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福島県における医療機器産業プロジェクトと海外展開

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福島県における医療機器産業プロジェクトと海外展開 (8917)

福島大学地域創造

第30巻 第1号 75〜84ページ 2018年9月

Journal of Center for Regional Affairs, Fukushima University 30 (1):75-84, Sep 2018

調 査 報 告

1.は じ め に

 医療機器は,世界的に市場が拡大しており,我が国 でも成長を支えるリーディング産業として期待され,

これまでも「日本再興戦略」での健康大国戦略等,産 官学連携の様々な施策,ファンディングがなされてい る。しかし,医療機器はニーズオリエンテッドである が故に多品種で個々の製品の市場規模は極めて小さい ことから世界規模での商品展開を志向しなければなら ず,研究開発品がただちにビジネスとして成功するこ とは簡単ではない。

 筆者等が約10年間にわたって福島県において実施し た医療機器ファンディング事業の経験をもとに日本企 業が国内販売において国民皆保険制度であるが故に出 口戦略の発想がガラパゴス化していないかとの懸念か ら本研究に着手したものである。

 図

のグローバル市場の動向からも明らかなよう に,経済成長と相まってこの10年でアジアの医療機器 市場が大きく伸びていることがわかる。1967年に発足 した東南アジア諸国連合(ASEAN)も創設50周年を 迎え,先進国にとって東南アジアはものづくり「工場」

から著しく拡大する「市場」へと変貌している。

 このため,福島県内においても東南アジア諸国と連 携し医療機器の輸出拡大を図ろうとする動きが出てき

ている。そこで,本調査研究では,医療機器研究開発 の出口戦略が強化されるべきとの視点からビジネスモ デルやその実行体制,具体的な要点を開発商品の周辺 事情まで拡げて考察することを目的に調査を行い,東 南アジアにおける販路開拓上の問題点を明らかにし,

解決策を探ったのでその結果を報告する。

2.調査方法等

 本調査研究では,タイ王国をターゲットに市場のア ウトラインや製品ニーズ,日本製品と競合する商品,

法規制上の問題点などを把握するため,医療技術産業 戦略コンソーシアム(METIS)や日本医療機器産業

Medical device industry project in Fukushima prefecture and overseas expansion

Current state analysis of medical equipment industry in Southeast Asia

OKOSHI Masahiro

福島県における医療機器産業プロジェクトと海外展開

〜東南アジアにおける医療機器産業の現状分析〜

福島大学地域創造支援センター  

大 越 正 弘 

0 1,000 2,000 3,000 4,000 5,000

2010

米国 欧州 日本 アジア その他

(億ドル) 出典:経済産業省における医療機器産業の調査

2014 2019

図1 グローバル市場の動向

(2)

福島大学地域創造 第30巻 第1号 2018.9

(8918)

  76 連合会(医機連)等へ聞き取り調査を行うとともに,

駐日タイ大使館を通じて市場動向や法規制などの基本 情報を入手した。

 また,

2018年 2

月には

日でタイに赴き,JETRO バンコク事務所,タイ工業省,サミティベート病院,

タイ工業連盟福祉・医療機器産業部,タイ医療機器技 術協会等を訪問するなど現地調査も行った。

3.我が国の医療機器産業の特徴

 医療機器は,メス,はさみ,人工呼吸器,ペース メーカー,内視鏡,人工透析装置,MRI等の多種多様 な製品で構成されており,我が国ではこれら医療機器 は,「医薬品医療機器等法」により,図

に示すよう に人体に与えるリスクの程度によってクラスⅠからク ラスⅣに分類されている。製造販売にはクラスⅠでは 届出,クラスⅡ・Ⅲでは適合性認証基準のある機器は 第三者認証,無い機器は独立行政法人医薬品医療機器 総合機構(PMDA)の審査による厚生労働大臣の承認,

クラスⅣではすべての厚生労働大臣の承認が必要とな る。また,医療機器事業に携わる企業は製造業あるい は製造販売業の認可を取得しなければならない。

販売業者の半数以上が従業員数100人以下の中小企業 で占められている。

 また,製品としての医療機器はその構造および作動 原理の点から一般の工業製品と同様であり,一度市場 に出た製品は改善改良を重ねながらより使いやすく安 全なものへと変化させていくという特徴を持つことが 指摘されている。さらに,医療機器産業の需要は景 気に左右されにくいとされており,オイルショック・

ITバブルの崩壊時等の不況時を含め,図3に示すよ うに医療機器産業は一貫して成長している。

図2 医療機器の分類と規制

図3 日本の医療機器市場の動向

福島県における医療機器産業プロジェクトと海外展開

~ 東南アジアにおける医療機器産業の現状分析 ~

福島大学 地域創造支援センター 大越正弘

Medical device industry project in Fukushima prefecture and overseas expansion

Current state analysis of medical equipment industry in Southeast Asia

Masahiro OOKOSHI

1.はじめに

医療機器は、世界的に市場が拡大しており、我が国 でも成長を支えるリーディング産業として期待され、

これまでも「日本再興戦略」での健康大国戦略等、産 官学連携の様々な施策、ファンディングがなされてい る。しかし、医療機器はニーズオリエンテッドである が故に多品種で個々の製品の市場規模は極めて小さい ことから世界規模での商品展開を志向しなければなら ず、研究開発品がただちにビジネスとして成功するこ とは簡単ではない。

筆者等が約

10

年間にわたって福島県において実施 した医療機器ファンディング事業の経験をもとに日本 企業が国内販売において国民皆保険制度であるが故に 出口戦略の発想がガラパゴス化していないかとの懸念

から本研究に着手したものである。

1

のグローバル市場の動向からも明らかなよう に、経済成長と相まってこの

10

年でアジアの医療機 器市場が大きく伸びていることがわかる。

1967

年に 発足した東南アジア諸国連合

(ASEAN)

も創設

50

周年 を迎え、先進国にとって東南アジアはものづくり「工 場」から著しく拡大する「市場」へと変貌している。

このため、福島県内においても東南アジア諸国と連 携し医療機器の輸出拡大を図ろうとする動きが出てき ている。そこで、本調査研究では、医療機器研究開発

の出口戦略が強化されるべきとの視点からビジネスモ デルやその実行体制、具体的な要点を開発商品の周辺 事情まで拡げて考察することを目的に調査を行い、東 南アジアにおける販路開拓上の問題点を明らかにし、

解決策を探ったのでその結果を報告する。

2.調査方法等

本調査研究では、タイ王国をターゲットに市場のア ウトラインや製品ニーズ、日本製品と競合する商品、

法規制上の問題点などを把握するため、医療技術産業 戦略コンソーシアム(

METIS

)や日本医療機器産業連 合会(医機連)等へ聞き取り調査を行うとともに、駐 日タイ大使館を通じて市場動向や法規制などの基本情 報を入手した。

また、

2018

2

月には

5

6

日でタイに赴き、

JETRO

バンコク事務所、タイ工業省、サミティベー

ト病院、タイ工業連盟福祉・医療機器産業部、タイ医 療機器技術協会等を訪問するなど現地調査も行った。

3.我が国の医療機器産業の特徴

医療機器は、メス、はさみ、人工呼吸器、ペースメ

ーカー、内視鏡、人工透析装置、

MRI

等の多種多様 な製品で構成されており、我が国ではこれら医療機器 0

1000 2000 3000 4000 5000

2010 2014 2019

図1 グローバル市場の動向 米国 欧州 日本 アジア その他 (億ドル)

