見の りでは、
和における社会情勢の変動を踏まえて制度 を じたものはない。本稿では、これまで の改正の みを踏まえて最新の石綿健康被 害救済制度の内容を確 するとともに、
和に入り が国が直面する課題を踏まえた 石綿健康被害救済制度における取り組み、
そしてこれからの みについて展望を き たい。
の内容
2.1 の
対 となる 病は、 下の4 である。
⃝中
⃝ が (原発性 が )
⃝ しい 機能 害を う石綿
⃝ しい 機能 害を う ま 性
救済給付は、 者災害 保 法等 の災害 制度では救済の対 とならな 1 石 健康 制 の
い被害者を対 としており、 被害者は、
上記の 病にかかった の を( )環 境再生保全機 ( 下「機 」という。)
から受けることにより、受給が可能となる。
の有効期間は 年であり、必要が め られれ 新も可能である。
制度創設時は、 な施行による救済を るべく、対 は中 が の2 のみとしていたが、後の医 的知見の 新3)を踏まえ平成22年に政 改正4)を行 い、対 に しい 機能 害を う石綿 しい 機能 害を う ま 性 を追加している。
また、機 は医 的 を要する事 に 関し、原 環境大 に を し出ること となっており )、医 的 の考え方につ いては、平成18年3月の中 環境 会の
)を踏まえ、 年 月に 会石 綿健康被害 会の 委員会が、医 的 資料の提出における 事 7)をとりま とめている。 事 については、医
的知見の 新を踏まえ7回にわたり改 を重ねており、例え 、平成25年には が
しい 機能 害を う ま 性 について見直し、 が の 対 となる医 的所見を追加するとともに、
しい 機能 害を う ま 性 の 基準の一つであった の さ要 を廃止した )。
最新の改 9)は、 和2年12月25日に なされている。
2.2 の 容
救済給付は、 下の給付 目から 成さ れる。
⃝ 医療 (自 負担分)
⃝ 療 (10 3,870 /月)
⃝ 料(19 9,000 )
⃝ 特別 (280 )
⃝ 特別 料(19 9,000 )
⃝ 救済給付調整
社会保 的な考え方に基づく見 的給 付であることを踏まえ、医療 、療
料を支給することとしている。
特別 特別 料は、制度
導入前に した被害者である「施行前 者」の に対して、国が特別に を 表明して給付する 目として創設された が、平成20年の法改正10)により、制度施 行後に した「未 者」の に ついても新たに 給付の対 とすること とされた。 改正は、救済対 者の の 拡大に加えて、救済対 期間についても拡 を っており、指 病にかかった の は、 改正前は「 日」から効力を 生じていたが、 改正により、 に 係る指 病の「療 開始日」にまで効力 が って生 ることとされた11)。
また、特別 特別 料の
求期 については、二度の法改正(平成 20年12) 平成23年13))により期 が
されている。
なお、 災 を受け に くなった 者の に対する救済 置として、救済 給付とは なる で、別途特別 給付 が設けられている( 生 省所管)。
2.3 の
救済給付の経 に充てるべく、石綿健康 被害救済基 が機 に設けられており、基 の財源 成は、 下の4 に大別される。
⃝ 政府 出 (制度創設時に国が約386 を 出)
⃝ 地方公共 体 出 (都道府県が平成19
~28年度において計92 を 出)
⃝ 一 出 (全事業主から 年 )
⃝ 特別 出 (一 の要 を たす石綿と 関連が深い事業主から 年 ) 事業者に関する 用負担の考え方として は、いわ る「二 建て方 」を 用して いる。
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体的には、
⃝ 健康被害の個別的な因 関係の立 は困 難であるものの、すべての事業者が事業 活動を通じて直 的あるいは間 的に石 綿の使用による経済的利 を受けていた こと
――に着目し、 者を使用する事業主か ら一 出 を するとともに、
⃝ 石綿を大 に取り い、その 散の危 性を めるような事業活動を行っていた と められる者(特別事業主)について は、より大きな 任を負うべきと考えら れること
――を踏まえ、特別事業主からは一 出 に加えて特別 出 をも することと している。
なお、石綿健康被害救済基 の 支の を踏まえた 出のあり方については 時 検 を行っており、平成26年には告示改 正14)を行い、一 出 の を1000分の 0.05から0.02へと き下げている。
3 に る の と
下、 和に入り石綿健康被害救済制度 が直面している主要な二つの課題について
べる。
3.1 イ る
世界で する新型コロナウイルスは、
現時点で世界全体の約500 人を に ら しめる15)とともに、 々の社会活動を 変させた。
未知のウイルスが流行する状況におい て、感染リスクを低減させるべく人と人と の 機会を つことは、新規感染症対策 の基礎である。こうして、 食 の 業自 要 やイベントの開催自 要 ととも に、政府において開催される 会につい ても、対面での開催は原 として えるこ ととなり、石綿健康被害救済制度にも
を すこととなった。
石綿健康被害 委員会は、石綿によ る健康被害の救済に係る医 的 の調査
を行う、石綿健康被害救済制度の中 を担う委員会である。 委員会は、石 綿健康被害 会から環境保健 会に 合された 月(平成25年2月)から 和2 年2月に るまで 月必 対面で開催さ れ、 を着実に進めてきた。
委員会においても、上 した新型 コロナウイルス感染症の を受け、対面 での開催を えることが求められたが、
は医 的資料の検 等の 業を うもの であるため、オンライン会 に移行するこ とは容 ではない。そのため、 和2年3 月から 月まで開催を せざるを 、
和2年 月 はオンラインと対面とを 組み合わせる で を再開しているもの の、3か月分の案 が まり、これまで
することのなかった未 案 が一時期 には約500 に上るなど、 の進行に支
をきたすこととなった。
