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第一章 オープンソース・ソフトウエアが熱い

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第一章 オープンソース・ソフトウエアが熱い

第一節 研究テーマ設定

第二節 オープンソースとは?

第三節 コピーレフト思想

第四節 Linuxの歴史

第五節 Linuxの広がゆコ/span>

第二章 ソフトウエアのオープンソース化傾向

第一節 サンマイクロシステムズ

第二節 ジャストシステムズ

第三節 ネットスケープ・コミュニケーションズ

第三章 LinuxとWindows 2000の比較研究

第一節 サーバーオペレーティングシステムへのニーズ

第二節 システムデベロッピング過程の比較

第三節 Linux開発者達のインセンティブ

第四節 ビジネスモデル比較

第四章 Linuxの競争優位の源泉とは

第一節 Linuxの優位点

第二節 Linuxの弱点

第五章 Linuxの強みを活かすビジネスモデルとは

第一節 現行のビジネスモデル

第二節 知的財産権の適用は可能か

第三節 ビジネスモデルとしての問題点

第六章 まとめ

付録 インタビュー:ソニー本社取締役、真崎氏に聞くLinuxの魅力

第一章 オープンソース・ソフトウエアが熱い 第一章 オープンソース・ソフトウエアが熱い

最近、各メディアでオープンソース・ソフトウエアが頻繁に取り上げられている。特にLinuxの動向は、大変 な注目を集めている。本章では、そもそもオープンソース・ソフトウエアとは何かを明らかにし、その代表格 とも言えるLinuxの発展の歴史を振り返る。

第一節 第一節

研究テーマ設定 研究テーマ設定

Linux というオープンソース・オペレーティングシステムは Windows や Macintosh と比較して、そのソ フトウエア・ライセンス形態は非常に特異である。

Linuxは、もともとハッカーと呼ばれるプログラム開発 者を中心に開発が始まったものあり、配布は無償で行われてきた。現在も数百のFTPサイトから無償でダウ ンロードできるが、ユーザーの増加によって、初心者向けのインストーラーやGUI、アプリケーション等が添 付されたパッケージ版ディストリビューション(=有償ソフト)が市場に出まわるようになった。しかし、

このような販売形態は、開発や改善に関わったすべての開発者が、商品となったパッケージ版から利益を上 げる構造にはなっていない。オープンソース・ソフトウエアの開発形態は既存の開発形態よりも優れているよ うに思われるが、ビジネスモデルとしては、まだまだ課題が残っているようである。Linuxに注目し、オープ ンソースの長所や短所を分析し、そのビジネスモデルをどう構築するべきかを考える。な

お、LinuxとWindows 2000という性格の異なるオペレーティングシステムを比較研究し、Linuxの競争優位の 源泉がいったい何なのかを明らかにし、オープンソースを保持しながらビジネスへ展開することについて考 察してみる。

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察してみる。

第二節 オープンソースとは? 第二節 オープンソースとは?

オープンソース・ソフトウエアとは、ソースコードが公開され、第3者が自由にコピー、加工することが許諾 されたソフトウエアである。ただし、加工することによって得られた成果については、次にこのソフトウエ アを利用する人のためにオープンにすることを要求される。このような権利の付与の仕方は「コピーレフト」

と呼ばれ、BSDやGNU Public License(GPL)といったオープンソース・ソフトウエアのライセンス規約に則っ て配布されている。GPLは、Free Software Foundationが、自由が保証されたコンピュータソフトウェア環境 の構築を目指して進めている、一連のUNIX系ソフトウエア群の開発プロジェクトである。

このライセンスの特徴として留意すべきことは、オープンソース・ソフトウエアは、パブリックドメイン・ソ フトウェアのように無償で配布されるとは限らない点である。規約を守りさえすれば商用ソフトとして売り 出すことは可能である。実際に現在、数多くのディストリビューションが出まわっている。無償配布と有償 配布が混在しているため、正確なユーザー数を推定するのは不可能と言われている。

第三節 コピーレフト思想 第三節 コピーレフト思想

技術者のインセンティブを担保するための、プログラム著作権保護の話とは裏腹に、MITのハッ

カー、Richard Stallmanは、「コンピュータへのアクセスは無制限かつ全面的でなければならない」という思

想を掲げていた。前述した、Free Software Foundation(FSF)は、このRichard Stallmanが掲げる「ソフトウ エアは自由であるべき」という理念をもとに、コンピュータプログラムの使用や複写、修正、再配布に関す る諸権利の制限を排除することを目的に設立された団体である。FSFのいう「自由の保証」とは、ソフトウ エアの権利を著作権者が放棄することによる自由(パブリックドメイン・ソフトウェアなど)ではなく、ソ フトウエアの使用条件として自由であることを使用者に要求(ソースコードの再配布を妨げてはいけないな ど)するものである。1986年の設立以降、FSFは「GNP一般公有使用許諾(GPL)」にしたがってプログラ ムを無料で配布=Copy Leftし続けている。その許諾内容は、①複製物を自由に頒布または販売できる。②希 望すればソースコードを入手できる。③入手したソフトウエアを変更し、新しいフリー・プログラムの一部 として使用できる。④ ①〜③までについてのことをユーザー自身が知っていることである。

Linuxの著作権はおおまかに言うと次のようになっている。Linux カーネルはパブリックドメインなソフトウ

エアではなく、GNU Public License (GPL)によって保護されている。Linux カーネルのソースコードは常に フリーに入手可能でなくてはならなく、望めば Linux に対して金銭をやり取りすることも可能であるが、そ の場合もLinuxの再配布を制限することはできない。また、Linuxの発展に力を合わせている世界中すべての 人が自分の書いたコードに対する著作権を保有している、としている。