図 2 医療機器の分類と規制 出展:経済産業省における医療機器産

0 5000 10000 15000 20000 25000 30000

21,105

14年 05年 06年 07年 08年 09年 10年

11年 12年 13年 22,587

21,314 22,239

21,760 23,154

23,860 25,935

26,758 27,857 出典:厚生労働省 薬事工業生産動態統計 単位:億円

4.我が国における医療機器産業の現状

 人口の高齢化や新興国の経済発展等により,医療機 器産業の世界市場は約

8%

の成長率で年々拡大してい る。世界市場の規模は2013年では約3,278億ドルであ るが,2018年には約4,536億ドルに達すると予測され ており,今後とも高い成長率が期待されている。

 図

にもあるように世界市場の構成では,欧米諸国 とともに近年ではアジア新興国もシェアを拡大しつつ ある一方で,日本市場のシェアは減少傾向にある。

 このように世界的に医療機器は次世代の経済成長を 牽引する産業として有望視されているが,国内市場を みれば輸入超過で推移しており,国内産業としては十 分な競争力が発揮されていない状況にある。

 我が国の医療機器市場規模は2005年以降増加し,

2014年は過去最大の約2.8兆円となった。対前年伸び

率は年によって増減しているが,1994年から2015年ま での平均伸び率は約3.0%であり,景気の影響を受け にくい安定的な市場と言える。市場規模は国民医療費 の約

6%

強で安定している。

 医療機器の特徴としては,「医薬品医療機器等法」

における一般名称が4,000種類以上,品目数では30万 品目以上と一品目当たりの生産額が小さいニッチ市場 が多く,多品種少量生産及び販売の典型であることや 労働集約型産業であり,製品が基盤技術の集合体で構 成されており,技術力を蓄積している中小企業にも参 入機会が大きいといわれている。実際,医療機器製造

(3)

福島県における医療機器産業プロジェクトと海外展開 (8919)

 わが国のものづくり企業は医療機器に活かすことが できる高い技術を有しているにもかかわらず,現状の 国内売上額(2.8兆円)に占める輸入額の割合は49%

であり,輸入超過で推移している。

 これは,欧米主要メーカーが医療機器と医療サービ スをパッケージとした積極的な海外展開を推進する 中,日本は遅れをとっているためと考えられる。また,

現在の日本市場は,平均伸び率が約3.0%と他産業に 比べ成長余地を残してはいるものの,少子高齢化で人 口減少の局面にあり,日本政府も医療費抑制を模索し ていることから,将来的には,国内の医療機器市場は 縮小傾向にあるものと思われる。

 これに対し,中国市場は対前年比で約20%,インド 市場は対前年比で約10%,タイ市場でも対前年比で約

7%とアジア地域では,人口増加や所得水準の高度化

などに相まって,医療機器市場が急拡大してきている。

 このため,我が国の中小規模の医療機器メーカーも 国内市場のみならず,積極的に東南アジアの市場開拓 を模索せざるを得ない状況にある。

5.福島県における医療機器産業の現状

 福島県は,東日本大震災後に策定した「福島復興計 画」において,12の重点プロジェクトの1つに「医療 関連産業集積プロジェクト」を位置づけ,プロジェク ト推進母体として2013年

月には「ふくしま医療機器 産業推進機構」を設立するとともに,医療機器の開発 から事業化までを一体的に支援する「ふくしま医療機 器開発支援センター」を2016年11月に整備し,福島県 が我が国をリードする医療関連産業の集積地域として 成長することで早期の産業復興を目指している。

 具体的には,「福島復興計画」の最終年度である

2020年度までに,医療機器関連の工場立地件数を累計

で70件以上,医療機器生産金額を1,750億円以上とす る目標を立て,①研究開発の促進,②新規参入の支援,

③医工連携・人材育成,④情報発信・海外展開など各 種事業を総合的に展開している。

 また,福島県では,オリンパス㈱の消化器系内視鏡 の製造拠点や米国系大手医療機器メーカーのジョンソ ン・エンド・ジョンソン㈱など60以上の医療機器製造 業者と150以上の医療機器部品メーカーが県内に立地 していることを活かして,東日本大震災以前より「世 界をリードする医療機器の設計・製造ハブ拠点」を目 指して,「ふくしま次世代医療産業集積プロジェクト」

に取り組んでいる。

 その成果の

つとして,図

にあるように,2014年 の医療機器生産金額が1,303億円で全国

位,医療機 器受託生産金額が433億円で全国

位(厚生労働省 薬 事工業生産動態統計),医療用機械器具の部品等生産 金額が177億円で全国

位(経済産業省 工業統計調査)

になるなど,全国屈指の医療機器産業の集積地域とし て成長してきている。

0 200 400 600 800 1000 1200 1400

610

14年 05年 06年 07年 08年 09年 10年 11年 12年 13年

628 688 942

801

911 976 1,089

1,2451,303 出典:厚生労働省 薬事工業生産動態統計 単位:億円

図4 福島県の医療機器生産金額の推移

6.福島県の医療機器開発プロジェクト

 先に述べたように福島県では,世界をリードする

「医療福祉機器設計・製造ハブ拠点」の形成をめざし,

2005年度から医療産業集積プロジェクトに取組み,県

内企業等が行う研究開発活動を支援してきている。

 特に,2011年の震災以降は,震災からの復興を目的 として,国からの補助金を活用して,医療・介護ロボッ ト等から一般医療機器までの試作開発や臨床試験等に 要する経費を支援する「ふくしま医療福祉機器開発事 業費補助金(

年間で総事業費約70億円)」や「救急・

災害対応医療機器開発費補助金(

年間で総事業費約

億円)」を設け,平成24〜28年度に渡り64件の研究 課題を採択し,県内企業のイノベーティブな研究活動 を支援してきた。

 これらの中には,世界最先端の医療用ロボットスー ツ,ドライアイ診断キット,生体吸収性ステント,ディ スポーザブル内視鏡等の開発に成功し,医薬品医療機 器等法の承認を得て市場化され,製品を量産化するた めの工場を新増設する企業も現れてきている。

 しかしながら,一方で,半数以上(33件)の補助事 業案件が,試作・開発ステージ止まりで,プロトタイ プ(試作品)を作って事業終了となっている。

 この違いは,研究開発に着手する段階で,企業が医

(4)

福島大学地域創造 第30巻 第1号 2018.9

(8920)

  78 療現場のニーズをどの程度的確に捉え,図

に示す ように研究開発から事業化までの一連の流れ,所謂, 

①どのような手順で開発を行い,②医薬品医療機器総 合機構(PMDA)等の専門家に薬事相談を行ったう えで,③非臨床試験(動物実験等安全性試験)や臨床 試験を実施し,④医薬品医療機器等法の承認を得て,

⑤量産体制を整備し,⑥量産・市販に至るという各ス テージで求められる作業や経費を正確に理解し,エン ドユーザーである医療関係者に製品を売り込むための 精緻なビジネスモデルを開発・試作段階で描いていた か否かで成否が分かれたものと思われる。

ケースが如何に多いかが判る。

 販路開拓に窮するケースとして,日頃付き合いのあ る特定の医療関係者のニーズをもって,研究開発を進 めた結果,プロトタイプは出来たが,いざ販売先を見 出そうとしても,多くの医療関係者にとってはあまり 必要性が感じられない製品となってしまい,販路が開 拓できず事業化を断念することもあることから,ニー ズ調査の段階から事業戦略やビジネスモデルをしっか り立てて対処する必要がある。

7.福島県とタイ王国との医療機器分野での  連携協定

 福島県は,東南アジア諸国連合(ASEAN)の主要 国で医療機器分野の成長が著しいタイと医療機器分野 で連携する覚書を2017年

月に締結した。タイ側は福 島県内の中小企業と自国企業との商談を仲介し販路開 拓に協力する。福島県側は,2016年11月に福島県郡山 市内に開所した「ふくしま医療機器開発支援センター」