は上記の問題に対応すべく、 委員 会の下に設けられている 査分 会の開催 回 を やすなど 会の に最 で 取り組むとともに、ICT化を 力に推進し、
未 案 の解消に 取り組 でいると こ である。
ICT化の例を げれ 、現 一 対面で 実施している医 的資料等の検 について も、バーチャルスライドシステム等のシス テムを 築することにより会 を 全にオ ンラインで開催できるよう、 和4年度 用開始を目指して 的なICT化について システム業者・機 と調整を進めていると こ である。
の 化が、被害者の な救済に つながることは言を たない。今後もより 一 のICT化の推進が求められるとこ で あり、関係 所と連携しながら 進してい く。
3.2 設 ト る
いわ る建設アスベスト とは、建設 業に従事していた元 者らが、石綿 じ く により健康被害を被ったのは、国 が規制 を 切に行使しなかったからで ある等として、国( 生 省・国土 通 省) 建材メーカーに 害 求を 行ったものである。
本年 月17日に最 所が に 関して下した国 一 シェア 上の建材 メーカーの 任を める 決16)等を 受け、政府は 任を め、原告 と基本合
書を した。さらに 年 月16日に 員立法である「特 石綿被害建設業 者等に対する給付 等の支給に関する法
」( 和3年法 第74 )が公 され、
公 後一年 内に施行されることとなって いる。
建設アスベスト給付 制度の につい ては現 生 省において検 中であ り、 はそれらに言 する立場にないが、
決により、
⃝ 石綿健康被害が改めて世の中に く 知 されたこと
⃝ 建設アスベスト給付 制度は、 的 害の を目的としており、財産的 害 への給付を目的とする石綿健康被害救済 制度との間で 給調整は行われないた め、両制度への が可能であること
――から、石綿健康被害救済制度への 者 の 加が予想される。
上記の想 を踏まえれ 、ICT化などの に関する体制 化を ることに加え、
被害者が の制度の を 知し、 切 な制度にアクセスすることができるよう、
報を充実させることも重要である。
石綿健康被害救済制度の 知にあたって は、機 にも協力いただき、 力的に実施 しているとこ である( )。機 は、
被害者からの 等の受付をはじめ、被害
者とのコミュニ ーションを密にとり、制 度 用において中 的な役割を担ってい る。機 との連携を 化することにより、
制度 用のさらなる質の向上が期 され る。
は、ICT化における機 との連携に 加え、制度 知等においても関係 所との 連携をより一 深め、一 となって 報の 充実化を っていく。
お に
上概観したとおり、石綿健康被害救済 制度は、 和に入り新たな課題に直面して いる。
新型コロナウイルスの感染状況に係る今 後の見通しや、最 所の 決を踏まえ た 者 の今後の予 を正確に行うこと は容 ではない。こうしたなかで、制度担 者としてなすべきことは、有事・平時を 真1 石 健康 制 周 用 ス ー
( 成)
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問わ を着実に実施できる体制を整え ること、また被害者を 切な制度へつなぐ
力を らないことである。
は、本稿で べたとおり、 の着 実な実施、制度の 知等さらなる対応を
っていく所 である。
石綿による被害に しむ方々が、一日で も く、そして一人でも多く救済されるこ とを目指し、関係者の に、 き続き石 綿健康被害救済制度への 理解・ 協力を お い し上げて、本稿の としたい。
・
1) 例え 、環境省環境保健 企画課石綿健康被 害対策 、「特 ・第164回国会主要成立法 石綿による健康被害の救済に関する法 」、
ジュリスト第1318 、p.57~61、平成18年 2)( )環境再生保全機 、「石綿健康被害救済
制度10年の記 平成18年度~平成27年度
(第2 )」、平成29年
3) 「石綿健康被害救済制度の り方について(一 次 ) 石綿健康被害救済制度における指 病に関する考え方について 」(平成22年 月中 環境 会)
4) 石綿による健康被害の救済に関する法 施行 の一 を改正する政 (平成22年政 第 142 )
) 石綿による健康被害の救済に関する法 第10 第1 第24 第1 による。ただし、
「石綿による健康被害の救済に関する法 の 施行(救済給付の支給等関係)について(通 知 )」( 和 3 年 3 月 3 日 付 け 環 保 企 発 第
2103038 )に示された特 の場合において、
機 は医 的 を し出ることなく 等 を行うことができる。
) 「石綿による健康被害の救済における指 病に係る医 的 に関する考え方について
( )」(平成18年3月2日中 環境 会)
7) 「医 的 に係る資料に関する 事 」(平 成18年 月 日中 環境 会石綿健康被害
委員会)
) 「医 的 に係る資料に関する 事 」(平 成25年 月18日中 環境 会石綿健康被害
委員会)
9) 「医 的 に関する 事 」( 和2年12 月25日中 環境 会石綿健康被害 委 員会)
10) 石綿による健康被害の救済に関する法 の一 を改正する法 (平成20年法 第77 ) 11) 療 開始日が、 日の3年前の日より前で
ある場合には、 日の3年前の日にまで効 力が って生 ることとされた。
12) 石綿による健康被害の救済に関する法 の一 を改正する法 (平成20年法 第77 ) 13) 石綿による健康被害の救済に関する法 の一
を改正する法 (平成23年法 第104 ) 14) 石綿による健康被害の救済に関する法 第37
第1 の一 出 の一 を改正する
(平成25年環境省告示第111 )
15) O r or d in Data「Coronavir s (COVID-19)
Deat s」
ttps o rwor dindata.org covid-deat s 最 終確 日: 和3年10月20日
16) 最 所平成30年(受)第1451 ・第1452 和3年 月17日第一 法 決 最 所平成31年(受)第495 和3年 月 17日第一 法 決