第四節  第四節  Linux の歴史 の歴史

LinuxはPC-UNIXと呼ばれてきた。UNIXは、本来強力なミニコンあるいはワークステーションのOSとして開 発されてきたが、近年パソコンの能力が急速に上がってきた結果、パソコンでUNIXを使えるようになっ た。PC-UNIX とは、FreeBSD、NetBSD、Linuxに代表されるような、パソコン上で動作するUNIXの総称で ある。

UNIXの特徴としては、①  高級言語であるC言語によってシステムが記述されており、ポータビリティ(移植 のしやすさ)が高い、②  マルチユーザー環境(1台のコンピュータ=サーバーを同時に複数のユーザーが利 用できるように設計)、およびプリエンプティブなマルチタスク環境(OSが強制的に複数のアプリケーショ ン間で制御を切り替えることができる)を提供、③  ユーザーが対話的にシステムの機能を利用できるシェル

(ファイルのオープンやコピー/削除、プログラムの起動など、OSがユーザーに提供するユーザーインター フェイスを実現するソフトウェアモジュール)を装備するとともに、パイプ機能(単機能コマンドを組み合わ せることでより複雑な機能を実現できる)を実装、④  異なるデバイスに対しても、単純で一貫したインター フェイスを提供、⑤  ファイル形式がバイトストリームとして一貫しており、アプリケーションプログラムの 作成が容易、⑥  構造の単純な階層型ファイルシステムを採用し、インプリメント(機能の埋め込み)およびメ ンテナンスが容易、などが挙げられる。UNIXという名前には、それ以前にBell研がMITやGeneral

Electronic社らと共同開発していた「MULTICS」という名前のOSが、そのあまりにも膨大な仕様によってつ いに実用にならなかったことに対するアンチテーゼ(「Multi」=「多」に対する「Uni」=「単一」)の意味 が込められている。現在有力な商業UNIXシステムとしては、Sun Microsystems社の「Solaris」、IBM社の

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が込められている。現在有力な商業UNIXシステムとしては、Sun Microsystems社の「Solaris」、IBM社の

「AIX」などがある。

1987年、Andrew Tannenbaumが、「Minix」と呼ばれるパソコンで動作可能なPC−UNIXを開発した。OSの動 作を詳細に示す教育のためのツールとして開発された。このOSがそれ以前の教育用ツールよりも優れていた 点は、自分でシステムを開発できる環境があり、しかもパソコン上で実行できたことだった。

Linus B. Torvaldsは、フィンランド大学の学生だった1990年当時、このMinixの存在を知り、自宅で疑 似UNIX環境をつくるべく、翌1991年にパソコンを購入した。ところがMinixの到着が遅れたためIntel386メモ リ管理ハードウェアの実際の動作を調べているうちに自分でカーネルらしきものが作れてしまい、「いっその こと使いやすいOSを自分たちの手で作ってしまおう」と、自分の書いたソースコードをせっせとインター ネット上のMinixのNewsgroupに公開しては、それに対するメンバーとのネット上の意見交換をもとに、どん どん改良を加えていった。

このような超マニアックな開発活動を経て、1994年にはめでたくVer1.0(最初の公式版カーネル)をリリース することができた。以降、マイナーバージョンを安定性重視の一般用と機能追加を目指す開発用に分け、開 発に携わる主体を加速度的に増やしながら、約1週間という超短期間のマイナーチェンジを繰り返しながら 開発は継続され、2000年現在において安定版はVer2.2にまで到達し、3.0のリリースも近いと言われている。

注意すべき点は、Linuxとして開発されているのはカーネルなどの基本的な部分だけであり、シェルや各種コ マンドなどのユーザー環境は、インターネットで公開されているフリーソフトウェアが使われているという ことである。その多くはGNUから無償配布されているものである。近年のLinuxユーザーの増加によっ

て、Linuxカーネルと他の各種コマンド、エディタ、コンパイラ、ウィンドウシステムなどをまとめ、パッ

ケージ化して販売するディストリビューターが現れた。主なLinuxディストリビューションパッケージとして は、アメリカの「Red Hat」や、ヨーロッパの「S.u.S.E.」、日本における「Turbo Linux」などがある。

このように、配布の方法については必ずしも無料でなければならないというものではなく、GPLさえ守って いれば、システムをCD-ROMのかたちで販売することも可能である。そこでLinuxのUser Groupでは、いわ ゆる「フリーウェア」とは区別する意味でこれらのソフトを、「オープンソースソフトウェア」と呼んできた。

現在、Linux を動かすことのできるアーキテクチャは x86, Motorola 68k, Digital Alpha, SPARC, Mips, Motorola PowerPC など実に多岐に渡る。

第五節  第五節  Linux の広がり の広がり

Linuxは、無償で配布されていることがベースにあるため、そのユーザー数を正確に把握することは不可能で ある。Linux User Groupの集計(自己申告制)では、2000年7月時点において世界で152,000人がLinuxを使って いることになっている。あくまで、自己申告の集計なので、実際のユーザーはこの数を圧倒的に上回るであ ろう。また、Linuxの商用パッケージベンダーであるRed Hatミは、1997年に約750.000枚のCDを出荷したと 発表した。同社は独自のマーケットリサーチを行い、世界で750万人のユーザーがいると推測した。また、