にタイから技術者や医療関係者を受入れ,製品開発力 や医療技術の向上を後押しするとしている。福島県は,

この覚書締結を契機に福島県内企業のASEAN市場へ の本格参入を積極的に支援する体制を整備した。

 図

に示すように連携覚書の構図は,①福島県とタ イ工業省産業振興局,②ふくしま医療機器開発支援セ ンターを運営する「ふくしま医療機器産業推進機構」

とタイの工業連盟福祉・医療機器産業部,国立科学技 術開発庁の三者で,行政及び産業支援団体レベルでそ れぞれに締結されている。有効期間は

年間を想定し ており,成果次第で更新も検討されている。福島県は,

具体的には、「福島復興計画」の最終年度である

2020

年度までに、医療機器関連の工場立地件数を累計で

70

件以上、医療機器生産金額を

1,750

億円以上とする目 標を立て、①研究開発の促進、②新規参入の支援、③ 医工連携・人材育成、④情報発信・海外展開など各種 事業を総合的に展開している。

また、福島県では、オリンパス

(

)

の消化器系内視鏡 の製造拠点や米国系大手医療機器メーカーのジョンソ

ン・エンド・ジョンソン

(

)

など

60

以上の医療機器製 造業者と

150

以上の医療機器部品メーカーが県内に立 地していることを活かして、東日本大震災以前より「世 界をリードする医療機器の設計・製造ハブ拠点」を目 指して、「ふくしま次世代医療産業集積プロジェクト」

に取り組んでいる。

その成果の1つとして、図

4

にあるように、

2014

年 の医療機器生産金額が

1,303

億円で全国

3

位、医療機 器受託生産金額が

433

億円で全国

1

位(厚生労働省 薬事工業生産動態統計)、医療用機械器具の部品等生産 金額が

177

億円で全国

1

位(経済産業省 工業統計調 査)になるなど、全国屈指の医療機器産業の集積地域 として成長してきている。

6.福島県の医療機器開発プロジェクト

先に述べたように福島県では、世界をリードする「医 療福祉機器設計・製造ハブ拠点」の形成をめざし、

2005

年度から医療産業集積プロジェクトに取組み、県内企 業等が行う研究開発活動を支援してきている。

特に、

2011

年の震災以降は、震災からの復興を目的 として、国からの補助金を活用して、医療・介護ロボ ット等から一般医療機器までの試作開発や臨床試験等 に要する経費を支援する「ふくしま医療福祉機器開発

事業費補助金(

5

年間で総事業費約

70

億円)」や「救 急・災害対応医療機器開発費補助金(

3

年間で総事業 費約

6

億円)」を設け、平成

24

28

年度に渡り

64

件 の研究課題を採択し、県内企業のイノベーティブな研 究活動を支援してきた。

これらの中には、世界最先端の医療用ロボットスー ツ、ドライアイ診断キット、生体吸収性ステント、デ ィスポーザブル内視鏡等の開発に成功し、医薬品医療 機器等法の承認を得て市場化され、製品を量産化する ための工場を新増設する企業も現れてきている。

しかしながら、一方で、半数以上(

33

件)の補助事 業案件が、試作・開発ステージ止まりで、プロトタイ プ(試作品)を作って事業終了となっている。

この違いは、研究開発に着手する段階で、企業が医

療現場のニーズをどの程度的確に捉え、図

5

に示すよ うに研究開発から事業化までの一連の流れ、所謂、① どのような手順で開発を行い、②医薬品医療機器総合 機構(

PMDA

)等の専門家に薬事相談を行ったうえで、

③非臨床試験(動物実験等安全性試験)や臨床試験を 実施し、④医薬品医療機器等法の承認を得て、⑤量産 体制を整備し、⑥量産・市販に至るという各ステージ で求められる作業や経費を正確に理解し、エンドユー ザーである医療関係者に製品を売り込むための精緻な ビジネスモデルを開発・試作段階で描いていたか否か で成否が分かれたものと思われる。

また、ほとんどの補助事業案件は、製品の販売先を 国内市場としており、今後、著しい市場拡大が見込ま れる東南アジア等の海外市場をターゲットに捉えてい る企業は

64

案件中

8

社程度であった。

これは、県内企業の多くが、東南アジア等の海外に おける医療機器市場の現状を理解しておらず、同地域 におけるビジネスモデルが描き切れていない証左であ

610 628 688 942

801 911 976 1089

1245 1303

0506070809 1011 121314 単位:億円 出典:厚生労働省 薬事工業生産動態統計

図 5 研究会開発から事業化に至るステージ 図 4 福島県の医療機器生産金額の推移

図5 研究会開発から事業化に至るステージ

図6 医療機器開発支援ネットワークに寄せられた    相談案件

技術シーズ 技術開発 臨床評価 安全性評価 薬事申請 販路開拓 経営相談 その他 出典:医療機器開発支援ネットワークの実施状況及び活動の方向

5%

16%

4%

6% 1%

54%

1%

13%

 また,ほとんどの補助事業案件は,製品の販売先を 国内市場としており,今後,著しい市場拡大が見込ま れる東南アジア等の海外市場をターゲットに捉えてい る企業は64案件中

社程度であった。

 これは,県内企業の多くが,東南アジア等の海外に おける医療機器市場の現状を理解しておらず,同地域 におけるビジネスモデルが描き切れていない証左であ り,我が国の多くの中小医療機器メーカーも同様の状 況にあるものと思われる。

 また,国では,2014年10月から医療機器センターや 産総研等の専門支援機関と自治体や公設試験研究機関 等の地域支援機関が連携してというポータルサイトを 運営しているが,2015年

月時点でここに寄せられた 相談件数は656件で,その内訳を見ると図

に示すよ うに販路開拓に関する相談案件(54%)が最も多い。

販路開拓の相談内容を詳細に見ると,医療現場のニー ズを的確に汲み上げ大学等の有する技術シーズを活用 し試作開発を行い,その成果物をエンドユーザーたる 医療関係者に販売していくかのビジネスモデルを持た ないまま研究開発に着手し最終段階で販路に困窮する

(5)

福島県における医療機器産業プロジェクトと海外展開 (8921)

  79

2017年9月にタイ・バンコクで開催されるASEAN地

域最大規模の医療機器展示会,メディカル・フェア・

タイランドに県内企業

社と出展し販路開拓を支援し ている。タイ工業省は覚書に基づき,現地の医療関係 者に本県企業を紹介し商談をサポートする。ふくしま 医療機器開発支援センターは,タイの医療機器メー カーの技術者や医療従事者を迎い入れ,模擬手術室や 医療処置シミュレーターなどを活用して内視鏡操作や カテーテル挿入などの技能研修を指導する。

 タイは,医療機器の製品化に向けた認証制度が未整 備なため,ふくしま医療機器開発支援センターの認証 や安全性評価の仕組みを学び,自国の制度確立につな げる。

 福島県知事は,覚書締結に際しASEAN地域での県

内企業の販路拡大やタイへの技術支援に期待感を示 し,「福島県内企業の優れた技術を積極的に発信し,

医療関連産業の発展に努める」と述べている。

 福島県が海外と医療機器分野で連携強化に関する 覚書を結ぶのは2014年

月のドイツのノルトライン・

ヴェストファーレン(NRW)州に続き

例目である。

8.東南アジアにおける医療機器産業の現状

 アジア地域で我が国企業の関心が最も集まる国は中 国,そして東南アジア地域である。ただし,欧米先進 国の医療機器メーカーに加えて,急速に実力を増して きている新興各国のメーカーも一斉に展開を強めてき ており,既に激しい競争が始まっている。

 表1に示すようにタイは東南アジアではマレーシア に次いで医療機器市場の規模が大きく,また診断・治 療を目的として世界各地から多くの患者を集めてお り,医療機器に対する需要の伸びが期待できる有望な 市場である。タイはまだ若年人口が多数を占めている が,65歳以上の人口比率は2006年8.0%→15年10.0%

に緩やかながら右肩上がりで上昇しており,タイの高 齢者人口は,向こう10年で全人口中17.2

(およそ

1,700万人)にまで増加すると予測されている。

 このため,人口の高齢化により,医療機器・医薬品 の市場規模は拡大することが予測されており,慢性疾 患の増加は医療費増大につながり,糖尿病など生活習 慣病,整形・インプラント関連でビジネス機会が生ま れる可能性があると見込まれている。

図7 医療機器分野における連携覚書の構図 り、我が国の多くの中小医療機器メーカーも同様の状

況にあるものと思われる。

また、国では、

2014

10

月から医療機器センター や産総研等の専門支援機関と自治体や公設試験研究機 関等の地域支援機関が連携してというポータルサイト を運営しているが、

2015

3

月時点でここに寄せら

れた相談件数は

656

件で、その内訳を見ると図

6

に示 すように販路開拓に関する相談案件(

54

%)が最も多 い。販路開拓の相談内容を詳細に見ると、医療現場の ニーズを的確に汲み上げ大学等の有する技術シーズを 活用し試作開発を行い、その成果物をエンドユーザー たる医療関係者に販売していくかのビジネスモデルを 持たないまま研究開発に着手し最終段階で販路に困窮 するケースが如何に多いかが判る。

販路開拓に窮するケースとして、日頃付き合いのあ る特定の医療関係者のニーズをもって、研究開発を進 めた結果、プロトタイプは出来たが、いざ販売先を見 出そうとしても、多くの医療関係者にとってはあまり 必要性が感じられない製品となってしまい、販路が開 拓できず事業化を断念することもあることから、ニー ズ調査の段階から事業戦略やビジネスモデルをしっか り立てて対処する必要がある。

7.福島県とタイ王国との医療機器分野での連携協定 福島県は、東南アジア諸国連合(

ASEAN

)の主要国 で医療機器分野の成長が著しいタイと医療機器分野で 連携する覚書を

2017

6

月に締結した。タイ側は福 島県内の中小企業と自国企業との商談を仲介し販路開

山市内に開所した「ふくしま医療機器開発支援センタ ー」にタイから技術者や医療関係者を受入れ、製品開

発力や医療技術の向上を後押しするとしている。福島 県は、この覚書締結を契機に福島県内企業の

ASEAN

市場への本格参入を積極的に支援する体制を整備した。

7

に示すように連携覚書の構図は、①福島県とタ イ工業省産業振興局、②ふくしま医療機器開発支援セ ンターを運営する「ふくしま医療機器産業推進機構」

とタイの工業連盟福祉・医療機器産業部、国立科学技 術開発庁の三者で、行政及び産業支援団体レベルでそ れぞれに締結されている。有効期間は

3

年間を想定し ており、成果次第で更新も検討されている。福島県は、

2017

9

月にタイ・バンコクで開催される

ASEAN

地域最大規模の医療機器展示会、メディカル・フェア・

タイランドに県内企業

7

社と出展し販路開拓を支援し ている。タイ工業省は覚書に基づき、現地の医療関係 者に本県企業を紹介し商談をサポートする。ふくしま 医療機器開発支援センターは、タイの医療機器メーカ ーの技術者や医療従事者を迎い入れ、模擬手術室や医 療処置シミュレーターなどを活用して内視鏡操作やカ テーテル挿入などの技能研修を指導する。

タイは、医療機器の製品化に向けた認証制度が未整 備なため、ふくしま医療機器開発支援センターの認証 や安全性評価の仕組みを学び、自国の制度確立につな げる。

福島県知事は、覚書締結に際し

ASEAN

地域での県 内企業の販路拡大やタイへの技術支援に期待感を示し、

「福島県内企業の優れた技術を積極的に発信し、医療 関連産業の発展に努める」と述べている。

福島県が海外と医療機器分野で連携強化に関する覚

5%

16%

4%

1%

6%

54%

1%

13%

技術シーズ 技術開発 臨床評価 安全性評価 薬事申請 販路開拓 経営相談 その他 出典:医療機器開発支援ネットワークの実施状況及び活動の方向

図 7 医療機器分野における連携覚書の構図

図 6 医療機器開発支援ネットワークに寄せられ た相談案件

表1 アジアにおける医療機器市場の動向

アジア地域 人口(100万人) 65歳以上人口( 医療機器市場(100万ドル) 病床(ベッド)数

2010年 2015年 増加率 2010年 2015年 2010年 2015年 増加率 2004年 2009年 増加率

日本 126.8 124.7 ‑1.7% 22.6 25.6 23,922.0 30,344.7 26.8% 1,631,553 1,612,635 ‑1.2%

中国 1,339.2 1,373.4 2.8% 8.3 9.3 7,445.9 14,073.2 89.0% 2,059,405 2,611,987 26.8%

韓国 49.5 50.0 1.0% 11.1 13.0 3,742.6 7,072.7 89.0% 251,518 388,782 54.6%

インド 1,184.1 1,273.6 7.6% 5.4 6.1 2,352.0 4,845.0 106.0% 752,831 816,256 8.4%

マレーシア 28.9 30.8 6.6% 5.1 6.0 1,089.4 1,712.9 57.2% 47,462 54,404 14.6%

タイ 67.5 70.2 4.0% 8.9 10.0 795.1 1,227.5 54.4% 133,479 137,417 3.0%

ベトナム 87.8 92.1 4.9% 5.7 5.9 514.8 1,047.2 103.4% 124,300 159,622 28.4%

インドネシア 243.0 225.8 5.3% 6.1 6.6 430.2 923.2 114.6% 132,231 151,370 14.5%

フィリピン 99.9 109.5 9.6% 5.5 6.1 333.2 495.1 48.6% 88,088 97,392 10.6%

パキスタン 185.5 205.8 10.9% 4.5 4.4 235.5 393.2 67.0% 81,873 84,086 2.7%

シンガポール 5.1 5.8 13.7% 9.0 11.0 235.2 353.5 50.3% 11,840 11,364 ‑4.0%

出典:人口,世界の医療機器市場部分 Espicom Business Inteligence,Medistat Worldwide Medical Market Forecasts to 2015    病床数部分 Espicom Medical Fact Book 2010

(6)

福島大学地域創造 第30巻 第1号 2018.9

(8922)

  80

9.タイにおける医療機関の現状

 タイの人口は約

千万人で,面積は51.4万㎢と我が 国の1.36倍の国土面積を有し,首都バンコク,中央部,

北部,北東部,東部,西部,南部の

地方に大別され

77県で構成されている。県(チャンワット),郡(ア

ンプアー),町(タムボン),村(ムーバーン)いう内 務省を中心とする中央政府による監督下の地方行政単 位と特別法に基づく,県行政機構,町行政機構,バン コク都,パタヤ特別市という地方自治体が混在し統治 している。

 表

に示すようにタイにおける医療機関の種別を見 ると,病院数で最も多いのは郡立病院であるが,

病 院当たりの平均病床数は42床と比較的小さな病院で構 成されている。また,県立病院は

県に

か所設置さ れており,

病院当たりの平均病床数は415床と各県 の中核病院となっている。

10 .タイの医療機器の市場動向と法規制

⑴ タイの市場規模は急激に拡大

 メディカルツーリズムが盛んで,年間250万人の 医療観光者が訪れるタイは医療機器の需要が近年急 増している。また,約70%の医療機器の売上は輸入 品で,大メコン圏の中でタイはハイテク医療機器の 輸入が一番高い国であることから,我が国企業はハ イテク医療機器の輸出をタイの市場拡大がチャンス と捉えている。