データが少々古いが、International Data Corp.の調査によれば、1997年には200万のLinux商用コピーが売 れ、30万から50万が無償でコピーされたということであった。1997年までに商用あるいは無償でコピーされ た250万を加えると、1997年末には累積で480万から500万のコピーがなされたことになる。Linux関係の代 表的ポータルサイトの一つであるwww.linux.orgは2000年夏現在、全世界で1200万人のユーザーがいると見 積もっている。

Linuxが最初に世の中に広く認知されたのは、1998年1月のNetscape Communications社によるNetscape Communicatorの無償化およびソースコードオープン化の発表によってである。しかし、当時はMicrosoft社と のブラウザのシェア争いで劣勢を強いられていた同社の苦肉の策ととられ、オープンソース・ソフトウエア化 の効果については懐疑的な声が多かった。ところが、同年6月にIBMが同じオープンソース・ソフトウエアで

あるApache Web Serverのサポートを発表すると、にわかにオープンソース・ソフトウエアへの関心が高まっ

てきた。

一方、この時期並行して行われていたMicrosoft社に対する独占禁止法裁判では証言者が次々と同社にとって 不利となる証言を繰り返し、同社の独占を阻止する代替OSを待望する気運が高まる中で、着々とユーザーが 増加しているLinuxが注目を浴びるようになった。同年7月に入ってOracle社とInfomix社が自社製品

のLinux対応計画を発表するとIBMやリレーショナルデータベース(RDB)ソフト・ベンダーを中心にLinuxに対 応する、あるいはLinux関連のサービス・サポートビジネスに進出する旨の発表が相次いだ。さらに、同 年10月に入ると、Intel社とNetscape社のRed Hatへの出資というようなディストリビューターへの直接的な はたらきかけ、といった動きもでてきた。同年同月末のMicrosoft社によるオープンソース・ソフトウエア

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はたらきかけ、といった動きもでてきた。同年同月末のMicrosoft社によるオープンソース・ソフトウエア とLinuxに関する社内文書のリークは世間のオープンソース・ソフトウエアおよびLinuxに対する関心の高まり を決定的なものにした。同年12月にはSunがJavaのライセンスオープン化、および自社製品のLinuxのサポー トを発表した。 1999年以降は、Linux関連のサービス・サポートビジネスに参加を表明する企業は、後を絶 たず、現在では非常に数多くの企業がLinuxをサポートしている。Red HatやTurbo Linuxなどのディストリ ビューターに出資するハードウエア、ソフトウエア、ビジネスソリューション関連企業は、増加の一途をた どっている。SGIは、今後、同社のワークステーションにおいてLinuxのみをサポートすることを発表 し、DELLは、ワークステーションやサーバーへのLinux搭載に加えて、Linuxを搭載したノートブックの販売 も始めた。

当初は充実しているとはいえなかったアプリケーションの分野でもCorelミによるワープロソフト、Word Perfectの無償配布、StarDivision社によるオフィススイート、Star Officeのなどが次々に登場している。

Linuxはいまやコンピュータ産業に生まれた新たな台風の目になりつつあると言えよう。

第二章 ソフトウエアのオープンソース化傾向(執筆中) 第二章 ソフトウエアのオープンソース化傾向(執筆中)

第一節 サンマイクロシステムズの例 (執筆中)

第二節 ジャストシステムズの例 (執筆中)

第三節 ネットスケープ・コミュニケーションズの例 (執筆中)

第三章  第三章 Linuxと とWindows 2000の比較研究 の比較研究

Linuxは現在、主として、ビジネス用OSとして用いられており、その多くはサーバー用途であ

る。UNIX系OSである為に、パーソナルユースは少ない。MicrosoftのWindows NT 4.0の後継バージョンであ るWindows 2000もビジネス用途を第一に考えたOSであり、Windows 95/98に比べ、個人用OSとしては難解 で不必要な機能が多く、家庭ではあまり使用されていない。したがって、両者は全く違うポリシーや性格を 持っているが、競合製品と見ることができる。そこで、本章では、LinuxとWindows 2000の比較研究を し、Linuxの競争優位の源泉は何かを探っていきたい。なお、Windows 2000は発売から間もないために、

データが少ないので、一部Windows NT 4.0のデータを用いた。

第一節 第一節

サーバーオペレーティングシステムへのニーズサーバーオペレーティングシステムへのニーズ

オペレーティング・システム(OS)は、コンピュータ・ハードウェアとアプリケーション・ソフトウェアをつ なぐ、「基本」ソフトウエアとして重要な役割を担っている。OSは、CPUの管理(タスク管理)やメインメモリ の管理、入出力機器の管理、ファイル管理といったコンピュータ・システムの管理機能を通じて、そのハー ドウェア上でアプリケーション・ソフトウェアが正常に動作することを実現する。従って、OSの性能はコン ピュータ・システム全体の性能を規定する。OSに求められる最も重要な特性は、以下の4点と言われてい る。