 タイの市場規模は,アジアでは日本,中国,韓国,

インド,マレーシアに次ぐ

位(10年時点,約

億 ドル)で,表

に示すように2010年から15年にかけ て市場規模は1.5倍の約12億ドルに拡大している。

8.東南アジアにおける医療機器産業の現状

アジア地域で我が国企業の関心が最も集まる国は中 国、そして東南アジア地域である。ただし、欧米先進 国の医療機器メーカーに加えて、急速に実力を増して きている新興各国のメーカーも一斉に展開を強めてき ており、既に激しい競争が始まっている。

表1に示すようにタイは東南アジアではマレーシア に次いで医療機器市場の規模が大きく、また診断・治 療を目的として世界各地から多くの患者を集めてお り、医療機器に対する需要の伸びが期待できる有望な 市場である。タイはまだ若年人口が多数を占めている が、

65

歳以上の人口比率は

2006

8.0

→15

10.0

% に緩やかながら右肩上がりで上昇しており、タイの高 齢者人口は、向こう

10

年で全人口中

17.2%

(およそ

1,700

万人)にまで増加すると予測されている。

このため、人口の高齢化により、医療機器・医薬品の市 場規模は拡大することが予測されており、慢性疾患の増 加は医療費増大につながり、糖尿病など生活習慣病、

整形・インプラント関連でビジネス機会が生まれる可 能性があると見込まれている。

9.タイにおける医療機関の現状

タイの人口は約

7

千万人で、面積は

51.4

万㎢と我が 国の

1.36

倍の国土面積を有し、首都バンコク、中央部、

北部、北東部、東部、西部、南部の

7

地方に大別され

77

で構成されている。県(チャンワット)、郡(アンプアー)、町

(タムボン)、村(ムーバーン)いう内務省を中心とする中央 政府による監督下の地方行政単位と特別法に基づく、県 行政機構、町行政機構、バンコク都、パタヤ特別市という 地方自治体が混在し統治している。

2

に示すようにタイにおける医療機関の種別を見る と、病院数で最も多いのは郡立病院であるが、

1

病院当た りの平均病床数は

42

床と比較的小さな病院で構成されて

いる。また、県立病院は

1

県に

1

か所設置されており、

1

病 院当たりの平均病床数は

415

床と各県の中核病院となっ ている。

さらに、

77

県が

7

つの地方で統治してされている関係か ら、各地方には

1

地方あたり病床数

900

を超える大型病院 が

3

4

か所設置されている。また、先進医療やメディカル ツーリズムを行っているマヒドン大学やタマサート大学、コ

アジア地域

人口(100万人) 65歳以上人口(%) 医療機器市場(100万ドル) 病床(ベッド)数 2010 2015 増加率 2010 2015 2010 2015 増加率 2004 2009 増加率 日本 126.8 124.7 -1.7% 22.6 25.6 23,922.0 30,344.7 26.8% 1,631,553 1,612,635 -1.2%

中国 1,339.2 1,373.4 2.8% 8.3 9.3 7,445.9 14,073.2 89.0% 2,059,405 2,611,987 26.8%

韓国 49.5 50.0 1.0% 11.1 13.0 3,742.6 7,072.7 89.0% 251,518 388,782 54.6%

インド 1,184.1 1,273.6 7.6% 5.4 6.1 2,352.0 4,845.0 106.0% 752,831 816,256 8.4%

マレーシア 28.9 30.8 6.6% 5.1 6.0 1,089.4 1,712.9 57.2% 47,462 54,404 14.6%

タイ 67.5 70.2 4.0% 8.9 10.0 795.1 1,227.5 54.4% 133,479 137,417 3.0%

ベトナム 87.8 92.1 4.9% 5.7 5.9 514.8 1,047.2 103.4% 124,300 159,622 28.4%

インドネシア 243.0 225.8 5.3% 6.1 6.6 430.2 923.2 114.6% 132,231 151,370 14.5%

フィリピン 99.9 109.5 9.6% 5.5 6.1 333.2 495.1 48.6% 88,088 97,392 10.6%

パキスタン 185.5 205.8 10.9% 4.5 4.4 235.5 393.2 67.0% 81,873 84,086 2.7%

シンガポール 5.1 5.8 13.7% 9.0 11.0 235.2 353.5 50.3% 11,840 11,364 -4.0%

出典:人口、世界の医療機器市場部分 Espicom Business Inteligence,Medistat Worldwide Medical Market Forecasts to 2015 病床数部分 Espicom Medical Fact Book 2010

表 2 タイの医療機関情報 表1 アジアにおける医療機器市場の動向

表2 タイの医療機関情報

 さらに,77県が

つの地方で統治してされている関 係から,各地方には

地方あたり病床数900を超える 大型病院が

か所設置されている。また,先進医 療やメディカルツーリズムを行っているマヒドン大学 やタマサート大学,コンケン大学等は平均1,000床を 超える医学部付属病院を擁している。

 バンコク市内には36の市立病院があり平均病床数で

349床と中規模病院が配置されている。

 タイでは医師が不足しているが,所得の向上から医 療需要は伸びてきており,医師不足解消の一手段とし て都市と地方を結ぶ医療ITへの期待が増している。

ンケン大学等は平均

1000

床を超える医学部付属病院を 擁している。

バンコク市内には

36

の市立病院があり平均病床数で

349

床と中規模病院が配置されている。

タイでは医師が不足しているが、所得の向上から医 療需要は伸びてきており、医師不足解消の一手段とし て都市と地方を結ぶ医療

IT

への期待が増している。

10.タイの医療機器の市場動向と法規制

(1)タイの市場規模は急激に拡大

メディカルツーリズムが盛んで、年間

250

万人の医 療観光者が訪れるタイは医療機器の需要が近年急増し ている。また、約

70

%の医療機器の売上は輸入品 で、大メコン圏の中でタイはハイテク医療機器の輸入 が一番高い国であることから、我が国企業はハイテク 医療機器の輸出をタイの市場拡大がチャンスと捉えて いる。

タイの市場規模は、アジアでは日本、中国、韓国、

インド、マレーシアに次ぐ

6

位(

10

年時点、約

8

億ド ル)で、表

3

に示すように

2010

年から

15

年にかけて市 場規模は

1.5

倍の約

12

億ドルに拡大している。

いずれの品目についても、年平均成長率(

CAGR

は約

9

%台であるが、特に、

X

線診断装置が

12.2

%、

歯科用ドリルやチェア等が

14.1

%と高い伸び率となっ ている。

2015

年時点の品目分類を見ると、シリンジや針、

カテーテル等の消耗品類と、内視鏡や超音波診断装 置、

X

線診断装置等の画像診断装置の市場に占める割 合が、いずれも

26

%台となっており、この品目分類 に該当する製品がタイの医療機器市場を牽引してい

る。

(2)タイにおける医療機器関連企業の実態

タイにおける医療機器関連企業数は、図

8

に示すよ うに全体で

2,992

社であるが、タイ国内の製造業者は

498

社(

16

%)と輸入業者

2,494

社(

84

%)に比べ企 業数も少なく、多くの医療機器が輸入品で賄われてい る現状にある。

タイ保健省によれば医療機器の輸入高は

2011

年の

11

億ドルから

2012

年には約

12

億ドルまで約

9

%増 加し、タイの医療機器市場の

70

%以上が輸入医療機 器であるとの報告もある。また、タイ政府関係者や病 院関係者に対する聞取り調査によると、①介護分野で もノウハウの豊富な日本企業にビジネス機会があり、

現地医療機関と日本の医療機関の介護分野での提携が 進んでいる。②日本の大手医療機器メーカーの製品は 地元公立、私立病院ともに広く知られている。ただ し、③トップクラスの医師は米国や欧州に留学してお り、これら医師にとってなじみのある医療機器となる と欧米製品が最初に挙げられる。④中国、韓国、イン ドから低廉な製品は入ってきているが、高級病院を中 心に品質面での不安を感じている。との指摘もあっ た。

(3)タイ政府も国内医療機器産業を育成支援 タイ国内の医療機器製造業者は

496

社(図

9

)であ り、全医療機器関連企業数

2,992

社の

19

%を占めるに 過ぎず、

70

%以上の医療機器は輸入に頼っている状 況であるが、タイ政府では、タイ国内の医療機器関連 企業の育成にも力を注ぎ始めている。

9

に示すように、現在、タイ国内で内製化されて いる製品は、ゴム手袋やシリンジ、献血セット、縫合 糸等の消耗品類や、電子・電気機具と言っても比較的 構造が簡単な理学用法用器具や

X

線診断装置等であ

図 8 タイにおける医療機器関連企業の構成

表 3 タイの医療機器市場の推移 単位:100US$

出典:タイ保健省食品医薬品局(FDA)の 2016 年報告

表3 タイの医療機器市場の推移

単位:100万US$

出典:タイ保健省食品医薬品局(FDA)の2016年報告

 いずれの品目についても,年平均成長率(CAGR)

は 約

9 %

台 で あ る が, 特 に,

線 診 断 装 置 が

12.2%

,歯科用ドリルやチェア等が14.1%と高い伸

び率となっている。

 2015年時点の品目分類を見ると,シリンジや針,

カテーテル等の消耗品類と,内視鏡や超音波診断装 置,

線診断装置等の画像診断装置の市場に占める 割合が,いずれも26%台となっており,この品目分 類に該当する製品がタイの医療機器市場を牽引して いる。

⑵ タイにおける医療機器関連企業の実態

 タイにおける医療機器関連企業数は,図

に示す ように全体で2,992社であるが,タイ国内の製造業
(7)

福島県における医療機器産業プロジェクトと海外展開 (8923)

者は498社(16%)と輸入業者2,494社(84%)に比 べ企業数も少なく,多くの医療機器が輸入品で賄わ れている現状にある。

 タイ保健省によれば医療機器の輸入高は2011年の 約11億ドルから2012年には約12億ドルまで約

9%

増 加し,タイの医療機器市場の70%以上が輸入医療機 器であるとの報告もある。また,タイ政府関係者や 病院関係者に対する聞取り調査によると,①介護分 野でもノウハウの豊富な日本企業にビジネス機会が あり,現地医療機関と日本の医療機関の介護分野で の提携が進んでいる。②日本の大手医療機器メー カーの製品は地元公立,私立病院ともに広く知られ ている。ただし,③トップクラスの医師は米国や欧 州に留学しており,これら医師にとってなじみのあ る医療機器となると欧米製品が最初に挙げられる。

④中国,韓国,インドから低廉な製品は入ってきて いるが,高級病院を中心に品質面での不安を感じて いる,との指摘もあった。

⑶ タイ政府も国内医療機器産業を育成支援

 タイ国内の医療機器製造業者は496社(図

)で あり,全医療機器関連企業数2,992社の19%を占め るに過ぎず,70%以上の医療機器は輸入に頼ってい る状況であるが,タイ政府では,タイ国内の医療機 器関連企業の育成にも力を注ぎ始めている。

 図

に示すように,現在,タイ国内で内製化され ている製品は,ゴム手袋やシリンジ,献血セット,

縫合糸等の消耗品類や,電子・電気機具と言っても 比較的構造が簡単な理学療法用器具や

線診断装置 等であり,我が国企業が得意とする高精度かつ高品 質で複雑な構造を有する医療機器領域までは進出し ていない。

 このため,タイ政府としては,タイ国内企業と欧 米や我が国企業との連携を奨励し,イノベーション による技術の高度化や新製品開発を支援している。

 また,タイ政府では,医療機器の輸出も奨励して おり,アセアンの中では,メガネレンズや手術用手 袋などベーシック医療機器の輸出が一番高い国と なっている。図10に示すように医療機器の輸出高は

2002年では総額 4

億4,100万US$ ,2008年には

7,300万US$に達している。

ンケン大学等は平均

1000

床を超える医学部付属病院を 擁している。

バンコク市内には

36

の市立病院があり平均病床数で

349

床と中規模病院が配置されている。

タイでは医師が不足しているが、所得の向上から医 療需要は伸びてきており、医師不足解消の一手段とし て都市と地方を結ぶ医療

IT

への期待が増している。

10.タイの医療機器の市場動向と法規制

(1)タイの市場規模は急激に拡大

メディカルツーリズムが盛んで、年間

250

万人の医 療観光者が訪れるタイは医療機器の需要が近年急増し ている。また、約

70

%の医療機器の売上は輸入品 で、大メコン圏の中でタイはハイテク医療機器の輸入 が一番高い国であることから、我が国企業はハイテク 医療機器の輸出をタイの市場拡大がチャンスと捉えて いる。

タイの市場規模は、アジアでは日本、中国、韓国、

インド、マレーシアに次ぐ

6

位(

10

年時点、約

8

億ド ル)で、表

3

に示すように

2010

年から

15

年にかけて市 場規模は

1.5

倍の約

12

億ドルに拡大している。

いずれの品目についても、年平均成長率(

CAGR

は約

9

%台であるが、特に、

X

線診断装置が

12.2

%、

歯科用ドリルやチェア等が

14.1

%と高い伸び率となっ ている。

2015

年時点の品目分類を見ると、シリンジや針、

カテーテル等の消耗品類と、内視鏡や超音波診断装 置、

X

線診断装置等の画像診断装置の市場に占める割 合が、いずれも

26

%台となっており、この品目分類 に該当する製品がタイの医療機器市場を牽引してい

る。

(2)タイにおける医療機器関連企業の実態

タイにおける医療機器関連企業数は、図

8

に示すよ うに全体で

2,992

社であるが、タイ国内の製造業者は

498

社(

16

%)と輸入業者

2,494

社(

84

%)に比べ企 業数も少なく、多くの医療機器が輸入品で賄われてい る現状にある。

タイ保健省によれば医療機器の輸入高は

2011

年の

11

億ドルから

2012

年には約

12

億ドルまで約

9

%増 加し、タイの医療機器市場の

70

%以上が輸入医療機 器であるとの報告もある。また、タイ政府関係者や病 院関係者に対する聞取り調査によると、①介護分野で もノウハウの豊富な日本企業にビジネス機会があり、

現地医療機関と日本の医療機関の介護分野での提携が 進んでいる。②日本の大手医療機器メーカーの製品は 地元公立、私立病院ともに広く知られている。ただ し、③トップクラスの医師は米国や欧州に留学してお り、これら医師にとってなじみのある医療機器となる と欧米製品が最初に挙げられる。④中国、韓国、イン ドから低廉な製品は入ってきているが、高級病院を中 心に品質面での不安を感じている。との指摘もあっ た。