①信頼性

信頼性とは、過酷な使用条件(例えば、長期間に渡り起動しっ放し)でも決してハング・アップやクラッ シュしないことを指す。

②スケーラビリティと性能

スケーラビリティと性能は、ネットワーク環境下におけるOSの処理速度を左右する特性として重要である。

③相互運用性

相互運用性は複数のアーキテクチャあるいはOSとの互換性を保証することである。

④カスタマイズの容易さ

カスタマイズの容易さは、サーバー数の増加にともなうOSの単一タスクへの特化の流れ、という意味で重要 性を増してきている。

第二節 第二節

システムデベロッピング過程の比較 システムデベロッピング過程の比較

それぞれのOSの開発段階おける相違が、LinuxとWindows 2000を全く性格の違うOSにしていると言われる が、具体的にどこが違うのかを整理してみる。

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が、具体的にどこが違うのかを整理してみる。

1. 指導者とその開発動機指導者とその開発動機

LinuxはLinus Torvaldsの「OSの勉強をしたい」という個人的欲求から始まった。この個人的欲求という開発 動機はLinuxの開発に参加する開発者に共通するものである。一方、Windows 2000はMicrosoft社のサー バーOS対抗手段という戦略的動機からきており、プロジェクト・リーダーと開発者の間では必ずしも開発動 機が一致しているとは限らない。Linux及びオープンソース・ソフトウエアの開発インセンティブについて は、次節で触れることにする。

2. 開発組織開発組織 1)地理的広がり

Linuxの開発には基本的に誰でも参加でき、インターネットの広がりとともに開発者は世界中に分散して存在

することが可能となった。それに対し、Microsoftは密度の濃い開発、特に複雑さを増すOS開発の過程で1日 1回のビルドを更新していくために、社内の開発プロジェクト参加者はSeattleに集中させておく必要があ る。

2)チーム構成者

Linuxの開発には基本的に誰でも参加できるが、その貢献の度合いは参加者の能力によって異なる。開発の中

心的役割を担うのは、Hackerと呼ばれる、実際に有益なコードを書くことができるプログラマー達である。

ただし、例えコードが書けなくても、ユーザーとしてテストやデバッグの援助といった副次的な貢献に参加 することは可能である。Linux Communityでは開発者とユーザーの間に明確な区別がなく、両者が混在したか たちで開発が進む。

MicrosoftミのOS開発組織は、OSの機能ごとにモジュール化された社内プロジェクトチームから構成されてい る。複数のアーキテクチャへの対応やネットワーク対応、GUI等OSに要求される機能が複雑かつ大規模に なっていくなかで、いかに「小プロジェクト」の機動性を保つかが難しい。

3)ユニット

開発チームの構成単位はOSの構造が規定する。OSを機能ごとにモジュール化し、分担して開発を行うとい う意味ではLinuxもWindows 2000も変わらない。最終的にプロジェクトの進捗を管理し、まとめて行くの はLinuxの場合はLinusであり、Windows 2000の場合はプロジェクトリーダーである。この各モジュールと リーダーとの関係は、クライアントとサーバーの関係になぞらえて考えることができる。

4)インタラクション

Windows 2000プロジェクトではプロジェクトリーダーのカリスマ的指導力が及ぶ範囲、つまりFace to

Faceでのコミュニケーションが可能な地理的範囲で開発が進められた。これに対し、Linuxの開発で

はMailing ListやNews Groupといったインターネットツールをメインに開発が進められているのが特徴的であ る。興味深いのは、Linuxの開発者としてCreditを持っているようなプログラマーでもLinusには会ったことが ない、というのが全く珍しくないことである。

3. 修正・更新管理修正・更新管理 1)種別

Linuxの修正・更新管理はバージョンを二種類に分けることによって行われている。すなわちバージョンを

「安定版」(現在2.2)と「開発版」(現在2.4)に分け、開発版の方ではほぼ毎週に近い頻度で機能拡張・バグフィク スに関するパッチをリリースしつつ、落ち着いたところで安定版に移す、という方法でバージョンアップを 行っている。

一方、Microsoft社では、大規模なプロジェクトを機能ごとに細分化されたチームによってまわしていくため に、「同期安定化(ビルド)」という方法によって修正・更新管理を行っている。これは開発中のソフトウエアを 早い段階である程度「出荷レベル」に引き上げてしまうことと、毎日「ビルド」を作成することによってバグの 所在を突きとめやすくし、バグフィクスを容易にして開発スピードを上げることを目的としている。

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2)頻度

安定版であるLinux 2.2は、1999年1月にリリースされて以来2000年7月までの約一年半の間に、16回の修正 サブバージョンをリリースした。開発版の2.3に至っては、一年程の間に51回の修正サブバージョンを出して いる。

一方、(Windows 2000はまだ発売から間もないので、前バージョンであるWindows NT 4.0 のデータを参照 する)Windows NT 4.0は1993年7月の出荷以来、6回のサービスパックリリースに留まっている。

3)開発〜テストの方法

LinuxではHacker が新たに作成したコードや付加されたPatchの報告、不具合点についての問い合わせ等が、

各モジュールのMailing Listに投稿され、この投稿内容は瞬時に世界中のML参加者に回覧される。新たな機能 の追加といった大がかりなものについては、ある程度時間をかけて議論が出尽くした後でまあ問題ないと判 断されればカーネルに付加される。バグの報告に対しては1日をおかず対策が打たれることが多い。このよ

うにLinuxは各モジュールがばらばらに動いており、統合はルーズで、問題が発見されれば後追い、ただし迅

速に対応するというスタンスをとっている。

一方、Microsoft社においては、各モジュールの担当者は自分の持分をビルドにまわす前に必ず自らテストす

ることを義務付けられる。毎日コンパイルされる社内ビルドは理論的にいつでも出荷できる状態になってい る必要があるために、各モジュールが完全に整合している必要があり、Windows 2000では同期をうまくとる ためにテスト専門のチームもおかれている。リリースが近くなると、製品テストは社内のプログラマーs コ/span>β版テスターによって行われ、外部のβ版テスターはWindows 98開発時には数十万人に達した。