(3)タイ政府も国内医療機器産業を育成支援 タイ国内の医療機器製造業者は

496

社(図

9

)であ り、全医療機器関連企業数

2,992

社の

19

%を占めるに 過ぎず、

70

%以上の医療機器は輸入に頼っている状 況であるが、タイ政府では、タイ国内の医療機器関連 企業の育成にも力を注ぎ始めている。

9

に示すように、現在、タイ国内で内製化されて いる製品は、ゴム手袋やシリンジ、献血セット、縫合 糸等の消耗品類や、電子・電気機具と言っても比較的 構造が簡単な理学用法用器具や

X

線診断装置等であ

図 8 タイにおける医療機器関連企業の構成

表 3 タイの医療機器市場の推移 単位:100US$

出典:タイ保健省食品医薬品局(FDA)の 2016 年報告

出典:タイ保健省食品医薬品局(FDA)による2016年の報告

図8 タイにおける医療機器関連企業の構成

り、我が国企業が得意とする高精度かつ高品質で複雑 な構造を有する医療機器領域までは進出していない。

このため、タイ政府としては、タイ国内企業と欧米 や我が国企業との連携を奨励し、イノベーションによ る技術の高度化や新製品開発を支援している。

また、タイ政府では、医療機器の輸出も奨励してお

り、アセアンの中では、メガネレンズや手術用手袋な どベーシック医療機器の輸出が一番高い国となってい る。図

10

に示すように医療機器の輸出高は

2002

年で は総額

4

4100

US$

2008

年には

9

7300

US$

に 達している。

最大の輸出品目である手術用手袋は、

2008

年には

3

4600

US$

を達成、海外に輸出される消耗品の世 界シェア

36

%であった。輸出相手国としてもアメリ カは第

1

位であり、

2008

年には総額

2

6300

US$

医療機器をタイから輸入している。

その他、主な輸出相手国は、

EU

、日本、ドイツ、

オランダなどがある。

(4) 調達関係

バンコクで日本人専門窓口を有するサミティベート

病院の医師等によれば日本企業の製品に多い高品質、

高価格帯の医療機器については、一部公立の大手病院 の他は、都市部で海外からの診断・治療患者も訪れる ような私立の大型病院に納入機会があり、図

11

に示 すような超音波診断装置やカテーテル治療システム、

消化器系内視鏡等の先端医療機器の導入に関心を示し

ており、地方であっても中核病院への納入機会は期待 できるとの声もある。

調達の際には仕様が提示され、その仕様に適合する 製品の中で価格競争により落札先が決定する。最終的 には各病院に設置される調達委員会などで決まること から、委員会メンバーに選ばれるような影響力のある 医師に対し、日ごろから製品の紹介を行っていくこと が重要である。現地代理店などビジネスパートナーと 協力して、エンドユーザーである医師にどれだけ丁寧 に説明できるかが納入機会の成否を分ける。

また、日本製品は品質に優れているとのイメージは あるものの、馴染みのある医師はまだ少ないことか ら、①製品を有力医師に使ってもらう、②新製品はこ まめに代理店と協力して紹介する、③ワークショップ を開催するなどの展開を強めることが重要である。

(5) 許認可手続き

タイの医療機器分類は、国際的なリスク分類とは異 なり、図

12

に示すようにカテゴリー

1

license

)、カ テゴリー

2

notification

)、カテゴリー

3

general

) の

3

分類である。多くがカテゴリー

3

general

)に該 当し、現地の販売認可を得るのは比較的容易である。

輸入の場合は、原産国の自由販売証明(

Certificate for Free Sales

CFS

)があればよい。カテゴリー

3

General

)に該当する場合、

CFS

があれば

1

週間ほ どで認可が下りるとも言われている。

図 9 メイド・イン・タイ製品の一覧

図 11 タイの大手病院が関心を示す主な医療機器

図 10 タイの医療機器の輸出額の推移

出典:タイ保健省報告

図9 メイド・イン・タイ製品の一覧

0 200 400 600 800 1000

441

2008 2002 2003 2004 2005

2006 2007 493

583 700

782 881

973

出典:タイ保健省報告 単位:100万US$

10

 タイの医療機器の輸出額の推移

 最大の輸出品目である手術用手袋は,2008年には

億4,600万US$ を達成,海外に輸出される消耗品 の世界シェア36%であった。輸出相手国としてもア メリカは第

位であり,2008年には総額

億6,300 万US$の医療機器をタイから輸入している。

 その他,主な輸出相手国は,EU,日本,ドイツ,

オランダなどがある。

(8)

福島大学地域創造 第30巻 第1号 2018.9

(8924)

  82

⑷ 調 達 関 係

 バンコクで日本人専門窓口を有するサミティベー ト病院の医師等によれば日本企業の製品に多い高品 質,高価格帯の医療機器については,一部公立の大 手病院の他は,都市部で海外からの診断・治療患者 も訪れるような私立の大型病院に納入機会があり,

図11に示すような超音波診断装置やカテーテル治療 システム,消化器系内視鏡等の先端医療機器の導入 に関心を示しており,地方であっても中核病院への 納入機会は期待できるとの声もある。

に該当し,現地の販売認可を得るのは比較的容易で ある。

 輸入の場合は,原産国の自由販売証明(Certificate  for Free Sales:CFS)があればよい。カテゴリー

3(General)に該当する場合,CFS があれば1週

間ほどで認可が下りるとも言われている。

 今後は,カテゴリー

(general)分類のうち,

リスクが高い製品についてはカテゴリー1(license)

やカテゴリー

(notification)に相当する厳格な審 査を要求するようになる可能性もある。

 また,従来,タイでは医療機器の分類と管理レベ ルを混在して取り扱っていたが,今後は,図13に示 すように我が国と同様,分類はリスクの程度に応 じて4つのクラス(A低リスク,Bやや低リスク, 

やや高リスク,

高リスク)に分類され,管理は

つのレベル(

.認可,

.仕様宣言書の受領, 

3.リスト掲載)で行われる予定である。

 インプラント,滅菌機器,放射線機器,IVD,歯 科充填材などは CFS の他,品質管理証明として原 産国の GMP(Good Manufacturing Practice)や国 り、我が国企業が得意とする高精度かつ高品質で複雑

な構造を有する医療機器領域までは進出していない。

このため、タイ政府としては、タイ国内企業と欧米 や我が国企業との連携を奨励し、イノベーションによ る技術の高度化や新製品開発を支援している。

また、タイ政府では、医療機器の輸出も奨励してお

り、アセアンの中では、メガネレンズや手術用手袋な どベーシック医療機器の輸出が一番高い国となってい る。図

10

に示すように医療機器の輸出高は

2002

年で は総額

4

4100

US$

2008

年には

9

7300

US$

に 達している。

最大の輸出品目である手術用手袋は、

2008

年には

3

4600

US$

を達成、海外に輸出される消耗品の世 界シェア

36

%であった。輸出相手国としてもアメリ カは第

1

位であり、

2008

年には総額

2

6300

US$

医療機器をタイから輸入している。

その他、主な輸出相手国は、

EU

、日本、ドイツ、

オランダなどがある。

(4) 調達関係

バンコクで日本人専門窓口を有するサミティベート

病院の医師等によれば日本企業の製品に多い高品質、

高価格帯の医療機器については、一部公立の大手病院 の他は、都市部で海外からの診断・治療患者も訪れる ような私立の大型病院に納入機会があり、図

11

に示 すような超音波診断装置やカテーテル治療システム、

消化器系内視鏡等の先端医療機器の導入に関心を示し

ており、地方であっても中核病院への納入機会は期待 できるとの声もある。

調達の際には仕様が提示され、その仕様に適合する 製品の中で価格競争により落札先が決定する。最終的 には各病院に設置される調達委員会などで決まること から、委員会メンバーに選ばれるような影響力のある 医師に対し、日ごろから製品の紹介を行っていくこと が重要である。現地代理店などビジネスパートナーと 協力して、エンドユーザーである医師にどれだけ丁寧 に説明できるかが納入機会の成否を分ける。

また、日本製品は品質に優れているとのイメージは あるものの、馴染みのある医師はまだ少ないことか ら、①製品を有力医師に使ってもらう、②新製品はこ まめに代理店と協力して紹介する、③ワークショップ を開催するなどの展開を強めることが重要である。

(5) 許認可手続き

タイの医療機器分類は、国際的なリスク分類とは異 なり、図

12

に示すようにカテゴリー

1

license

)、カ テゴリー

2

notification

)、カテゴリー

3

general

) の

3

分類である。多くがカテゴリー

3

general

)に該 当し、現地の販売認可を得るのは比較的容易である。

輸入の場合は、原産国の自由販売証明(

Certificate for Free Sales

CFS

)があればよい。カテゴリー

3

General

)に該当する場合、

CFS

があれば

1

週間ほ どで認可が下りるとも言われている。

図 9 メイド・イン・タイ製品の一覧

図 11 タイの大手病院が関心を示す主な医療機器

図 10 タイの医療機器の輸出額の推移

出典:タイ保健省報告

11

 タイの大手病院が関心を示す主な医療機器

 調達の際には仕様が提示され,その仕様に適合す る製品の中で価格競争により落札先が決定する。最 終的には各病院に設置される調達委員会などで決ま ることから,委員会メンバーに選ばれるような影響 力のある医師に対し,日ごろから製品の紹介を行っ ていくことが重要である。現地代理店などビジネス パートナーと協力して,エンドユーザーである医師 にどれだけ丁寧に説明できるかが納入機会の成否を 分ける。

 また,日本製品は品質に優れているとのイメージ はあるものの,馴染みのある医師はまだ少ないこと から,①製品を有力医師に使ってもらう,②新製品 はこまめに代理店と協力して紹介する,③ワーク ショップを開催するなどの展開を強めることが重要 である。

⑸ 許認可手続き

 タイの医療機器分類は,国際的なリスク分類とは 異なり,図12に示すようにカテゴリー1(license),

カテゴリー

(notification),カテゴリー

(general)

分類である。多くがカテゴリー

(general)

今後は、カテゴリー

3

general

)分類のうち、リ スクが高い製品についてはカテゴリー

1

license

)や カテゴリー

2

notification

)に相当する厳格な審査を

要求するようになる可能性もある。

また、従来、タイでは医療機器の分類と管理レベル を混在して取り扱っていたが、今後は、図

13

に示す ように我が国と同様、分類はリスクの程度に応じて

4

つのクラス(

A

低リスク、

B

やや低リスク、

C

やや高 リスク、

D

高リスク)に分類され、管理は

3

つのレベ

ル(

1.

認可、

2.

仕様宣言書の受領、

3.

リスト掲載)で 行われる予定である。

インプラント、滅菌機器、放射線機器、

IVD

、歯科 充填材などは

CFS

の他、品質管理証明として原産国 の

GMP

Good Manufacturing Practice

)や国際規 格

ISO13485

も同時に求められる可能性がある。

(6) ラベリング等の要求

多くの製品についてマニュアルを含めタイ語の記載 が求められるが、どこまで要求されるかについて規制 当局と産業界の間で協議が続いている。

(7) 製品の市販後監視

今後、国内での製造及び輸入、流通に関する記録や 年次報告の徹底はもとより、規制当局は病院とも協力

しながら有害事象報告等も強化していく方針である。

(8) タイにおける新医療機器法施行の動き

現在、タイにおいては、

2017

年中の新医療機器法 の施行に向けて保健省が中心となり審議中であるが、

我が国の関係法令やシステム等を参考にしながらも以 下に示すような法律を補完するための通達などの整備 も合わせて行っている最中である。

ア.所定の管理方法から除外される医療機器を製造、

輸入、または販売するための規則、手続き、なら びに条件に関する保健省通達

イ.血液透析用透析液に関する保健省通達 ウ.理学療法用機器に関する保健省通達 エ.歯の漂白に関する保健省通達

オ.マラリア検査キットに関する保健省通達 カ.

GDP(

適正流通基準)に関する保健省通達

キ.技術文書、施設監査、医療機器の検査・分析手法 の確立

(9) ASEAN域内の規制整合化の動き

タイ

FDA

(保健省食品及び薬品管理員会(

Food and Drug Administration

)は、

AMDD

ASEAN Medical Device Directive

)(

ASEAN

医療機器指令)を

2015

年から導入し

20

年には完成の方針であり、医療機器 申請に関する新たな要件を設け、以下の調和プロセス の完成を目指している。

・医療機器についての共通の定義

・リスク評価された製品の分類

・共通申請様式(

CSDT

・国際的な医療機器規格の共通リスト

ただし、域内で整合化できるのは申請時の統一書式

CSDT

)の様式と、不具合事象の通報程度ではない かとの声があり、各国制度の整合化は困難との感触も ある。

11.おわりに

本調査研究は、今後著しく市場拡大が見込まれる東 南アジア市場における販路開拓上の問題点を明らかに し、その解決策を模索するために実施したものであ る。今回調査研究では、文献調査やタイ政府関係者へ の聞取り、現地調査等を実施することにより、タイ国 内における医療機器産業の現状や市場動向、販路開拓 上の問題点など以下の①~④の点を明らかにすること ができた。

図 12 タイにおける医療機器規制の枠組み

図 13 医療機器のリスクに応じたクラス分類

出典:タイ保健省食品医薬品局(FDA)の報告

12

 タイにおける医療機器規制の枠組み 今後は、カテゴリー

3

general

)分類のうち、リ スクが高い製品についてはカテゴリー

1

license

)や カテゴリー

2

notification

)に相当する厳格な審査を

要求するようになる可能性もある。

また、従来、タイでは医療機器の分類と管理レベル を混在して取り扱っていたが、今後は、図

13

に示す ように我が国と同様、分類はリスクの程度に応じて

4

つのクラス(

A

低リスク、

B

やや低リスク、

C

やや高 リスク、

D

高リスク)に分類され、管理は

3

つのレベ

ル(

1.

認可、

2.

仕様宣言書の受領、

3.

リスト掲載)で 行われる予定である。

インプラント、滅菌機器、放射線機器、

IVD

、歯科 充填材などは

CFS

の他、品質管理証明として原産国 の

GMP

Good Manufacturing Practice

)や国際規 格

ISO13485

も同時に求められる可能性がある。

(6) ラベリング等の要求

多くの製品についてマニュアルを含めタイ語の記載 が求められるが、どこまで要求されるかについて規制 当局と産業界の間で協議が続いている。

(7) 製品の市販後監視

今後、国内での製造及び輸入、流通に関する記録や 年次報告の徹底はもとより、規制当局は病院とも協力

しながら有害事象報告等も強化していく方針である。

(8) タイにおける新医療機器法施行の動き

現在、タイにおいては、

2017

年中の新医療機器法 の施行に向けて保健省が中心となり審議中であるが、

我が国の関係法令やシステム等を参考にしながらも以 下に示すような法律を補完するための通達などの整備 も合わせて行っている最中である。

ア.所定の管理方法から除外される医療機器を製造、

輸入、または販売するための規則、手続き、なら びに条件に関する保健省通達

イ.血液透析用透析液に関する保健省通達 ウ.理学療法用機器に関する保健省通達 エ.歯の漂白に関する保健省通達

オ.マラリア検査キットに関する保健省通達 カ.

GDP(

適正流通基準)に関する保健省通達

キ.技術文書、施

Referensi

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