4. オープンの度合いオープンの度合い

ソースコードはプログラマーにとって自分の分身のようなものである。これをオープンにするということは ある意味、真っ裸で街中へ出て行くのに等しい。ただLinuxでは、ソースコードが「真っ裸」になっているた めに、不具合の原因が一目瞭然であるし、プログラム言語さえ理解できれば誰でも改良を加えることができ る。

一方、Windows 2000ではアプリケーションとのインターフェイス(API)までがオープンになっている。こ れはMicrosoft社のDe facto戦略に則った施策で、3rdベンダーはAPIをもとにWindows対応のアプリケーショ ンを開発する。外部テスターは開発への参加にあたり、不具合を指摘するところまでに留まる。

 

5. コンフリクトの解決コンフリクトの解決

組織として開発を行う以上、コンフリクトはつきものである。二つのプロジェクトにおいて共通に作用して いるのはリーダーのカリスマ性である。どんなプログラマーであれ、結局はリーダーのプログラマーとして の優秀さに従う。LinuxにおけるLinus Torvaldsは、Linuxカーネルの管理人さんのような存在で、組織をまと めるというよりは「あんたたち好きにやりなさい」的な態度をとっているが、彼が手がけたカーネルの実用 性と方向性を決めるCriticalな場面での判断の正しさゆえに、例えそれが一好意的専制主義者の恣意的判断で あっても、人々はこのカーネルの上に乗っかってなんかやってやろうと集まってくる。

一方、Windows 2000におけるプロジェクト・リーダーは、まさに組織をまとめるための強いリーダーであ る。

6. ユーザーインターフェイスユーザーインターフェイス

両者とも特に操作性という意味で、母体となるOSを持つ。Linuxであれwコ/span>UNIXを知っていれば動か せる、あるいはWindows  2000であればGUIがWindows  95/98/NTと同じということである。しかも、最 近のLinuxの傾向として、インストール段階からGUIを利用できるディストリビューションが多く、そ のGUIはWindowsのそれと酷似している。人気があり、標準化されつつあるGnomeやKDEといったGUIは、

非常にWindowsライクなものとなっている。図6-1は、それぞれOSのGUIである。

図6-1 GUIサンプル

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7. 品質保証品質保証

Linuxには、基本的に品質保証は存在しない。品質保証は、Linuxをパッケージ製品として売る会社か、ある いはLinuxのサービス・サポートを提供する会社によって付与される場合がある。Windows 2000プロジェク トの気の遠くなるようなバグとり作業は品質保証を満足するために行われるものであり、顧客の品質に対す る感覚が厳しくなるにつれ、出荷時期を遅らせる原因となっている。

第三節 第三節

Linux 開発者達のインセンティブ 開発者達のインセンティブ

Linuxの開発に参加しているプログラマーやユーザーの間にはさまざまなイデオロギーが流れていると考えら

れるものの、開発動機として共通しているのは、「個人的悩み」、つまり自分が必要としているが現存しな いコンピュータ機能を満足させようとすることから始まる。Raymond(1998)は、人々の欲求を満たすための 組織化の方法として、「上意下達方式」、「交換経済」、「贈与文化」3つのタイプを示し、前2者を財の 希少性に適応する方式、最後者を過剰な財に適応する方式、すなわち「ハッカー」と呼称されるプログラ マー達の行動はこの贈与文化に則ったものであるとしている。

物質的な欠乏があまり起きない社会では、「何を持っているか」ではなくて「何を与えたか」がその人の名 声や評判を計るバロメーターになる。贈与経済は、穏和な気候と豊富な食料を持った経済圏の原住民の間 や、ショービジネスや大金持ちの間でも見られるが、i[/span>のような行動をハッカーの世界で具体的に言 うと、それは①フリーソフトウェアを書くこと、②フリーソフトウェアのテストやデバッグを援助するこ と、③有益な情報(WebページやFAQなど)を公開すること、④基礎の仕事の維持(メーリングリスト管理や、

ニュースグループの議長等)、⑤ハッカー文化そのものへの貢献(入門書執筆?) である。

「名声や評判」を物差しとして使うときは、「誰がやったか」が明らかになっている必要がある。先述

のRaymondはハッカー達の名声や評判を確立するための慣習を、ロックの土地保有に関する理論と関連づけ

て分析している。ソフトウェア・プロジェクトの所有者=名声・評判を勝ち得た者というのは、変更した バージョンを公式に再配布する独占的な権利をコミュニティ全般から認められている人物である。このよう なオープンソース・コミュニティにおける”所有権”を獲得する方法は以下の三つ、①プロジェクトを創始す る、②前の所有者からそれを引き継ぐ、③元の所有者が消えたか興味を失ったりして放棄されたプロジェク トを引き継ぐことをまわりに宣言する、が考えられる。これらの方法は、以下の英米慣習方法における土地 所有権獲得の方法、①未開の地(フロンティア)を開墾する、②土地所有権の移転、③遺棄された土地への 入植、と全く同じであり、中央権力が弱いか存在しないような場面で有機的に発達し、その資源からの期待 リターンがそれを独占して守ることの期待コストよりも大きい場合にのみ生じる、とした。

第四節 第四節

ビジネスモデル比較 ビジネスモデル比較

1. PC市場におけるビジネスモデル市場におけるビジネスモデル

Microsoft社のソフトウエアビジネスにおける競争優位の源泉は、共通の業界標準というプラットフォームを

保持していることである。ソフトウエア産業、特にOSでデファクト・スタンダードの持つ意味が大きいの は、膨大な開発費(固定費大)のわりに、コピーすることが容易なため追加的費用が極めて小さいことと、互換 性が重要でかつ蓄積することの価値が大きいためネットワーク外部性が働くことから、他に先んじてマー

Linux Windows 2000

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性が重要でかつ蓄積することの価値が大きいためネットワーク外部性が働くことから、他に先んじてマー ケット・シェアを大きくすることが、企業に継続的な収穫逓増をもたらすからである。 Microsoft社は、ユー ザーの互換性のニーズに初めて応える企業としてパソコンOSにおけるデファクト・スタンダードを勝ち取っ た。

PC市場は1970年代終わりにApple社によって創造されたが、IBM社はこれに対抗して自社vコ/span>PC事業 を短期間で立ちあげるためにオープンアーキテクチャを採用し、MPUはIntel社、OSはMicrosoft社への外注で 賄った。ハードウェアからアプリケーションまですべてを自分で囲い込んでいたAppleミPCに対して、IBM- PCはオープン・システムゆえに3rdベンダーによる互換マシン参入や、豊富なアプリケーションによって広 く市場に普及し、MS-DOSはAppleミOSを隅に押しやって、PCにおける標準OSの立場を確立した。Windows 3.1がDOSとの互換性を保ちながらメモリ上限の制約を解消し、マッキントッシュのようにアイコンを使った 容易な操作性を実現すると、またたく間にWindowsがPCの標準になった。この時、同社は世界の中心にいる のは自分達であり、ハードウェアからソフトウエアにビジネスの主導権が移ったことを悟った。OSのデファ クト・スタンダードは、アプリケーションでの競争を有利に運ぶ切り札となった。同社はWindowsとワープ ロや表計算、データベースソフト等が一緒になったOfficeスイートと呼ばれる統合アプリケーションを巧みに セットでハードにプリインストールして販売することによって、個別のソフトウェアベンダーの締め出しに 成功した。

2. サーバー市場におけるビジネスモデルサーバー市場におけるビジネスモデル

サーバー市場は、コンピュータのダウンサイジングによって創造された市場である。システムベンダーが ハードやOS、アプリケーション等を、顧客の要求に合わせて開発、あるいはインテグレートして納入し、運 用管理やサービス、サポートまで受け持つこともある。これらのすべてを一社で受け持つ大規模ベンダーも あれば、一部分を受け持つ中小ベンダーもある。分割可能なのは、X/Openが定めたUNIX標準に準拠して 各々のシステムを開発しているからである。オープン・システムの中で成功を収める鍵は、システム設計か ら顧客サポートまでを統合する過程で、独自の差別化フィールドをいかに見出すかにあった。

ハードウェア能力の向上は、ワークステーションによる大型機の侵食を生んだのと同様に、PCによ

るUNIXサーバーの侵食を生んだ。インターネット・イントラネットの波にのったPCサーバーの需要増大に 対し、Microsoft社のWindows NT/2000マシンは①Unixに対して低価格であること、②GUIによる操作の容易

性やWindowsの豊富なアプリケーションを武器に急速にシェアを拡大した。動作の安定性や保守に優れ

るUnixがハイエンド・サーバー市場におけるオーダメイドなら、Windows NT/2000は既成服にたとえること ができる。但し、Windows NT/2000がUNIXをサーバー市場における仮想敵とみなしてたくさんの機能を盛り 込もうとする一方で、サーバー自体は、複数のサーバーがそれぞれ単一機能を割り当てられるシステムが増 えつつあり、そこに単一機能を安定的にこなせるLinuxが注目されるようになってきた。

第四章  第四章  Linux の競争優位の源泉とは の競争優位の源泉とは

前章の比較研究から、Linuxの競争優位の源泉とはいったい何かを整理してみる。また、何がLinuxの弱点に なりうるかを考察してみる。

第一節 第一節 Linuxの優位点の優位点

Linuxの最大の強みはその安定性にある。その秘密は「コードレビュー」のやり方にある。Linuxにおいては、

インターネット上のユーザーコミュニティが常にコードのテストを行っているようなものである。プログラ ム全体がソースの形式で常に世界中に公表されているため、商用ソフトウエアの開発環境では考えられない スピードで障害(バグ)の発見と修正が発生する。それらを通じて開発に参加しているプログラマーの間で自然 選択が行われ、適切な参加者が自発的にコードレビューと修正・改善に貢献することになる。障害の除去(バ グフィックス)や機能向上が実現するとそれはすぐにマイナーバージョンアップとしてリリースされ、Linuxは 高い安定性を保ちながら常に変化していくOSとなっている。

その他にもLinuxは、マルチタスクやマルチユーザー、ネットワーク機能といったUNIXの優れた部分を引き 継いでいる。また、パソコン(IBM PC/AT互換機)だけでなく、Dec Alpha、Sun Sparc、Power PCのマシンで も動作する移植性をもち、システムが軽g[/span>386以上であれば動作するため、古いマシンでも充分実用 的に使うことができる。

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1. OSとしての信頼性としての信頼性

Webサーバーにインストールしてから1年以上もダウンすることなく、連続で動き続けているLinuxの話には 定評がある。信頼性はLinux 開発コミュニティが最重要視する事項である。開発組織はモジュール化され、同 時並行的に開発が進むので開発期間が短縮されるが、Linusによってモニターされているのはカーネル部分の みで、システム全体としての品質保証はディストリビューションを供給する企業が担保するか、あるいは保 証されていない。それでいて信頼性が高いのは、カーネル自体が比較的シンプルであることと、世界中 のLinuxユーザーによってバグが極めて迅速に報告されかつ修正されるからである。

2. コストコスト

Linuxにかけるコストはユーザーが任意に決めることができるが、総じてWindows 2000よりも安い費用で導 入が可能である。例えば、プログラミングに精通しておりかつLinuxでつくるシステムに多くの時間を割くこ とのできるような上級者であればWeb上で無償配布されているカーネルをダウンロードし、必要に応じてコ ンポーネントを付加していけば良い。この場合ソフトウエアにかかるコストはゼロである。一方、Linuxにあ まり時間をかけたくないがいいとこ取りはしたい、というのであればパッケージ・ディストリビューションを 購入するという方法がある。この場合、$50ドル程支払えば簡単にLinuxシステムをインストールすることが でき、添付されたアプリケーションを即使うことができる。もし、Linuxを使って本格的なシステム構築をし たいというのであれば、Linuxをサポートするインテグレーターと契約を結ぶ、というかたちで使う側のニー ズに応じたコスト設定が可能である。しかも、Linuxの場合はライセンス数というものが無く、コピー可能な ので、ディストリビューションを一本購入すれば何台のサーバーにでも組み込み可能である。

また、ハードとの組み合わせでは、イントラネットやファイル共有サーバーとして使う場

合、LinuxはIntel486以上のマシンであれば実用性が得られ、常に最新のサーバーをそろえる必要はない。

3. カスタマイズ、サポートの容易さカスタマイズ、サポートの容易さ

Linuxはソースコードがオープンになっているため、プログラミング能力さえあれば、特定用途向けのカスタ

ム化は無制限に可能である。また、シンプルなカーネルを維持しているため、ハイエンド・ワークステー ションからローエンドvコ/span>PCサーバーまで幅広く対応可能である。システム価格がダウンしてきてい ることにより、従来のように一台のサーバーで複数のサービスを走らせるシステムから、複数のサーバーが それぞれ単一のサービスを走らせるシステムに変わってきており、単一サーバーをそれぞれの目的に合わせ て作り込み管理できるLinuxに強みがある。

ユーザーはシステムをカスタマイズすることによって余計な機能をスリム化し、高いパフォーマンスを享受 することも可能である。また、たとえシステムがカスタマイズされていてもソースコードがオープンになっ ているため、古いカーネル・バージョンもサポート可能である。

4. UNIXとの親和性との親和性

ハイエンドのサーバー管理者は、UNIX やインターネットベースのフリーウェアなどをよく知ってお

り、Linuxも違和感なく使いこなせる。彼らは、開発者であると同時にパワーユーザーでもあって、アプリ

ケーションの再コンパイルなどにも不安を感じない。

第二節 第二節 Linuxの弱点の弱点  

1.  ユーザースキル要求1.  ユーザースキル要求

インストールがLinuxビギナーにとっての最大の難関である。ウェブサイトから無償で提供されてい

るLinuxをダウンロードしてもUnix及びハードウエアの知識がないと、インストールは難しい。また、パワー ユーザーやヘビーユーザーにとっては、大変扱いやすいコマンドラインも、初心者には「アンフレンド リー」なインターフェイスと受け取られる。この問題はXfree86等のGUIを個別インストールするか、そのよ うなGUIが同梱されていて、Linuxインストール時に同時にOSに組み込まれるようなパッケージ版ディストリ ビューションを使用することによって、ある程度は解決できる。しかし、あくまでコマンドラインがOS設定 のベースになっており、新しいハードウエア・デバイスの追加やネットワークの設定は、GUIベース

のWindowsからスイッチしてきた初心者には難解であろう。

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のWindowsからスイッチしてきた初心者には難解であろう。

 

2.  互換性2.  互換性

新たなOSに乗り換えようというときにスイッチング・コストの問題が生じ、それまでに蓄積されたソフトウ エアやハードウエア資産の問題が生じる。ハードウエアについては、Linuxは軽いために、旧型のマシンでも 動かすことが可能で、問題は生じない。また、UNIXユーザーもこれまでの資産を生かせるので、この点でも 問題は生じない。しかし、問題はWindowsユーザーである。現在、様々なエミュレーターの開発が進んでい るものの、未だにWindowsを使って作成されたデータやファイルはLinux上で開くことができない場合が多く 見られる。

 

3.  アプリケーション3.  アプリケーション

LinuxをクライアントOSとして使おうとすると、アプリケーションの決定的少なさという問題に行き当た る。Oracle社やLotus社など、多くのデータベースソフトウェア・ベンダーによるLinux対応製品の発表が行 われたが、未だ充分とは言えない。また、Atok、ネットスケープ・コミュニケ−ターやCorel社のWordPerfect Office 2000を始め、家庭向け及び一般ビジネス向けソフトウエアの分野でもLinux版が続々登場してきてはい るものの、CDRやスキャナーなどのハードウエア・デバイス用のソフトウエアのLinux対応は、全く不十分で ある。

 

4.  効率性低下4.  効率性低下

Linuxは、バージョンを重ねるごとに、カーネルサイズが確実に膨張しており、バージョンアップの頻度が落 ちていくことが懸念されている。すなわちLinusが管理できる範囲を超えつつあり、Linusにかかる負荷がボ トルネックとなりうる。

第五章  第五章  Linux の強みを活かすビジネスモデルとは の強みを活かすビジネスモデルとは

Linuxのビジネスモデルを考えるときに重要なのは、そのオープンソースの強みを半減させることのないよう

な囲い込みの方法を考えていくことである。Linuxが今も誕生当時と変わらずに、ハッカーのボランティアに よって開発されつづけているという点を十分に踏まえて、どのような付加価値をつけるべきかを考察してみ る。

第一節 現行のビジネスモデル 第一節 現行のビジネスモデル

 

現在のLinuxのビジネスモデルは、補完財と組み合わせるビジネスモデルとみることができる。主として3つ

のタイプがある。

 

1. パッケージ製品のディストリビューションパッケージ製品のディストリビューション

Linuxは厳密にはカーネル部分のみを指し、実際にシステムとして動かすときには、各種コンポーネント

(ファイルシステムやドライバ、アプリケーション)を付け加える必要がある。米Red Hat社や日本におけ るPacific Hitech(PHT)社は、最新バージョンのカーネルにこれらのコンポーネントやインストーラをパッ ケージングして販売することにより、ユーザーにテクニカル・サポートという意味での付加価値を提供する ビジネスモデルである。ユニークな点はRed Hat社製品にしろPHT製品にしろ、GPLに従って製品を配布して いるので、これらをコピーすることは簡単にできる、つまり購買者は、ソフトウエア自体の付加価値という よりも、ソフトウエアを使用する上での利便性に対してお金を支払っているともいえる。

 

2. サポートサポート

Linuxを自前で管理する資源を持たないユーザーに対して、システム・インテグレータとしてサポート能力を

提供するビジネスモデル。Linuxはソースコードがオープンになっているためすべての技術情報にだれもが平 等にアクセスできる。従って、これらのインテグレーターの付加価値は純粋な意味での技術力、ということ になる。

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になる。

 

3. アプリケーションアプリケーション

Linux上で走るアプリケーションを開発することによって、Linuxユーザーに機能面の付加価値を提供するビ ジネスモデル。1998年央以降、数多くのRDBソフトベンダーがLinux対応製品の発表を行っている。

これら一連の動きの背景にはMicrosoft社とのゲームの変化がある。すなわち、Microsoft社にとってOSのデ ファクトをとりに行く過程でAPIをオープンにすることは、キラー・アプリケーションの獲得という意味で非 常に重要な協調戦略であった。一方、ソフトウェア・ベンダーにとっても標準OSのうえで走るソフトウエア を開発することは、マス・ユーザーを獲得する上で非常に重要であり、こうして両者間の協調はプラス・サ ムのゲームを生み出した。ところが、Microsoft社はOSのレイヤーでデファクトをとった後、今度はそれを武 器にアプリケーション・レイヤーの統合に向かったため、両社の関係は変化、つまりお互いの利害が対立す るコンスタント・サムのゲームに変わった。このゲームにおいて、ソフトウェア・ベンダーはOSレイヤー をMicrosoft社に握られているため勝ち目がなく、ゲームのルールを更に変えるためのパートナーをさがす必 要があった。そこに登場してきたLinux開発への参加者たちは、贈与のインセンティブに基づくユニークな価 値観で動いており、希少性を追求するソフトウェア・ベンダーが、新たなプラスサム・ゲームの可能性にそ ろって乗ろうとしているのが直近の動きにつながっている。

第二節 知的財産権の適用は可能か 第二節 知的財産権の適用は可能か

前項で述べた一連のビジネスモデルは、Linuxの知的財産権の考え方=コピーレフトについては、現状維持を 前提としている。GPLに基づいて配布されている限り、Linux自体は利益の源泉とはなり得ないが、従来の知 的財産権の適用によって状況変化がありうるか考察してみる。

 

1. 特許法による保護特許法による保護

Linuxを特許法で保護することにより、利益の源泉とするにはその機能に関する絶対評価が必要である。ただ

し、例えばLinuxカーネルの開発に関わる一人一人の開発者のアイデアに対する貢献度を査定し、都度金銭的 報酬を分配するには膨大な調整費用と時間がかかり、現状のような管理体制では実行不可能で、かつその手 間のためにLinuxの競争優位は失われる。

 

2. 著作権による囲い込み著作権による囲い込み

Linuxへの開発参加は無制限であり、モジュールの開発リーダーでさえもソースコードのどの部分が誰の手に

よるものか特定するのはほとんど不可能である。よしんばもしそれを特定したとしてもソースコードを著作 権で保護することによって、使用許諾の必要が発生し、開発を非常に迅速に推し進める上で効果絶大であっ たオープンソースの強みを失わせるものであり、現実的でない。

以上のように、統合しない、保証もしないというLinuxの現状スタンスが逆に著作権による囲い込みを必要と しないことにつながっており、この簡易性が競争優位につながっているとすると、著作権はLinuxにおける利 益の源泉にはつながらない。

第三節 第三節 ビジネスモデルとしての問題点 ビジネスモデルとしての問題点

Linuxにおける最大の問題点は「保証しない」という部分である。現在みられるビジネスモデルはすべ てLinuxの優れた品質とそれを生み出すメカニズムにうまく乗っかろうというものであるが、Linuxカーネル のプロジェクトが突然終了する可能性についてはだれも言及していない。ただ、これはLinuxに供給責任がな い以上いつ起こっても不思議ではない。開発コミュニティの存続可能性がこれらビジネスモデルのアキレス 腱である。

第六章 まとめ 第六章 まとめ (執筆中) (執筆中)

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